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2022年8月 7日 (日)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)が経済財政に関する試算を発表した(No.471)

内閣府は年2回「中長期の経済財政に関する試算」を発表している。日本には経済財政に関する試算を発表しているシンクタンクは多数あるが、その信頼性に関しては内閣府のものが最悪である。それは内閣府の担当者の質が悪いのではなく、きつい制約があるので自由な解析ができず、その制約の下で計算すると、全く現実離れした予測しか出せないのだ。その制約とは
① 名目成長率3%、実質成長率2%、インフレ率2%
② 発射台となる今年度の成長率は事前に定められ閣議決定されるので、これは決して動かせない。
つまりシミュレーションの出発点は事前に固定され、成長率も固定されているので内閣府計量分析室には身動きが取れなくなっている。もちろん、この制約が過去の日本経済と整合的であれば、問題はないのだが、現実は過去の成長率は世界最低でほぼゼロ成長が続いている。正常な判断力を持つ人間であれば、今後30年もやはり世界最低レベルの成長率が続き、やがて日本は世界最貧国に近づくと予想するだろう。しかし計算を担当している内閣府計量分析室がそのような悲観的な試算を出せば、国民の支持は失われ政権が維持できなくなる。これはかつての大本営発表と同じで、国民が嘘に気付いたときには国土は焼け野原になっていて多数の人命が失われていた。

試算を出す度に厳しい批判を受けているので、今回は半年前の発表より経済が悪化していることを認め、参考資料としてどの程度悪化したかを示した。2022年の実質GDP成長率では半年前は3.2%となっていたが、今回は2.0%にまで下方修正された。同様に名目GDPは3.6%から2.1%に下方修正された。このような下方修正が2~3回程度なら特別追求すべき事でもないが、同様な下方修正を実に20年も繰り返している。

次に示すのは内閣府が予測した名目GDPと実績値との比較だ。実績はゼロ成長なのだが、毎年3%成長になるように現実離れをした予測を出している。小学生にグラフをみせて、将来どうなるかを予想してもらえばよい。ほぼゼロ成長の予想をするだろうし、内閣府の予想より遥かに精度が高いだろう。

1_20220807153601

金利の予想も実績と比較してみよう。

2_20220807152301

実績値は下落気味で2016年度からはほぼゼロに固定されている。右上がりの線は2002年度から2022年度までに内閣府が発表した予測である。こちらも小学生のほうが内閣府よりはるかに高い精度で予測するだろう。本当に多額の税金を使ってこのような馬鹿な試算を出し続ける価値があるのだろうか。内閣府計量分析室は2018年に乗数を発表した。歳出を減らしたらGDPも減少すると予測。詳しくは以下のサイトを参照して頂きたい。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
ところが今回の発表では次のグラフのように歳出が減っても名目GDPが増えている。

3_20220807152301

内閣府計量分析室によるとこの件に関しては別な部署に責任があると主張して理由を説明しようとしない。

本来なら景気が悪化し成長率が世界最悪レベルになれば、政権は吹っ飛び、経済を建て直すと主張する野党が政権を取るだろう。2009年、政権交代した民主党はマニフェストで約束した事は実行せず景気回復どころか東日本大震災の対応に失敗し、更に復興資金として所得税を増税し、更に消費増税まで決め株価も低迷した。しかも外交でことごとく失敗し、真に地獄の世界で国民は二度と民主党は嫌だという強い拒否反応が出てきて自民党の一党支配を許す結果となっている。

今回の予測も今までと変わりはない。過去に出された予測がすべて間違いだったとして、今年度の成長率を下方修正し将来的には名目3%成長しますというもの。オオカミ少年は2回までは信じてもらえたが、3回目は信じてもらえなかった。内閣府の試算は「今年度は大はずれで下方修正をしますが、今後は名目3%成長をします」という嘘を20年前から言い続けているのだ。今こそ国民は偽りの試算で国民を騙すのは止めろと抗議すべきだ。そして実質2%、名目3%の成長率にするには、財政規模をどこまで拡大しなければならないかを示させるべきだ。財政赤字は悪だという社会通念を打破し、財政支出を拡大した場合、日本経済はどの程度発展するのかを計算し発表すべきだ。社会通念の打破はコペルニクス的な発想の転換が求められる。財政赤字の拡大はモラル低下でも腐敗でもなく、事実上政府が通貨を発行し、経済拡大のための成長通貨の供給を行っているだけである。企業なら赤字が続くと破綻するが、国は通貨発行権を持っていて破綻はせず、いつでも通貨発行はできるし、発行しなければならない。通貨発行でかつて世界を驚かせた経済復興を再現しようではないか。
参考文献:『毎年120万円を配れば日本が幸せになれる』『ベーシックインカムで日本経済が蘇る』

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