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2022年10月

2022年10月24日 (月)

貧乏になり続ける日本を豊かにする方法(No.477)

2002年に筆者が日経新聞社のNEEDS日本経済モデルで計算して得た結論は「財政を拡大するなら経済は発展、財政健全化を目標なら衰退し貧乏になる」ということだった。実際に予想通りの結果が現在の日本だ。

世界のノーベル経済学賞受賞者が日本経済へ正しいアドバイスをしてくれている。
●ポール・サミュエルソンは2001年頃から、通貨発行して減税などをするよう提言。筆者の計算結果にも同意した。
●ローレンス・クラインは通貨発行し、減税や教育に使うよう提言。筆者の計算を高く評価し、来日し我々が開催したシンポジウムにも参加してくれた。
●ジョセフ・スティグリッツは政府が通貨を大量に発行し、インフレ率が2~3%になるようにするべきだと提案した。財務省は彼を財務省に招き講演させ、彼の提案を日本で実施できるか真剣に検討していた。
●今年(2022年)ノーベル経済学賞を受賞したベン S.バーナンキは2003年、日本は通貨発行で大規模な財政出動を行う事を提案した。これはヘリコプターマネーと同じだと言っている。
●2008年、ポール・クルーグマンがノーベル賞を受賞したときは日本だけでなく、世界中が大不況だった。彼は『今、世界は「不思議の国のアリス」にいる。この世界では貯蓄を高めること、財政を健全化することが悪いこと。財政赤字を拡大することが善いこと。あべこべの世界だ。』と語った。

ほとんどの国は「あべこべの世界」を抜けることができたけど、日本だけはこの世界に残った。だから日本はどんどん貧乏になってきている。日本人は財政健全化が悪いことと言われても理解できない人が多い。また通貨発行は悪いことだと思っている。

2020年からの国際商品の価格上昇の原因に関し『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』田村秀男著から一部引用しながら説明してみよう。
2020年3月欧米はコロナ対策として大規模な金融対策を実施した。そして日本も一貫して金融緩和を継続した。コロナ禍不況を克服のため、各国は財政出動し各国の中央銀行が資金供給。市場に必要以上の資金が流入。カネ余りの状態となった。ダブついた資金の行き先は穀物で小麦などが高騰した。その後ロシアのウクライナ侵攻で更に小麦の値段が上がった。2020年4月にコロナ禍で需要が減ったのでOPECプラスが協調減産を行い、原油価格を維持した。その後ダブついた資金が原油市場に流れ込み原油が高騰した。2021年初め米国景気はコロナ不況からV字回復軌道に入り石油需要が増え、原油価格が更に高騰し石油製品全般が値上がりし、人々の生活に深刻な影響を与えた。

欧米ではダブついた資金は消費に向かい、景気は過熱し10%近いインフレとなり過熱を抑えるため金利を上げた。一方デフレマインドに支配された日本ではダブついた資金は消費に向かわず、貯蓄や会社の内部留保に向かい、景気は過熱せず需要不足は続いた。そこで、日銀は金利を上げることができず、結果として欧米との金利差が拡大し、資金は金利の高い欧米へと日本から逃げ出す結果となり、円安が進んだ。これは日本が貧乏になりつつあることを示している。我々はシミュレーションの結果から積極財政こそが日本を貧困化から救うと主張し続けたし上述のノーベル経済学賞受賞も同様な発言をしている。もし財政健全化政策から離れられないなら、日本は果てしなく貧乏な国になってしまう。今こそ積極財政政策に転換すべき時だ。

 

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2022年10月14日 (金)

没落する日本を救うベーシックインカム(No.476)

日本経済は没落しつつある。1989年の長者番付では世界10位以内に6名の日本人が入っていた。2022年の長者番付では10位以内には日本人はいなくなって日本人トップは42位のユニクロを展開するファーストリテイリングの会長兼社長・柳井正氏だった。世界時価総額ランキングではトップ10に日本企業が7社入っていたが2022年にはすべて外れてしまい日本企業のトップはトヨタ自動車の44位だった。GDPにおいても、諸外国では大きく増加している一方で、日本だけはほとんど変わっていない。

かつて奇跡の経済復興として世界を驚かせた日本がなぜここまで没落したのだろうか。 デフレなのに緊縮財政を続けたのが原因ではないかと考えられる。このような没落はAIに財政・金融政策を判断させていれば避けることができただろう。まず第一歩として、計量経済学を駆使しシミュレーションで経済を発展させる方法を考えたらどうかと考えてみる。

筆者は2002年に日経新聞社と契約し日経モデルであるNEEDS日本経済モデルを使って計算した。その試算結果は『これでいける日本経済復活論』小野盛司(2003)にまとめられている。5年間ベーシックインカムを行ったときの計算をした。 
年間80兆円給付なら、毎月全国民に5.3万円を給付することに相当する。当然の事ながら現金給付が行われたら国民は支出を増やすようになる。給付を始めて5年目には名目GDPは120兆円押し上げられる。この時、インフレ率が激しく上昇するのではないかと主張する人がいるが、実際計算してみると、5年間で物価の押し上げは6.6%PTであり、5で割ると1年で1.3%PTとなる。これでデフレ脱却が可能かどうかギリギリかもしれない。いずれにせよ、激しいインフレにはならない。

最初の計算から約20年後、筆者はNEEDS日本経済モデルで再び計算した。結果は2002年に計算したものと同様であり
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2022/07/post-aa98dd.html
に示している。

このような試算に基づく巨額財政出動を支持するノーベル経済学賞受賞者は多い。2002年に行ったこの計算に対し、ポール・サミュエルソンもローレンス・クラインも直ぐに賛成してくれた。2002年5月9日の日経新聞社に掲載された記事でジョセフ・スティグリッツは通貨を発行して財政を拡大することを提案しており、財務省は彼を財務省に招き講演させ、彼の提案を実施しようと真剣に検討していた。2022年にノーベル経済学賞を受賞したベン S.バーナンキは2003年5月31日の日本金融学会60周年記念大会にて通貨発行で大規模な財政出動を行う事を提案している。彼はヘリコプターマネーの提唱者として知られている。2008年、ポール・クルーグマンはノーベル賞を受賞した直後2008年11月17日に自らの朝日新聞に主張を載せた。
金融政策が影響力を失い、財政政策しか残っていないというのは、「不思議の国のアリス」の世界だ。この世界では、貯蓄を高めることが悪いことで、健全な財政も悪いこと。逆に完全に無駄な政府支出が善いこと。「あべこべの世界」だ。大不況克服へ巨額財政出動せよ。債務増を心配する時でない。

ここに載せたノーベル経済学賞受賞者の日本の経済政策へのアドバイスを今こそ実施に移すときではないか。

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