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2022年4月

2022年4月25日 (月)

円安が良いか悪いかをシミュレーションで調べた(No.465)

円安が良いか悪いかは、GDPがどうなるのかで判断するべきだ。安倍元首相のアベノミクスで調べてみよう。
2013年 アベノミクス開始
名目GDP  508.7兆円  1ドル=97.6円だから 5.21兆ドル
2020年 アベノミクス終了
名目GDP  538.2兆円  1ドル=106.8円だから5.04兆ドル
円で表すとアベノミクスで名目GDPは若干伸びたことがわかるが、この間円安が進んでおりドル表示なら名目GDPは下がっていることが分かる。円表示での名目GDPの伸びも、実は2回消費税増税でかさ上げされており、更に2016年のGDP基準改定で19.8兆円もかさ上げされている。この2回のかさ上げは経済成長とは無縁のものであるから、アベノミクスでは円ベースではほぼゼロ成長、ドルベースでは明らかなマイナス成長だと分かる。もちろん、消費増税は消費を減らしGDPを下げるから、消費増税が無かったらある程度経済は成長したと思われる。

2022年4月、1ドルは129円に達し、20年ぶりの円安水準になった。現在米国は景気が過熱しておりインフレ率が高すぎるため、FRBは金利を上げて景気にブレーキを掛けつつある。一方で日本は緊縮財政が続いており景気は最悪だ。こんな時に金利を上げたら大不況に陥るので金利引き上げなどできるわけがない。その結果日米の金利差は開く一方で、当然投資家は金利の低い日本の円を売り、金利の高い米国のドルを買うからドル高・円安になる。円安は良いのか悪いのか、様々なエコノミストがそれぞれ見解を述べている。

我々はその件に関し日経のNEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。詳しくは
『ベーシックインカムで日本経済が蘇る』小野盛司他
を参照して頂きたい。

対ドル円相場を10円だけ上昇させたときの影響
計算によれば1年後円表示の名目GDPは0.76%だけ押し上げられる。一方で円は1ドル120円が130円となったのだから円の価値は8.3%も下がる。つまりGDPも賃金も株価も地価も、海外から見れば日本において円で表示されるものすべてが8.3%も下がってしまうということだ。つまり円安はドル表示で見れば日本は貧乏になる。日本のGDPは世界第3位というように、日本を諸外国と比べるときはもちろんドル表示で比べるのだから円安は確実に日本を貧乏にする。

このように円安により日本を豊かにすることはできないことは明かになった。一方で、政府が通貨を発行し、それで国民への現金給付に使ったり、減税をしたり、日本経済を強くするために投資したりすると、劇的なGDP押し上げ効果があることは上述の書籍で示した。今からでも遅くはない。直ちに積極財政を実行すべきだ。日経のNEEDS日本経済モデルを疑う人がいるのだろうか。日経がNEEDSを使って過去40年間日本経済を正しく予測してきたのは疑いもない事実である。だから今回の積極財政の予測だけが間違いだという主張が正当化されるわけがない。筆者は20年間このような主張を続けたが、まともな反論を述べてきた人は一人もいなかった。これは我々の計算が正しい事を示す。

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2022年4月12日 (火)

ロシアのウクライナ侵攻とウクライナの反撃(No.464)

ロシアがウクライナを侵攻して1か月半が経過した。我々戦争を知らない世代にとって信じられないウクライナの光景を毎日見せられている。「戦争反対! No War! Нет войне!」という言葉を数限りなく見聞きしてきたがその訴えもむなしく破られた。もしロシアがこの戦争に勝利したら、ロシアの周辺の国々を次々と占領しその住民を大虐殺するだろうし、その一つが日本かもしれない。我々日本に暮らす人間として現在の平和な暮らしを壊されたくない。

今は我々はウクライナに勝って欲しいと願うしかない。プーチンは軍事大国ロシアが戦力をフルに投入すれば数日で首都キーウを落とすことができ、親ロシア政権を樹立することができるだろうと思っていた。しかし米国軍などから指導・支援を受けたウクライナの反撃は予想を遥かに超えるものだった。ウクライナのゼレンスキー大統領がウクライナを守るためにキーウに留まり戦うと宣言したのには、世界が驚いた。それがウクライナ兵の士気を高め、逆にロシア兵の士気を落とした。ロシア兵は「演習だと聞いていた」「ウクライナでは歓迎されると聞いていた」「食糧も弾薬も燃料も来ないから戦えない」「銃で自分の足を撃って、負傷兵として帰りたい」などと言った。

1か月半の間に失われたロシア軍の戦力は15%以上とか3分の1以上とかと言われていて、ロシア大統領報道官も「我々の部隊には甚大な損失が出ていて大きな悲劇だ」と述べている。西側から提供されたウクライナ軍のミサイルにやられまくったロシア軍の弱すぎる戦車の実態が明らかになり、ロシア戦車が劣悪だと知られるようになったのはロシアの軍需産業には痛手、大きな戦果を挙げた米国の軍需産業には良いPRの場になった。

当初、ロシアとの全面戦争に巻き込まれたくないと思っていた西側諸国も、この弱いロシア軍を見て、もっと本格的にウクライナを支援しようという動きが活発になってきた。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は4月8日、キーウを訪問し、ゼレンスキー氏と会談した。声明で「欧州はあなたたちの側にある」とウクライナへの連帯を表明。ウクライナのEU加盟に向けて審査手続きを加速させる考えを示した。これまでにEUで合意したウクライナへの武器調達費10億ユーロ(約1300億円)に、さらに5億ユーロを上積みすると表明した。ジョンソン英首相は4月9日、キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談。120台の装甲車や対艦ミサイルの新たな提供など軍事支援の強化を表明した。それ以外にも米国、チェコ、ドイツ、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアなど、次々と武器の提供を行っている。武器だけでなく、各国から義勇兵が次々ウクライナに入っている。

ウクライナ軍の予想外の反撃でロシア兵の士気は下がる一方である。ロシア兵は自分のスマホで連絡しているので、GPSの位置情報を傍受され、ピンポイントの攻撃を受けている。
ウクライナはロシア兵士一人一人にSNSで「ちゃんと捕虜として待遇する。快適な環境を用意する」と送信。安心して投降するよう、呼びかけている。軍から離反するロシア兵は日に日に増加しているという。100人以上の兵士が「自由ロシア軍」を結成し、ウクライナ軍への編入を志願した。ロシア軍は全力投入したが、キーウから撃退された。ロシアは経済小国でありGDPは米国の14分の1,日本の3分の1、韓国並みにすぎない。軍事費も米国の13分の1だ。ロシアを恐れる必要は全く無い。自由で民主的な国々が結束してウクライナに侵入したロシア軍を追い出せば再び地球に平和が戻る。ロシアへの経済制裁で世界経済にダメージが生じるかもしれないが、協力してこの困難を克服すべきだ。

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