経済・政治・国際

2023年3月16日 (木)

ChatGPTは人の労働を代替できるか(No.181)

ChatGPTは、OpenAIという人工知能研究組織が開発した。2022年11月にサービスが始まったばかりですが、わずか2か月で、月間のユーザー数は、推定1億人を超えた。ChatGPTは自然言語処理ができるわけで、人が話す内容を理解し、まるで人が答えるような言葉で返事を返す。その返事におかしなところがあって、注意すると、「間違いました。すいませんでした。」と素直に謝る。膨大な知識を持っているので素晴らしい。

顧客と会話するだけの職業であれば、適切にカスタマイズすれば人間の替わりに働くことができそうだ。米プリンストン大学の研究者の研究によれば、最も影響を受けやすいNo.1の職業はテレマーケティングを行う職業だそう。電話を利用して顧客に勧誘などを行う仕事。問題は間違った情報を伝え契約を成立させてしまう可能性があることだ。その可能性が十分少なくしてから実戦配備となるだろう。

影響受けやすさNo.2は教師(英語・英文学)だという。日本では日本語・日本文学ということになる。しかしチャットGPTは英語力は完璧かもしれないが日本語に関しては完璧ではなく、学校で国語を教えるにはもっと勉強する必要がある。一方英語の実力は完璧だから英語を教える事ができる。ただし英語のレベルは色々で、英検も1級から5級まである。生徒のレベルに合わせて教えるようにすべきである。英会話の自習には最適である。日本の英語教育は文法や読解に重点が置かれ、英会話が苦手なので、チャットGPTに英会話の個別指導をお願いすべきだと思う。チャットGPTは歴史、法学、哲学、社会学、政治学などは膨大な知識を持ちうまく教えられるのではないか。もちろん間違った知識が混じっていたら問題になる。

チャットGPTが算数を教えられるかを試してみたが、非常に難しいという印象を受けた。円の面積とか正三角形の面積とかは公式に当てはめて正しい答えを出す。しかし、正三角形の面積を別の方法で求めるよう指示したら間違えた答えが返ってきた。間違いを指摘すると「申し訳ありません。間違った回答をしてしまい、ご迷惑をおかけしました。」と謝罪した。この調子では算数を教えるには、大変な努力が必要になりそうである。かつて「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトを国立情報学研究所が中心になって立ち上げた。結果は全受験生の上位20%程度で多くの大学に入れるが、東大は無理ということだった。文章の意味を理解できないので、とんちんかんな答えを選んでしまうのだ。チャットGPTを使えばその点は改良されるかもしれないし東大に合格できる点が取れるかもしれない。

AIが人間と自由に話しができるようになった、少なくとも自由に話していると思わせる能力を持ったという意味は非常に大きい。今後は目的別にカスタマイズしていけば人間の労働を徐々に代替できるようになる。その時、大量の労働者が職を奪われる可能性がある。しかし財・サービスの供給力には問題は無いわけだから、お金を適切に国民に配れば人は貴族のような生活ができるようになる。問題はどのようにしてお金を循環させるかである。要するに好きな事をしてお金が貰える社会システムの構築だ。詳しくは次の本を参照して頂きたい。
『ロボット ウィズ アス 労働はロボットに人間は貴族に』小野盛司(2005)
『「資本主義社会」から「解法主義社会」へ』小野盛司(2019)

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2023年2月10日 (金)

内閣府計量分析室に電話して内閣府試算について聞きました(No.480)

小野 先日内閣府で経済財政に関する試算を出されました。新聞報道では26年度基礎的財政収支の黒字化見通し維持となっていましたが、どのようにして黒字化するのでしょうか。素朴な疑問としてかつて基礎的財政収支が黒字化した事は一度もないのではないかと思います。毎年のように黒字化するとの予測する試算を出していますが、結局その予測がことごとく外れた。今回26年度黒字化すると予測していますが、その根拠は何でしょう。

回答:成長実現ケースで26年度から黒字化するということです。まず経済面から申し上げます。経済が骨太方針に基づいた取り組みに基づいて実質2%の成長を中長期的に実現することによって、経済状況と、あと財政面では補正予算とかがあるのですが26年度黒字化ということになっております。税収の上振れも関係すると思います。

小野:毎年同じように実質2%、名目3%というように仮定して計算されていると思うのですが、実際そうなってないですね。

回答:実質2%、名目3%を前提として置いているということではなくて、モデルの中で潜在成長率を計算してモデルの中で潜在成長率によって実質成長率が決まると言う形になっています。

小野:潜在成長率とはTFPですね。

回答:TFPと労働の寄与を合わせたものですね。

小野:TFPが上昇すると仮定していますね。

回答:はい。TFPを外生的に置いています。

小野:TFPの上昇は計算で求めたのでなく、バブル期に急激に上昇していたから、今回もそのペースで上昇するのだと仮定したんですよね。

回答:はい。TFPはデフレ期に入る前のような上昇をすると仮定しています。

小野:バブル期のTFPの上昇と現在の経済状況とは全然違いますよ。当時はプラザ合意で円高不況になった。それから脱却するために公定歩合を5%から2.5%に下げた。更に日銀の窓口操作で貸出をどんどん増やし、随分無理な貸出をやり株や土地にもの凄いお金が流れバブルになりましたね。

回答:はい。

小野:その時の状況と今の状況は全然似ていません。

回答:そういったご意見は承ることが結構多くて、TFPの上昇期間が1982年から1987年までの5年間でとっていますので確かにかなり上昇したところをとっています。

小野:かなり無理をしていますね。

回答:まあ、政府の目指す姿を見せるためにというところがあります。

小野:でもあの時とは随分違います。今、金利を2.5%下げるのはゼロ金利なので無理です。日銀の窓口操作で貸出を無理矢理伸ばすこともできず、銀行も資金需要がなく金利低迷のときに無理矢理貸し出しを伸ばそうとはしない。銀行経営は苦しく、昔買った金利の高い国債の配当でなんとか生き延びている。本業の融資で本格的に利ざやを稼ぐことはできない。その面でもバブル期を随分違います。

