文化・芸術

2019年10月13日 (日)

債務のGDP比を減らす唯一の方法はGDPを増やすこと(No.372)

   台風19号が日本列島を直撃し多くの河川が氾濫し大きな被害が生じたようである。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。我々日本経済復活の会では2003年に発足して以来、公共投資・国土強靱化の重要性を主張してきた。インフラ整備で国の借金は増えても、将来世代へのツケ(債務のGDP比)は逆に減るのだと説明してきた。

財務省のホームページを見ると「日本の財政を家計に例えると、借金はいくら?」として計算している。それによると月収50万円の世界がひと月80万円使っており、不足分は30万円の借金を毎月増やしている。その結果ローン残高は8400万円になっている。だから増税・歳出削減が必要だと主張するのだが、こういった世帯にゼロ金利でカネを貸す銀行などないからとっくにこの世帯は破綻しローンの踏み倒しが行われている。最近注目を集めているMMT理論では、自国通貨を持つ国ではインフレ率が上がりすぎない限り債務を増やして良いということだ。財政を家計に例えるときは、その家計はいくらでも自分でお金を刷る権利を与えられていることを前提にしなければならない。

そもそもほとんどの人が債務のGDP比の意味を理解していないし、どうやれば減るのかも理解していない。確かに債務のGDP比が増えると危険になる場合がある。例えばアルゼンチンの経済を考える。1980年代は年率5000%という超インフレに見舞われ、それを抑えるため1ペソ=1$という固定相場制にし、通貨の信認を得て外資を入れ経済発展をした。しかし国の債務のGDP比が約50%に達したとき、財政破綻を予感した外資が一斉に逃げ出し、2001年に財政破綻した。ちなみにこのときの基礎的財政収支は黒字だった。
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1ペソ=1$という固定相場は維持できなくなり変動相場制になると一気に3ペソ=1$まで通貨は暴落した。
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通貨の価値が3分の1に下がったということは名目GDPは3分の1に下がったということであり、国の債務のGDP比は3倍の150%になった。

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要するに分子の債務は変わっていないが、分母が3分の1に下がったために債務のGDP比は3倍になったのだ。その後も債務は増加を続けるのだがGDPはもっと増えたために債務のGDP比は2011年には38.9%にまで減少している。
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アルゼンチンの例で、債務のGDP比を大きく変動させているのは、分子の債務の大きさではなく、分母のGDPであることが分かる。日本の政治家は増税や歳出削減を行って債務を減らせば、債務のGDP比も減ると思っているがそれは全くの誤解であり、増税や歳出削減を行えば景気が悪化しGDPは減少し、結果として債務のGDP比は増加するのである。このことは内閣府の試算で確かめられている。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf

そもそも国の借金とは増え続けるものであり、途中で完済するものではない。以下の図で分かるように日本の国の借金はこの130年間増え続け500万倍になっている。

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アルゼンチンは債務のGDP比が50%に上昇したとき財政破綻したが、日本は237%まで上昇しているのにまだ破綻していない。その違いは明かだ。アルゼンチンはドルなどの外貨で借り入れをしているから、返済が求められたとき外貨を十分持っていない場合は破綻するしかない。自国通貨を刷っても誰もそれを外貨に交換しようとしなければ意味が無い。日本の場合、国債はすべて円建てで発行されている。外国人が保有していたとしても、円で返済すればよいだけであり、円はいくらでも発行できるわけだから返済に困ることはあり得ない。

 

債務のGDP比は、日本のように自国通貨で借りているならいつでも通貨発行をして返せるわけで、いくら増えても問題ない。しかし財政を拡大してGDPを増やす事により債務のGDP比は減らすことができる。国土強靱化し未来への投資をしGDPを増やし、それによって債務のGDP比が減少するのだからこんな良いことはない。

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