« 2022年1月 | トップページ | 2022年3月 »

2022年2月

2022年2月24日 (木)

もう一度、内閣府計量分析室に電話して聞いてみた(No.461)

A 計量分析室です。

Q 中長期試算ですが2021年度の歳出が142.6兆円、2022年度が107.6兆円と大幅に下がっています。ところが実質成長率は2.6%から3.2%に、名目は1.7%から3.6%と大幅に上がっています。

A はい。

Q マクロモデルで計算をするとそういうことはあり得ないと思います。

A こちらについては政府経済見通しの中で推計された数字を採用している。2022年度の国の一般会計については予算そのものを使っている。GDP成長率は政府経済見通しでそういう高い数字になっているということです。

Q 政府経済見通しは1月17日に発表されていて、実質成長率は2.6%から3.2%に、名目は1.7%から3.6%と大幅に上がっているのは、計量分析室の試算と同じです。

A はい。

Q ところが政府支出は2021年度の歳出が147.9兆円、2022年度が148.6兆円となっていて、分析室の試算とは全然違います。

A 政府経済見通しの政府支出は国民経済計算という統計の基に計算されていて、内閣府試算の107.6兆円という数字は予算書からつくっている国の会計ベースの数字になります。会計ベースと国民経済計算でどこが違うかというと、計上する時点が異なっている。会計ベースだとお金を払ったタイミングで計上されるが、国民経済計算では発生主義という方法をとっていて実際に支出されて効力が発生した段階で記録される。2021年度に予算を計算したものが、お金を払われたとしても2022年度に効果が発現するということなので、会計ベースで見たときに2021年度の140兆円の効果が2022年度に発現するということになり政府経済見通しで2022年に発現するということになります。

Q マクロモデルで計算すれば、歳出が減ればGDPも減ると思います。政府経済見通しで書いてある数字だとそうかもしれないが、試算のほうではあり得ないでしょう。GDP成長率で政府経済見通しのものを丸写しするのなら政府支出も丸写しすべきではなかったのか。

A 政府最終支出も整合的になっていて、107兆円というのはあくまで予算・決算の数字、会計ベースでのもので、国民経済計算では発生主義という考えで、会計ベースよりも遅く発現する。予算で実際令和3年度で計上されたとしても、地方とかで実際執行するタイミングがずれる。そういうことが考慮された場合令和3年度に積んだものが令和4年度に政府支出が上がるということになります。今回私たちの出した国の一般会計歳出というのは予算の数字なので実際令和4年度に支出されるという数字になっているのですが、国民経済計算のベース上は令和3年度の予算が令和4年度にのってくる。それが国民経済計算の数字になるので整合的になっています。

Q 予算ベースだと令和3年度も歳出は107兆円前後だったと思うのですが。

A 補正予算がなかったらということですね。令和3年度の補正予算は今回12月に成立した。12月に成立した場合かなり遅くなるので、令和4年度に歳出されることもあります。

そうなった場合会計に記録されるのは分析室の試算で計上されるのは令和3年度だけですが、国民経済計算では令和4年度に載ってくる。このように計上するタイミングが変わって来る。

Q 政府経済見通しからGDPや成長率を丸写しするのなら、政府支出も丸写ししなければまずいのではないですか。

A 国の一般会計歳出というのは会計上の歳出であって、我々のPBを計算する上で、成長率を計算する上でSNA上に概念を変換して行っているので政府経済見通しと一緒ですし令和4年度以降も同じ事をやっているということですね。

Q 会計上も140兆円にしなければいけないのではないか。

A 予算の数字は会計ベースでその年内に計上されている数字なので107兆円という数字を載せている。

Q 歳出が22年度で107兆円でそれ以降はずっと100兆円台ですよね。歳出が激減してもGDPが伸び続けているというのがモデルとして理解できない。

A 147兆円が107兆円に下がった動きがGDPに影響しないのはおかしいということですか。

Q はい、歳出が35兆円下がり、その後も下がったままです。それならGDPも下がったままになるはずなのに、試算では上がりっぱなしなのはおかしいということです。

A 会計上の支出と国民経済計算上の政府支出は別物と考えて頂いて、実際に147兆円から107兆円になるような崖の動きは国民経済計算上の成長率の計算であれば令和4年から令和5年にかけての動きに現れていると言ってもいい。中長期試算の実質成長率の数字をご覧頂くと22年度は3.6%ですが、23年度は2.1%に下がっているところがある。これはつまり22年度に政府支出が積まれていた分が剥落してこういった動きになる。会計上の財政の崖と国民経済計算上の財政の崖がずれていることがここで確認できるかなと思います。