回答:はい。

小野:経済財政の試算をよく見ると国家財政はずっと赤字が続くが、地方財政がもの凄い黒字になるとされていますね。例えば2032年度には地方財政収支が14.7兆円もの黒字、国家財政収支は13.3兆円の赤字です。全体では黒字になる。このレベルの黒字に地方財政がなったことがあるのか。

回答:確かに14.7兆円の黒字になったことはありません。

小野:なぜこのような黒字になったのか。住民税なのか事業税なのか地方消費税なのか地方たばこ税なのか不動産取得税なのか固定資産税なのか。どこでこのような莫大な収入を生み出せるのでしょう。

回答:把握し切れていません。

小野:方程式には書いてあるのですよね。

回答:モデルで出した値になります。

小野:2018年度版の乗数は公開されていますがこれに添っているわけですね。方程式のリストも変数リストもありますね。

回答:はい。

小野:この中には地方税の計算の仕方も書いてあるのですね。もしかして方程式が暴走してあらぬ方向に行ってしまったというのではないのですか。地方税でそんなに儲かるなら国に回しなさいということになりませんか。

回答:前回の2022年7月の予測でも同様な結果になっています。前回とそれほど変わっていない。

小野:前回も今回もおかしいのではないかという質問です。

回答:詳しい人に代わります。
回答1:代わりました。岩下と申します。地方が大幅黒字になることですが、モデルに従って税収が伸びていくこと、国の税収が増えていき地方交付税がどんどん増えていく。これによって黒字幅が大きくなっていく。

小野:地方交付税交付金が国税を使って地方にお金を還元するのですか。

回答1:そうですね。

小野:あまり額が大きくなりすぎて国の方が貧しくなり、地方が金持ちになったら、それを調整する制度にはなっていないのですか。

回答1:単年度では決算が良くなることによる覚え書き加算で、総務省と財務省で色々調整を行って、単年度でやっていくようになっているのですが、それは単年度で臨時的に調整していくもので、モデルの中ではそういう調整ができていないということです。

小野:ルールがあるのではないですか。単年度ではある程度不均衡になったら交付金は制限するとか。

回答1:将来に向けて決まっているルールだけでやっています。

小野:どうやってルールを決めるのですか。

回答1:総務省の自治財政局とかが地方財政計画とかをつくって財務省との間で色々取り決めを行っていまして、最近よくやっているのは地方交付税特会の借入金みたいなのを前倒しで返していこうということをやっていたりはするんですけど、結構臨時的にやっているものなので、もちろん将来進んで行く中でそういうやり方が行われるかもしれないのですが、まだ決まっているわけではないので試算では決めてないということです。

小野:方程式の中に入っていないということですね。だから10年後には違っているかもしれないかも。

回答1:それはあるかもしれません。

小野:乗数を出されていますよね。経済財政モデル2018年度版です。これが最新のものだと思いますが、この乗数を使ってこの試算の表を見て良いのかということですが。歳出は2022年度は138兆円、2023年は114兆円ですから24兆円減ってますね。2024年度はもっと減っている。もし乗数によれば、歳出が減ればGDPも減るのではないかと思いますが。補正の使い残しとかの理由があるのでしょうか。

回答1:これは足下の22年度が大きかったのは22年度の補正予算を加えたからなのですが、この補正予算は22年度だけでなく23年度、24年度でも使えます。その姿は一般会計には載っていない。予算の単年度主義というか、実際には繰り越しを想定しているので、政府の最終消費支出とか公的資本形成には繰り越されて使われています。

小野:本当はその繰り越した分を入れた方が我々には分かりやすい。

回答1:そうなんですが、時間がなくてそこまでできてない。

小野:実質2%、名目3%の成長ということで成長実現ケースの場合はモデルが決められているのですね。

回答1:正確に言えば政府が掲げる政策が効果的に発現したときにどうなるか、過去の実績も踏まえて出しているところです。

小野:過去の実績ということになると実質2%、名目3%成長は最近はないです。


回答1:そうですね。結構前になってきますね。

小野:政府の歳出の推移を見ると実際非常に長い期間増やしてないですね。何パーセントかづつ、増やさないとモデルによっても実質2%、名目3%成長が実現できないのではないですか。

回答1:今の歳出の規模だとこれが達成できないのではないかとおっしゃりたいのですね。我々のモデルとしましては、潜在成長率が高まればその潜在成長率に添ってGDPが増加するようになっている。外生に置いている潜在成長率に添って動いていく。だから成長が実現するというモデルにはなっています。

小野:それはずっと前からそう仮定しておられますね。

回答1:はい、民需主導で。

小野:ところが潜在成長率、TFPが実際どうなったかは出しておられますよね。

回答1:実績ということですね。

小野:実績はそんなに凄い勢いで伸びてないです。過去TFPが伸びた頃はあった。1982年から1987年です。どうして伸びたかと言えばプラザ合意の後の円高不況を立て直そうと公定歩合を5%から2.5%に下げた。さらに日銀の窓口操作で猛烈な勢いで融資をし、銀行に圧力をかけて無理矢理貸出を増やそうとした。そのお陰で株や土地に投資していた頃ですね。

回答1:確かにそうですね。

小野:あの頃はマスコミも株や土地転がしでこんなに儲かったという話題で一杯でした。一般の人もその話題で盛り上がっていて、NTTの株が売り出され、その株価が一気に3倍になり大儲けをした人で溢れました。借金をしてでも、ともかく買おうという人が続出しました。株神話と土地神話があり本業の利益より遥かに大きな利益が得られると言っていました。国中が異常な状況にありできるだけ融資を受けて投資していました。

回答1:成長への期待が大きかったのですね。

小野:今はそんな状態でしょうか。逆にデフレマインドに覆われていて、投資してもどうせ儲からないと思っています。テレビでも株や土地転がしで儲かるという話は皆無です。つまり社会の雰囲気はまるで違う。だから潜在成長率があのときのように高まると仮定するのは無理があるという気がします。

