アベノミクスは日本を貧しくした(No.425)
2020年9月14日に自民党総裁選が行われる。菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3者が立候補している。これは次期総理大臣を選ぶ選挙であり、米国の大統領選に対比されるべきものだろう。米国では1年以上前から候補者選びが進んでおり候補者達が様々な政治課題に関し活発に議論しそれを元に国民が大統領を選ぶ。これこそが民主主義だ。一方で今回の自民党総裁選では菅義偉が立候補する前に多くの派閥の支持を得て管氏の当選が決まったようだ。これは国民が全く関与できない世界であり、ほとんどの国会議員も知らないうちに当選者は決まってしまった。これは民主主義ではなく、どこかの独裁国家の手法である。緊急事態と言いながら国会も超長期休暇に入っていて、政府は国民の声を聞く機会を持とうとしない。自民党総裁選は数少ない国民の声を聞く機会だったはずだ。せめてこの3候補に次のような日本の課題について議論して欲しかった。
次は2007年に朝日新聞に出した意見広告である。
当時は小泉政権で景気がよいと宣伝されていたのだが、それは違う。実は一人当たりのGDPは世界で1位から18位までに転落した。緊急に財政を拡大しGDPを伸ばせと主張した。
書籍としても2007年に出版している。当時、日本は世界の中で急激に没落しつつあったが、アベノミクスはその没落を継続しただけだ。
安倍氏が総裁辞任を表明した今、アベノミクスを評価する人もいるし、アベノミクスの初期には筆者も支持していた。しかし2回の消費増税もあり、結局アベノミクスは金融緩和だけであり、財政拡大を行ったから日本が更に貧乏になった。次の問題は次期総裁候補の皆さんとのディスカッションで是非取り上げて頂きたい。
①本当にアベノミクスでよかったのか。
アベノミクス発足時 現在
実質GDP 498兆円(10~12月期) 485兆円(4~6月期)
実質賃金指数 104.5 99.9
国・地方の長期債務残高 932兆円 1182兆円
成長率に関しては日本より韓国のほうが遥かに高い。間もなく一人当たりのGDPで韓国は日本を追い越す。日本は先進国から発展途上国に格下げされたのではないか。失われた20年は続いている。日本の成長率が低いことを示す。
つまり日本経済はアベノミクスの前から世界最低水準の経済成長率だったし、アベノミクスもそれが続いた。次期政権はどん底の経済を救って欲しい。
②コロナ対応は正しかったか。
(1)3月2日からの全国の小中学校の一斉休校は正しかったのか。受けを狙っただけでは。感染者が出た学校だけ休校にすべきだったのでは??
(2)アベノマスクは必要なかったのでは?このお金を使ったら1千万人程度のPCR検査ができたのではないか。
(3)PCR検査数は世界最低レベルでよいのか。
希望者も受けられない。受けられないまま死んだ人もいる。韓国が日本にPCRキットの無償提供を検討していたのに、日本政府は提供を受けなかった。例えば、台湾、中国、韓国、タイなどのように検査をちゃんとやっている国は経済が発展している。PCR検査数が少ない日本のGDPは年率28.1%減、と過去最大の落ち込みになった。
(4)GoToキャンペーンは感染が収まってからすべきではないか。
(5)4月7日に緊急事態宣言が出され、5月25日に解除されたが解除が早すぎたので
はないか。また感染者が増えたので再度緊急事態宣言を出すべきではないか。感染者が減ったときに徹底してPCR検査をしていたら、感染はほぼ収束できていたのではないか。
(6)緊急事態宣言の出し方に問題はないか?
(a)業種を絞り、地域を絞った出し方のほうがよかったのでは?
(b)5月25日に完全に解除するのでなく、クラスターを発生させやすい業種は解
除すべきではなかったのでは?
(c)新宿に巨大クラスターが発生してたのだから、徹底して検査・隔離すべきだっ
たのでは?
(d)休業を要請した所はしっかり補償をすべきだったのでは?
ところでこれから日本経済を復活させるには次のような方法が考えられる。
【1】全国民に一定額のお金を配り続ける
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-9b9dee.html
1年間の給付額が40万円、80万円、120万円の3つの場合を給付額0万円の場合と比べた。
【2】消費減税を行う
消費税率を0%、5%、8%、10%の4通りで計算する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-055de9.html
【3】公共投資を増やす
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-2ef90f.html
公共投資を増やす。増加額は年間10兆円、20兆円、30兆円とし、増やさない場合と比べた。
これら3つの方法は財政を拡大することによって日本経済を復活させる。これらを行う事により、激しいインフレが起きるのではないか、国債が暴落するのではないかなどという疑問に対しては、NEEDS日本経済モデルのシミュレーションによって完全に否定された。
この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
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