Q 政府経済見通しからGDPや成長率を丸写しするのはまずいのではないですか。考え方が全然違うのだから。

A でも変動率の計算は統計の考え方で行うのでそれは整合的だと思います。

Q だったら政府支出も丸写ししたほうがよかったのではないか。

A 計数表がちょっと分かりにくくなった。ここでは会計上の数字を載せているので、会計上の数字とGDP計算上の数字が違うということをご理解頂ければと思います。

Q これはモデルにそっていないなと思います。

A モデル上も一般会計上の数字を国民経済計算の数字に変換した上で成長率をつくっているのでここでモデルでやったとしても整合的になるという理解です。結局御指摘の2022年度ですがGDP計算上は1年ずれて起こっているということです。

Q 正直にモデルを走らせた場合歳出がこれだけ減ったらGDPに影響しないのはおかしい。今言われたような調整を行っているという注釈があればそんなものかと思いますがそんな注釈はないでしょ。モデル計算としては説明不足でしょう。モデルの乗数も出しておられます。それに従えば、これだけ歳出が減ればGDPは相当減りますよ。

A 公表されている情報が足りないかもしれないですね。

Q 歳出が23,24,25年度など100兆円レベルですね。

A はい。

Q それなのにGDPは落ちない。ここはモデルを使っているわけでしょう。

A 歳出自然体といった仮定を置いています。

Q そういう仮定だったらもっとGDPは低くなるのではないですか。

A 我々のGDP計算は潜在成長率とのギャップのところで動くようにしています。たしかにおっしゃられる通りですね。

Q 全要素生産性をぐんと上げてGDPを押し上げているように見えますがそんなに上がるわけ無いとほとんどの人が思っているのではないですか。基礎的財政収支の黒字化を早めて政府のきげんを取ろうと、忖度しようとしていることが見えている。見え見えです。忖度のない日本経済の姿を発表しないと岸田さんも理解できないです。今の政策で基礎的財政収支は黒字化し、しかも成長すると誤解してしまう。つまり歳出は削減してもよいと錯覚してしまう。成長はするし基礎的財政収支は黒字になる。今の政策で完璧だ。もっと緊縮しても十分だと政府が錯覚してしまう。このモデルの裏まで調べる時間は岸田さんは無いでしょう。側近が理解してくれればよいのですが、それも無理でしょう。その繰り返しが現在に到っています。20年以上、日本のGDPは増えていないでしょう。

A はい。

Q 日本は3%成長するのだと、ずっと昔から言っている。

A そうですね。

Q もし20年前から3%成長を続けていたら今頃は1000兆円を超えていますよ。

A はい。

Q 内閣府の方で、今の政策では大変なことになる。これから一人当たりのGDPで韓国など近隣諸国に追い越されて日本は貧乏な国になっていっている。そんなはずじゃなかったと歴代の総理は思っているのではないか。彼らは内閣府の試算を見て、現在の政策でよいのだと誤解して政策を続行した結果が今の日本だと思います。これからまたこんな調子でゼロ成長がずっと続いていたら惨めなことになる。かつて日本は一人当たりのGDPで世界最高レベルでした。1990年頃、内閣府でいつも発表していたのは、一人当たりのGDPは世界最高だと言っていました。新聞に日本が世界一と出ていました。そのうちルクセンブルグのほうが上だったと過去に遡って修正がありました。内閣府の古い資料を見れば日本が世界一だと書いてあり、私もその資料は持っています。その頃に比べ日本経済は衰退し、今や1人当たり名目GDPはトップクラスの国々の3分の1にまで落ちました。その理由は内閣府で間違った試算を出していること、狂った羅針盤とも呼ばれていますが、これが政府に誤った道を選ばせたわけです。今のままではとんでもないことになります。そろそろ内閣府も反省し、今の政策では3%成長は無理だし、2%のインフレ目標も無理です。どうすべきかを国が真剣に考えるべき時が来た。単純に歳出を増やすと3%成長するのかを正直に発表すべきです。どのくらい歳出を増やすのかは、すでに発表されている乗数を使えばすぐ計算できます。