回答1:高すぎるということですね。

小野:これからどんどん伸びていくとの予想はおかしいと思います。5年間で0.9%の上昇というように毎年同じ事を言っています。しかし実績を見てもそんなに上がっていない。
だからこの仮定が無理なのではないか。

回答1:総理も確かそう言ってはいたと思います。結構難しい課題だと思います。政府が掲げる課題を効果的に発現していくところのケースにはなるので、まあ目標としてそういう姿を目指していますということなのです。だから確かにそれに対する評価は色々あるかもしれないですが、それでもそれを目指すということです。

小野:そうでしょうが、現実はそう易しくはないですよと言うことが計量経済学というかシミュレーションの一つの目的ではないかと思います。政府に目冷ませてやる。

回答1:そういう目標の姿を見せつつも、今の水準が続いた場合、ベースラインケースも示し、更にベースラインケースより潜在成長率が更に下がった場合の感応度分析というものも17頁に出しております。更にリスクケースというケースを一応出しています。色々な姿を何種類か出しているというところです。

小野:そういうことで岸田さんは危ないケースをやろうとしているのですか。

回答1:危ないケースをやろうとしているというか、まあ政府全体で目指しているのは成長実現ケースです。

小野:潜在成長率というものが、そもそも何なのかということです。今はバブル発生過程の異常な雰囲気とは違うし、大正時代にも大正バブルがありましたが、バブルが発生するときには国中が異常な状態になる。お金を持つだけでは価値が上がらないから投資しようとか消費しようとかという雰囲気になる。そうするとTFPが上がることはある。でも今は失われた30年と言われている。デフレマインドが完璧に定着しています。だからTFPを上げようとしてもテコでも動かないというのが実情で、むしろ歳出を増やせば乗数に従ってGDPは増えるのではないですか。例えば7頁に成長実現ケースというのがあり、そこでは歳出を徐々に増やしていますよね。2032年には139兆円にまで増えています。一定のペースで増やしています。

回答1:高齢化の上昇ペースで増えていますね。高齢化等による年金等の支払いがあり社会保障関係費の増加と物価の上昇で増えています。

小野:現在4%程度のインフレ率ですが、燃料価格の上昇によるものであり、上昇しなくなったらインフレ率も下がってきますね。中国経済の落ち込みもあり燃料価格が下がってインフレ率も下がっていくのではないか。デフレマインドが解消されて毎年物価が上がっていくことになれば皆さんお金を使うし投資もするようになるという気もします。要するに潜在成長率を上下させて計算をするのは現実的ではない。むしろ歳出を拡大して計算してみるべきだと思います。歳出の増加率で比べると日本は世界最低レベルです。乗数を出しておられるので歳出を増やしていけば、財政赤字は拡大します。1960年代のような高度成長期には歳出も20%前後の増加を毎年していた。それと同じくらい税収は伸びていました。

回答1:物価も伸びていましたね。

小野:そういう状況にするためには、デフレマインドを解消しなくてはいけない。そのためには歳出を拡大していけば潜在成長率をいじらなくても経済は成長しますよということを示した方がよいのではないでしょうか。潜在成長率を伸ばすには技術革新を起こす、AIとかITで革命的な発展が起きてそれが経済を牽引するということなら話は違ってきます。そういうのがなかなか起きない状況では、歳出を増やすのが一番よいのではないですか。歳出を何に使うかということですが、子育て支援に使ってもよいし、技術革新、基礎科学などに大規模な投資をし、その結果として潜在成長率が高まればよいですが方程式に普通に入れれば、経済は2%、3%は伸びてきて成長ができるようになる。

回答1:おっしゃる通り成長への期待を高めて行かなければいけないところではありますが、歳出を増やせば成長率が高まると一概に言えるかどうか。ウチのモデルはそうはなっていません。乗数を見て頂ければ政府の歳出を増やしたとしても潜在成長率はそれほど高まらないというモデルになっています。PFTの部分が財政でおかなければならないことになっている。独自に数字を入れて行かなければいけない。歳出が伸びたとしてモデルの中で計算してGDPが増えるというようにはなっていない。

小野:歳出を増やしてもGDPは伸びないのですか。

回答1:一時的には伸びる。需要が供給を上回ることで一時的には伸びるが潜在成長率は伸びてないのでだんだん成長率が下がっていきます。潜在成長率がだんだん低いレベルに下がってしまうというモデルになっている。

小野:成長率が低くなる。人的資源や資本を使い果たす、つまりクラウディングアウトですか。

回答1:だんだんクラウディングアウトが起きてくる。特に民間の供給量が増えないので。

小野:供給量とは何の供給量ですか。

回答1:潜在GDPのことですね。

小野:人的とか資本とかですか。一杯一杯になるということですか。

回答1:はい。支出を増やしても増えないからだんだん下がって行くというモデルになっている。それとTFPの計算は難しいからということです。

小野:かつて日本は追いつけ追い越せで驚異的な経済成長をしましたね。その時人口が爆発的に増えたかといえばそうでもなかったし、電気製品でも、半導体など1990年頃は世界の50%のシェアを占めていた。そこに到る過程でそうなりました。人口は少し増えましたが、ほんの少しです。人口の増加率の10倍くらいは成長しました。人口が増えなくてもIT化、AI化、自動化で人口が増えたと同じような効果があります。農業でも大規模農業にしてAI使って自動化すれば人が少なくても生産はできる。本格的な投資が必要ですが。例えば半導体でもかつて世界シェアが50%だったのが、今は10%に下がってしまった。だから失われたものを取り返そうとすべきです。韓国や台湾に抜かれてしまいました。もう一度追いつけ追い越せで頑張れば成長できます。かつての高度成長期ほどでもなくても成長は可能です。今は世界最低レベルの成長率です。余りに財政赤字を気にしすぎて歳出を増やさない。他の先進国に比べて歳出の伸びが極端に少ない。歳出の伸びを増やすには国債をもっと発行しなければならない。国債は将来世代へのツケだろうと思う人がいるのですが、国債を金融機関が買うときの資金は日銀当座預金から持って来る。日銀当座預金は日銀が通貨発行したものが流れ込んだわけですから、国債発行は事実上通貨発行です。つまり将来世代も同様な通貨発行はできるので将来世代へのツケにならない。国債発行で財政政策を行うということは事実上通貨発行をしてそれを国民に渡していることになります。それを国民のために何かを行う。防衛費拡大でも国債でよいのではないか、増税などいらない。

