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2023年1月23日 (月)

日本経済衰退とともに、半導体産業も衰退した(No.479)

失われた30年と言われる日本経済、どんどん貧乏になっているのを誰もが感じているだろう。1990年頃、世界をリードしていた様々な産業が次々と衰退してしまった。その一つが半導体産業である。日本の半導体の売上げシェアは1988年には50.3%だったが2019年には10.0%にまで下がっている。1992年の世界売上げランキングのトップ10の中に入ったのは、NEC,東芝、日立、富士通、三菱、松下の6社であったが2019年にはキオクシアの1社がやっと9位に入っただけとなった。衰退の原因になったのは、政府によるバブル潰し政策のお陰だ。株・地価の値上がりが激しかった日本で、利益を得た人と利益を得られず不満を持つ人がいた。特にマイホームを買おうとコツコツ貯金をしていた人にとってマイホームの値上がりに怒った。マスコミは地価を下げろと提言し、政府はその声に従って過激なバブル潰し政策を行った。「年収の5年分で住宅確保できるようにする事」を目標にした。

この政策によって株も地価も暴落し、千数百兆円の資産価値が失われ30年後になってもそれが回復できていない。つまり国民全員が一人当たり一千万円以上の損をし、政府はそれを補うどころか消費増税や歳出削減などで、状況を更に悪化させている。その結果需要が減退しデフレになり、企業業績が悪化し多くの企業が大規模なリストラをし、将来への投資を怠った。三星電子は韓国政府のバックアップを受けて東芝、松下電器、三洋電機、シャープ、NECなどからリストラされた技術者を高給でヘッドハンティングし、日本人技術顧問が外国人技術者中77名と大半を占めた結果、日本の最新技術が流出した。三星電子は現在のサムスン電子である。2022年12月現在サムスン電子の時価総額は2930億ドルで世界27位、日本トップのトヨタ自動車は1864億ドルで世界51位となっている。

半導体産業で生き残るには高い技術が必要とされる。演算プロセッサの微細化(配線の太さ)の競争である。1nmは10億分の1mでありこれを単位として表す。
2006年 PCのプロセッサは90nm
2015,2016 Intel Core 14nm 2016年 10nm
2015年 IBMは7nmの試作品
2016年 サムスンは18nm のDRAMを出荷
2020年 TSMC 5nmプロセスの出荷
この微細化競争で日本は蚊帳の外だった。

台湾のTSMCが熊本で半導体工場建設をしている。24年末までに生産を開始する予定だ。回路線幅は10~20nmであり日本政府が1兆円の補助をする。TSMCはすでに3nmの量産化に成功している。
IBMとRapidusが、日本で2nmの最先端半導体を2020年代後半に製造すると発表した。
2021年、IBMは2nmのチップ開発技術を発表していた。Rapidusは日本企業8社(トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行)が資金を出し合って設立した会社。政府からも支援を受ける。日本政府はこの分野で開発競争に加わらなければならないと気付いたのだろうか。しかしバブル潰しで日本が失った千数百兆円の穴埋めをして日本の産業を復活させる気概はあるのだろうか。

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