内閣府計量分析室の試算に裏に隠された真実(No.473)
内閣府の試算には失望させられるばかりだが希望はある。それはその試算の影響力の大きさだ。信頼性を疑う試算だが、それでも政府・マスコミ・経済評論家・国民に与える影響は絶大である。2008年1月17日に内閣府が発表した「日本経済の進路と戦略」という試算は特別だった。そこでは成長シナリオとリスクシナリオが計算してあるのだが、それに加えケースAとケースBも計算されていた。つまり成長A,成長B,リスクA,リスクBの4通りの試算が出されていた。ケースAとケースBの唯一の違いは歳出の規模だった。ケースAは緊縮財政、ケースBは積極財政である。結果は積極財政の方が緊縮財政より名目GDPも実質GDPも大きく増加、物価は積極財政の方が、0.1ポイントだけ高くなり、失業率は積極財政の方が低くなる。国の借金は積極財政の方が大きくなるが、GDPも増えるため国の借金のGDP比は逆に下がる。一方で基礎的財政収支は緊縮財政のほうが改善する。つまり積極財政では、国も国民生活も豊かになり、失業者も減り、物価は僅かに上昇する。この事は内閣府が発表した乗数を見て確認できる。
extension://elhekieabhbkpmcefcoobjddigjcaadp/https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
唯一悪化するのは基礎的財政収支だが、これは国民の生活には関係ないしこんなものを国家目標にしている国は日本だけであり無視して良い。
2011年度の予想
ケースA 緊縮型 ケースB 積極型
名目GDP(兆円) 574.0 577.2
消費者物価上昇率 1.4% 1.6%
完全失業率(%) 3.4% 3.3%
歳入(兆円) 92.7 94.8
歳出(兆円) 95.2 96.1
債務の対GDP比 137.1 137.0
唯一緊縮型が改善されたと主張していたのは基礎的財政収支だ。マイナス0.1%になると予測したが、実際はマイナス32.3%であり、なんと予測の3000倍以上の赤字になった。つまり基礎的財政収支の予測は意味が無いが、緊縮型より積極型の方が、国を豊かにすることだけは明か信頼してよい。これは内閣府に限らず、どのモデルを使っても同様な結論となる。通貨を発行して国民に渡せば国も国民も豊かになるのは自明の理だ。
内閣府の試算では名目GDPが3%成長するという結果を出しており現実離れしているという事は次のサイトで示した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-ea1155.html
内閣府の予測が当たっていないと言える。しかし内閣府の試算では毎年歳出を増やすと仮定してあるのだが、政府は歳出を増やさないようにしているので当たるわけがない。当然のことだが、名目3%成長を目標とするなら、当然歳出も毎年3%ずつ増やさなければ無理だ。内閣府の試算は歳出を毎年3%ずつ増やすと仮定しているからこそ名目3%成長の結果となる。実績では例えば1999年度の歳出は89兆円で、2019年度は101.4兆円であり年率の増加率に直すと僅か0.65%にすぎない。もし年率3%で歳出を増やしていたら2019年度の歳出は161兆円になってなければならなかった。結果として国の借金は増えるが、名目GDPが大きく増えるので国の借金の対GDP比は減少する。これは内閣府の試算でも確認されており財政は健全化に向かう。今後政府は内閣府の試算で仮定されたように、歳出を毎年3%ずつ増やすべきだ。
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