回答1:そこは色々ご意見があるところです。例えば日銀当座預金で買ったとしてそれは日銀の負債でそれに金利がついたら金利負担が高まるという意見もありますし、そこは我々の試算の範囲外ですね。国債を発行してどれだけ害が出るかというのは。

小野:日銀当座預金に金利をつけるというのは当分やらないほうがよい。ちょっと大変なことになりますね。ともかく低金利でお金を借りて貰ってそれで投資をしてもらう方針でやらないといけない。

回答1:そうですね。

小野:黒田さんは今度代わりますが、新しい日銀総裁でもそのようにやるのではないか。残念なのは黒田さんで異次元の金融緩和をやりましたが、それとセットとして異次元の財政政策をやるべきでした。消費税率を上げたりして異次元の財政政策ではなくむしろ逆噴射をして景気にブレーキを掛けた。プラスマイナスゼロで結局成長しない経済にしてしまった。岸田さんは安倍さん以上に緊縮派ですね。

回答1:緊縮だと思って緊縮をやっているわけではない。当然歳入以上の歳出を出すわけですし。

小野:もっと歳出を拡大しないと諸外国に比べて国民が貧乏になっている。かつて内閣府は一人当たりのGDPが世界一だと言っていた頃があった。国民経済計算にはそう書いてあったし新聞にも書いてあった。ところがルクセンブルグが計算し直して過去に遡って日本を抜いたということはありました。それでも2位でした。今は20位~30位あたりにまで下がっていますし、更に下がっています。韓国にすら抜かれ、台湾にも抜かれそう。惨めだと思います。追いつき追い越せで頑張るべき時が来た。そこを岸田さんに理解してもらいたい。内閣府試算で潜在成長率を動かしさえすれば発展するという結論なら岸田さんは具体的に何をやればよいのか分からなくなる。長い間各内閣で潜在成長率を高めようと努力したけど高まらなかった。岸田さんも同じ過ちをしようとしている。内閣府試算では潜在成長率が上がると言っていますから、今の政策で潜在成長率は上がると誤解してしまう。

回答1:それはご理解を頂いていると思います。難しいことに取り組んでいて結局潜在成長率を高めるには投資を増やさなければいけないことは総理もご存じだと思います。

小野:投資で伸ばそうと思ったら、バブルの頃、プラザ合意があって円高不況になって、その時公定歩合を5%から2.5%に下げた。あの頃のようなインパクトがある政策をしなければならないけど、今金利を2.5%下げようとしてもゼロ金利だから無理です。お金を貸そうと思ってもあの頃のようなやり方はできません。お金を借りて株や土地を買えばいくらでも儲かる時代だった。毎日テレビもそんな話をしていました。今はデフレマインドがあり、あのようにはなりません。

回答1:潜在成長率が伸びる姿にリアリティーがないということですね。

小野:潜在成長率の推移のグラフを見ても最近は急激に上がっていません。それを大きく変えたいなら過去に経験をしたことがないような政策をしなければならない。それって凄く難しいから歳出拡大をしたほうがよい。クラウディングアウトなんて起きません。

回答1:そこは色々議論が分かれているところです。

小野:何とか岸田さんを理解させたいところです。岸田さんと直接お話しできない以上、内閣府の方々に岸田さんに実情をきちんとお話しして頂ければ有り難いと思っています。そうでないと日本経済は発展しない。4%のインフレ率ですが民間の予測では来年には1%レベルに落ちることになっていたと思います。中国経済やロシアのウクライナ戦争を見れば世界的な不況になるかもしれない。欧州もウクライナ戦争で被害を受けている。燃料価格はどこかで下がり始める。

回答1:政府としては新しい資本主義でなんとか成長の実を起こそうとしているところですが、ご意見として歳出の規模が足りないのではないかとおっしゃりたいのですね。

小野:増税などもっての外、増税は国民からお金を集めて国を更に貧乏にしてしまう。もう十分貧乏になってきたから、これからは通貨発行です。日銀当座預金に一杯お金が溜まっていますから、減税してそれを国民に与える。例え財政赤字が拡大しても大丈夫です。成長すれば債務のGDP比も下がります。財政赤字、プライマリーバランス赤字であっても今回の内閣府シミュレーションでは債務のGDP比は下がって行くと分かります。

回答1:はい、下がって行きます。

小野:債務残高が増えても財政赤字が増えても心配しなくてもいいというコンセンサスができればいいなと思います。

回答1:成長前提で予算を組むというところも難しいかもしれないですし、このまま財政規模を部やしていくとそれがダイレクトに効くわけで難しい問題ではあるのですが、ご意見としては承りました。

小野:1960年代の高度成長期にはもの凄い勢いで歳出を伸ばしていて物価も上がってはいましたが、減税をやっていました。調べて頂ければ分かりますが、所得税減税をもの凄くやっていました。給料が上がると皆さんが金持ちになってしまいます。累進課税ですから金持ちの所得税率は高くなります。だから税収が伸びすぎるので様々な控除を導入して減税を進めていました。減税を進めながらでも税収は増えていった。ほとんど知っている人がいないのですが、高度成長期は減税を次々やっていました。我々新聞をみていて、このままだとやがて税金はタダになるのかなと思ってみていたら税収は増えていました。若い人はそういう時代を知らない。当時の新聞を見ることも無いかも知れない。

回答1:物価が上がっただけでなく減税をしていたのですね。

小野:減税をしないと税収が増えすぎて成長が止まるのです。ちゃんと経済企画庁の下村さんとか宍戸さんとかが計算をされていた。10年で所得倍増と言っていたのが、実際は2倍以上になりました。当時は減税をやりながら税収は増えていった。今は増税をやりながら税収は増えない。当時は良い循環に入っていたが、今は悪い循環に入ってしまった。だから悪い循環から良い循環に戻りましょうよということです。

