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2021年12月13日 (月)

2050年カーボンニュートラルを実現するには(No.456)

筆者は2002年日本経済復活の会を立ち上げた。日経新聞と契約し、NEEDS日本経済モデルを使って日本経済のシミュレーションをして、財政を拡大すればデフレ脱却も経済成長も可能だと確信した。その方法は減税か財政拡大かであった。その中でも再生可能エネルギーの活用は最重要課題の一つだと認識していた。最も有望と思えたのが、風力発電であり、当時九州大学名誉教授の太田俊明氏の話に注目した。彼を日本経済復活の会の定例会に招き、講演をして頂いた。太田氏によると洋上風力発電で日本の全電力をカバーすることが可能であり、発電コストは原発の2分の1ということだった。新素材を使った浮体に風車や太陽光パネルを載せることで巨大な海上風力発電所を可能にする技術を確立した、と発表した。新素材を用いることで従来より低コスト化が図れるという。資金面でめどがつけば、10年程度で原発1基分に相当する100万キロワットの発電も可能になるという。

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しかし話はそう簡単ではなく、日本は再生可能エネルギーに関して苦戦している。しかし状況はそれ程単純ではなかった。日本には遠浅の海は少なく、洋上風力発電に向く所は少なかった。平地が狭い事もあって、太陽光発電と風力で死にものぐるいで増やしても、全電力に対する割合は
太陽光  25%
風力   20%
水力   10%
程度にしかならない。しかも日本での発電は大変割高である。高い電力はあらゆる分野で国際競争に不利になる。


下の表は日本の再生可能エネルギーのコストで、低減はするが外国に比べ2~3倍のコストになり、将来的に差はもっと大きくなる。
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太陽光では中国、インド、豪州の太陽光発電コストはメガワット時あたり40ドルを切る一方、日本と韓国ではメガワット時あたり100ドルを超える。
次のグラフは太陽光発電のコストの比較である。出所:BloombergNE.Note
           
   2020年、太陽光発電のコスト
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このコストの差異に影響を与えているのはプロジェクトの規模である。大規模太陽光発電プロジェクトの平均規模はインドと豪州ではそれぞれ48メガワット、60メガワットであるのに対し、日本と韓国では8メガワット、4メガワットである。特に日本と韓国では平地が不足していることや所有者不明の土地が多く顕在しているといった地理的制約により、規模の経済が働きにくく、他国と比べ初期投資費用が高止まりしている。

東北大学の小濱泰昭教授はマグネシウムを利用した太陽光発電を提案した。臨海砂漠地帯でマグネシウム(Mg)を精錬して太陽エネルギーを封じ込め,国内に運搬してMg燃料発電(MgFC)で電気エネルギーや熱エネルギー, そして構造材料として使用する社会を構築するという提案である。

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まず砂漠で太陽熱を使ってマグネシウムを精錬する。マグネシウムは海水に大量に含まれていてほぼ無尽蔵に確保できる。最大の難関は太陽熱でマグネシウムを精錬することだ。実験室レベルでは成功しているが、採算に合うほどの効率性で精錬が可能なのかが、この構想の成否を決めるポイントとなる。精錬されたマグネシウムはタンカーで日本に運ばれ、酸素と化合させて電力を発生させるか、水と反応させ水素を発生させたりする。

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筆者はソフトバンクの孫社長に手紙を書き、このアイディアを実現してもらえないかとお願いしたら、会社に来て詳細を説明して欲しいとの返事だった。そこで小濱氏と私の二人でソフトバンクに行って説明した。ソフトバンクは、このプロジェクトの採算性をきっちり計算して欲しいと言われた。

いずれにせよ、日本では再生可能エネルギーに関して明るい話題はない。外国では、はるかに安く大容量な再生可能エネルギーが可能という話が伝わってくる。例えば中国は「2030年までに、風力発電と太陽光発電の総設備容量を12億kW以上とする」と宣言した。これは原発1200基に相当し、日本全体の発電応力の4倍以上である。内モンゴルや青海(セイカイ)では発電コストは3.2~4.8円/kWhだそうだから日本よりはるかに安い。筆者が20年前から考えていることは、電力を海底ケーブルを使って輸入できないものかということだ。海底ケーブルを使い直流送電で行えばよい。ヨーロッパでは盛んに行われている。1000kmで3%の電力ロスしかない。

