経済・政治・国際

2019年1月16日 (水)

日本の「無税国家」化は既に可能である(No.331)

    ーーー これは池戸万作氏による投稿です ---

 本レポートは、日本の「無税国家」化の可能性について、内閣府の計量分析室が発表した経済財政モデル(2018年度)に基づいて分析したものである。表題は、無税国家は可能であるとしたが、しばし、無税国家などと言うと「そんなことするとハイパーインフレになる!」といった批判がなされるが、果たして、そこまでインフレ率は上昇するものなのだろうか。そうしたことについても、この内閣府のレポートは示唆しているのである。その前提条件としては、

①減税の効果は比例的に考える。(倍の減税をすれば、ちょうど倍の効果があるものとする。)
②増税は減税に置き換え、符号を逆転させる。(増税と減税を逆転させると同じ効果とする。)

この条件の下で、内閣府の試算を用いて、無税国家は可能であるか、その懸念材料であるインフレ率に焦点を当てて、述べていくことにする。なお、無税国家にするための財源は、国債発行(ないし政府貨幣発行)で賄えば良いだけである。

1 所得税無税国家
 これについては、11ページの④を参照にして考えてみたい。④の計量分析した条件は下記の通りである。

④個人所得税について名目GDPの1%相当を増税し、そのGDP対比で見た税収の水準を継続させる場合

 この条件においては増税となっているので、インフレ率はGDPデフレーターも消費者物価もマイナスの値で算出されている。増税するとデフレ圧力が働くという試算である。逆に言えば、減税するとインフレ圧力が働くということになる。
 それで、日本の名目GDPは約550兆円であるからして、その1%相当を増税となると、5.5兆円の増税となる。その増税額を5年間続けた場合の推計がレポートで示されている。さて、現在の日本の所得税収はどれほどであろうか。これは財務省が発表している一般会計税収の推移 にて示されている。確定した平成28年度(2016年度)のデータを見ると、17.6兆円となっている。この金額をレポートのケースで示された5.5兆円で割ってみると、ちょうど3.2となる。つまりは、レポートのモデルで示された数値の-3.2倍(減税なので符号を逆転させる)をしてやれば、所得税無税国家が実現した場合の推計値を算出することが可能なのである。では、その場合のインフレ率はどうなるのだろうか。

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 上記の表が所得税を5.5兆円した場合と、所得税収17.6兆円を無税にした場合のインフレ率を示したものである。この表によれば、所得税収を無税にしても、1年目にはわずか0.1~0.2%程度にしかインフレにならない。5年経っても、GDPデフレーターで、ようやく1%に届こうかとするレベルのインフレ率である。直近のGDPデフレーターが0.0%であることを踏まえると、例え所得税を無税にしても、日本銀行のインフレ率2%目標の達成には、5年間続けてもまだ半分にも届かないのである。2%インフレ目標の達成には、所得税無税国家だけでは全く足りず、さらなる無税化が必要なのである。

2 法人税無税国家
 次に、法人税の無税国家化を検討してみよう。そんなことをしたら、諸外国からクレームが舞い込んで来そうだが、それはさておき、これは③の条件から導ける。

③法人税について名目GDPの1%相当を増税し、そのGDP対比で見た税収の水準を継続させる場合

 先ほどと同様に名目GDPの1%、すなわち5.5兆円分、法人税を増税した場合のケースが示されている。次に、財務省の一般会計税収によれば、平成28年度(2016年度)の法人税収は10.3兆円となっている。これを5.5兆円で割ると、約1.87となるので、次は内閣府の試算から-1.87倍した場合のインフレ率を示しておく。

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 法人税の減税によるインフレ率の上昇率は、所得税と比較しても乏しく、その上、減税規模も10兆円程度と少ないため、ほとんど物価は上昇しないようである。法人税無税国家から5年後のデフレーターでも、ようやく0.4%を少し超える程度と、ほとんどインフレになる気配がない。先ほどの所得税無税国家と合わせても、インフレ率は5年後で1.4%に留まるのである。所得税と法人税をダブルで廃止してもこのインフレ率であるから、もはや、日本銀行の2%インフレ目標とは、果てしなく困難な目標のように思えてくる。

3 消費税無税国家
 3番目には消費税無税国家について考えてみたい。消費税無税国家と聞けば、平成末期の世では突拍子もないように思えるが、何てことはない、昭和の税制に戻るだけの話である。昭和は消費税無税国家だったのだから、平成の終わりと共に消費税も終わらせ、平成の次の時代も消費税無税国家になれば良いだけの話である。消費税の推計条件については以下のように書かれている。
 
⑤消費税率を1%ポイント引き上げ、その税率を継続させる場合

ということなので、消費税廃止だと、消費税8%分の減税になるので、ここでの推計に-8倍した場合のインフレ率を表にまとめておく。
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 表の通り、GDPデフレーターと消費者物価で開きがあるものの、消費税増税をすると、その分、見た目の物価が引き上げられるので、インフレ率が高まる。逆に、消費税廃止には大幅なデフレ圧力が働くことになる。これを持って、デフレ効果があるので、無税国家化が促進されると見込みたいところではあるが、年を追うごとに徐々に物価が上昇していることが分かる。なので、1年目のインフレ率を基準(0.0%)と置いて、その後の変動についても、表にまとめておくこことする。

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 表の通り、消費税を8%分減税(廃止)すると、1年目と比較して、5年目ではGDPデフレーターで0.8%、消費者物価では0.56%、インフレ率が上昇することになる。これが国税(6.3%)で17.2兆円分、地方税(1.7%)も含めると、約21.8兆円分(17.2×8.0/6.3≒21.8)の消費税廃止に伴うインフレ上昇率だと、ここでは記しておくことにする。これで主要3税廃止によって、ようやく5年目にインフレ率2%目標に達することが出来た。

4 その他の税の無税国家
 最後にその他の税金額についても見ていくこととする。平成28年度(2016年度)の一般会計税収計は55.5兆円となっている。ここから、所得税収17.6兆円、法人税収10.3兆円、消費税収17.2兆円を差し引くと、その他の税収は10.4兆円となる。その他の税の無税国家化については、先ほどの所得税の推計結果を援用することにする。

④個人所得税について名目GDPの1%相当を増税し、そのGDP対比で見た税収の水準を継続させる場合

 改めて言うと、名目GDPは550兆円なので、その名目GDP1%相当は5.5兆円になる。先ほどのその他の税収10.4兆円を5.5兆円で割ると、約1.89となるので、今度は所得税増税の推計に、-1.89倍したインフレ率の値を算出してみる。
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 表の通り、その他の税収についても、その廃止に伴うインフレ率を算出した。10.4兆円分の減税によって、5年目で0.5~0.6%程度、インフレ率が上昇することになる。

5 無税国家化に伴うインフレ上昇率
 こうして無税国家化するに当たっての各税収のインフレ率の上昇率について、算出することが出来た。最後にこれらを合わせると、インフレ率がどれほど上昇するのか、表にまとめてみる。果たして、無税国家を行うと、日本はハイパーインフレになるのだろうか。
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 これが内閣府の経済財政モデルから導き出される無税国家にした場合のインフレ率の推計である。平成28年度(2016年度)の一般会計税収計の55.5兆円に、消費税1.7%分の地方税約4.6兆円を加えた、合計60.1兆円分減税した結果のインフレ率がこれである。
 端的に結論を言うと、無税国家を行っても、ほとんどインフレにはならないのである。1年目では、ほとんど物価上昇は起こらず、2年目で1%程度、4~5年経って、ようやくインフレ率2%目標に達するほどである。無税国家にすることで初めて、「ちょうど良いインフレ率」を実現出来るのである。「そんなバカな!」と思える推計結果ではあるが、内閣府の試算結果がそのように示されているのだから仕方がない。
 ちなみに、他の項目についても算出してみると、以下のような推移となった。
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 GDPは年を実質・名目ともに追うごとに落ちていくようである。なお、名目値より実質値の方が大きいのは、消費税廃止によって物価が下がるためである。可処分所得が大幅に伸びるのは所得税廃止の影響である。長期金利は物価上昇に並行する形で上昇して、5年後には3%台に突入するようである。
以上のように、5年目にGDPデフレーターで約2.8%、消費者物価で約2.3%程度のインフレ率を容認してしまえば、日本は無税国家を実現出来るのである。この程度のインフレ率は、諸外国では当たり前で、韓国など近隣のアジア諸国がこのレベルのインフレ率であるからして、近隣諸国とインフレ率を並べる意味合いでも、日本は無税国家にすべきなのである。
 一見、夢のように思える、無税国家論であったが、約60兆円程度を減税しても、懸念材料であるインフレ率は2~3%程度しか上昇しないことが導き出された。このことから、もはや、無税国家は夢ではなく、インフレ2%目標達成のためにも、現実として行わなければならない必須政策とも言えよう。
日本の0.0%という極めて低いインフレ率によって、今や無税国家は政治家の胆力一つで、十分実現可能な現実的な経済政策にまでなったのである。異次元の金融緩和の次は、異次元の減税策を政府に期待したいものである。

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2019年1月14日 (月)

教育のAI化は如何に進めるべきか(No.330)

筆者は平成元年に教育ソフトの会社を立ち上げ、昨年まで教育のIT化、AI化を目指して頑張ってきた。残念ながらこの分野では日本は諸外国に大きく遅れをとっている。その理由の一つは政府の予算が少なすぎるということだし、もう一つは予算の使い方が間違えているということだ。例えば橋や道路であれば、使う人が余りにも少なすぎればこんなところに道路をつくったのは間違いだったということは誰でも分かる。しかし役人がカネを出して民間に作らせたソフトウエアやシステムが失敗作だったとしても一般の人も政治家もほとんど気づかない。実際は大失敗の連続なのだ。失敗の原因は、役人が将来どのように発展させていくかを考慮せず開発させるから、開発したものが1~ 2年後には使えなくなるものが多い。言っておくが筆者の開発したPC教育シリーズや写真素材集は30年後でも立派に使える。