回答1:それはおっしゃるとおりだと思います。

小野:内閣府試算でも付録などでコメントを付けてくださると有り難い。

回答1:なるほど。先程言及した感応度分析に政府の歳出を増やした場合を追加する。

小野:政府が歳出を増やした場合と増やさない場合を比べて発表して頂ければ国民も理解できます。増税したら必ず景気は悪くなります。

回答1:ウチのモデルだと潜在成長率の仮定をしなければならず、検討が必要になります。提案は承りました。検討させて頂きたいと思います。

小野:潜在成長率はそう簡単には動かないと思います。

回答1:歳出を増やしても上がらないということですか。色々考えるところはあるのですが検討はしたいと思います。またよろしくお願いします。

小野:長い間有り難うございました。失礼します。

コメント:
回答1の方は岩下と名乗っておられました。非常に広い知識を持っておあられ、柔軟で丁寧な対応をして頂き大変感謝しております。財政支出を拡大したとき潜在成長率はどうなるかという問いに十分答えることができませんでした。財政支出で生産性を上げる投資が行われたり、それにより労働力を有効に使えるようになれば潜在成長率は上がるのではないでしょうか。

以下は私のコメントです。

2023年1月24日に内閣府が『中長期の経済財政に関する試算』を発表した。実際にこの計算を行っているのは内閣府計量分析室である。しかしこれは「将来予測」とはほど遠く、むしろ「政府のプロパガンダ」と言った方がよい内容である。それは次のような説明から明かである。

第一の例は名目GDPの予測である。

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黒の線が実績であり、ほとんど成長していない。先進国では最低レベルの成長率が続いている。ところが内閣府の予測は右肩上がりで3%成長を予測している。これはモデルを使って得られた結論ではなく、政府が3%成長を目標にしているので、政府に忖度して出した結論であり政府のプロパガンダだ。長期金利に関しても同様である。

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実績では長期金利はジリジリ下がり続け、2016年頃からはほぼゼロになっている。2016年9月に日本銀行は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を導入した。つまり10年物国債の金利がゼロ程度で推移するように長期国債を買い入れする方針を示した。この結果長期金利はほぼ0%になった。その一方でこのグラフで分かるように毎年長期金利は急速に上昇すると予測している。その予測が間違いだということは、このグラフから明かだ。日銀が長期金利がゼロ程度で推移するように無制限の指し値買いオペをすると宣言した後でも急速な金利上昇を予測している。筆者が内閣府計量分析室に電話して日銀の政策を理解してないのかと問いただした後は、金利急上昇の予測を改めた。つまり内閣府は政府には忖度するが、日銀には忖度しない。人事権があるのは政府であり、日銀ではないからだ。

次の図は基礎的財政収支の推移と公債残高対GDP比の推移を比べたものである。公債残高の事を政府は「国の借金」と呼ぶ。いつもの事だが、基礎的財政収支は近いうちに黒字化すると予測するが、これは政府への忖度だ。しかし実際に黒字化したことは一度もない。一方内閣府の試算では国の借金のGDP比は基礎的財政収支が赤字でも下がり続けている。この試算を見て毎回マスコミは基礎的財政収支(PB)が改善されていないから政府は努力が足りないと主張する。しかしPBを改善するには増税か歳出削減せよということになるし、そうなれば確実に国民を貧乏にし、消費を減少させ、企業の経営状態を悪化させ、実質賃金を下落させる。すなわちデフレスパイラルであり実際失われた30年で日本に起こったことだ。

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竹中平蔵は「名目GDP成長率が名目金利よりも高かった場合、基礎収支が赤字でなければ、財政破綻は回避できる」と『竹中教授のみんなの経済学』(2000)の中で指摘していた。国債の発行残高が増加するにつれ、基礎的財政収支(PB)黒字化をしないと財政が破綻するという間違った説を受け入れる人が増えてきた。そのような時、小泉純一郎(当時の首相)は内閣府の試算が単なるプロパガンダだと理解しておられなかったようだ。その時の内閣府試算では2011年度にはPBが赤字から黒字に変わると「予測」していたから、「2011年度PB黒字化」を目標にすると宣言してしまった。これを達成するために、彼は国民に「痛みに耐えよ」と要求し、緊縮財政を続けたために、デフレ経済が続いた。一人当たりのGDPはかつて世界で第2位だったが、緊縮財政のお陰で18位まで下がってしまった。結局2011年度のPBは大きな赤字となり、内閣府試算が間違っていることを証明した。小泉氏はどうして財政赤字が減らないのだろうとつぶやいていた。PB黒字化を目標にする国など日本以外はどこもない。本当にPB黒字化したら、巨額のお金を国民から取り上げることになり、日本は一気に貧乏になる。次の図はPBの対GDP比のグラフである。黒い線が実績だが、一度も黒字化したことはない。しかし毎回のように、上向きのグラフを予測しているのは政府に忖度した結果だ。頑張れば黒字化するから頑張りましょうと言いたいのだ。頑張るということは国民からお金を取り上げ国民を貧乏にするという恐ろしい意味を持っている。

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内閣府の試算が全く現実離れしていることを例で示そう。平成25年度(2013年度)の予測を(A)とし、それを2023年1月の予測(B)と比べてみれば明かだ。
2023年度の名目GDPは(A)では689.3兆円だが、(B)では571.9兆円である。国債費は(A)では56.5兆円となっており実に税収の75%にも達している。筆者がこんな目的に税金の大半を使っていたら国民は税金を払わなくなると主張したら、内閣府はその後の試算では国債費を減らすよう工夫していった。(B)では25.3兆円にまで減少しこれは税収の36.5%にまで下がっている。下がった原因は長期金利の下落であり、(A)では5%と予測したが(B)では0.4%まで下がっている。

日本は積極財政政策を行うべきだという我々の主張を何人ものノーベル経済学賞受賞者が賛成している。このことは以下のサイトで詳しく説明したので是非参照して頂きたい。
https://sites.google.com/view/ajerhp1

 

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2022年11月10日 (木)

岸田首相は日本経済の現状を理解しておられるのだろうか(No.478)

