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2021年11月 8日 (月)

小規模の現金給付だけでは、日本経済の復活はできない(No.454)

岸田内閣で現金給付の可能性が議論されている。現金給付のあり方についてJNN世論調査では
全国一律        28%
18歳以下        9%
生活困窮者       42%
現金給付すべきでない  18%
という結果が出た。日本には現状に満足する人が多いようだ。分配を重視する考えも多い。金持ちからお金を取って貧乏人に配るというアイディア。一方で世界の中で見れば日本の金持ちの没落が激しい。1989年には時価総額ランキングの20位以内に日本企業は14社もいたが、今はゼロ。最高のトヨタですら、世界で41位で台湾や韓国の企業などより遥かに劣る。また世界の長者番付で1989年、日本人は10位以内に6名いたのだが、2021年現在日本のトップは孫正義の29位だ。孫正義は日本で稼いだわけではない。こんな貧乏な日本の大企業やお金持ちからお金を取り上げたら日本は壊滅だ。なぜ日本が一気にこんな貧乏な国になったかと言えば、政府が通貨を発行して国民にお金を渡さなかったからだ。政府は通貨発行権を持つのだから徐々にお金を発行し渡していけば国も国民も豊かになっていくし企業の国際競争力は増す。

なぜ政府は通貨発行を拒否し続けるかといえば、通貨発行のプロセスが借金増大と錯覚を起こすようにできているからだ。国債を発行し、市中消化をし、その後日銀が買い取る。これは通貨発行のプロセスに過ぎないが、これは将来世代へのツケを残すという集団催眠に陥り、通貨発行が社会として受け入れられないこととなった。日本以外の国が通貨発行で力強く発展している中で、日本だけが通貨発行を拒否すれば、世界の中で日本だけが貧乏になり、「カネ」を持たない国、日本から国土・企業・人材などが次々買い取られ、企業が海外に逃げていき、貧困化が急速に進む。残念ながら、この最悪の政策を岸田内閣も続けるようだ。

昨年は特別給付金の10万円が全国民に配られた。コロナ禍という状況で緊急に取られた措置だったが、その程度ではとても足りない。我々は日経のNEEDS日本経済モデルを使い毎月10万円を全国民に給付すれば、経済を成長軌道に乗せることができることを示した。現在出されている公明党案では18歳以下に10万円の給付ということで全員給付に比べ6分の1の規模だし、1回限りということになれば我々の提案する12回給付に比べれば実に72分の1でしかない。GDP押し上げ効果をグラフ化したら、虫眼鏡で拡大しても見分けがつかないくらいの微細な効果しかないだろう。自民党案でも収入制限をつけて1回限りということで、公明案と50歩100歩だ。いずれにせよ、もらえなかった人から苦情が続出するだろう。

かつては追いつき追い越せと先人達が頑張ったお陰で日本は世界で最も裕福な国の一つになり奇跡の経済復興と呼ばれ世界が注目した。その後の落ちぶれ方も世界に他に類を見ないほどだ。どうやれば再びリッチな国になれるのか、是非一度我々の本を読んで頂きたい。
井上智洋・小野盛司『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』扶桑社、(2021)
小野盛司・荒井潤・増山麗奈・山下元『ベーシックインカムで日本経済が蘇る -シミュレーションで明かになった驚愕の事実-』宮帯出版、(2021年内に発売予定)

現金給付を受け取らず、日本を貧乏にしたいと考える冷血な人は反対すればよい。不満は残っても、日本経済を復活させたいという崇高な志を持つ人は、現金給付を受け取って欲しい。直ぐに使うか貯金するかは個人の自由だ。

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