どうすればよいのかだが、一つのヒントとなるのはインドで急成長しているオンライン教育アプリ「バイジューズ」である。11年に会社を設立し、15年から動画アプリを投入、今では社員3200人、企業価値が4000億円の未上場会社「ユニコーン」にまで成長した。バイジューズの動画は1本3 ~ 5分で図形やアニメーションも組み合わせてあり飽きさせない。このように短い動画がたくさんあると、AIを活用して受講者ごとに最適な教材を提示できる。

日本ではこのように急拡大する教育関連会社は見たことがないのだが、教育の、あるいは学習のAI化を考えればビッグデータの蓄積が欠かせない。AIを使った教育システムを開発したと宣伝する会社もあるが、ビッグデータを使わないAIもどきのものも多い。OECD加盟国の中でのPISA学力調査では日本はトップレベルにあるのだが、学校におけるICT教育は世界最低レベルである。一方では学校の先生の残業時間が長すぎることが問題になっている。例えば中学教員の8割が月100時間(過労死ライン)を超えて残業している。

未来社会は個に応じた教育をAIが行うようになる。そのような教育システムを構築するための近道は国がベースとなるコンテンツを無料で提供し、それを民間企業が自由に使ってAIを駆使した本格的な教育システムを構築できるようにすることだ。まずNHKやその他の民間企業が開発した教育用動画、静止画、音声等を高価で買い取りそれらのコンテンツを民間企業が無料で無制限に使ってシステムをつくってもらう。民業圧迫にならないようにするには、それらのコンテンツを提供してくれた民間企業に対し開発を会社が納得できる条件で委託し、更に動画を各教科、各単元用にきめ細かく追加していくとよい。国から依頼されて制作されたコンテンツは完全に著作権フリーとし、企業はそれらのコンテンツをベースに有料の教育システムを制作して稼ぐ。動画制作には日本中から優れた教師を抜擢し、最高水準の授業をしてもらう。生徒ごとに最適な教材をAIが提示し、どれだけ理解できたかの確認テストを行う。データが蓄積すると、どの先生がどういう教え方をした場合が最も理解度が上がるかがわかるようになり更なる改良の糸口が分かってくる。この方法で授業の質が上がっていけば、やがて先生がいちいち授業をするよりこのAI主導の動画システムで教育したほうが学力が向上すると分かるようになり残業が厳しい学校の先生の仕事が軽減される。しかも個人ごとの履歴よりAIはどの生徒はどの分野に進むべきだというアドバイスも的確にしてくれる。そのためのその生徒の長所を伸ばす特訓もしてくれるだろう。

日本にも優秀な児童・生徒がいる。例えば小学二年生の高橋洋翔君は数学準一級に合格した。これだけできればすでに大学入試は余裕で突破できる。彼は小学5年で数学一級に合格し、すでに世界的に有名な数学者と共同研究を行っておりすでに研究業績もある。こういった天才的な子供たちには特別な教育をしなければならないのだが、それができていない。例えばアメリカだと飛び級という制度があり、また特別な才能がある子供、つまりギフティッドを発掘し、「ギフティッド教育」という特別な教育を受けさせている。こういった子供たちを適切な教育を行ってこなかった日本だが、今こそAIを使ってそのような教育をすべき時だ。

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2018年12月22日 (土)

内閣府が試算を発表:政府支出を拡大すれば国の借金は実質的に減少する(No329)

12月19日に内閣府は「経済財政モデル(2018年度版)」を発表した。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
このモデルは内閣府が毎年2回公表している「中長期の経済財政に関する試算」を行うために使われている。そして今回の試算は様々な政策を政府が実行した場合に、日本経済にどのような影響が現れるかを詳細に示したものであり、我々は何年もの間このような試算をするように内閣府に求めてきた。これはそれに答えるものであり極めて貴重な資料である。

特に重要なのは②の「政府支出を5年間毎年約5兆円増やしたときどうなるのか」についての分析である。日本においては政府支出を増やす事は将来世代へのツケを増やすから悪いことだとされている。国の借金が今の10分の1であり財政は全く健全であった1982年にすでに政府は財政非常事態宣言を出している。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/no327-c485.html
日本は世界一財政を拡大するのを嫌う国であり、緊縮財政を30年以上続けており、その結果需要不足のため急激に衰退している。今回の内閣府の試算は政府支出を毎年5兆円増やしたときどうなるかを示した画期的な試算である。詳しくは上記論文の9頁の②を見て頂きたい。
【政府支出を毎年5兆円増加させる場合1年後はどうなるか】
可処分所得は0.60%増加
消費は0.26%増加
設備投資は0.19%増加
名目GDPは1.16%増加
財政赤字は4.733兆円増加
税収は1.257兆円増加
その結果国の借金のGDP比は1.62%pt減少する。

つまり将来世代へのツケは実質的に減るのである。
え!っと驚く人がいるかもしれないが、国の借金の増え方よりGDPの増え方の方が早いのだからこれは当然の結果だ。日本以外の多くの国は財政拡大にそれほど抵抗がなくGDPがどんどん増えるので、国の借金が増えても借金のGDP比は大きくならないのである。つまり政府支出を増やすと、通常の日本人が考えるのと逆に将来世代へのツケは実質的に減る。もちろん、インフレ率が高くなりすぎているときは、それ以上歳出は増やすべきでなく、引き締めに転じるべきだが、日本のように非常に長期間デフレ脱却ができていないような国では、歳出拡大が景気をよくし、デフレから脱却でき、しかも債務のGDP比も減らすことができるのである。そして景気がよくなり過ぎて、インフレ率が高過ぎるほどになったときは緊縮財政に転じれば良い。

