積極財政が日本国民を救う(No.467)
現状では消費者物価は上がるが賃金は上がらない。実質賃金の下落で国民は貧乏になる。
図のように実質賃金は30年近く下がり続けている。
科学的に経済予測をする方法がある。それはマクロ計量経済モデルでありローレンス・クライン(ノーベル経済学賞受賞者)などが始めた。その一つの例が日経新聞社のNEEDS日本経済モデルである。1974年から予測を開始し予測を行い日経新聞に発表している。日経は日本最大の経済データを保有しており、それを駆使している。以下で示す計算結果に関する説明は次のサイトで詳しく述べられている。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-a5b8c7.html
以下のグラフは、①~③の経済対策の押し上げ効果または押し下げ効果のみを示したものである。
ここでは次の4種類の場合を計算する。
①現金給付
年間80万円(3ヶ月ごとに20万円)を国民全員に給付する。
②消費税減税
消費税率を0%に下げる。
③公共投資の増額
公共投資を年間20兆円増額する。
④現状維持
我々の計算を2人のノーベル経済学者Paul A. SamuelsonとLawrence R. Kleinが高く評価して下さった。
本試算では日本経済新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ80を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
最初に名目GDPを示す。前述のように①②③の政策を実行した場合、④の何もしなかった場合に比べどのような差が生まれるかを示す。開始は1年目Q1(第一四半期)で計算は3年目Q3(第3四半期)まで行われている。政策開始直後、最も経済の成長が大きいのは公共投資である。しかしGDP拡大の速さはだんだん頭打ちになる。それに比べ現金給付は立ち上がりは遅いがGDPはだんだん拡大のペースを速め、2年目Q2で公共投資を追い抜いている。消費減税では、最初GDPは下落する。これはすべての商品に消費税が上乗せされていたものが、無くなるので商品の値段は下落し、それに合わせてGDPも下落するのである。その後は消費拡大でGDPは上昇する。
消費が拡大すると一般的には物価が上がるはずである。次に示すのは消費者物価指数である。どの経済対策でも物価の押し上げ効果は小さく、2%のインフレ目標のためには力不足である。特に消費減税の場合は消費税分が消滅するために物価は一時的に大きく下落する。
経済対策を行えば地価はどの程度回復するのだろうか。1980年代の後半に生じた土地バブルが再び起きるのか。次の図は地価の推移である。結論から言うとかつてのような地価バブルは起きそうもない。それでも景気対策を行うとゆっくりと地価は上昇を始める。このような緩やかな地価上昇はデフレ脱却ができない日本経済に好ましい影響を与える。
可処分所得とはすべての所得から、支払いが義務付けられている税金や社会保険料を除いた残りの所得で、自由に使える手取り収入のことである。景気対策を行えば可処分所得が増えて消費が伸びる。特に現金給付の場合は可処分所得の増加が著しい。ただし消費減税の場合、消費税分だけ物価が下がっているので実質的にはここで示されたものより可処分所得は増えている。
次は一人当たりの雇用者報酬だが対策を行えば徐々に増加する。結局政府が景気対策としてお金を使っても企業の利益は増すが、必ずしもそれが国民の手に渡るとは限らないということだ。ただし、消費減税であれば物価の下落という形で国民は利益を得るし、現金給付であれば直接現金が国民の手元に渡る。国の繁栄させる最大の目的は国民を幸福にすることであり、その意味では現金給付が最も優れた政策と言える。
物価の影響を取り除いたものが実質家計最終消費支出である。消費税減税の場合が押し上げられていることが分かる。
次に示すのは、マネーストックである。これは一般法人、個人、地方自治体などが保有する通貨量の残高の合計である。当然のことながら景気対策でマネーストックは増えるが今回の対策では現金給付が最も大きく増加する。
景気対策をすると株価は上がる。現金給付の場合が最も上昇する。ただし株価の予想など非常に難しく、どのような方法でも正確に株価を予想するのは不可能である。
企業所得とは 企業者が経営活動によって得る利益。総収入から生産費や他人資本の利子などを控除した残り。
次の図で民間法人企業所得を示す。季節的な変動が大きいが景気対策により企業は所得を伸ばすことが分かる。現金給付が最も大きく所得を押し上げる。
次の図は就業者数の予測である。景気対策が無ければ就業者数は低迷したままだが、景気対策があれば就業者数は増加する。
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