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2020年9月

2020年9月29日 (火)

もし政府が全国民に毎月10万円を給付することにしたら(No.427)

これは仮定の話だが、もし政府が全国民に毎月10万円給付することにしたら何が起きるだろう。自分の年収が120万円も増えるのだから大喜びの人は多いだろう。生活苦で自殺を考えていた人も救われる。生活に困っていなかった人も、旅行するかもしれないし、それまで買いたかったものを買うかもしれない。親子5人暮らしの家庭では毎月50万円の収入増だからインパクトは非常に大きい。しかしそんなうまい話はあるわけがないと思う人がいるかもしれない。ハイパーインフレになると言ったり、国債や円の暴落があるといったりする人もいるだろう。

先日特別定額給付金として10万円が国民全員に給付された。これで何か悪いことが起きたという話は聞いていないし、むしろ多くの国民を救ったのは明かだ。管総理は10万円の再給付を考えているとの報道がある。では全国民に対し毎月10万円の給付を続けたら何が起きるのだろうか。この事に関しては日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って試算を行った。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-9b9dee.html
2~3年間10万円給付をした場合を計算してみたが、ハイパーインフレも国債や円の暴落もなく、経済が穏やかに拡大することが示された。景気回復で給料も上がる。これは夢のような世界であるが、完璧に実現可能である。

もしこのような現金給付がなかったなら、3年間程度は経済が低迷し、居酒屋、飲食店、カラオケ店、キャバクラ、クラブ、イベントを主催する会社、旅行業者、アパレル関連業など、廃業・倒産が相次ぐ。それより月10万円現金給付の方がずっとよいと思わないか。そんなお金を政府は持っていないだろうと思っている人がいるのだろうか。国は自国の通貨をいくらでも発行する権利を持っているので、月10万円給付を続けることが可能だ。実際は政府が国債を発行し金融機関が買い、その後その国債を日銀がお金を刷って金融機関から買う。外国からクレームがあるのではないかと心配する人がいるのかもしれないが、これは日本国の固有の権利でありどの国も犯すことができない。そんなうまい話があるならどの国もお金をどんどん刷って国民に配れば国は豊かになると考えるかもしれない。今の時期、コロナで経済が落ち込んでいる国は多いのである程度成功する可能性がある。しかし経常赤字が続いていて外国からの借金が膨らんでいる国は、消費が拡大すると外国からの借金が返せなくなるのでは無いかと多くの人が考えるようになり、その国の通貨を急いで手放そうとする人が増え、その国に投資されている海外資金がその国から逃げ出し、外国からの借金返済不能になり通貨危機になる可能性がある。

幸いにして日本は外国から借金をしているどころか、多額のカネを外国に貸しているので、そうなる可能性が最も低い国である。つまり29年連続で対外純資産世界一なのだ。世界一お金を貯め使わない国民だと言っても自慢にはならないから、そろそろみんなで使いましょうよというのが今回の毎月10万円給付構想であり日本だからこそできるのだ。国民がこれを使えば消費が伸び、企業は大喜びで生産を増やし新しい時代に向けての投資ができ、世界的な競争力も増してくる。20年以上没落が続く日本企業が復活の兆しが見えてくる。我々の次世代の活躍出来る社会を築くためには、今消費を伸ばすことが必須条件となる。お金の一部は株式にも流れ、株価を上昇させそれが企業の投資意欲に拍車を掛ける。今の状況を放置すれば、韓国は間もなく日本より豊かな国になる。日本人のプライドを大切にするのであれば、思い切って毎月10万円給付を実行し、せめて韓国並みあるいはそれ以上の経済成長率に戻すべきである。

 

 

 

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2020年9月13日 (日)

一人当たりのGDPで韓国が日本を抜いてもいいのですか(No.426)

国の豊かさを比べるには、GDPそのものではなく一人当たりのGDPを使う。1994年頃日本の一人当たりのGDPは世界一だと内閣府が発表し、日本はそんなに豊かな国なんだと思っていた。ところが小泉首相が「痛みに耐えよ」と言いだし、日本がどんどん貧乏になり始め2006年には18位にまで下がった。我々の前の世代あるいはその前の世代の人達が頑張って世界一豊かな国にしてしまったのに、間違えた経済政策のお陰で日本が一気に貧乏な国へと変わっていくのは見るに堪えなかった。我々は仲間と金を出し合って2007年10月26日朝日新聞の1面を使って意見広告を出し「日本はここまで貧乏になった」と訴え、このタイトルで本も出した。