上記の内閣府の試算だが、債務のGDP比が減少するのは最初の3年間で、それ以降は増加に転じるとある。これは景気上昇で金利が上がることが仮定されているからであり、日銀が強力な金融緩和を続けゼロ金利を続けるなら4年目以降も債務のGDP比は減少を続ける。今回の内閣府の試算は大変興味深いものであり、更に詳しくモデルの内容を電話で質問した。それに対して内閣府の方は丁寧に答えて下さった。その会話で内閣府と我々とでは考えの違いはほとんどないと感じた。以下はその質問の内容と内閣府の回答を示す。
――――――――――――――――――――――
Q 12月19日に発表された経済財政モデル(2018年度版)についてお聞きします。
2010年から2018年まで発表がなかったのはなぜですか。
A この間東日本大震災もありモデルを出す機会が無く、経済の状況が変わり続けていたから。
Q 今回は政府支出を実質GDP1%増やす場合の乗数を出している。2010年度版は公共投資の場合を考えていた。どうして変えたのか。
A モデル上では政府支出も公共投資も同じような効果を持つようなモデルができています。特段予断を与えないというかモデル上ではどちらを増やしても同じ軌道を示すものでしてそこは分かりやすいように政府支出をまとめたという形です。
Q 政府支出と言っても色んなものがあって公共投資も含まれているのですよね。
A はい。
Q それぞれで乗数が違うと思うのですが。公共投資以外は乗数が落ちるとかということはありますか。
A 確かにどの項目を増やしたら乗数が変わるということはあるとは思いますがこのモデル上ではそういった細かい点は反映してなくて、例えば公共投資を増やしたら生産性が上がるといったようなことは織り込んでおらず、単純に実質GDPの構成項目が増える事により乗数効果が発生するというようになっていまして、その点ではこのモデルは単純化しています。
Q 前回は公共投資に限っていましたね。
A 前回も同じで政府消費でも公共投資でもモデル上では同じ効果になります。公共投資だと言って生産性に与える違いは考慮してない。つまり公務員給料で払っても公共投資に使っても同じということにモデル上ではなっています。
Q 実際は違いますね。
A はい。厳密に見れば違います。
Q 平均したような感じで入っているのですか。
A そうですね。
Q ということは、内容は今回と前回とで変わっていないのですか。
A そうですね。大きな変化はないと考えています。
Q 実質GDPの1%増やすということは5兆円くらい増やすのですか。
 政府支出は100兆円くらいですか。
A 政府支出は130兆円くらいありますから5兆円は4%くらいです。
Q 5年間続けると金利が上がってくるのですか。
A そうですね。クラウドアウトしている。
Q 5兆円くらいを政府が使うから民間が使えなくなるという感じですか。
A そうですね。
Q 政府が国債を発行すれば民間の資金を取り上げることになるということですが、今マネタリ-ベースが500兆円くらいありますね。
A そうです。
Q 5兆円くらい使ってもとてもクラウディングアウトなど起こらない気がするのですが。
企業の内部留保も300兆円くらいあるし、5兆円など取るに足りない気がするのですが。日銀が国債を買っていますね。もともと年間80兆円日銀の保有残高が増えるように買っていたが、もうそんなに買えなくなりました。
A この乗数分析上はゼロ金利は外しています。
Q ゼロ金利ではないんですか。
A はい。だから金利が上がっています。今のゼロ金利を維持するための国債の買い入れ額をそのまま維持するという形ですね。
Q 経済財政の中長期試算も出していますね。
A はい。
Q その試算だとゼロ金利は暫く続けるとなっていますね。
A はい。
Q このようにトントン金利が上がっていくようにはなってないですね。
A はい、なってないです。
Q それと整合性はどうなっていますか。
A 乗数の考え方は、今のゼロ金利をするために日銀が手を打っている内容をそのまま続けます。ただしこの乗数のショックを与えたときには、この場合だと資金需要が高まったので国債を売りますという新たな経済の動きに対応して日銀が対応することは無いということです。今の買い入れ額をそのまま維持するということです。
Q 買い入れ額は年によって随分変わっていますね。年間80兆円と言っていたのがどんどん下がっていますね。もう買えないから下がっているのであって、財務省がもっと国債を出してくれれば買えるようになる。これを見ると物価の値上がりも僅かです。もともと2%のインフレ目標ですから、その目標に達するまで国債を買うと思います。もしも経常赤字が続いていてもうカネがないという小さな国であれば資金を民間と政府で取り合いにあって、国が多く使うと民間が使えなくなるという状況になるのですが、日本はそういう状況にはありません。
A そうですね。
Q 現実離れというか、日本の経済を表しているように見えず、これはどこの国の経済だろうと思ってしまいます。日本経済に即した計算をしたほうが良いのではないですか。日銀も長期金利の誘導目標を2016年に0±0.1%、2018年に0±0.2%としましたが、現在は長期金利0.03%くらいでしょうか。非常に低いですね。日銀のホームページにも書いてありますが、マイナス金利と大規模な国債買い入れが長期金利全体に影響を与える上で有効と、つまり長期金利はコントロールできると日銀も宣言している。だからこと長期金利の誘導目標を0%と高らかに宣言した。日銀はやりますと決意を言っている。金利が上がってきたら下げる。ずっと下げるわけでもないでしょうが景気が回復するまで下げると言っているわけですから、それに即したモデルにしなければまずいと思います。
A 実際に金利が上がってきたときは対応するでしょうが、モデルでは日銀の主体的な行動といったものは織り込んでおらず、単純にモデルの動きを示しています。
Q 日銀がゼロ金利を続ける場合と続けない場合との両方を出した方が良いと思います。かなり影響があるでしょう。金利が経済に影響するしGDPにも影響します。
A そうですね。
Q 金利が上がったらどうなるかも8番目に計算してあります。
A はい。
Q 金利が上がれば経済が減速するが、経済を減速させなければならない状況かということです。消費者物価が少ししか上がってないのでこのくらいの景気対策ではまだまだでしょうから金利を上げる必要はありません。短期金利も長期金利も0%にしておくと状況はかなり変わってくるでしょう。
A そうですね。この乗数表自体はモデルの挙動を単純に見ることが主旨です。
Q 現在の日本経済の実態を表していないと思うのですが。
A 8番の乗数で金利を上げたときの影響が示してありますから、それと合わせて見て頂けるとよいかと思います。
Q ですから金利が上げなければもっと経済がよくなっていただろうというのは分かりますね。
A そうですね。2と8の乗数を組み合わせれば分かります。
Q 金利が上がれば円高になりますね。
A そうです。
Q 金利を抑え続ければ、円高は阻止できる。つまり金利を抑えた方が経済にとってはよいですね。
A そうです。
Q デフレ脱却が大きな目標ですから。
  2010年の試算では輸出が大きく増えている。今回の試算では輸出はほとんど変わらない。
A そうですね。輸出の周りは若干モデルが変わっていて、昔のモデルは輸出を考える時に為替の他に輸出余力というのか、GDPギャップがあって生産過剰のときに輸出に回すといったことにしていた。今回のモデルはそれは考えてない。
Q 両方のモデルともGDPギャップは下がって行きますね。
A じつは、2010年度版はGDPギャップの符号が逆になっています(定義がマイナス1倍という意味)。つまりプラスが供給超過を表している。今回はプラスが需要超過になるようにした。
Q 前回のものは長期金利は5年間ほぼコンスタントだったが、今回はどんどん増えていく。だから前回に比べクラウディングアウトが強く効くということですか。前回は日銀は異次元の量的緩和してなかったし、今回はしてますからその意味では今回のほうがクラウディングアウトは起きにくいと思うのですが。
A そのへんの日銀の努力は考慮に入っていなくて物価とGDPギャップの関係を捉えていて、金利が上がり続けるのは物価の動きを反映しています。物価が高くなるのでそれに引きずられて金利も高くなる。ただGDPギャップが修復に向かっているので、これをもっと伸ばした場合は徐々に戻っていくと考えられます。
Q 可処分所得は最初の年が0.60%で5年目は1.03%となっている。つまり可処分所得は増える。ところが消費は減っていって、4年目、5年目はマイナスになっています。これはどうしてですか。
A これは物価が高くなっているので消費性向が下がっているからです。
Q 物価が上がれば可処分所得が増えても消費が減るのですか。
A 物価が上がれば消費の意欲が減っていくということ。
Q 実質の可処分所得が増えれば消費は増えるのではないですか。
A 実質が減るのもありますし、消費者が消費をしようという動機も減る。
Q 動機までがモデルに入っているのですか。
A 消費者物価が期待物価より上がってしまうと今買うのを止めようということになります。
Q 心理的なものまでモデルに入っているのですか。
A そうです。
Q 設備投資も同様ですか。
A これは金利が上がった影響ですね。金利が上がって借りられなくなる。
Q 借りられなくなると言っても内部留保が300兆円もあるのですよ。借りなくてもいいじゃないですか。銀行は貸さないかというと今は融資先を見つけるのが大変な状態です。国が僅か5兆円の国債発行をしたところで、日銀が毎年何十兆円も円国債を買っています。それを考えたら5兆円など雀の涙で、ここに考慮すべきでは無いと思いますが。
A 直近まで回帰した結果こうなりました。
Q これは小さな国で、経常赤字が続いていてお金を出せないというような国で、民間と国がカネの取り合いをしているというようなモデルですね。
A 2016年まで回帰しています。80年代から2016年まで回帰していますから。昔の影響も多少捉えています。
Q 昔の状況は参考にならないと思います。状況は違うでしょう。マネタリ-ベースが500兆円というのは大きいでしょう。日銀当座に400兆円も入っています。それを使おうと思えばいくらでも使えるわけで、それに比べ5兆円というのは取るに足りないと思います。国債の品不足というか取り合いになっていて資金不足どころか資金がもの凄くだぶついています。もともとこんなマネタリーベースは要らないですね。昔はマネタリーベースは全然少なかった。数十兆円で十分だった。それで足りるのだけど、異常な異次元金融緩和をやっていて大変なカネ余りになっている。
A モデルに反映しているのはフローなので、ストックは反映されていない。そういうところもあるかもしれない。
Q 現在の実情にあってないですね。
  公債等残高ですが、政府支出を増やしたら、普通の人は借金が増えるだろうと思うのですが、この計算ではGDPのほうがもっと増えるから、債務のGDP比は1年目は1.62%減少、2年目は1.11%減少、3年目も0.35%減少です。4年目、5年目は増加になってますね。
A そうですね。
Q だんだん借金が積み上がってGDPの増加ではまかないきれなくなってくる。これが金利上昇がかなり効いていて、金利上昇で名目GDPも押さえられているし、税収の増加も抑えられている。もし金利上昇が無かったらもっと物価も上がるだろうし名目GDPも増えます。この場合4年目、5年目もマイナスが続くと思います。
A そうですね。分母が大きくなるので改善しますね。
Q ですから政府支出を増やす事が果たして将来世代へのツケを増やす事になるのかという事ですね。むしろ減らすのではないかと想います。
A はい。
Q 乗数そのものがこのモデルでは小さすぎる気がします。他のモデルでは乗数はもっと大きく、名目GDPももっと増える。日経NEEDSなどで計算してももっと大きな乗数になり、GDPがそれだけ伸びると公債等残高のGDP比がもっと大きく減っていく。
A はい。
Q であれば、政府支出を増やせば将来世代へのツケは実質的に減っていくと思うのですが。
A このシミュレーションだと実質GDPがだんだんショックを与える前の値に収束していく。長い目でみると、つまり20年、30年というような先を見ると同じような水準になって・・・
Q どうしてそうなるかと言えば、民間と政府で資金の取り合いを行い資金が足りなくなる。政府が資金を使いすぎると民間は使えなくなるから結局政府がやってもやらなくても同じになるという考えですが、実は資金はマネタリーベースを見れば500兆円もある。だから5兆円を政府が使っても民間の資金を取り上げているということにはならない。政府も使うが民間も使ってくれと言っているのです。国は異次元緩和で資金を供給しているし、まだまだいくらでも資金を供給できると言ってなんとか2%のインフレ目標を達成しようとしているわけです。民間がなかなか使わないので政府が率先して使うとGDPが増える。限界はありません。
A いずれにせよ、需給はだんだん収束していくように調整されていくので名目GDPが増えても潜在GDPが上がらないとだんだん潜在GDPに収束していきます。
Q でも、潜在GDPがなんであれ、物価が上がれば、名目GDPが増え、債務のGDP比は減ってきますね。
A そうですね。
Q 実際、もっともっとインフレ率の高い国だと債務のGDP比は日本のように200%などではなく30%、40%程度に収まっています。どうして収まっているかといえばそれはインフレのお陰ですね。だからインフレが進めば債務のGDP比はあっという間に下がってしまう。今、債務のGDP比が200%くらいだけど、これが300%、400%というように上がっていくかというとインフレが進めば絶対にそんなにならない。インフレ目標2%に達することができれば1000兆円の2%は20兆円ですから、2%のインフレ率なら何もしなくてもその程度借金を減らしたことになる。
A そうですね。
Q だからインフレが進めば、公債等残高のGDP比は減っていく。だから景気対策として政府支出を増やした方がいいという結論になりますよね。
A ちょっと、バランスの問題ですね。公債を減らすだけのインフレができるのであれば・・・
Q 借金を返すと言っても今財政黒字にはできないですよ。黒字にすればもの凄いデフレになります。公務員の給料も払えなくなります。ワニの口と言っていますが、財政黒字になるほど歳出削減をするのは無理でしょう。
A 歳出削減だけでは無理ですね。
Q 歳出削減と増税をやっても借金を返せないです。この試算の結果によれば10兆円の歳出削減をするとGDPが大きく下がりますから借金のGDP比は増えますよね。
A はい。政府支出を減らすのですから債務のGDP比は増えます。
Q 1年目が終わりまた2年目も同じようにやればまたGDPが減り債務のGDP比は更に増え、悪循環でデフレはどんどん進むだけで結局債務のGDP比は減ることはないですね。
A そうですね。下手するとそうなることもあり得るということです。
Q この計算では債務のGDP比が4年目、5年目にはプラスになるとありますが、例えば3年目になったときに、また乗数を計算してみるとやはり同じような乗数が得られると思いますよ。そこで政府支出を増やすのがよいのか、減らすのがよいのかと考えると、やはり増やした方が債務のGDP比を減らすにはよいということになると思います。4年目、5年目がプラスになっているというのがミスリーディングで、クラウディングアウトというトリックを使ってわざと景気を悪くしている。そのトリックは通用しない。日銀はいくらでも国債を買えるので少しでも金利が上がってくれば国債を買い増せば良いだけです。財政出動を拡大していけば景気は良くなる。ある程度景気がよくなると、日銀当座に400兆円を貯めていくのが馬鹿馬鹿しくなってお金を使い始める。そうすると景気が加速度的に上昇する。
A モデルはプレーンな状態でやっているので、実際の経済はいろんな制約とかある。
Q 将来への期待を入れる。例えば物価が上がってきたとする。その時マネタリーベース500兆円がそのまま塩漬けにしておくわけないし、皆さんほぼゼロ金利で銀行に預けたままにしておくわけない。何か運用しようとする。景気が良くなってきたら株も上がる。その時お金が動き出す。ある程度のところに行けば皆さん将来に期待してお金を動かし始める。
A どういう支出をするのかという問題になってきますね。
Q モデルも考えなくてはいけないのではないか。
A 恒に改善は行っているところであります。
Q 日銀はゼロ金利を維持するが、ある程度景気がよくなって物価が上がってきたらゼロ金利をいつまでも続けるわけにもいかないでしょうから、それも考慮しなければいけないでしょうね。中長期試算は来月あたりに出ますか。
A そうですね。今のところは今までと同じような形で、
Q 毎年毎年名目成長率などは下方修正をずっと続けていますが。
A はい。
Q もっと実際に即した試算を出して頂ければ政府もいろいろ考えるのではないかと思うのですが。この試算を見て政府が今の政策で良いのだと思ってしまう。ちょっと成長率が上振れしすぎていて、これはまずいのではないかと思います。もっと実情を反映したもっと厳しい現状を説明し安倍さんを説得して頂いた方がよいのかと思います。2番の乗数を見て頂いて歳出を拡大した方が良いのでは無いかと気付いてもらいたい。消費増税をやるような時じゃないでしょ。財政拡大で将来世代へのツケはむしろ下がるということを安倍さんが知ればやるきになるのではないかと思います。乗数を出して頂いたことはよかったと思います。2010年からずっと出ていませんでした。
A そうですね。
Q これから毎年乗数を出しますか。
A ちょっとそれは分かりません。
Q 有り難うございました。今後も頑張って下さい。

