財政が破綻しても通貨の信認が失われても経済は発展する(No.451)
10月31日の衆議院議員選挙を控え論戦が繰り広げられている。当然のことながら、各党、コロナ禍で傷ついた経済を救うための財政支出をアピールしている。これに対し矢野康治財務事務次官は「このままでは国家財政は破綻する」などと文藝春秋に記事を載せて反旗を翻した。公共の電波を使いそれに同調する反政府的なマスコミもある。国の借金のGDP比が終戦直後以上のレベルに達しているので財政が破綻する、通貨が暴落するなどと言う。テレビ朝日などは預金封鎖があるなどと言っていた。しかし終戦直後、国土は焼け野原で生産設備が失われ極度の物不足だったし、現代は逆に約30年間デフレから脱却できなくなっていて、需要不足で物余りなのである。25年間実質賃金も下がり続け、経済は発展していない。終戦直後には国債の日銀引受という形で通貨が大量に発行され賃金は急上昇し、生活は大きく改善された。物価上昇率よりも賃金上昇率のほうがはるかに高かった。今、預金封鎖などを行って国民がお金を使えないようにすれば、日本経済は壊滅し財政も破綻する。そんなことも理解できないような解説者は、テレビに出演する資格はない。
我々は日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。例えば毎月10万円を全国民に給付した場合、1年後GDPは約60兆円増加する。しかし物価は0.2%(PT)程度押し上げられるにすぎない。我々の財布の中に入っているお金はすべて政府・日銀がつくったものだ。増税・歳出削減をしていけば、お金は国に吸い上げられ国民は貧乏になるが、減税・歳出拡大をしていけば国民は豊かになり財布の中のお金も増える。政府・日銀が発行できるお金に限度があるだろうか。そんな国際条約などない。だったら必要なだけ国が通貨発行をして必要なだけ国民に配ればよいではないかと考えるのは当然だ。それに対して、財政が破綻するとか、預金封鎖が必要になるとかという支離滅裂なことを言う人達がいる。これらはNEEDS日本経済モデルを使って調べれば嘘だと分かる。
最近30年間日本経済はほとんど発展していない。こんな国は先進国の中ではどこもない。
例えば最近20年間では韓国のGDPは約3倍になったのに日本のGDPは変わっていない。韓国は最近25年間で歳出を7倍以上に拡大しているのに、日本はほとんど変わっていない。つまり韓国はどんどん通貨を発行して国民に渡しているのに、日本はそれを行っていない。このため韓国経済は急激に拡大し、間もなく一人当たりのGDPで日本を追い越す。
韓国がそんなに通貨を発行すると財政が破綻するとか通貨の信認が失われるのではないかと思うかもしれない。実際韓国は通貨危機を経験している。1997年、国家信用格付けが下方修正され、大企業が次々倒産し、株価が大暴落し、IMFの救済が入った。2008年、再び通貨が暴落、日本も韓国の救済に入った。それなのに日本の「出し惜しみ」を韓国が非難した。このふてぶてしさが経済の発展には必要なようだ。結果として自国民を豊かにすることができた。
対照的に日本は財政破綻を恐れ、韓国のように通貨発行を行わなかったために、通貨危機には陥らなかったが、逆に経済は発展せず、国民は貧しくなった。今こそ日本は韓国を見倣って、通貨危機や財政破綻などを恐れず勇敢に大規模財政出動にチャレンジすべきだ。韓国が急速に経済発展を成し遂げているのに対して、日本が全く経済発展をしないのは、韓国が歳出を急速に拡大しているのに対し、日本は歳出拡大をほとんどしないからだ。NEEDS日本経済モデルでも大規模財政拡大は成功し、経済が大発展し、国民が豊かになることが示されている。今が決断の時だ。
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