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上図で実線は既設プロジェクトでその他は進行中のプロジェクトである。北欧の安い電気が輸出されている。またフランスの原発は夜間も発電を続けるので、ドイツを経由してスイスやオーストリアに送られている。イギリスは電力取引のハブになっているオランダから大量の電力を輸入しているし、北欧の安価な水力・風力の電力を輸入する計画が進んでいる。

下図で分かるように送電距離が50km以上になると、直流送電のほうが交流送電よりコストが低くなる。

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ヨーロッパにはDesertec計画というものがあった。

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サハラ砂漠に当たるすべての日射量がエネルギーにそのまま使われるとしたら、ヨーロッパで消費される電気の7,000倍ものエネルギーを生み出すとされている。これを直流送電でヨーロッパに送ろうという計画であった。しかしアフリカは政情不安なので、設備が爆破されれば大変なことになるという理由で計画は進んでいない。

東日本大震災の際には東北の多くの発電所がストップし、電力を他の地域から送電する必要があったのだが、送電網が貧弱で上手くいかなかった。特に東日本と西日本で周波数が異なるために、西日本から東日本への大規模な送電はできなかった。九州では風力と太陽光の発電量(VRE:Variable Renewable Energy)の出力抑制が行われている。VREを限られた地区内で使おうとすると気象条件により出力が大きくなりすぎるので、出力抑制をしなければならなくなっている。また北海道は風が強く風力発電に向いているが、送電網が整っていないので風力発電ができないでいる。そこで登場するのがジャパン・スーパーグリッド構想である。

 

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投資額は僅か2兆円規模であり、これがあれば電気を日本中で融通できる。

筆者が様々な場所での講演で提言していたことは、電力を海底ケーブルを使って輸入することだ。交流で遠距離送電をするとロスが大きい。しかし50km以上だと直流送電の方が安くなり、1,000kmの送電でロスは僅か3%程度だ。ジャパンスーパーグリッド構想では北海道から九州まで直流海底ケーブルで結ぶ。総距離は2,000kmで投資額は僅か2兆円だ。東日本大震災の際には電気を融通しあう必要がでてきたが、東日本と西日本とで周波数が違うので電気の融通は小規模に終わった。また九州では再生可能エネルギーでの発電ができても送電能力が貧弱なために、発電を制限しなくてはならなくなっている。僅か2兆円で強力な送電網ができるのであれば国が全額出資して整備すべきだろう。

ソフトバンクの孫社長はアジアスーパーグリッド構想を打ち出していた。これは
東京、ソウル、ウラジオストック、ゴビ砂漠、北京、上海、台北、マニラ、香港、成都、ブータン、ダッカ、バンコク、デリー、ムンバイ、クアラルンプール、シンガポールなどをケーブルで結ぶというもの。総距離は36,000kmで総工費は僅か10~20兆円程度ではないか。これを関係国で負担し合えば、どの国にとっても大変大きなメリットになる。Desertec構想と違い、アジアにはテロリストは少なく、爆破される危険は少ない。電気の輸出入が政治的に利用される恐れはあるが、日本経済は輸出入に大きく依存しなければ成り立たないのであり、政治に利用されたとしても、いずれにせよ輸出入なしではやっていけないのだから、この案は最重要課題として扱うべきだ。

「東アジアスーパーグリッド構想」は、日本創成会議(座長:東京大学大学院客員教授・元総務相 増田寛也氏)が提唱しているもので、孤立している日本の電力網(グリッド)を外国と相互接続し、国境を越えて電力を融通しあう仕組みである。手始めに、韓国との間で双方のグリッドをつなぐ海底ケーブルを敷設する計画を提案している。