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2018年12月 9日 (日)

AIが人類を生活のための労働からの解放する【解放主義社会】(No.328)

AIの進歩は著しい。数十年後には雇用はほぼすべてAI/ロボットに奪われていると予想される。ロボットばかりの巨大な独占企業は労働者を雇わなくても良く、莫大な利益を上げ続け規模が拡大し続け、国への影響力もつけてくる。一方で労働者は不要となり、失業者が激増する。そこでは人間はAI/ロボットではできないような仕事を探さなければならないのだろうか。AI/ロボットが究極まで進化した場合、一般人がそのような仕事を見つけるのはほぼ不可能である。そうであれば、多くの人は失業し「働かざる者食うべからず」ということなら、大部分の人は飢え死にしなければならない。小さな政府が良いのだと決めつけ、市場を神の見えざる手に任せておけば良いと考えていたら、人類の未来は地獄だ。しかしながら、国が何らかの方法で国民にお金を配ることさえできれば誰もが安心して生活できる。だから国民全員一律に一定額を配布するというベーシックインカムという方法が提案されている。しかしそれには労働意欲が失われ、巨額の財源を確保するのが難しいというような様々な欠点があり、その対案として筆者は別な社会制度(解放主義社会)を提案する。

 

 

解決策はAI/ロボットばかりいて人を雇わない巨大企業を国有化して、その利益は国民に還元すればよい。労働はすべてAI/ロボットに任せ、人間は各人がやりたくなる仕事ができるようなシステムを政府がつくり公務員として雇えば良い。例えば作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師、等がある。現代では、このような職に就こうと思えば競争に勝たなければならないが解放主義社会では競争に勝てなくても自分が好きな職業に就けるようにする。社会主義あるいは共産主義社会では平等を重んじ、弱い立場の労働者の権利を守ろうとした。その結果頑張る人も頑張らない人も平等に扱われだ。それなら頑張らなくてもいいいと人は考え生産性が落ちて国全体が貧乏になった。解放主義では頑張る人の報われる社会である。必要に応じ国が国民のために雇用をつくる。このことをJOD(Job-on-Demand)と呼ぶことにする。

 

ベーシックインカムという方法では、国民全員に同じ金額を毎月支給するので、行政コストが安いというのがメリットとされる。しかし、未来社会では行政もAI化され、コストはかからない。各人の仕事ぶりがデータ化されそれをAIが評価し、給料を決める。最低の給料でも十分暮らしていける。例えば多くのファンを持つ歌手であれば、収入は多いのは現在と変わらない。コンサートで入場料を取り、その一部が歌手の収入となる。ヒット曲の出ない歌手であっても、暮らしていけるし時々国主催のコンサートを開いて貰える。人間そっくりのロボットが歌手としてデビューするからプロ歌手のライバルとなる。国は豊富な財源を持つので、様々な分野の研究を大々的に行うようになる。ただし研究においてもAI/ロボットが人間を上回るようになる可能性はある。

 

各人の給料は、様々な要素を調べ回帰分析でAIが決定する。給料を決定する要素としては

①労働時間 ②その仕事が社会的にどれだけ必要とされているか ③他の人からどのように評価されているか ④例えばプロ野球の野手なら打率、ホームランの数、盗塁数など

⑤他に収入があるかなどである。最低限の収入を保証するのだからベーシックインカムの考えに近いが頑張れば収入が上がるのでインセンティブになる。自分で十分稼げるなら公務員にならなくてもよい。公務員でありながら別の仕事で稼いでもよいが副業と公務員の収入の合計がいくらになるかはAIが判断する。AIはどのようにすれば国民が最も幸せになるのかを判断し給料を決める。

 

政府のAI化も進めるべきである。現在の日本政府は国の借金を減らすことばかりを考えている。これは政府の重大な判断ミスであり、これが日本経済を衰退させている。実際日本の対外純資産は世界一であり、世界一の金持ちの国なのだから、政府はもっとお金を使っても良い。AIならこのような初歩的なミスはあり得ない。国の借金が今の10分の1であり財政は全く健全であった1982年に政府は財政非常事態宣言を出している。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/no327-c485.html

 

そもそも国の借金というものである。日本の国の借金は過去コンスタントに増え続け、過去130年間で500万倍になっている。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/no301-a00c.html

国は通貨発行権を持っており国は借金をする代わりに通貨を発行して経済活性化を助けることもできた。経済成長には通貨を増やしていくことが必要であり、それは成長通貨と呼ばれる。実際江戸時代には毎年のように通貨増発(改鋳)を行い経済を活性化させていた。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-7af5.html

 

通貨増発を始めると止められなくなり、最終的にはハイパーインフレになると言われることがある。これは人間が行った場合であり、AIが経済政策を行う場合は全くその心配はない。日本経済は政府がバブルを崩壊させて以来現在まで経済成長はほぼストップした。これは完全な政策ミスであり、もしAIが経済政策を担当していたら今頃日本のGDPは現在の約2倍になっていたと考えられ、AIに経済政策を任せる意義はきわめて大きい。

 

国民の声を政治に反映させるという意味においても現在はうまくいっていない。国民のごく一部が政治家に陳情し、そのうちのごく一部が行政に反映されるだけで、強力な圧力団体を持つ場合が特に優遇される。

未来における解放主義社会では政府はAI化され、国民全員がネットで陳情できる。膨大な陳情データをAIが分析し、国民の幸福を最大化する予算配分を定める。景気刺激のためには公務員の給料を引き上げれば良く、不況にはならないし、国民に不安を与えない。死ぬまで公務員給与は支払われるから年金も不要となる。

 

社会主義思想では平等な社会を目指し、労働者の権利を守ることに重点が置かれたが、未来の解放主義社会では、AI/ロボットの登場によりつらい労働からの解放、貧困からの解放をする。

 

 

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日本は1982年から財政非常事態だった??(No.327)

―国の借金は僅か96兆円なのに、首相は引責辞任―

 ここに示すのは、1982年の朝日新聞の記事である。これは非常に面白いのでここで紹介する。

結論から言えば、1982年から日本の財政は「非常事態?」であったそうだ。その当時国の借金はたった92兆円。これで非常事態?!と、今なら笑ってしまうだろう。1982年から現在まで、借金が10分の1の頃から毎年財政危機を言い続けてきた政府・財務省。まさにオオカミ少年だ。通貨発行権を持ちお金が無ければいくらでも刷れるのに、財政危機などあるわけがないのに、どうして国民は騙され続けているのだろうか。

「財政非常事態宣言」が出された1982年の新聞を読むと面白い。現在とそっくりで、「財政危機」という存在しない魔物におびえているのだ。魔物は存在しないのだが、それに対する恐怖感が日本経済をじわじわ破壊している。当時(1982年)の新聞の記事を紹介しよう。9月2日の1面には「国債償還政策を転換 大蔵省方針」とある。赤字国債は10年で返す方針だったが、返しきれないので借換債を発行する方針にしたのが、政策転換だった。これを新聞では「財政“サラ金地獄に”」と酷評してある。

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このように朝日新聞は恐怖を煽る表現をとっているが、その後現在まで借金を増やし続け、残高が約10倍になるまで増やしても、利子は下がる一方というのだから、サラ金ならあり得ないことだろう。全く当時から新聞は無責任だったということだ。恐怖を煽ることをせず、経済の健全なる成長を第一に考えて経済財政運営を行っていたら、今頃日本は世界で最も豊かな国であり続けていたことは間違いない。

当時は不況だったようで、9月10日には「景気対策を急げ」と安倍通産大臣と河本経済企画庁長官が迫ったが、鈴木首相や渡辺蔵相は消極的だったとある。二階堂幹事長や公共投資推進議員連盟会長の金丸氏が9月中に景気対策を取りまとめ政府に申し入れたいと言っている。僅か96兆円しか国の借金は無かったのだから、思い切った景気対策をやっておけば、景気は回復し、税収が増えて財政は健全化しただろうが、実在しない魔物への恐怖感がじわじわ影響力を増してくる。

その証拠に9月16日に鈴木善幸首相は、財政危機を国民に訴え、不況にも拘わらず国民に負担増を要請している。新聞には「人事院勧告は凍結の方向を示唆」「厚生・国民年金 物価スライド中止、歳出削減大蔵方針、恩給・共済も凍結へ」と厳しい経済政策の見出しが並ぶ。こんな政策は不況の時にするべきではない。世界経済が世界的高金利のお陰で停滞し、それが日本を襲い歳入欠陥は5~6兆円に及ぶ。景気後退で、自民党の支持率も落ち不支持が支持の2倍になった。

