マネーの量と経済成長(No.433)
バブル崩壊の前は日本経済は成長していた。その頃はマネーの増加率は年率10%前後だった。バブル崩壊後は増加率は3%程度に落ち、経済の成長は止まった。つまり日本経済が成長するにはマネーを年率10%程度増やす必要がある。
下図はマネー(2004年3月以前はマネーサプライ、それ以降はマネーストック)の増加率を示した。
アベノミクスでもマネーは増えているが、この程度の増加では経済成長に繋がらない。2020年は大きく伸びているが、コロナ禍で自粛生活をしたため逆にマイナス成長になった。
マネーの量は国によって違う。日本人は倹約の傾向が強いから日本経済のためには諸外国より多くのマネーが必要になる。
中国は製造業を急激に伸ばして発展してきた。1995年頃は日本の製造業はGDPにおいてほとんど米国に並んで世界一であった。しかしマネーが十分供給されなかったことも原因の一つとなり、中国などにシェアを奪われてしまった。
消費に関しては中国はまだ水準は低く伸びる余地が大きい。14億人の国民が本格的に消費を始めたらGDPを大きく伸ばすに違いない。
次の図は消費減税を行った場合どの程度マネー(マネーストック)が増えるかを示している。マネーの増加は限定的だが、消費税減税により物価が下がることによりマネーの価値が上昇するから消費刺激効果はこのグラフで示すより大きい。
次の図は公共投資を行った場合のマネーの増加である。消費減税の場合より大きい。
次の図は現金給付を行った場合のマネーの増加である。直接マネーを国民に渡すのだからマネーの増加は大きくなるし大きなGDP押し上げ効果になることが理解できる。
マネーと言っても様々な種類がある。
(1)マネタリーベース:日銀券発行高と貨幣流通高と日銀当座預金の合計
日本銀行が世の中に直接的に供給するお金の合計
(2)M2:現金、要求払預金など銀行が扱うお金
(3)M3:M2にゆうちょ銀行が扱うお金なども加わった
マネーストックとは日銀、銀行、ゆうちょ銀行全体から、経済全体に供給されるお金の全体を示す。
日銀券ルール:
日銀が保有する長期国債の残高を日本銀行券(お札)の流通残高以下に収める。
2001年に設定された。日銀がお金を刷って国債を買うとハイパーインフレになると言われ、禁じ手だとされ「劇薬」だと思われていた。しかし景気低迷が続いたので、アベノミクスで方針転換され日銀による国債の大規模な買い入れが始まった。これによりすぐに景気が回復しインフレ率も上がると一部の人は信じていたようだが、全くそのようにはならなかった。上図のようにマネタリーベースが増えてもそれに並行してM2やM3が増えるわけではなかった。
日銀がお金を刷って国債を買っても、そのお金は日銀当座預金に入るだけで貸出に回らなかったからマネーストックは増えなかった。企業の将来不安が強く、投資意欲が低いので貸出が伸びないのが原因である。消費増税、歳出削減の政策が状況を悪化させた。
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