10月29日政府が総合経済対策を決定した。その内容は
一般会計歳出     29.1兆円
国・地方の財政支出    39兆円
事業規模       71.6兆円
であった。内閣府によれば、この対策でGDPを4.6%押し上げる。つまり25兆円押し上げ、消費者物価を1.2%引き下げるそうだ。

2022年7月の内閣府発表によれば2023年度は
実質GDP成長率 1.1%
名目GDP成長率 2.2%
インフレ率    1.7%
であった。この経済対策でGDPが4.6%押し上げられるのであれば、名目GDPは
2.2+4.6だとして6.8%という非現実的な成長になってしまう。政府は来年度の成長率の予想が変更されるのかどうかも発表すべきではないか。

消費者物価を1.2%引き下げるそうだが、これは電気・ガス・燃料代などで小売り会社に支援金を払って値上がりを軽減することによるものだろう。日本はまだ需要不足が続いており、デフレ脱却宣言はまだ出ていない。現在のインフレ率が3%と言われるが、円安が進み燃料価格など輸入品の価格の上昇が原因で、景気が過熱して供給が追いつかなくなったというわけではない。そもそも賃金が上がらないのに、景気が過熱することなどあるわけがない。燃料価格など、輸入品の価格の上昇はやがて止まり、その後はまたデフレ経済の方向に進むのではないか。

筆者の提案は国債発行を財源としたベーシックインカムの実行だ。つまり全国民に同額の現金を定期的に給付する。実際2年前、政府はコロナ禍から国民を救うために全国民に10万円を給付した。これにより激しいインフレとか国債の暴落とかはなかったし、これでデフレ脱却宣言が出せるわけでもなかった。むしろ10万円では少なすぎると考えた人が多かったに違いない。我々は日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って何がベストかを知るために計算してみた。日本経済を成長軌道に乗せるためには例えば全国民に年間80万円(例えば3か月ごとに20万円)の現金給付をすればよいという結論に達した。

2008年、ポール・クルーグマンがノーベル賞を受賞したときは日本だけでなく、世界中が大不況だった。彼は『今、世界は「不思議の国のアリス」にいる。この世界では貯蓄を高めること、財政を健全化することが悪いこと。財政赤字を拡大することが善いこと。あべこべの世界だ。』と語った。日本だけはまだあべこべの世界にいる。需要不足が続いている日本では財政健全化が悪いこと、財政赤字を増やすことが善いことなのである。一方、英国など日本以外の先進国は需要が大きすぎて供給が追いつかなくてインフレ率が高くなっているのであべこべの世界ではない。金利を上げ財政の健全化を目指さしてインフレを止めなければならない。

日本は恐ろしい「不思議の国のアリス」に30年間も留まっているから果てしなく貧乏になってしまう。岸田首相、日本を貧乏の地獄から抜け出す方法を考えて下さい。

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2022年9月23日 (金)

日本経済復活の会の活動記録(No. 475)

日本経済復活の会は2002年に設立された。当時は小泉首相が「痛みに耐えよ」と国民に訴えていた。しかし小泉首相は国民が痛みに耐えたら、ますます需要が減少し、企業の売上げが減少、日本の経済規模が縮小し日本が貧乏になるのは明かだ。実際日本国民はこの恐ろしい提案を素直に受け入れて、みるみる貧乏になってしまった。そもそも国の借金が大変だという考えが根本的に間違っていた。それを示す最良の方法は計量経済学を駆使しシミュレーションをして結果を見せる事だと思った。そこでこの分野で日本の第一人者である宍戸駿太郎先生にご協力をお願いし、快く引き受けて頂いた。そこで私と宍戸先生、さらに協力すると約束して下さった牧野聖修衆議院議員の3名で日本経済復活の会を立ち上げた。

 

最初に日経新聞社と契約し日経が開発したNEEDS日本経済モデルを使ってシミュレーションを行い、積極財政を行うことにより日本経済が再び発展し、インフレ率も金利も正常化する事を示した。この結果を信じてよいのか、二人のノーベル経済学者に聞いてみた。最初は経済学における世界的権威ポール・サミュエルソン教授だ。彼の意見は「大規模な経済対策で景気が回復するならインフレ率は気にしなくて良い。目的は流動性の罠を抜け出すことなのだから。」と好意的だった。次に計量経済学の世界的権威ローレンス・クライン教授からも好意的な手紙が来た。「興味深いシミュレーション結果を有り難うございました。私の提案は通貨の膨張(通貨発行)です。減税に加え教育に投資するとよい。」ということだった。この二人の見解に励まされ結果を論文にまとめ発表した。

 

最初に反応したのは亀井静香衆議院議員だった。2003年2月24日に赤坂の料亭「重箱」に来てくれとの連絡が入った。私と亀井氏に加え川路耕一氏(光陽グループ代表 毎年日本の長者番付で上位にランクインしている)、前野徹氏(元東急エージェンシー社長)も同席した。亀井氏は「今年の秋の総裁選で自分が総裁になるし、そうならなくても重要ポストに就く。そのとき小野盛司さんを私のブレーンにしたい。」と述べた。

 

2003年6月17日、筆者は竹村健一に会いに行った。彼は帝国ホテルにオフィスを持っておられ、入ると8名くらいのスタッフがいる部屋があり、奥の部屋に竹村氏がいた。彼はテレビ、ラジオなどに精力的に出演し、「日本の常識は世界の非常識」などの数々の流行語を作り出し発言の影響力は極めて大きかった。私が彼にシミュレーションの結果を説明したのだが、積極財政を行えばGDPが拡大し、経済が活性化すると説明すると大変驚いておられて、「こんなことをテレビで話したら大変なことになる」と発言された。積極財政でハイパーインフレになるとか、国債が暴落するとかという説を信じておられたのだろう。「このシミュレーションを自分がテレビで話したらテレビに出して貰えなくなる」と思われたのだという印象だった。

 