朝日新聞の9月2日の社説には「歳出削減に小細工するな」とある。2年後となる「昭和59年に赤字国債からの脱却」という公約を鈴木首相がしていたわけで、それを達成するには、来年度2兆円の赤字国債の減額をしなければならないとある。財政当局は「ぜい肉はおろか、骨まで削る」ことをスローガンにした。その後、「骨の髄までえぐり出す」とまでエスカレートした。

現在の僅か10分の1程度の国債残高で過剰反応をしているのは滑稽に思える。しかし、このとき政府・財務省が気にしていたのは利払いなどに必要な経費が、この年の予算で7兆8000億円に達していたことだ。これは公共事業費の6兆7000億円を上回っていた。現在は国債費は23兆円、そのうち利払いは10兆円程度なので、借金が少ないわりに、利払いは随分多いことが分かる。それもそのはず、1982年の公定歩合は5.5%、長期金利は8%程度だった。現在長期金利は0.1%程度だから同額の国債でも利払いは数倍にもなったわけだ。現在の国の借金残高で当時の金利なら毎年の利払いだけで50兆円を越し、税収と同額レベルになっただろう。つまり政府は景気が回復し金利が上がっては困ると考えており、これでは日本経済は衰退するばかりだ。

鈴木首相は9月16日の午後「財政非常事態宣言」をした後、記者会見をしている。そこでは来年度予算では聖域を設けず歳出カットをしていく。同時に特別会計から一般会計への繰り入れ、国有財産の売却、特殊法人からの剰余金の繰り入れなど、最近まで政府が言っているようなことをそのまま述べている。そして赤字国債からの脱却という公約が守れそうにもないということで、鈴木首相は10月12日に責任を取って退陣することを表明している。

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「財政危機」という、想像上の魔物に1982年からずっとおびえ続けてきた日本。その間魔物は日本人の心の中に存在し続けたが、誰も見たことがないし、そんなものいるわけないのだ。なにしろお金を刷れば、簡単に魔物は退治できるのだから。しかし、魔物に対する恐怖感で日本経済は確実に衰退の一途を辿っている。1982年には、なんとこの魔物が首相の首さえ奪った。こんなことで、首相の首が飛ぶようでは、首相の首はいくつあっても足りない。当時のレベルでは世界的に見て、この借金のGDP比が決して多いとは言えないし、外国から借りた借金ではないのだから、諸外国同様何の気にする必要は無かったし、もちろん責任を取らなくても良かった。

そろそろ、架空の魔物におびえるのをやめたらどうだろう。国の借金(外国から借りたわけではないのだ)のことは忘れて、むしろ経済を活性化するには、どの程度減税をし財政支出を拡大するのがよいかを、マクロ計量経済モデルで徹底して分析し、その結果に従って経済政策を行う時が来たのだと思う。

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2018年12月 3日 (月)

IMFの「40年後日本のGDPが25%減」という説に反論(No.326)

IMFは11月28日に発表された報告書で「日本は人口減によって今後40年で実質GDPが25%以上減少しかねない」との試算を示した。2058年のGDPを予測したと豪語している。要するに日本の財務省がIMFという名を借りて「移民を大量に入れないと大変なことになるぞ」と脅しているのである。しかし人口が25%減少しGDPも25%減少するのなら一人当たりのGDPは変化しないのだから主張はおかしい。

日本の未来に関しては、専門家の見解は収束しつつある。その代表例として鈴木貴博著『仕事消滅』から引用する。
①2025年には自動運転車の普及によりタクシードライバーや長距離トラックのドライバーの仕事が消滅する。これは123万人の雇用に相当。同じ頃、デイトレーダーの仕事も消滅。
②2030年頃パラリーガルと呼ばれる弁護士の助手の仕事、銀行の融資担当者等の仕事がAIにとって代わられ消滅する。
③2045年から2050年頃には人間と同じ能力を持つロボットが実用化される。そのとき人類の90%の仕事が失われる。

人口問題研究所の予測では2058年の日本の人口は9377万人であり現在より約25%減少する。25%人口が減れば25%GDPが減るというのは単純過ぎる計算だ。人類の90%の仕事をAI/ロボットで代替できるのであれば、少なくとも25%の人口減少は生産には何ら影響しない。それどころか、人が有り余るわけだから、外国人など入れるべきでは無いということになる。90%の仕事がAI/ロボットに奪われた経済はどのようなものかを具体的に仮定しなければGDPは計算できないはずだ。

実質GDPが40年間下がり続けるという国は見たことない。日本も40年前に比べれば実質GDPは約2倍になっているし、60年前に比べれば10倍以上になっている。今後、AI/ロボットが次々と人間の仕事を奪うとなれば、生産性は激増するわけだから実質GDPが上がらないわけがない。日本経済は成熟しているからもう発展の余地はないと言う人がいる。しかし、一人当たりの名目GDPは先進国では最低だからまだまだ成熟していないし、米国など日本よりはるかに成熟している国もずっと高い成長率を続けている。

AI/ロボットで人手が不要になれば、人件費が浮くわけだから財・サービスの値段は下がる。例えば自動運転車によるタクシーなら料金は7分の1になると言われている。例えば物価が平均で50%下がったとし、しかもベーシックインカムなど使い可処分所得は変わらなかったとしよう。消費額も変化しないから名目GDPは変わらないが、物価が2分の1になれば、実質GDPは2倍になる。今月から4K8Kテレビの放映が始まった。NHKの受信料も来年、再来年と4.5%程度値下げをする。携帯料金も下がりつつある。パソコンもデジカメも多くの家電も性能は上がり、その割に値段は上がらない。これらは物価を押し下げ実質GDPを押し上げる。全日本、いや全世界の人々が協力して暮らしを豊かにしようとして絶えず努力しているわけであり、40年間実質GDPが上がり続けることはあっても下がり続けることはあり得ない。もし本当に下がり続けるとしたら、それは実質GDPが暮らしの豊かさを表す指標としては相応しくないということを証明するものとなる。

ここで言いたいのは、財務省はIMFという名を借りて欺瞞的な試算を出すべきでないということだ。

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2018年11月28日 (水)

外国人単純労働者を入れるより、最低賃金を引き上げよ(No.325)

人手不足解消のため外国人単純労働者を入れるより良い方法がたくさんある。ここでいくつか提案する。

【提案1】最低賃金を引き上げよ

平成29年度の法人企業統計によると企業が蓄えたもうけを示す内部留保が前年比9.9%増の446兆円になった。また企業が稼ぎを人件費に回す割合を示す労働分配率は66.2%にまで下がり、43年ぶりの低さとなった。これらのことは企業にとって賃金を上げる余地が十分あることを示している。

日本の最低賃金は、G7の中で最低賃金のないイタリアを除けば低い方から2番目である。一方安倍首相は毎年最低賃金を3%上げると言っており、平均賃金が上がらないまま最低賃金はじわじわ上がっている。
                      出所:厚生労働省
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2018年9月時点の有効求人倍率は1.64倍で、1974年1月以来の高水準になった。また同月の完全失業率は2.3%だった。これは安倍首相がアベノミクスの成功をアピールするための宣伝材料になっているのだが、不都合な事実もある。実質賃金は下がり続けており、1997年を100とすると2017年は86.8まで下がっている。

                    出所:厚生労働省
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来年は消費増税もあり、実質賃金は更に下がる。一方でベトナム、ネパール、中国、フィリッピン等近隣のアジア諸国の賃金は急激に増加しており、日本だけが没落しつつあるのは明かだ。次のグラフは11月22日の東京新聞より引用する。

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韓国では文在寅大統領が. 2年間で29%も最低賃金を上げると決めたがこれだと日本の最低賃金を上回ってしまう。韓国の体感失業率は11.8%と言われ、急激な最低賃金の上昇は雇用を更に悪化させてしまうから経済には悪影響がある。

日本は逆に失業率は極めて低い。賃金が低すぎるために本来退場すべき企業ですら、低賃金でも人が集まるなら利益が出せるということで求人をするから有効求人倍率は高まる一方である。そのため人手不足を補うため低賃金で働く外国人を大量に入れようとしている。筆者は最低賃金を思い切って上げることを提案する。低賃金で募集していた会社は給料を上げ、自社製品の値上げをするかもしれない。この場合はデフレ脱却にはプラス材料だ。あるいは募集をあきらめるかもしれないが、この場合、人手不足は緩和され低賃金の外国人を入れる必要がなくなる。下がり続ける実質賃金も上昇を始め可処分所得の増加で内需拡大となる。企業には積み上がった内部留保があり賃上げの余力はあるし、労働分配率も回復してくるであろう。政府は景気失速を防ぐため最低賃金を上げると同時に強力な経済対策を行うと良い。特に人手不足に対応するための自動化への強力な資金援助は最大限行うべきであり、AI技術の開発に関しては大規模国家プロジェクトとして行ってもらいたい。もちろん、消費増税はストップすべきだ。

筆者は2005年に『労働はロボットに、人間は貴族に』という本を書いた。AI/ロボットが雇用を奪ったら、人間は貴族のような生活ができるというもの。しかしその大前提は、やらなくてもよい仕事は辞め、もっと大切な仕事に労働者を移動することである。やらなくてもよい仕事とは、低賃金でなければ利益が出ない仕事だ。重要な仕事は給料を上げでも利益が出る。製造業であれば商品の値上げをしても売れる、サービス業でも人気があればサービスの価格を上げても需要がある。

デフレ経済では賃金を上げなくても人は集まる。その惰性で企業は賃上げをしない。この状況をいつまでも続けてはいけない。ここは最低賃金を上げ、大規模経済対策をすれば、それが引き金となり賃金が上がり始め、失われた20年が終わる。

低賃金できつい仕事を長時間しなければならない生活から決別するためにやらなければならない政府の仕事は山ほどある。以下でいくつか提案を書いてみる。民間でできることは民間でやるべきだと主張する人もいるが、巨額の投資を行ってAI/ロボットを開発し、インターネット・クラウドを使った大規模なシステムを開発しサービスを提供するといったビジネスであれば、小さな企業では無理であり人手の無駄遣いになる。人手不足解消のためには規模の拡大が必要であり、国がまとめて行った方がはるかに効率的にできる。もし国がAI/ロボットに大規模投資を行い、質の高いサービスを行うことができたら、少ない労働者で巨額の利益を生みだすことができたら、人手不足解消だけでなく、生み出された利益を財源に大規模な減税も可能となる。