これを出してからマスコミの論調は一気に変わった。それまで好景気と構造改革をばかり言っていた論調が、このままではいけないという論調に変わった。これ以上日本が貧乏になるのを防ぐには積極財政がよいというNEEDS日本経済モデルを使ったシミュレーションの結果も示したが財政政策を転換させることはできなかった。日本を貧乏にする経済政策はアベノミクスでも変わっておらず、遂に日本が韓国よりも貧しい国になる日が来たようだ。

IMFの世界の1人当たり名目GDP 国別ランキングによれば2018年の日本は39,304US$で26位、韓国は33,320US%で28位なので辛うじてまだ日本の方が上だ。しかし猛烈な勢いで発展し続ける韓国に対し、日本は世界最低レベルの経済成長率を過去20年以上続けているからこのままだと近く韓国が日本を抜き去るのは確実だ。2019年は1999年に比べ何倍になっているか日韓で比較してみよう。

       日本      韓国
名目GDP  7%増     221%増
実質GDP  20%増    121%増
財政支出   25%増    328%増
国の借金   1.94倍   7.95倍

名目GDPの推移を見ると韓国は日本を成長率において圧倒していて今後もこの傾向は変わりそうもない。

             出所:IMF
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実質GDPでも韓国は日本を圧倒している。
                     出所:IMF
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日本経済の停滞に関しては様々な識者が様々な屁理屈を使って「説明」をしているが、それらが全部嘘だということが日韓の比較で分かる。
経済は成熟すると成長しなくなる?? ⇒ 韓国は成長を続けている
少子高齢化だから発展しない??  ⇒ 韓国は日本以上に少子高齢化が進んでいる
韓国は猛スピードで成長しているが、日本は恐ろしく停滞している。経済成長するかどうかは財政支出を拡大するかどうかで決まっている。韓国は日本の10倍以上の速度で財政支出を拡大しておりそれが高い経済成長を支えている。財政を拡大すれば、国民にそれだけ多くお金を渡すことになり、需要を拡大し経済を拡大する。財政を拡大すれば財政赤字が拡大し国に借金が増え将来世代へのツケを増やすと考え日本は財政を拡大せず、消費増税などを行って国民からお金を取り上げる。しかし結果として20年間で国に借金は日本は1.94倍になったが、韓国は7.95倍になっている。韓国のように借金が増えるのを恐れず、財政を拡大したら、日本も高い成長が期待できる。

日韓の歳出の推移
                      出所:IMF
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韓国は日本とは比べものにならないほどの速度で財政支出を増やしている。その金が国民に渡り、その資金を使って国民は経済活動を活発化させる。今後もこの傾向は続くのだから、これは勝負にならない。財政拡大なしでは日本人がどう頑張っても韓国のように経済発展をさせることはできない。これは簡単な話だ。日本も韓国のように財政を拡大すれば韓国と同じように経済成長が可能になる。しかしそれを猛烈に反対する人達によって日本の政治もマスコミも支配されている。彼らによれば、財政赤字が拡大したら、財政は破綻しハイパーインフレになり国債は暴落し円の信認は失われるという。こういった考えで緊縮財政が続けられ、結果として国民からカネを取り上げることとなり、日本は世界最低レベルの経済成長率が続いている。

韓国が快調に経済成長を続けていられるのは、財政を拡大し続けているためだ。日本は国の借金が増える事を「次世代へのツケを残す」と言ってひどく嫌がる。1999年から2019年までで国の借金がどれだけ増えたかを日本と韓国で比べてみると日本は1.94倍になったのに対し韓国は7.94倍になっている。つまり国の借金を韓国は日本の約4倍の速度で増やしている。日本の場合は国の借金と言っても自国通貨での借金なので、いつでも全額日本銀行がお金を刷って返済可能だ。韓国は外国からの借金も多くて返済に苦労している。1997年に返済不能となり韓国政府はIMFに救済を申請している。2008年にも韓国通貨危機が起きたが日本、中国、米国が通貨スワップ協定で助けた。韓国は日本に感謝するどころか「恩着せがましい」と日本を侮辱した。