A はい、そうですね。

Q 歳出を増やす場合と増やさない場合を比較して、その結果を岸田首相に見せれば分かってもらえます。

A 潜在成長率が高い場合と低い場合を比較するのでなくて歳出を増やす場合と増やさない場合を比較するのですね。

Q そうです。是非、考え直して下さい。

A はい。実際反映できるかどうか分からないですが、ご意見を承らして頂きました。

Q 計量分析室の中で問題意識を持って頂きたいと思います。

A そういった声があるということは受け止めた上で作成するようにしたいと思います。

Q 是非頑張って下さい。

A はい、ご忠告有り難うございます。今後もよろしくお願いします。

 

| | コメント (0)

政府経済見通しと内閣府計量分析室の問題点(No.460)


年2回「中長期の経済財政に関する試算」というものが内閣府から発表される。これは極めて欺瞞的で狂った羅針盤と呼ばれ、政府もマスコミも国民もこの試算に騙され間違った道を選択し、それが日本経済を急速に衰退させている。筆者は繰り返し担当者に電話し追求している。正しい試算は『ベーシックインカムで日本経済が蘇る』小野盛司他で詳しく示されており、この本のkindle版がアマゾンの経済の分野で売上げトップになった。

ところで先日政府経済見通しをつくっている担当者と話した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-c98fe8.html
担当者によれば、これは今年度と来年度の見通しをつくっているが、よく的中した予測だそうだ。それは本当かどうか確かめるためにグラフで比較してみた。

1_20220224113601

 

確かに全く当たらないわけではないのだが、実績をみると経済が大きく落ち込んだときもずっとプラス成長を予測している。自分たちは予言者ではないからリーマンショックのように予想しなかった出来事があると成長率は見通しは実績よりはるかに過大評価となる。

次のグラフは「中長期の経済財政に関する試算」にあった歳出と名目GDPの関係である。

2_20220224113601

 

歳出は大きく変化しているのに、名目GDPはそれに関係なく増え続けている。モデル計算ならこれはあり得ない。歳出が減少したら名目GDPも必ず減少する。この点を追求すると内閣府計量分析室と政府経済見通しの担当者は責任を相手になすり合いをする。本当は両者が責任を持って説明する義務があるのだが、彼らには国民を騙すことしか考えていない。

| | コメント (0)

2022年2月23日 (水)

令和4年度の政府経済見通しに関し内閣府に電話して聞きました(No.459)