【提案2】大規模農業が可能になるよう農地を国が買い上げよ。
どの農家も納得できる価格であれば、買い上げは進む。生産性において、日本農業は米国の20分の1以下。国有化した農地を国有企業がAI/ロボットを駆使した大規模農業を行えば、多くの農民を他産業へ移すことができる。この国有企業の公務員の数は極めて少なくてよいので大きな利益を生み、それを財源に減税が可能となる。

大規模化はジワジワ進んでいる。耕地面積10ヘクタール以上の大規模農家は5%にも満たないが、全耕地面積の半分近くを占めている。

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次の表は農家1戸あたりの農地面積の国際比較をしたものである。農業の大規模化、AI/ロボット化を進めなければならないのは明かだ。

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【提案3】薬の調剤を自動化せよ。

薬の調剤を自動化すれば、多くの人手を他産業に回せる。薬局の数は増えており、その数はコンビニより多い。
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薬は医者の処方箋から自動的に準備できる仕組みにしたらどうか。抗癌剤など副作用の強い薬は特別に薬剤師から説明を受ける。薬剤師の代わりに説明できるAIを開発する。

【提案4】不動産業など情報提供が仕事である場合、インターネットとAI/ロボットで代替する。
例えば不動産業は賃貸と売買だが、借りたい人と貸したい人をつなぐ仕事、売りたい人と買いたい人をつなぐ仕事は、インターネットとクラウドとAIがあれば、ほとんど人手を借りることなくできる。例えば国がそのような取引のサイトを立ち上げ、その使い方をAIが丁寧に教えるようにしたとする。そして契約書もAIが分かりやすく説明し誰でも簡単に作成できたとすれば、人手はほとんど使わなくてもすむから大量の労働者を他の産業に回す事が可能になる。

例えば、部屋を借りようとする。ネットで検索すると、たくさんの不動産業者が関与していることが分かる。そしていくつものサイトを探し回らなければならない。部屋にはそれぞれ担当の不動産屋がある。各不動産屋はそれぞれ小さな事務所を持ち、滅多に来ない客をじっと待っている。これは時間の無駄であり、人手を無駄に使っている。不動産の賃貸、売買を一手に引き受ける所が一箇所あれば十分でありその方がはるかに効率的だ。

その他旅行斡旋業,人材紹介業、結婚相談所なども同様である。官僚に商売をやらせるとろくなことはないのだが、各業界には破竹の勢いで伸びていく企業がある。そういった企業に国が物言わぬ株主として資本参加しAI/ロボットの導入を財政支援し、ある程度業界の独占を許し、将来的にはその企業の国有化も視野に入れる。そのような企業は従業員は少ないから利益が極めて大きいからそれを減税等の財源にする。しかも人手不足対策にもなる。

【提案5】国を挙げて日本語が理解できるAIを開発せよ。
予算10兆円で完成したら、人手不足の問題は永久に解消される。
①各社のコールセンターはAIが代行
②各社の受付係、商品説明、苦情対応、社員教育
③官庁も大幅人員削減が可能
このAIは莫大な利益を生み出し、国の大きな財源となる。「労働はロボットに、人間は貴族に」という世界に大きく近づく。

【提案6】中古住宅をもっと積極的に活用せよ。
7軒に1軒は空き家だと言われている。また野村総研によると2033年には空き家率は30.2%になるそうである。
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いっぱい家が余っているのに、そして人口は減っているのに、どんどん新しい家を建て続けなければならないのか。日本では新築住宅は僅か20年で価値がゼロになると言われている。国は中古住宅の売買では消費税が入らなくなるから新築を建てさせたいのか。建築業者も新築住宅をどんどん建ててもらわないと儲からないということか。住宅の平均耐用年数はイギリスで141年、アメリカは103年、ドイツは79年、日本は30年と言われている。日本でも諸外国並に中古住宅の積極的活用で建築業界の人手不足は緩和される。

結論としては、人的資源の無駄遣いを防ぎ、AI/ロボットを活用し、最低賃金を上げれば、貧しい外国人労働者を大量に入れなくてもやっていける。

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2018年11月18日 (日)

外国人労働者を大量に入れると将来世代へのツケを残す(No. 324)

外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議が行われている。政府は移民ではないと言うが、実質移民受け入れ拡大である。日本は犯罪の少ない平和な国であることは広く知られている。外国人が入ってくれば犯罪が増える。治安悪化を望む人は誰もいない。しかし政府は反論するだろう。外国人が増えても犯罪の件数は増えていないと。しかしこの説明で騙されてはいけない。警視庁によると日本人の犯罪率を100%とした時、2000年の統計では来日中国人243%、来日ブラジル人250%、来日米国人4%となっている。国籍によって犯罪率が60倍も違うとなると、犯罪とは無縁な国の人が多く入ってきて、犯罪を多くする外国人の犯罪が薄められ平均では外国人が増えても犯罪は増えてないように見える。しかも日本で爆買いをする裕福な中国人は殺人とか窃盗とかの犯罪に手を貸すことは希である。しかし、政府が目指す低賃金で単純労働を行う労働者となると、貧しい人が多く、過去の統計では出てこなかったような高い犯罪率を想定しなければならない。劣悪な労働条件で失踪が相次ぐ技能実習生は危険極まりない。

そもそも民族間の争いは世界各地で行われており、紛争が絶えない。それを日本に持ち込むことは止めて欲しい。今回の徴用工問題も70年以上前の朝鮮人を働かせたために大変な国家間の問題になっている。韓国の反日感情もやはり民族対立の一つであり、生活に困窮した外国人を大量に入れて低賃金で働かせるということは新たな徴用工を発生させ深刻な民族対立問題を発生させかねない。

人手不足が深刻で産業界から外国人労働者を入れるよう強い要望があるという。しかし、低賃金の労働者に働いて貰わなければ成り立たないような業種は撤退してもらい、業界再編を促すのが政府の仕事のはずだ。値上げしても売れる商品は残る。これは消費者の選択だ。低賃金を維持し、非正規社員を多数抱えなければ維持できないような会社を政府が支援するということはデフレ脱却を遅らせる経済を弱体化させるということだ。外国人労働者を入れなければ、企業としてはAI/ロボットなどを入れ自動化を進めるか賃金を上げて人を確保するかのどちらかを選ぶしか無い。賃金が上げれば需要も増えるからデフレ脱却へと向かう。賃上げをすれば赤字になるのであれば製品を値上げするし、値上げで売上げが落ちて赤字になる会社は淘汰される。業界再編で日本企業が国際競争力を増す。これはかつて日本が成長していた頃の姿である。政府は転職を強いられた弱者に対しては手厚い保護をする必要がある。単純労働を行う外国人労働者を入れて弱い企業を助けるより、業界再編を促し企業の国際競争力を高めた方が日本の将来を明るくする。日本企業の新陳代謝が必要である。

外国人労働者でもAIの専門家や大学研究者など日本経済を牽引してくれる人たちを高給で招聘するのは大歓迎でありこちらは大いに力を入れてほしい。

外国人労働者を入れないとして、評判の余り良くないレストランやホテルが廃業したとしても我慢できるのではないか。低賃金の外国人を雇ってかろうじて存続させる必要があるのだろうか。介護の人手不足は深刻だとのこと。給料が安すぎて人が集まらない。外国人を安く雇わなくても介護職員の給料を上げれば人は集まる。その場合、介護保険料の値上げを直ぐにしようと言い出す人がいる。しかし給料上昇分は財政でバックアップすればよい。介護従事者100万人の年収を20万円上げるには2000億円必要になる。その程度財政赤字を増やす余裕はある。デフレ脱却には財政赤字の拡大が特効薬である。その他AI/ロボット等を使った労働環境の改善も行うべきだ。

人手不足と言うが、随分無駄なところにエネルギー(人手)を使っている。毎日郵便ポストに入ってくる関係無いチラシ、無駄なメールも山ほど入ってくる。テレビドラマもあんなに沢山作る必要があるのだろうか。デパートに行くと無数の商品が並んでいるが本当に全部必要か、商品の種類が2~3割減っても困る人はほとんどいないだろう。7軒に1軒は空き家だと言われているのにどんどん新しい家を建て続けるしかないのか。また、新築住宅は僅か20年で価値がゼロになると主張し、国も建築業者も中古住宅の取引がわざと成り立たないようにして不必要に建て替えをさせようとするからますます人手不足になる。中古住宅が売買されると消費税も入らないから国はいやがる。建設業者も中古住宅を壊して新築住宅をどんどん建てて欲しいのだ。住宅の平均耐用年数はイギリスで141年、アメリカは103年、ドイツは79年と週刊誌に書かれたことがあった。日本も実際は、それほど頻繁に新築住宅を建設する必要が無いし中古住宅活用で建築現場の人手不足も解消する。要するに人的資源の無駄遣いが横行している。無駄遣いを止めれば外国人労働者の大量受け入れなど不要である。

農家も低賃金の外国人労働者が入って来なければ農業を辞める人も多いだろうし、その場合他の農家が農地を引き取り大規模化が進み生産性が向上する。大規模化すればドローンやAIを使った農耕機械が導入でき米国の数十分の1と言われる農業の生産性を上げるのに役立つ。

国はもっと国民の幸福を考えて欲しい。日本の生活困窮者にもっと支援をすべきだし、日本の経済を牽引し世界をリードする企業を育ててほしい。特にGAFAと呼ばれる超巨大IT企業に対抗できる企業を育ててほしい。生活苦の外国人労働者を大量に入れて治安を悪化させる前に一度立ち止まって考える時だと思う。彼らは日本で稼ぎ本国に送金する。富を日本から吸い上げて外国へ流してしまうから国内の需要拡大にはマイナスだ。企業は低賃金で働かせて暴利をむさぼり、稼いだカネは内部留保として積み上がる。もし外国人労働者を入れないなら、人手不足の企業は給料を上げてでも人を集めるしかなく、そのときはカネは日本人労働者の手に渡り、確実に消費に回る。企業が内部留保を取り崩したカネが結果として内需拡大を導きそれが経済を拡大させるから企業にとってもプラスになる。当然AI/ロボットなどの投資も進みそれも経済の活性化にはプラスだ。