それに続き週刊大衆が2003年7月21日号でこのシミュレーション結果を大きく取り上げてくれた。その翌月には野呂田芳成衆議院議員に満芳会で講演するようにお願いされた。この会は東芝・全日空・日本郵政公社・三井不動産・東京電力など日本を代表する大企業の社長・会長などが多数出席した。私の講演は大変好評だった。こういった大企業が日本経済復活の会を支持してくれればと思い、個別に交渉してみたが、大企業には様々な意見の人がいるとのことで断られた。一方、資金的にサポートして下さったのは、ケン・コーポレーション社長の田中賢介氏だった。

 

我々はローレンス・クライン教授を日本に招いてシンポジウムを開きたいことを提案し田中社長は快く引き受けて下さり、必要な経費は払うと約束して下さった。2004年10月19日、九段会館でローレンス・クライン教授を招きシンポジウムが開かれた。登壇者はクライン教授に加え筆者小野盛司、宍戸駿太郎元筑波大学副学長、リチャード・クー野村総研主席研究員、牧野聖修衆議院議員、田中健介ケン・コーポレーション社長であった。高村正彦衆議院議員、伊藤達也金融担当大臣などから祝電があった。翌日の10月20日、我々はクライン教授を衆議院第一議員会館にお連れし国会議員の前で講演を行ってもらった。議員を集めるため発起人になって頂いたのは高村正彦(前自民党副総裁)と鳩山由紀夫(元総理)であり、約100名の議員(一部は議員秘書)が集まった。これをきっかけに自民党はシミュレーションで日本経済復活を探ろうという「シンクタンク2005ジャパン」を設立した。

 

2004年10月19日のFinancial Times にはシンポジウムの詳しい紹介が載った。その他シンポシウム関連報道としては、フジサンケイビジネスアイ、産経新聞、朝日新聞(クライン氏の独占インタビュー記事)、Herald Asahi、日経金融新聞、日刊不動産経済通信、新唐人テレビなどが紹介してくれた。2007年10月26日には朝日新聞に意見広告を

1頁全面広告として出した。この広告で、戦後最長の好景気と言っていたマスコミの論調が一気に「衰退する日本」との認識に変わった。また2010年6月22日にも読売新聞に意見広告を1頁全面広告として載せた。

 

2006年9月28日にはキャピトル東急ホテルにて「日本経済復活のシナリオを語る会」というタイトルのパーティーを開催。第一部は内閣府社会経済総合研究所所長の黒田昌裕先生の講演、第二部は宍戸駿太郎(元国際大学学長、元筑波大学副学長)氏が国際レオンチェフ賞受賞の祝賀パーティーを行った。

 

2008年9月6日、小野会長がNHKの番組編成会議で講演と質疑応答。演題は「お金がなければ刷りなさい」であった。出席者は三宅民夫アナウンサー等10名で出席者全員が、我々の考えに大変好意的だったが、実際の番組では、ここでの議論は全く考慮されなかった。

 

2009年2月19日、小野会長が自民党清和会の清和政策研究会で講演を行った。この講演に関しては清和政策研究会のホームページで確認できる。

 

2010年9月24日に新時代戦略研究所(INES)第133会研究朝食会で我々のシミュレーションを紹介し、ディスカッションがおこなわれた。スピーカーは日本経済復活の会 会長 小野盛司、青山学院大学教授 榊原英資、第一生命経済研究所 熊野英生、コーディネーターは経産大臣政務官 近藤洋介衆議院議員、大和総研 原田泰であった。

 

日本経済復活の会の100回記念パーティーが2012年6月20日に開かれた。参加者は小野盛司会長、亀井静香衆議院議員、田中康夫衆議院議員、亀井亜紀子参議院議員、グレゴリー・クラーク多摩大学名誉学長、宍戸駿太郞元国際大学学長、元筑波大学副学長、三橋貴明 経済評論家・作家、 倉山満 国士舘大学体育学部・21世紀アジア学部講師、河添恵子 (株)ケイ・ユニバーサルプラニング 代表取締役 であった。

 

その後も日本経済復活の会の定例会は続いており、第158回の定例会は2022年6月19日に開かれた。

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2022年9月 2日 (金)

次世代原発の建設について(No.474)

脱炭素の目標を掲げたものの、ウクライナ戦争もあり燃料価格の上昇を受けて、経済産業省は2023年夏以降に東電柏崎刈羽原発など国内の原発計7基の再起動を目指す方針を8月24日示した。また次世代原発にも興味を示しているようだ。筆者は理論物理学を専攻し東大で博士号を取得したわけで、この話題には興味がある。

福島の原発事故はひどかった。しかし国民・政府・電力会社が軽水炉の仕組みを正しく理解していたら、事故を防ぐ方法はいくらでもあった。政府は原発の再起動を急いでいるようだが、対策を十分行っているなら、緊急対策としてこれに反対すべきではないと考える。しかしこれらの原発は軽水炉であり、危険は残る。一方原発を小型化し炉を冷やすだけに十分な水の中に炉を入れておくなら、全電源が失われても冷却は可能で原子炉が暴走して大事故になることはない。これは小型モジュール炉(SMR)と呼ばれ、安全で建設費が安いので脚光を浴びている。従来の原発は100万KW程度の出力に対し、SMRだと10万KW程度だが標準化して大量生産すれば価格は下げられる。しかも電力消費地の近くに建設可能である。

例えば、ロシアのSMRは3.5万KWを2基載せた海上浮体式であり2020年から北極圏の沿岸で商業運転している。電力が必要な所に臨機応変に移動できる。米国の振興企業ニュースケール・パワーは1基7.7万KWのSMRを複数設置する。その際の発電コストは1KWあたり3000ドル以下であり、一方大型炉は5000ドル以上する。老朽化した石炭火力をSMRで置き換えることができる。1基7.7万KWの炉を最大12基まで連結できる。全電源が失われても大量の水の中に入れておくので、冷却に困ることはない。三菱重工業が開発しているマイクロ炉はトラックで運べる。燃料交換無しで25年間使用可能である。2040年運転開始の予定である。