Q 令和4年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度という文書を去年の12月23日に出しておられますが、この中で令和4年度の国民総生産ですが名目成長率が3.6%、実質で3.2%となっていますが、これはどうやって求めたのですか。
A 簡単に申し上げますと消費であったり企業の設備であったり需要項目という内訳があります。今の状況とか来年度どうするかとか、項目ごとに足し上げて国民総生産という数字がでてきます。
Q 令和4年度の予算がどうなるのかということで本予算に加え補正予算を出すのか出さないかで大きく変わってくると思います。それがどうなるかがここに書かれていないのですが、どう仮定されたのかをお聞きしたい。
A 今、決まっていることだけに基づいて計算してあって、令和4年度の補正予算については織り込んでいない。令和4年度の本予算は提出されている。
Q ということは令和4年度の補正予算はゼロということですか。
A はい、そうです。
Q 令和3年度の歳出は補正を合わせて142.6兆円であって、補正予算を入れないと、令和4年度は107.6兆円になる。つまり35兆円減少するということになる。
A はい、そうです。
Q これだけ巨額の歳出削減を行うと、普通にモデルに入れると必ずマイナス成長になる。
A そうですね。ただ補正予算として今回コロナ対策として、かなりの部分資金繰り支援というのが占めていまして、例えば無利子に近い形で融資をする、その利子を手当しますということ。
Q 真水もあるのでしょう?全国民に10万円を配ったのもあるし、その他色々対策をやっていますよね。それが無かったらかなり経済が落ち込んでいたでしょう。雇用調整助成金ですか。売上げが下がったら補填するとか、休業手当とか、色々出していますね。それがあったからこそ令和3年度はGDPが544兆円となった。それがないと相当のマイナス成長になると思う。
A はい。おっしゃるとおりその効果については全くはげ落ちる。まず前提として来年度全く見込んでないと言いましたが、これまでの補正予算の執行ができるということではなく、例えば給付金とか来年度にかけて支給する形になりますのでそれは来年度に繰り越すという前提を置いている。全く来年度ゼロかというと今年度の補正が一部残る形になっています。その上で政府支出であっても介護士とかは高齢化に伴って伸びていきますのでそこらへんも相殺しあって、政府支出はほぼ横ばいになっていきますね。
Q ということは2022年度の政府支出は2021年度の142.6兆円に相当する額として計算したということですか。
A まあそういうことですね。補正とかで無くなる部分もあるのですが、もともと一部繰り越すものもありますし、医療介護とか増えていく分もありますし、そう考えると横ばいになると考えられる。
Q 横ばいになるというのは、ごもっともだと思いますね。でもその数値はここには書いてないですよね。「経済財政の基本的態度」という文書には書いてない。
A そこには書いておりませんで、その後本予算を国会に提出し、それを踏まえた政府支出の見通しを新しく追加した更新版というものを1月17日に公表しておりまして政府支出がどの位になるかというのも書いております。5ページ目にあります。
Q なるほど。これを使って名目3.6%、実質3.2%を計算したということですか。それでしたら、1月14日に中長期の経済財政の試算を出していますね。そこでは2021年度と2022年度の実質と名目は同じ値が使われている。
A はい。
Q ところが歳出のところが2022年度は107.6兆円となっていて、こちらが使われている。その場合は3.6%、3.2%という成長率はでないでしょう。
A そこはなかなか申し上げづらいところで政府支出というのがいわゆる政府の財政支出だけではなくていろんなものが合わさってきますので、こちらが出している150兆円弱の大部分が国の支出でない部分です。中長期試算というのは国や地方セクターなど政府が出す支出の面ですし、試算にある歳出と政府見通しの政府支出とは異なっています。お互いに連携してやっておりますのでその中で数字が違うというものは全くなくて両方共同じものを同じ前提にしてやっています。
Q だったら2021年度が142.6兆円、22年度が107.6兆円とガタンと減った。それなら成長率がマイナスになるかと思ったら名目プラス3.6%の成長。内閣府計量分析室に聞いたら、これは我々の担当ではないから「見通し」のほうに聞いてくれと言われました。そうであればどこかに書いておくべきではないですか。これはモデル計算なのだと主張したいのなら、歳出が大きく下がれば成長率はマイナスになるはず。
A モデルの計算ではありません。モデルの計算は計量分析室が行っているもの。我々が出している政府経済見通しは当年度や翌年度の見通しなのでモデルではなく独自の方法でやっている。言っておられることは分かりますが国の支出の100兆円を超える部分の大部分が国債の利払いの部分で、そのあたりはGDPには現れません。政府支出というものがGDPの中にあるのですが、国の支出とはほぼほぼリンクしてないものでして、歳出が減ったからといっても政府支出が減るということは全くありません。ですから我々モデル上でやっているというのでなく、より実態に近い国の支出以外のもので政府支出というものを成形しております。