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2018年11月12日 (月)

上院でトランプは勝ったとは言えない(No.323)

中間選挙で下院で大敗し、共和党が過半数を失ったにも拘わらずトランプ氏は大勝利を宣言した。11月11日現在で分かっていることは
上院  民主党  46   共和党 51   残 3
下院  民主党 231   共和党 204
である。上院は共和党、下院は民主党が過半数を握った。選挙前には両院とも共和党が過半数を持っていた。これでトランプは勝ったと言えるのか。下院は全議席が改選されたのだが、上院は改選されたのは100議席のうち35議席のみだった。今回勝ったか負けたかの判断には、改選された議員だけで比べるべきだろう。上院の改選議員だけに限ると
民主党 23
共和党  9
残    3
となり、民主党の大勝、共和党の大敗ということになる。共和党は大敗したが、非改選の議員が多数いたために、なんとか過半数を維持できたということだ。上院の議会選挙は2年ごとに3分の1ずつ改選される。民主党は6年前大勝したが、今回そのときほど議席は取れなかったが、それでも圧勝したということだ。

中間選挙での上院の改選議席数は
2018年  民主党 26, 共和党  9
2020年  民主党 12、 共和党 21
2022年  民主党 12、 共和党 22
つまり2018年は民主党が勝ちすぎた後の選挙だから議席を減らしてあたりまえ、逆に2020年と2022年は負けすぎた後だから、議席を増やしやすい。ということは2020年、2022年の選挙では民主党が挽回する可能性があり、共和党議員にはプレッシャーが強まるに違いない。

トランプ氏は今後難しい政権運営に苦しむこととなる。下院で与党が過半数を失ったから、予算案が思い通りに通らない。公約にしていたメキシコ国境に壁を造る構想もオバマケア撤廃も無理だし、環境を破壊する規制緩和もストップが掛かる。その代わりに下院で多数派となった民主党は議会の調査権を駆使し、ロシア疑惑の追及を加速する可能性もある。親から相続した460億円で相続税の脱税疑惑の追及も受け、しかも納税申告書の開示も求められる。頭を民主党に押さえられた独裁者トランプの姿は哀れに見え支持率は落ちるのか。それとも決められない政治は民主党のせいだとして民主党を非難して逆に支持率を高めるのか。

ワシントン・ポスト紙などが8月末に発表した世論調査によると、72%が民主党が下院の多数派を制すればトランプ氏の弾劾に進むとみる。下院で過半数の賛成で訴追できるが、上院出席議員の2/3以上の賛成がなければ弾劾は決定できない。ロシア疑惑が深まりトランプの支持率が更に下がるようなことがあれば、次回の議会選挙で危機感を感じた上院議員がトランプを見捨てる可能性があるから弾劾の可能性は否定できない。

トランプが支持率アップのためにできるとすれば北朝鮮問題だろう。北朝鮮は核放棄するのかどうか、世界はまだ疑心暗鬼だ。11月2日北朝鮮が核開発の再開を示唆した。今こそトランプ氏は北朝鮮を「核を放棄しなければ武力攻撃をしかける」と脅すべきである。韓国と北朝鮮は9月19日、平壌で開かれた南北首脳会談で採択した「板門店宣言の履行に向けた軍事分野合意書」で、「いかなる場合でも」武力を使用しないことで合意した。つまり北朝鮮は「ソウルを火の海にする」と脅せなくなっており米国からの武力攻撃に反撃する手段を放棄している。つまりトランプに脅されれば核を放棄するしかない。

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2018年11月 4日 (日)

ベーシックインカムと不都合な事実(No.322)

(1)今すぐベーシックインカムを始めるとどうなるか

ベーシックインカムは多くの人により研究されており、条件付きだが筆者も反対はしていない。しかし、そこには不都合な事実もあることを忘れてはいけない。例えば毎月一人当たり10万円を配ろうとしたら年間140兆円の財源が必要となり、そういう提案に今の財務省や政治家が耳を貸すとは到底思えない。そもそも税率というもの高くすればいくらでも税収は増えるというわけでもなく、ある限度を超えると逆に税収は減少し始める。これはラッファーカーブという名前で知られている。

例えば凄まじい大増税をして毎月10万円を全ての国民に配ることができたとしてみる。最も得をするのは田舎でほぼ自給自足をしている小規模農家だ。小さな畑を持ち自分で食べるものは自分で育てれば良い。近くに親戚等が住んでいれば、分業で様々な農作物を育て分け合えばよい。あるいはこっそり露店で売っても税務署にはほとんど補足されないだろう。通常の流通ルートを使えば重税が課せられほとんど利益にならないが、露店で売れば自分の収入が大幅に増えるのだからそうする人が増えるに違いない。露店で買った方がスーパーで買うより安くて品質もよいなら誰もが露店で買う。ガレージセールも盛んになるかもしれない。もちろん正確に税務申告するなら合法だが、ごまかせば違法になる。だが税務署がすべての取引を補足するのは無理だ。サラリーマンが脱サラして大量に農村に住むようになるだろう。地方の活性化に役立つかもしれないが、貴重な都会の労働力が失われる。制度として適材適所でその国の労働力が使えないのは致命的な欠陥となる。

農家に限らない。例えば家庭教師を個人的に行っている人は税務署に報告しない可能性がある。自分は政府からの給付金で暮らしていけますから働いていませんと言えば良いだけだ。税務署が補足するには探偵事務所にお願いするしか無いが、そんなことはとてもやっていられない。お店であろうと工場であろうと小規模であるほど節税の工夫はやりやすくなる。例えば事業所を帳簿上だけは複数に分割する。それぞれ税務署の管轄が異なるようにしておけば、税務署が調べようにも部分的にしか調べられず、利益を移動させることにより合法的に利益が見えなくできる。

今は税率が低いからそんな手間を掛け税理士を雇っても得にはならないのだが、大増税をするなら、それが採算に合うこととなる。しかもその方法が一般に広く使われるようになれば、税収が落ち込むわけだから、税収確保のためには取れるところからもっと取るしか無く、税率は更に上がることとなる。もしかしたら、大企業も悲鳴を上げ、従業員をすべて外注に切り替えるかもしれない。例えばAさんを営業マンとして雇う代わりにAさんに外注専門の個人事業者として形の上で独立してもらうわけだ。実質的には社員と変わらないが、帳簿上は独立して事業所に営業を委託した形になる。Aさんは頑張って様々な領収書を集め、営業経費として計上し節税をする。税率が低い現在では得にはならないが、税率がはね上がると節税効果が大きくなる。重要なのは、税務署が全従業員の確定申告を詳しく調査する暇がないことだ。ほとんどが黙認され節税は成功する。今でも商売は利益を出すのは大変厳しいのだが、大増税後にまともに税金を払って採算が取れる会社などほとんど無くなる。

政府が節税・脱税の抜け穴を封じたとすれば、大企業は重い税負担を補うため従業員の給料を低く抑えるしかない。そうなると大企業で働くより田舎で小規模な農家をやっていたほうが収入が増えるということになり、大企業が衰退していき、国際競争力も失われていく。

確定申告の数は毎年6000万件になるだろうし、税務署が税務調査をできるのはそのうち10万件にすぎない。つまり税務調査を受ける確率は600年に1回ということになるから、ほぼ一生の間税務調査は受けないと思って良い。ということなら脱税し放題になる可能性がある。心配なら僅かな保険金を払って「税務調査保険」に加入すればよい。万一税務調査を受けた場合でも、その年の税金を重加算税まで含め全額払ってくれるものである。

本来課税対象とされるべき所得の内、税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値を捕捉率と呼ぶ。この捕捉率は業種によって異なり、給与所得者は約9割、自営業者は約6割、農業、林業、水産業従事者は約4割であると言われこのことを指して「クロヨン」と言われている。税率が低い現在はクロヨンで収まっているのだが、税率がはね上がると人は更に巧妙な節税・脱税方法を発見するに違いない。悪くすると「正直者は馬鹿を見る」ということでモラルハザードに陥った世界が実現する可能性がある。そのとき日本はデフレスパイラルに陥りGDPは減少し、大企業は没落し、平均所得も下がり、税収も減ってきて毎月行う給付金も下げざるを得なくなる。つまり日本全体が貧乏になってくる。

ベーシックインカムを払えば年金を払わなくて済むから財源の一部になると考えることができるだろうか。しかし、定年まで多額の年金積立金を払ってきた人と全く払ってこなかった人が同額のベーシックインカムを受け取り、年金をゼロにすることはできない。年金を払った人には約束通り一生の間年金を払うしか無い。ベーシックインカムがあるのだからもう年金は要らないだろうという論理は通らない。

結論から言えば「増税の前にやることがある」である。今すぐにベーシックインカムを導入するのは時期尚早ということだ。今は人手不足が深刻な時期であり、ベーシックインカムを導入して大量の労働力を失う余裕はない。AIが大量の雇用を奪い、失業率が激増するような時代が来させるまで、やらなければならないことがあるのだが、そこには不都合な事実が待っている。

(2)ベーシックインカムの前にやるべき事

10月23日、パーソル総合研究所と中央大学の調査「労働市場の未来推計2030」が発表された。それによると日本の人手不足が2030年には644万人に達するとしている。これは国が調査した就業者数や完全失業率、経済成長率などのデータを基に試算を行った結果である。これに同調するかのように海老原嗣生氏が『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』という本で、AIが導入されても15年でなくなる雇用はせいぜい9%だという調査結果を示している。

他方では、AIが雇用を奪い失業者だらけになるという正反対の予測もある。両者の考えは一定の仮定の基で正しいのだが、両者の決定的な違いは未来社会がAIを受け入れられる社会なのかどうかということだ。そこで不都合な真実が浮かんでくる。AIを受け入れられる社会に移行するには、日本人が大嫌いな改革を大胆に行う必要があることだ。