カネのやりくりで苦労している韓国に比べ、日本はたっぷり外貨を貯め込んでいるので、日本のほうが韓国より金持ちと思うかもしれない。しかし韓国はカネを国民が積極的に使うから経済が発展するのだが、日本はカネが動かないから外貨も貯まるとも言えるしカネは動かなければ経済は発展しない。

やはり一人当たりのGDPで韓国に抜かれたくなかったら、韓国並みに財政赤字を拡大すべきだ。

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2020年9月 9日 (水)

アベノミクスは日本を貧しくした(No.425)

2020年9月14日に自民党総裁選が行われる。菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3者が立候補している。これは次期総理大臣を選ぶ選挙であり、米国の大統領選に対比されるべきものだろう。米国では1年以上前から候補者選びが進んでおり候補者達が様々な政治課題に関し活発に議論しそれを元に国民が大統領を選ぶ。これこそが民主主義だ。一方で今回の自民党総裁選では菅義偉が立候補する前に多くの派閥の支持を得て管氏の当選が決まったようだ。これは国民が全く関与できない世界であり、ほとんどの国会議員も知らないうちに当選者は決まってしまった。これは民主主義ではなく、どこかの独裁国家の手法である。緊急事態と言いながら国会も超長期休暇に入っていて、政府は国民の声を聞く機会を持とうとしない。自民党総裁選は数少ない国民の声を聞く機会だったはずだ。せめてこの3候補に次のような日本の課題について議論して欲しかった。
次は2007年に朝日新聞に出した意見広告である。
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当時は小泉政権で景気がよいと宣伝されていたのだが、それは違う。実は一人当たりのGDPは世界で1位から18位までに転落した。緊急に財政を拡大しGDPを伸ばせと主張した。

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書籍としても2007年に出版している。当時、日本は世界の中で急激に没落しつつあったが、アベノミクスはその没落を継続しただけだ。

安倍氏が総裁辞任を表明した今、アベノミクスを評価する人もいるし、アベノミクスの初期には筆者も支持していた。しかし2回の消費増税もあり、結局アベノミクスは金融緩和だけであり、財政拡大を行ったから日本が更に貧乏になった。次の問題は次期総裁候補の皆さんとのディスカッションで是非取り上げて頂きたい。
①本当にアベノミクスでよかったのか。 
           アベノミクス発足時          現在
実質GDP   498兆円(10~12月期) 485兆円(4~6月期)
実質賃金指数         104.5          99.9
国・地方の長期債務残高    932兆円        1182兆円
成長率に関しては日本より韓国のほうが遥かに高い。間もなく一人当たりのGDPで韓国は日本を追い越す。日本は先進国から発展途上国に格下げされたのではないか。失われた20年は続いている。日本の成長率が低いことを示す。
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つまり日本経済はアベノミクスの前から世界最低水準の経済成長率だったし、アベノミクスもそれが続いた。次期政権はどん底の経済を救って欲しい。

②コロナ対応は正しかったか。
(1)3月2日からの全国の小中学校の一斉休校は正しかったのか。受けを狙っただけでは。感染者が出た学校だけ休校にすべきだったのでは??
(2)アベノマスクは必要なかったのでは?このお金を使ったら1千万人程度のPCR検査ができたのではないか。
(3)PCR検査数は世界最低レベルでよいのか。
希望者も受けられない。受けられないまま死んだ人もいる。韓国が日本にPCRキットの無償提供を検討していたのに、日本政府は提供を受けなかった。例えば、台湾、中国、韓国、タイなどのように検査をちゃんとやっている国は経済が発展している。PCR検査数が少ない日本のGDPは年率28.1%減、と過去最大の落ち込みになった。
(4)GoToキャンペーンは感染が収まってからすべきではないか。
(5)4月7日に緊急事態宣言が出され、5月25日に解除されたが解除が早すぎたので
はないか。また感染者が増えたので再度緊急事態宣言を出すべきではないか。感染者が減ったときに徹底してPCR検査をしていたら、感染はほぼ収束できていたのではないか。
(6)緊急事態宣言の出し方に問題はないか?
  (a)業種を絞り、地域を絞った出し方のほうがよかったのでは?
  (b)5月25日に完全に解除するのでなく、クラスターを発生させやすい業種は解
除すべきではなかったのでは?
    (c)新宿に巨大クラスターが発生してたのだから、徹底して検査・隔離すべきだっ
たのでは?
  (d)休業を要請した所はしっかり補償をすべきだったのでは?