Q 利払いに関しては国債費の一部になっていて、償還費と利払いを加えたものが国債費ですね。国債費は21年度が24.7兆円、22年度が24.3兆円でほとんど変わっておらず、これは関係無いですね。
A それはGDPに載らない部分としてありまして、我々の政府支出の150兆円弱、国の利払いは80兆円くらいですかね、他の部分が80兆円政府支出としてあります。そこの部分が公的企業だったり地方の政府だったりするのですが、そのへんが横ばいだったり伸びていたり、トータルで考えて横ばいになる。補正の部分が無くなったと言って全体として落ち込むということにはならない。
Q 経済財政に関する試算というのは1年ごとに出していますね。この数字が出る度に大きく変わりますね。2022年度の歳出が107.6兆円となっていますが、これは半年あるいは1年後に出される試算でもこの数字は変わりませんか、それとも大きく変わるのですか。
A それは補正予算が新しく決まると大きくなりますし、補正予算が決まらない状態ですと変わらないと思います。
Q 歳出は大きく変わるが、成長率はそのままですか。
A それは補正予算の内容によります。経済がコロナの影響でかなり下ぶれています。それを押しとどめる補正予算ですのでトータルとしてはあまり変わらない。どちらかというとGDPを押し上げるような多い補正予算だと成長率も上がってくる。
Q 毎年の見通しがかなり上振れしているのではないかという印象を受けます。後で見れば上がっていない。日本のGDPは20年間以上ほとんど変わっていない。
A はい。
Q 他の国は随分成長しています、韓国などすごい成長率です。日本は成長していない。
A はい。
Q 政府経済見通しは、いつも「来年は随分成長しますよ」と毎年言っていますね。それがことごとく当たっていない。上振れしていた。
A はい。
Q こういうことは止めた方がよいのではないかと言いたい。来年度は何%成長というのはできるだけ誤差の範囲で予測が当たるように見通しを出したらどうですかと思うのですが。
A はい。我々予測しづらい部分がありまして米中の動向であったりブレグジットであったり日本だけではない部分もありますし例えば消費だったり企業の設備投資だったり、我々が考える以上の変動を伴う部分もあります。来年度の見通しというのは、本当に期待しているようなものに基づいてつくっているものでして、私個人の考えでは余り良くないかなと思うのですが、確かに実績は下ぶれているという話はありまして、いろんな手法を試しながら改良しているところです。必ずしも全部が下ぶれているわけではないです。そういった中で色々試行錯誤しながらやっている。すぐに何か見直せるかと言えば、どうかなと思いますね。
Q 上振れしたとか下振れしたとか、予測の誤差はあります。天気予報だって明日の気温は何℃と予測し、結果として高すぎたとか低すぎたとかはあります。高すぎる確率と低すぎる確率が同じくらいなら真面目に予測していると言えます。ところが政府経済見通しは必ず大幅に上振れしている。大本営発表みたいなものじゃあなくてできるだけ正確に予測すべきです。高すぎる確率と低すぎる確率が同じくらいでないと国の発表としては不適切だと私は思います。
A そうですね。そういう議論があることは承知していますが、経済予測は天気予報と比べかなり難しくて、例えば同様に予測を出しているIMFやOECDなどと成長率を見比べますと我々の予測はそれ程高くないのですね。IMFやOECDの方が我々より高く成長するとみている。日本の民間エコノミストと比べても、我々が高すぎるといったことは全くありません。
Q 日本の成長率は最低レベルですよね。
A そう、最低レベルです。我々が予測している3.2%とか3.6%とかが他の予測より高いというわけでは無い。日本の成長率は低いです。
Q 例えば2023年度だと例えば日経センターが出しているESPフォーキャストというのがあって、実質成長率は1.45%で、内閣府試算では2.1%です。
A 23年度は我々見通しでは示してない。
Q 試算の方ですね。政府見通しでは関係無いと言われればどうしようもないです。これは計量分析室で予測したのでしょうが、発射台がここだし、政府の方で3%成長を言えと言われているからそれ以外の選択は無いと計量分析室は言っておられる。露骨に圧力を受けている。政府に雇われている身分なのでそれ以下にはできない。成長は必ず3%なのだと言っておられるのですね。
A はい。
Q 本当に真面目にモデルを使って予測をしようとしているのか、そうじゃないのではないかと。
A はい。
