没落する日本を救うベーシックインカム(No.476)
日本経済は没落しつつある。1989年の長者番付では世界10位以内に6名の日本人が入っていた。2022年の長者番付では10位以内には日本人はいなくなって日本人トップは42位のユニクロを展開するファーストリテイリングの会長兼社長・柳井正氏だった。世界時価総額ランキングではトップ10に日本企業が7社入っていたが2022年にはすべて外れてしまい日本企業のトップはトヨタ自動車の44位だった。GDPにおいても、諸外国では大きく増加している一方で、日本だけはほとんど変わっていない。
かつて奇跡の経済復興として世界を驚かせた日本がなぜここまで没落したのだろうか。 デフレなのに緊縮財政を続けたのが原因ではないかと考えられる。このような没落はAIに財政・金融政策を判断させていれば避けることができただろう。まず第一歩として、計量経済学を駆使しシミュレーションで経済を発展させる方法を考えたらどうかと考えてみる。
筆者は2002年に日経新聞社と契約し日経モデルであるNEEDS日本経済モデルを使って計算した。その試算結果は『これでいける日本経済復活論』小野盛司(2003)にまとめられている。5年間ベーシックインカムを行ったときの計算をした。
年間80兆円給付なら、毎月全国民に5.3万円を給付することに相当する。当然の事ながら現金給付が行われたら国民は支出を増やすようになる。給付を始めて5年目には名目GDPは120兆円押し上げられる。この時、インフレ率が激しく上昇するのではないかと主張する人がいるが、実際計算してみると、5年間で物価の押し上げは6.6%PTであり、5で割ると1年で1.3%PTとなる。これでデフレ脱却が可能かどうかギリギリかもしれない。いずれにせよ、激しいインフレにはならない。
最初の計算から約20年後、筆者はNEEDS日本経済モデルで再び計算した。結果は2002年に計算したものと同様であり
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2022/07/post-aa98dd.html
に示している。
このような試算に基づく巨額財政出動を支持するノーベル経済学賞受賞者は多い。2002年に行ったこの計算に対し、ポール・サミュエルソンもローレンス・クラインも直ぐに賛成してくれた。2002年5月9日の日経新聞社に掲載された記事でジョセフ・スティグリッツは通貨を発行して財政を拡大することを提案しており、財務省は彼を財務省に招き講演させ、彼の提案を実施しようと真剣に検討していた。2022年にノーベル経済学賞を受賞したベン S.バーナンキは2003年5月31日の日本金融学会60周年記念大会にて通貨発行で大規模な財政出動を行う事を提案している。彼はヘリコプターマネーの提唱者として知られている。2008年、ポール・クルーグマンはノーベル賞を受賞した直後2008年11月17日に自らの朝日新聞に主張を載せた。
金融政策が影響力を失い、財政政策しか残っていないというのは、「不思議の国のアリス」の世界だ。この世界では、貯蓄を高めることが悪いことで、健全な財政も悪いこと。逆に完全に無駄な政府支出が善いこと。「あべこべの世界」だ。大不況克服へ巨額財政出動せよ。債務増を心配する時でない。
ここに載せたノーベル経済学賞受賞者の日本の経済政策へのアドバイスを今こそ実施に移すときではないか。
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