通貨発行が日本を救う(No.443)
コロナ禍で苦しんでいる日本人が多くいる。飲食店関連で特に多い。アパレル関連でも売上げが減少し、多くのバイトは解雇された。コロナの蔓延を防止するため制限を掛け、政府がステイホームと呼びかけるから客さんが来なくなった。政府の呼びかけは蔓延防止のため仕方がないのだが、それによってダメージを受けた人達に十分な補償を政府は出そうとしない。それは政府が財政赤字を嫌い緊縮財政を続けているからである。しかし政府は通貨をいくらでも発行できる権利を持っている。しかし政府は通貨発行を国の借金と捉え将来返さなければならないと考えている。しかしそれは違う。今やるべきは、全国民に毎月10万円を給付することである。参考:井上・小野著『毎年120万円を配れば日本が幸せになる。』扶桑社。
貨幣が使われるようになる前は物々交換をやっていたが、それは不便だということで中国では紀元前8世紀頃農具をかたどった布弊、刀弊という貨幣が登場した。ギリシャでは紀元前510年にテトラドラクマという銀貨が登場した。日本最古の貨幣と言われるのは7世紀後半につくられた富本銭といわれる貨幣である。その後250年間で12種類の皇朝十二銭と言われる銅銭がつくられた。しかしこれらは貨幣の役割を果たすには質・量とも不十分であった。本格的な貨幣が登場するまでは、中国から輸入した宋銭を使っていた。
我が国での本格的な貨幣は1601年徳川家康により慶長金銀貨が発行されたのが最初である。最初は金銀を主に使っていたが、経済が拡大するのに金銀の採掘量が限界に達した。そこで金銀以外の金属を混ぜて(改鋳)お金の量を更に増やしていった。当たり前の事だが、お金の量は経済発展に合わせて少しずつ増やして行くものである。当時は改鋳によりお金を増やすとそれを歳入として計上している。
明治時代には政府は紙幣を印刷するようになった。当時の財政収支の一覧表を見ると、「紙幣発行」が歳入の欄に入っている。例えば
三和良一『概説日本経済史 近現代〔第3版〕』東大出版会
のP35を参照して頂きたい。
これは非常に重要な点である。これが認められるなら通貨の量を自由に制御できる。奇妙なことに、現代でも通貨発行権を持っているのに、通貨発行益を歳入に組み入れることを絶対にしない。だからこそ不況が30年近くも続いているのに誰も通貨発行で経済を建て直そうとしない。そして経済成長率は世界最低レベルと続けている。日銀が設立されて以来、通貨を発行するにはまず政府が国債を発行し金融機関等に買って貰い、その後日銀が発行された通貨で買い取るという分かりにくい手続きが必要となった。そして国債は国の借金だから将来世代が返済しなければならない。将来世代に迷惑を掛けるくらいなら、今我慢して節約した方が良いという考えが広がった。だからデフレ脱却もできないのに、緊縮財政が続いている。これは栄養失調でフラフラしている子どもに、厳しいダイエットを強いるようなもの。今こそ国民も政府も理解すべきだ。大規模に国債を発行して国民のために使うことは、日本経済をデフレ不況から救い、国内産業を発展させ国民を豊かにする。これは国の借金を増やすのではなく、通貨発行であり、将来世代も何度でも同様に発行できるのだ。通貨発行益が発生したらそれを財政収支に歳入として組み入れるべきであり、そうすれば基礎的財政収支の黒字化は容易に達成できる。