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ソフトバンクグループ創業者で自然エネルギー財団設立者の孫正義氏と環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は、日本国内の「スーパーグリッド構想」と、将来的には日本を含めアジア各国を大容量の高圧送電線で連結し、互いに電力を融通する「アジアスーパーグリッド構想」を提唱した。これが実現すれば自然エネルギーの弱点と言われる「コストが高い」「大量に電力を供給できない」「不安定である」という問題は、すべて解決する。たとえばモンゴルのゴビ砂漠では一年を通して素晴らしい風が吹き、太陽が照っている。この風力と太陽光を使った電力の潜在量は2テラワットにのぼり、今日の世界的な電力需要の3分の2に匹敵する量である。モンゴルと日本をスーパーグリッドでつなげば、日本の電力問題はいっきに解決する。ブータンでは1キロワット時あたり2セントで、これは日本の電気料金のわずか1割に過ぎず、これは日本の電気料金の10分の1、しかもブータンでは電力が余っている。

 

 

脱炭素では、車を電気自動車(EV)に替える必要がある。EVは軽量化して走行距離を伸ばす必要があるので車体をアルミニウムで軽量化しなければならない。アルミは生産過程で大量の電力を消費するが、現状では石炭火力に頼っているからCO2の排出量は増えてしまう。

太陽光発電や風力発電は砂漠で行うと極めて低価格で行える。
ゴビ砂漠   1,295,000k㎡
ゴビ砂漠全体に太陽光パネルを設置すると、地球に暮らす全人類が使用するエネルギーをまかなえる。
サハラ砂漠  9,200,000k㎡
サハラ砂漠でソーラー発電を行った場合、約1.2%の面積を使うことで世界の電気をまかなうことができる。
ファティ・ビロルIEA事務局長:2026年までに、中国の風力と太陽光設備の容量が1200GWに到達する。つまり原発1200基に相当する容量だ。

① ソーラーパネルを設置する方法

 


これはサハラ砂漠での太陽光発電である。

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日本にはこのような大規模な設置場所は無い。
「ほうとくエネルギー」のソーラーパネル

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小規模だし、山を切り開くために費用が掛かるし、災害を引き起こすこともある。更に送電設備も必要なので、費用が掛かるのは当然である。

② 太陽熱発電 トラフ型
溶融塩などの熱媒体を用いた蓄熱によって、昼間だけでなく、陽のささない夜間にも発電できる。ソーラーパネルを設置するより効率よく発電できる。

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このように雨どいのような集光ミラーで光を集め溶融塩の入った管を熱する。約400℃に熱せられた溶融塩で蒸気タービンを回して発電する。余った溶融塩をタンクに貯めておけば夜でも発電を続けることができる。

③ タワー型太陽熱発電システム
溶解塩などの熱媒体を用いた蓄熱によって、昼間だけでなく、陽のささない夜間にも発電できる。太陽光を集め、溶融塩に熱を吸収し、蒸気タービンを回し電気に代える。効率は太陽光発電の2倍である。高温に熱することができ最も効率よく発電できるが設備に費用がかかる。

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米国の南西部の「モハーベ(Mojave)砂漠」の中のイバンパ太陽発電所 原発約4基分の発電量。

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新疆ウイグル自治区にあるタワー式溶融塩太陽熱発電所

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アジアスーパーグリッド構想(ASG構想)
2011年3月11日の東北大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故後、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏が提唱したアジアスーパーグリッド(ASG)構想。日本・モンゴル・中国・韓国・ロシアなど各国を送電網(グリッド)で結び、ゴビ砂漠の豊かな自然エネルギー資源を共有するというアイディア。
クリーン・エナジー・アジア社(ソフトバンクグループのSBエナジーとモンゴルのNewcomグループの合弁会社)が、2017年10月にゴビ砂漠でツィツィー・ウインド・ファーム(50MW)を運営開始。ソフトバンクは再エネ開発のため、ゴビ地域において3,670平方キロメートルの土地の使用権を獲得している。東京都の約1.6倍にあたるこの土地には、15GWを超える風力・太陽光発電のポテンシャルがあるとのこと。

モンゴル政府は官民一体でプロジェクトを全面サポートする姿勢を示している。さらに中国、ロシア、韓国も政府レベルもしくは国営の電力会社がASG構想に賛同している。2018年7月に政府が発表した最新版のエネルギー基本計画で、エネルギー相互接続の有効性について初めて言及があったが2021年のエネルギーの基本計画にはそのような言及は無かった。

 

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