Q 本当の事は何も言えないということだと「狂った羅針盤」と言われているような試算になる。結局政府が見誤るようになる。現在の政策で成長するのだと誤解してしまう。しかし本当に3%成長をしようと思うなら全く別のことを考えなければならない。内閣府計量分析室では全要素生産性を一気に上げればGDPは上がるよと言います。しかし全要素生産性が上がる理由を言わない。しかし次の年の発表では全要素生産性は上がっていませんでしたけど、これから上がるのですと言う。毎年同じ発表を行っています。これって欺瞞的だと思うのです。
A これは計量分析室に聞いて頂くしかない。我々は来年度の経済予測ということで、民間の予測と同じように今年度と来年度の予測をしています。その先の経済予測については財政支出の予測をつくる上であくまでモデル上の試算ですので強いとか弱いとかは余り議論にならないのではないか。そのモデルに基づくとその数字が出てくるわけです。
Q というかモデルは実質2%、名目3%、インフレ率が2%になることが大前提なのです。その前提で鉛筆なめなめでモデルをいじくるわけですが、それって余り意味が無いという気がしますが。例えば全要素生産性はどうなるんだろう、どの位影響するのか等を本格的に研究すればよい。日本には学者は沢山います。政府からの圧力なしで予測すればこんな試算にはならないでしょう。3%成長を20年続けたら1000兆円は超していたでしょう。でも全く成長しませんね。600兆円を目標と言っていましたが、全然600兆円に達しない。つまり内閣府計量分析室の試算は明かに間違いだと言えます。
A 今年度と来年度については我々が予測するのですが、再来年度以降は計量分析室のもので、我々のモデルも色々情報の制限がありますので知らないのです。
Q 我々何度も計量分析室に電話してこの計算はおかしいと追求すると必ずそれは政府見通しに責任があるのでそちらに聞いてくれという。責任のなすりあいですね。
A 今年度と来年度の話だとおっしゃって頂ければと思うのですが再来年度以降は計量分析室の担当です。もし政府見通しと言われるようでしたら私から言いますので言って頂きたいのですが。
Q ただね、これは連帯責任ですよ。一緒にやったほうがよいのではないですか。
A いや、当然一緒にはやっているんですよね。あくまで予算や各種方針の前提でつくるので今年度と来年度の見通しをつくっていまして、それを計量分析室でも今年度と来年度の見通しをつくります。ただ、それ以降では不確定要素が多いのでモデルでやっているところなのです。必ずしも連携していないわけではない。我々は再来年度以降全く状況が分からない。予算も全く決まってないところなので計量分析室のモデルでやって頂く。そういう流れにしていますので、連携してないのでなく、それぞれの役割を分担してやっている。
Q 日本のGDPの推移を見ると諸外国に比べ全然成長していない。日本だけいつまで経ってもGDPが上がらない。円表示で見てもそうだが、ドル表示でみたらもっとひどい。だからひどい状態だと思っています。平成元年ころは1人当たり名目GDPが世界トップレベルだった。当時時価総額ランキングで10位以内に7社が日本企業だった。今はトップ10に入っている日本企業はありません。台湾や韓国のトップ企業に日本企業ははるかに劣る。こんなに貧乏になったのは結局政府の政策が悪かった。この政策ではダメだと政府に対して言う人が必要です。内閣府の試算で現在の政策ではこんなに没落しますよと忠告しなければならなかった。それをせずに今の政策でどんどん経済が成長すると言い続けてきた。その試算を見た政府は、これでいいんだと確信し緊縮財政を続けた。基礎的財政収支黒字化を目指しているだけで経済は発展するのだと錯覚を起こしてしまった。それが歳出が伸びなかった理由であり、歳出が伸びなければGDPが伸びるわけがない。計量分析室では乗数を出しています。乗数がマイナスなら歳出を増やせばGDPは減りますが乗数は必ずプラスです。だからGDPを増やしたければ歳出を増やせばよいという単純な論理なのですがそれを厳しく制限していますね。目標は基礎的財政収支黒字化ですからできるだけ歳出を減らそうとしている。ということはできるだけGDPを増やさないという政府目標になっています。ここで目標を変えた方がよいのではないかと思っています。
A 財政支出をどうするかとか基礎的財政収支をどうするかというのは我々は全く決めていなくて役割を分担の中で計量分析室が決めていますので、政府経済見通しに再来年以降の名目成長率3%をどう扱うかについて我々意見として賜ることもできないのです。
Q それは責任転換というものですよ。
A そうではなくて計量分析室が決めておりまして、それぞれ役割の中でやっていることです。我々の役割は本年度と来年度の成長率を決めているだけで、是非ご理解頂きたい。
Q 基礎的財政収支黒字化を言い出したのは竹中・小泉両氏だと思います。内閣府試算に書いてあった事は2011年度には基礎的財政収支が黒字化すると書いてあった。
A すいません。私は業務がありますので。
Q 聞きたくないということですね。質問を受け付けないということですね。
A 宜しくお願いします。

| | コメント (0)

« 2022年1月 | トップページ | 2022年3月 »