ところでこれから日本経済を復活させるには次のような方法が考えられる。
【1】全国民に一定額のお金を配り続ける
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-9b9dee.html
1年間の給付額が40万円、80万円、120万円の3つの場合を給付額0万円の場合と比べた。
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【2】消費減税を行う
消費税率を0%、5%、8%、10%の4通りで計算する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-055de9.html
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【3】公共投資を増やす

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-2ef90f.html

公共投資を増やす。増加額は年間10兆円、20兆円、30兆円とし、増やさない場合と比べた。

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これら3つの方法は財政を拡大することによって日本経済を復活させる。これらを行う事により、激しいインフレが起きるのではないか、国債が暴落するのではないかなどという疑問に対しては、NEEDS日本経済モデルのシミュレーションによって完全に否定された。

この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。

 

 

 

 

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2020年9月 1日 (火)

安倍首相辞任、気持ちはよく理解できる(No.424)

8月28日、安倍首相が辞任する意向を表明した。筆者は1か月以上前から安倍さんが突然辞任を言い出す可能性があるという話をしていた。それは第1次安倍内閣が終わる前夜に似てきたからである。安倍氏はやろうと思っていたことが、ことごとく行き詰まり、八方ふさがりで打開の方法を彼は見出せなかったのだろう。本当は打開の方法はあるし、今からでも遅くは無い。

安倍氏の最大の失敗は黒田東彦氏を日銀総裁に任命したことだ。黒田氏の考えは金融緩和をし、財政支出は削減し増税をして経済発展と財政健全化の両方が実現すると考えた事である。マクロモデルを使ってシミュレーションをすれば分かるのだが、日銀が国債を大量に買うことは重要なのだが、それと並行して財政支出拡大や減税を行わないと景気回復は無理である。「輪転機をぐるぐる回して日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう。そしてそのお金で公共投資などを行う」というのが、第2次安倍政権の前に安倍氏が主張していたことである。この考えに賛成する人を日銀総裁に任命すべきだった。黒田氏は安倍氏に対し緊縮財政と増税を強要した。その結果アベノミクスは大きな成果の無いまま終わることとなった。
            発足時            現在
実質GDP       498兆円(10~12月期) 485兆円(4~6月期)
実質賃金指数      104.5          99.9
完全失業率       4.3%           2.8%
国・地方の長期債務残高 932兆円          1182兆円
日経平均株価      1万0080円        2万2882円

状況を決定的に悪くしたのはコロナ禍だ。安倍氏は感染症に適切に対応する方法を理解していなかったし、正しい対処法をアドバイスしてくれる専門家を選ぶことも出来なかった。世界でコロナの封じ込めに最も成功しているとされている台湾では感染対策を率いる行政のトップに陳時中・衛生福利部部長が起用された。陳部長はSARSのときも防疫の最前線で指揮を執っていた。こういった専門家を育て、コロナ封じ込めの責任者にすべきだった。

4月7日に緊急事態宣言が出され、休業要請が出され、失業者が出ないよう雇用調整助成金や国民全員に現金10万円の給付など様々な対策がなされた。それが一定の効果があり、新規感染者は大幅に減り、5月25日には緊急事態宣言が解除された。しかしその後新規感染者は大幅に増え4月、5月のレベルを大きく超えた。通常なら再度休業要請でコロナを抑えようとするだろうが、安倍氏は万事休すと考えたのではないか。4月の緊急事態宣言では巨費が投じられたのに、効果は一時的だったがGDPの落ち込みは戦後最悪だった。再度やっても効果は一時的だろう。多くの国民は再度緊急事態宣言を出すことを望んでいるし、国会を開いて首相の説明を聞きたいと思っている。安倍氏は、どうすればよいか分からず、自分はもう無理だと考えていてもうすぐ首相辞任するのではないかと筆者は思っていた。

しかしこの問題は安倍氏が考えるほど解決が難しいものではない。再度緊急事態宣言を出し、特にクラスターを発生させる可能性のある所に休業要請を出し休業補償も出す。徹底してPCR検査を行い感染者を隔離すれば市中から感染者はほぼ消える。そこで巨額の財政出動をすれば、経済を立ち直させることはできたし、発展させることもできたのである。
この続きは次のサイトをご覧下さい。 
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