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2021年7月

2021年7月 5日 (月)

通貨発行が日本を救う(No.443)

コロナ禍で苦しんでいる日本人が多くいる。飲食店関連で特に多い。アパレル関連でも売上げが減少し、多くのバイトは解雇された。コロナの蔓延を防止するため制限を掛け、政府がステイホームと呼びかけるから客さんが来なくなった。政府の呼びかけは蔓延防止のため仕方がないのだが、それによってダメージを受けた人達に十分な補償を政府は出そうとしない。それは政府が財政赤字を嫌い緊縮財政を続けているからである。しかし政府は通貨をいくらでも発行できる権利を持っている。しかし政府は通貨発行を国の借金と捉え将来返さなければならないと考えている。しかしそれは違う。今やるべきは、全国民に毎月10万円を給付することである。参考:井上・小野著『毎年120万円を配れば日本が幸せになる。』扶桑社。

貨幣が使われるようになる前は物々交換をやっていたが、それは不便だということで中国では紀元前8世紀頃農具をかたどった布弊、刀弊という貨幣が登場した。ギリシャでは紀元前510年にテトラドラクマという銀貨が登場した。日本最古の貨幣と言われるのは7世紀後半につくられた富本銭といわれる貨幣である。その後250年間で12種類の皇朝十二銭と言われる銅銭がつくられた。しかしこれらは貨幣の役割を果たすには質・量とも不十分であった。本格的な貨幣が登場するまでは、中国から輸入した宋銭を使っていた。

我が国での本格的な貨幣は1601年徳川家康により慶長金銀貨が発行されたのが最初である。最初は金銀を主に使っていたが、経済が拡大するのに金銀の採掘量が限界に達した。そこで金銀以外の金属を混ぜて(改鋳)お金の量を更に増やしていった。当たり前の事だが、お金の量は経済発展に合わせて少しずつ増やして行くものである。当時は改鋳によりお金を増やすとそれを歳入として計上している。

明治時代には政府は紙幣を印刷するようになった。当時の財政収支の一覧表を見ると、「紙幣発行」が歳入の欄に入っている。例えば
三和良一『概説日本経済史 近現代〔第3版〕』東大出版会
のP35を参照して頂きたい。

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これは非常に重要な点である。これが認められるなら通貨の量を自由に制御できる。奇妙なことに、現代でも通貨発行権を持っているのに、通貨発行益を歳入に組み入れることを絶対にしない。だからこそ不況が30年近くも続いているのに誰も通貨発行で経済を建て直そうとしない。そして経済成長率は世界最低レベルと続けている。日銀が設立されて以来、通貨を発行するにはまず政府が国債を発行し金融機関等に買って貰い、その後日銀が発行された通貨で買い取るという分かりにくい手続きが必要となった。そして国債は国の借金だから将来世代が返済しなければならない。将来世代に迷惑を掛けるくらいなら、今我慢して節約した方が良いという考えが広がった。だからデフレ脱却もできないのに、緊縮財政が続いている。これは栄養失調でフラフラしている子どもに、厳しいダイエットを強いるようなもの。今こそ国民も政府も理解すべきだ。大規模に国債を発行して国民のために使うことは、日本経済をデフレ不況から救い、国内産業を発展させ国民を豊かにする。これは国の借金を増やすのではなく、通貨発行であり、将来世代も何度でも同様に発行できるのだ。通貨発行益が発生したらそれを財政収支に歳入として組み入れるべきであり、そうすれば基礎的財政収支の黒字化は容易に達成できる。

 

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2回の接種のうち1回はアストラゼネカ製ワクチンを使う案(No.442)

日本のワクチンの承認が遅れたため、ワクチン接種が遅れ、日本は苦しんでいる。度重なる緊急事態宣言などで多くの飲食店は潰れ、旅行業者なども大きなダメージを受けた。今、政府は大急ぎでワクチン接種をしようとしている。7月末までに65歳以上の人の接種は終わらせ、1日の接種回数を100万回にするという菅総理の目標は実現したようだ。

6月25日の河野担当相の会見では、大学拠点接種と職域接種を合わせた合計の接種回数は3,300万回だそうである。しかしこれを超える申請が来ているそうで、供給が間にあわず、折角会場や打ち手の準備ができているのに、ワクチンの不足が接種にブレーキを掛けている。また都道府県及び自治体から追加で申請されているが保留になっている分も1,200万回分ある。つまりワクチン不足が接種の進行にブレーキをかけ始めた。

9月末までには、日本人全員に2回接種できるほどのワクチンが確保できると河野大臣は言っていた。しかしそれ以前にワクチンが足りなくて接種にブレーキが掛かるのであれば、問題である。インド由来のデルタ株は従来のものの約2倍の感染力があるとのことだし、東京に限ってもすでに勢いよく新規感染者は増加を始めている。このままだと7月中には新規感染者が1日に1000人を超えるようになり、緊急事態宣言を再び出さざるを得なくなれば、オリンピック開催中に、世界に向けて醜態を晒すことになる。飲食店など、すでに大きなダメージを受けている所は廃業をせざるを得なくなる所もあるだろう。医療現場も大変なことになるし、国民はどうせ緊急事態宣言でも押さえられないと、絶望のどん底に落とされる。それを避けるには、ワクチン接種を更に加速しかない。

今国内で接種されているのは、ファイザー社製ワクチンとモデルナ社製のワクチンだけであるが、それでも足りなくなったらアストラゼネカ社製ワクチンも接種に使うべきだ。アストラゼネカ製ワクチンは台湾など海外に提供しているのだが、国内でも承認を受けているのだから積極的に使うべきだ。そうしないと良いワクチン(ファイザーとモデルナ)は自国で使って悪いワクチン(アストラゼネカ)は外国に提供しているのではないかと疑われてしまう。政府はアストラゼネカ製ワクチンも使うといは言っているが、どのように使うのかが明かで無い。カナダでは2回目の接種は1回目とは異なる種類のワクチンを接種するよう強く推奨している。カナダ政府はドイツの研究結果を紹介し、アストラゼネカ製ワクチンの後でファイザーかモルデナのワクチンを接種するよう強く推奨している。韓国も同様に異なるワクチン接種に踏み切っている。

アストラゼネカ製ワクチンの有効性は76%だが、感染しても重症化、入院・集中治療、死亡というリスクは100%予防すると示されている。欧州でも1回目と2回目で異なるワクチンを接種することが検討されている。スペインの研究では、600人治験ボランティアを対象としてワクチンミックス(初回投与のアストラゼネカ、2回目のファイザー)は非常に効果的であり、問題はないと結論付けている。特に、2回目の投与で中和抗体の存在が7倍に増加したという。ドイツのメルケル首相もイタリアのドラギ首相も1回目はアストラゼネカ、2回目はファイザーのワクチンの接種を受けている。

アストラゼネカ製ワクチンは国内で製造されるので供給が安定していて年内に1億2000万回分が国内供給される。2回のうち1回でもアストラゼネカ製ワクチンを使えば、供給が安定し、接種が加速するのではないか。

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