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2021年2月

2021年2月27日 (土)

為替変動が経済に与える影響(No.437)

2020Q4から対ドル円相場が10円上昇したときの影響を日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って調べた。積極財政に反対する人達は、積極財政政策なら通貨の信認が失われ、円が暴落しパーインフレになると主張する。ここでは円が下がったとき、つまり円安になったとき何が起きるかを計算で確かめる。下図に示したのは名目GDPである。明かに円安にしたほうが名目GDPは大きくなる。理論的には日銀か財務省が円を売ってドルを買った場合、対ドル円相場を10円上昇させ円安にすることは可能である。これは近隣窮乏化政策と呼ばれ、円安誘導で輸出を伸ばし、貿易相手国に失業などの負担を押しつけることによって自国の経済回復と安定を図ろうとするものであり、自国さえよければ他国の経済はどうなっても構わないという利己的な考えである。確かに政府・日銀が円売りドル買い介入をすれば諸外国から非難されるのだが、例えば現金給付、減税、公共投資などの積極財政政策を行えば内需が拡大し輸入が増え円安に向かうことはすでに示した。この場合は諸外国は日本への輸出が増えるので大歓迎で、日本も日本の貿易相手国も利益を得る。

10円だけ円安なら名目GDPは10兆円程度増加する。しかし円の価値は9.5%だけ減少しており、名目GDPは2%しか増えていない。つまり円安にするだけなら、海外から日本を見たらドルに換算したGDPは減少している。これがアベノミクスの失敗の原因であり、ドルに換算したGDPは下がって行った。増税などせず財政拡大をしていたら、円ベースのGDPもドルベースのGDPも増加していきデフレは完全に脱却できていただろう。
図1
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円安になれば、輸出産業にはメリットが大きく、利益が大きく伸びる。このグラフのように利益は約1兆円拡大している。

図2

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輸出産業の利益拡大は民間最終消費を0.6兆円程度押し上げる。
図3
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消費が伸びると物価が上がる。2年余りで0.7%ポイント押し上げる。
図4
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円安で企業の利益が拡大すれば、設備投資が増えてくる。
図5

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円安なら日本製品が安くなるのだから、沢山売れるようになる。海外から日本を見れば日本人の賃金が約10%安くなったように見える。つまり低賃金で労働者が働けば製品が安く作れ、沢山売れる。多くの製造業が賃金の安い新興国へと移動したのだが、単に円安で日本経済の復活を目指すなら日本は先進国の仲間から新興国の仲間に移ることを意味する。アベノミクスは金融政策だけで、消費増税を2回も行い、国は貧乏になった。

図6
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円安ならインバウンド需要が拡大し財貨・サービス輸入も拡大する。ただし、これはコロナ禍が収束したとしての試算だと考えられる。

図7

 

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円安になれば輸出のほうが輸入より多く拡大する。だから経常収支の黒字は拡大する。
図8

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円安で景気が良くなれば税収も僅かだが増えてくる。
図9

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景気がよくなることでマネーストックも少しだけ増加する。
図10

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家計の可処分所得(No.436)

次の3種類の経済対策を2020年のQ4(9月~12月)から実施し、その影響を計算し、その結果を比較することにする。

①現金給付:
年間80万円、つまり3か月ごとに20万円を国民全員に給付する。
②消費減税
消費税率を0%に下げる。
③公共投資
公共投資を年間20兆円だけ増額する。

 

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ここでの可処分所得は四半期ごとのものである。20万円の給付は国が約24兆円支払うこととなる。それが加わったものとなっている。

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2021年2月 8日 (月)

ワクチン接種とオリンピック開催可能性(No.435)

緊急事態宣言が出され、こんなときにオリンピックが開けるのかと危ぶむ声はある。もちろんこのままでは開けるわけがない。例えばオリンピック参加者全員がワクチン接種を受け抗体ができていたとしよう。参加者は12000人、パラリンピックは4400人であり、大会関係者は17万人、イスラエルの発表だとワクチンを接種した人の陽性率は0.01だそうだ。ということは全参加者をPCR検査しても陽性になる人は18人程度、しかもその陽性者は自覚症状がない。そうであれば陽性者でも出場を希望するだろう。この陽性者からクラスターが発生するかというと、参加者全員がワクチンを受けていれば移る可能性は少ない。そもそも7割の人が抗体をもっているなら集団免疫ができるのだから、ここでは10割の人が抗体を持っているから完璧な集団免疫ができている。参加者の中で感染して重症化する人はほぼゼロだろう。そうであれば、コロナは風邪みたいなものになるから対応が簡単になり医療従事者の負担は軽減される。

 現在までで全世界ではすでに1億回近いワクチン接種が行われており、オリンピックが開催される7月までには数億回の接種が行われるのではないか。オリンピック関係者が割り込みで接種を受けることが許されるだろうか。一方でコロナワクチンに関しては懐疑論がある。英調査会社イプソス・モリが主要15カ国で16~74歳の約1万3000人を対象に、1月14~17日に実施。「もしワクチンを接種できるなら、接種しますか」と質問した。「ぜひしたい」と答えた人は米国は42%、日本は17%だった。つまり人はまだまだワクチンに関し懐疑的だ。だからオリンピック関係者に優先接種しても反対意見はそれほど強く出ないだろう。それよりオリンピックに出場する有名選手がワクチン接種を受けるのを見て、自分も受けようと若者が言い出すだろうからワクチンのPRができる。

 国内の選手全員にワクチン接種を優先的に行うのは難しくないのではないか。海外の選手だが、COVAXファシリティというのがあり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを、複数国で共同購入し、公平に分配するための国際的な枠組みである。2021年末までに20億回分のワクチンを、「COVAXファシリティ」に参加するすべての国(現在190カ国)の人々に公平に届ける。世界各国に選手の優先接種をさせるよう呼びかけるのはどうだろう。1月22日、国際オリンピック委員会(IOC)が開催実現に向けて、出場全選手のワクチン接種を検討しているとの報道があった。

 コロナ変異株が入ってきて感染が広がり始めたらどうするか。変異株に対しても現在のワクチンはある程度有効だが、例えば南アフリカの変異株などには有効性は落ちるとのこと。6週間あればそれに対応したワクチンができるそうで、すでに開発が始まっているのではないか。そうであってもあらゆる手段を使って変異株が日本に入ってこないようにすべきだろう。観客を入れることにした場合、780万人の人が外国から訪れる。その全員にワクチン接種を義務づけるのは難しいのではないか。そうであれば、それだけの大量の訪日客が入って来ればどうしても世界各地の変異株が入って来る。せっかく緊急事態宣言で収束しかけたコロナだが、ワクチンの効かないコロナ株が一気に広がれば、また初めからやり直しになる。それを防ぐには観客は入れないこととし、選手は全員ワクチン接種を終えてから入国することにするしかないのではないだろうか。3月25日には聖火リレーがスタートする。それまでにしっかり議論をし、開催の是非、観客を入れるか入れないか、ワクチン接種の義務化をするかどうかをしっかり議論をして決定して頂きたい。

 

 

 

 

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