第一の改革は規模の拡大だ。AI導入にはお金が掛かり、小規模事業者では導入は無理だ。例えば農業だとAIに小さな農地の農作業をさせるのは非効率だが、大規模農業であれば、AIを使った無人の農業機械が活躍できるし、農家の収入も拡大できる。外国から農産物が入ってきても対抗できる。漁業でも同様で、小型漁船にAIを導入するのは非効率だが、大規模漁船で漁業資源の管理もしながらAIを導入すれば漁民の収入も増え漁業の発展も見込める。小売りも同様で、小規模小売店が乱立し、各店舗に対しメーカーの営業マンが商品の売り込みに行くやり方は非効率であり、アマゾンのような大規模ネット販売が浸食してくるのではないか。自動運転車やドローンによる無人の配達が可能になれば、圧倒的な競争力を持つようになると考えられる。弱者切り捨てという批判が出るだろうが、大規模な補助金を使い、切り捨てられる人が出ないように労働者のスムーズに移動をさせることが出来るかどうかで日本の運命が決まる。

第二の改革は許認可の問題だ。例えば自動運転技術の開発のためには公道を自動運転車が走ることを許可してもらわなければならない。また自動運転車が完成しても、それを公道で走らせるための許可が必要となる。過去の事例から推測すれば、日本は諸外国より遅れるのではないかと危惧する。それが人手不足に拍車を掛けるのではないか。医療もAIが入りやすい分野だ。国が有効性を認め保険が適用される禁煙アプリが第一弾として2019年にも登場する見込みである。いちいち病院に行かなくても、スマホのアプリとの対話によって治療ができる。有効性の確認が必要となるが、徐々にAIがカバーする病気の範囲が拡大してくるに違いない。現代医学の粋を集めれば相当の範囲の治療が病院に行かなくても出来るようになるのではないか。一定の範囲で薬の処方箋を出すこともできるようになるだろうし、医師不足の解消や無医村地区でも医療に貢献する。教師不足への対応も可能だ。授業の内容にもよるが、多くの授業はビデオで置き換え可能でビデオの質を高めれば先生の授業以上の成果は出る。生徒のレベルに応じたビデオを見せることも可能だ。生徒との質疑応答も本気で開発すれば人間よりAIのほうが、質を高められる。重要な事はAIなら全生徒に個別対応できることだ。人間が教えるよりAIのほうが教育効果が高いことが高められるのであれば導入してもよいという国の許可が必要だ。

以上述べてきたように、AIを導入するための改革を行えるかどうかで、天と地の差が出る。これは不都合な真実だ。改革をしなければ、人は貧しいまま、苦しい労働を続けなければならないし、そんな低賃金では人は集まらないから人手不足は深刻化する。改革すればバラ色の未来が開けるが、そこにたどり着くには各分野からの猛烈な反対を押し切る必要が出る。世界は間違いなくAI導入を積極的に行うが日本もそれができるのか決断の時が迫っている。

第一と第二の改革ができたとして、残るは研究開発への大規模投資だ。世界を見渡せば、時価総額ランキングで上位はすべてIT大手である。日本トップのトヨタは42位であり、韓国のサムスンの16位よりはるか下である。これは日本経済の没落を象徴するようなものであり、一刻も早く周回遅れとなったAI開発を挽回する必要がある。これには政府による大規模投資が必要となるが、この分野であればどんなに投資しても投資し過ぎることはない。ここで必要になるのはベーシックインカムで必要とされる100兆円規模の財源ではない。僅か数兆円であってもAI開発にとっては途方も無い巨額の投資だ。人材不足でAIに強い人集めに苦労するに違いない。ここは国の内外から優秀な人材を異例の高給で引き抜くとよい。日本は産業用ロボットを得意とするのだから、AIで強化した産業用ロボットの開発を強化する事は極めて大きな意義を持つ。国債発行で数兆円程度を確保するのであれば、不況の続く日本経済にとって益あっても害はない。

(3)今すぐ生活困窮者を救う方法
筆者の拙書
『労働はロボットに、人間は貴族に ロボット ウィズ アス』(2005)
で、労働をAI/ロボットが行うようになったときの社会・経済を詳しく説明し増税ではうまくいかないことも説明した。その段階に到る前、生活困窮者に対して何ができるだろうか。一部のベーシックインカムを主張する人たちは、ベーシックインカム自体が生活困窮者を救う道だと考えているようだが、(1)で述べたように、行き過ぎた増税が経済システムを壊してしまい、決して望むような結果を生まない。大部分の労働をAI/ロボットが行うようになった事が確認できるまで労働の量と質に応じて収入が決まるという現在のシステムを崩すべきではない。

現在の生活困窮者を救う日本の制度はうまく機能していない。生活に困っている人であっても貯金があったり家や車を持っていたりローンがあったり家族や親族から援助が見込めたり働けるのに働いてなかったりしたら生活保護は受けられない。受給ができるのは生活困窮者の中のごく一部だと言われている。そこで少ない予算で多くの生活困窮者を救う方法として次のような提案を行った。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/no280-cfbf.html
これを筆者はミニマムサプライと名付けた。

物余りの時代、日本に関して言えば、本来食べられたはずの、いわゆる「食品ロス」は500万~800万トンである。これは、わが国のコメの年間収穫量(平成25年約860万トン)に近い。食べられるのに捨てている食糧を提供してもらったり、企業から寄付を受けたり、大量につくった極めて低価格の食料品や日用品(品数は限定する)を買い取ったりして、それを国営商店で無料で配布する。この商店には使えるけど使わなくなった衣服とか本とか日用品とか家具とか何でも持ってきてもらい、無料で配る。現代ではたくさんの無駄がある。まだ十分食べられるのに見栄えが悪くなり売り物にならないとして捨ててしまう食品、使えるのに傷物として処分する製品、引っ越しでいらなくなった物等も国が集めて国営商店で無料で配布する。ただしこの無料の商店に入れるのは事前登録した生活困窮者に限る。顔認証を行い、限られた人のみ限られた量の商品を無料で入手可能とする。生活保護に比べ、効率的に支援できるので広い範囲の生活困窮者を救うことが出来る。更に詳しくは上記のサイトを見て頂きたい。

(4)AI/ロボットに雇用を奪われたら

次第にAI/ロボットが本格的に雇用を奪う時代が来る。それが2040年なのか更に後なのか分からないが確実にその時代はやってくる。AI/ロボットを使って財・サービスを提供するのは超巨大IT企業である。お金を使うとお金は国民からこの企業に流れるが、そういった企業はAI/ロボットに働かせるわけだから、労働者はほとんどおらず、企業から国民へのお金の流れは少ない。労働者がほとんどいないということは所得税収は極めて少ないということだ。何らかの方法で企業から国民へというお金の流れをつくらないと国民はお金を使えないので経済は破綻する。これを大増税という形でお金の流れをつくろうとすると(1)で述べたように失敗する。

筆者の提案は、労働者を雇わなくなった超巨大IT企業の株を政府が買い占めて国有化することである。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/no178-f971.html
国は物言わぬ株主として通常経営に口出しはしないが、多額の利益が上がったときは、多額の配当を促すことにより国の財源とする。この頃の企業は労働者に賃金を払わなくても良いので、利潤が極めて大きく配当も巨額になる。最終的には経営もAIに任せた方がよくなるので、完全国営化する。今でも日銀はETFという形で企業の株を買っている。これを更に買い進めるということである。国営化された独占企業だと競争が無くなり進歩が止まると考えるかもしれない。しかし、この時代での進歩とは労働生産性の向上である。人手を借りずに生産できるということは労働者一人当たりの生産高で計算される労働生産性はすでに無限大である。無限大からいくら増大しても無限大に変わりは無いが国営企業内にいる研究員と極度に発達したAIが競い合って更なる改良・改革を行っていく。

このような方法で政府が十分な財源を確保したらベーシックインカムが可能となる。ただしベーシックインカムでお金をもらっただけでは国民は何をすれば良いのか路頭に迷うし、何かやろうにも受け皿が整備されていない。人にはそれぞれ夢がある。サッカーや野球の選手、医師、プログラマー、学者、エンジニア、看護師、歌手、画家、カウンセラー、デザイナーなど様々な夢があるだろう。政府に十分な財源があるならできるだけ多くの人の夢を叶えてやるように支援をするとよい。筆者はこのような支援をJOD(Job on Demand)と呼んだ。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/job-on-demand-2.html

例えば野球選手になりたい人がたくさんいたとする。今は1チームあたり1軍でプレイできる選手の人数は最大28名、各チームの支配下登録選手は70名までである。高給を稼げるのはごく僅かな人だけだが、JODでは1チーム当たりの人数を増やす。活躍できる人ほど給料が高くなるのは今と変わらないが最悪の成績でも生活ができるだけの収入は保障する。チーム数も増やし球場の数も練習場も増やす。多くの人に野球を楽しんでもらうよう、国が援助して入場料を安くする。

歌手などの音楽家の活動も国が援助する。コンサートホールもたくさん建設し、音楽会も支援し安く頻繁に開く。音楽家も今は音楽家として生活費が稼げる人はごく僅かだし音楽会も結構チケットが高いから頻繁には行けないが、この時代には多くの音楽家が生活できるよう支援をする。また多くの国民に音楽を親しんでもらうために、音楽会の入場料をごく安くしてもやっていけるよう国が支援をする。

医者になりたいという希望者が多いかもしれない。この時代医者が金持ちとは限らない。人間の医者よりAI/ロボットの方が正確な診断が可能になっている可能性があるからだ。医学の研究で膨大な論文が発表されており、人間は最新の研究論文まで含めて全部読んで理解するのは無理だ。しかも個人カルテが電子化されその人の病歴、検査結果、治療履歴、個々の薬の効き具合、アレルギー反応等膨大な情報が記録されており、それらをすべて考慮に入れて治療方針を決定するとなると、人間の医者よりAI/ロボットの方が誤診が少なくずっと優れているということになっているだろう。そうであればAIの補助としての医者は、それほどの高給が稼げる職業ではなくなっている可能性がある。人の命を預かる責任の重い仕事だし、高度なAIよりもミスが多いし、病状が急変したら深夜でも起こされるのだが、給料が安くても希望者が多いのかどうか分からない。

JODでは、希望者全員を公務員として雇い生活できる最低限の給料は払うのだからベーシックインカムの拡張版と思って頂いてよい。更に詳しくは上記サイトか上記拙書を参照して頂きたい。

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