水冷でなくヘリウムガスで冷やすのが高温ガス炉である。日本原子力研究開発機構大洗研究所で2004年4月に950℃のガスを取り出すことに成功し世界最高レベルであることを示した。これだけの技術があれば水素をCO₂の発生なくして製造できる。しかし日本には核アレルギーがあり、国内に炉を建設するのは極めて困難だったので、諸外国(ポーランド、英国、カザフスタン等)での建設に協力するだけになっている。これは極めて残念であり、脱炭素に向けて国内に高温ガス炉の実用炉の建設を検討すべきだ。一方中国はすでに高温ガス炉を建設し、送電網接続発電に成功している。

ナトリウム冷却高速炉は世界で開発が加速している。ロシア、中国、インド、米国、カナダ、フランスなどである。ナトリウムで冷却する利点は、高速の中性子を使って、核燃料を効率よく燃やすことができる点である。日本の原発は副産物として大量のプルトニウムが発生するが、これは原爆の製造に使われるもので、貯蔵するだけでも大変危険なものである。高速炉ならプルトニウムも燃やすことができ、放射性廃棄物を大幅に減らすことができる。日本はもんじゅの開発を通じてナトリウムによる冷却に関して多くの知識を蓄積したのだから、それを無駄にするのは余りにも勿体ない。諸外国と連携し、ナトリウム冷却高速炉を建設し、バスに乗り遅れないよう努力する必要がある。重要なことは過度の核アレルギーを排除し、安全な原子炉の建設の努力を続けるべきだ。ロシアのウクライナ侵攻で燃料価格が高騰し原発への期待が諸外国で高まっている。経済産業省の審議会は8月9日、次世代の原子力発電所の技術開発に関する工程表をまとめた。脱原発でなく、「脱危険な原発」という考えで研究開発を進めるべきである。

 

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2022年8月16日 (火)

内閣府計量分析室の試算に裏に隠された真実(No.473)

内閣府の試算には失望させられるばかりだが希望はある。それはその試算の影響力の大きさだ。信頼性を疑う試算だが、それでも政府・マスコミ・経済評論家・国民に与える影響は絶大である。2008年1月17日に内閣府が発表した「日本経済の進路と戦略」という試算は特別だった。そこでは成長シナリオとリスクシナリオが計算してあるのだが、それに加えケースAとケースBも計算されていた。つまり成長A,成長B,リスクA,リスクBの4通りの試算が出されていた。ケースAとケースBの唯一の違いは歳出の規模だった。ケースAは緊縮財政、ケースBは積極財政である。結果は積極財政の方が緊縮財政より名目GDPも実質GDPも大きく増加、物価は積極財政の方が、0.1ポイントだけ高くなり、失業率は積極財政の方が低くなる。国の借金は積極財政の方が大きくなるが、GDPも増えるため国の借金のGDP比は逆に下がる。一方で基礎的財政収支は緊縮財政のほうが改善する。つまり積極財政では、国も国民生活も豊かになり、失業者も減り、物価は僅かに上昇する。この事は内閣府が発表した乗数を見て確認できる。
extension://elhekieabhbkpmcefcoobjddigjcaadp/https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
唯一悪化するのは基礎的財政収支だが、これは国民の生活には関係ないしこんなものを国家目標にしている国は日本だけであり無視して良い。

2011年度の予想
            ケースA 緊縮型        ケースB 積極型
名目GDP(兆円)    574.0              577.2
消費者物価上昇率     1.4%               1.6%
完全失業率(%)      3.4%               3.3%
歳入(兆円)       92.7               94.8
歳出(兆円)       95.2               96.1
債務の対GDP比    137.1              137.0

唯一緊縮型が改善されたと主張していたのは基礎的財政収支だ。マイナス0.1%になると予測したが、実際はマイナス32.3%であり、なんと予測の3000倍以上の赤字になった。つまり基礎的財政収支の予測は意味が無いが、緊縮型より積極型の方が、国を豊かにすることだけは明か信頼してよい。これは内閣府に限らず、どのモデルを使っても同様な結論となる。通貨を発行して国民に渡せば国も国民も豊かになるのは自明の理だ。

内閣府の試算では名目GDPが3%成長するという結果を出しており現実離れしているという事は次のサイトで示した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-ea1155.html
内閣府の予測が当たっていないと言える。しかし内閣府の試算では毎年歳出を増やすと仮定してあるのだが、政府は歳出を増やさないようにしているので当たるわけがない。当然のことだが、名目3%成長を目標とするなら、当然歳出も毎年3%ずつ増やさなければ無理だ。内閣府の試算は歳出を毎年3%ずつ増やすと仮定しているからこそ名目3%成長の結果となる。実績では例えば1999年度の歳出は89兆円で、2019年度は101.4兆円であり年率の増加率に直すと僅か0.65%にすぎない。もし年率3%で歳出を増やしていたら2019年度の歳出は161兆円になってなければならなかった。結果として国の借金は増えるが、名目GDPが大きく増えるので国の借金の対GDP比は減少する。これは内閣府の試算でも確認されており財政は健全化に向かう。今後政府は内閣府の試算で仮定されたように、歳出を毎年3%ずつ増やすべきだ。

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2022年8月 8日 (月)

【続】内閣府計量分析室(オオカミ少年)が経済財政に関する試算を発表した(No.472)

内閣府の試算には失望させられるばかりだが、希望はある。それはその試算の影響力の大きさだ。信頼性を疑う試算だが、それでも政府・マスコミ・経済評論家・国民に与える影響は絶大である。2008年1月17日に内閣府が発表した「日本経済の進路と戦略」という試算は特別だった。そこでは成長シナリオとリスクシナリオが計算してあるのだが、それに加えケースAとケースBも計算されていた。つまり成長A,成長B,リスクA,リスクBの4通りの試算が出されていた。ケースAとケースBの唯一の違いは歳出の規模だった。ケースAは緊縮財政、ケースBは積極財政だった。結果は積極財政の方が緊縮財政より名目GDPも実質GDPも大きく増加、物価は積極財政の方が、0.1ポイントだけ高くなり、失業率は積極財政の方が、低くなる。国の借金は積極財政の方が大きくなるが、GDPも増えるため国の借金のGDP比は逆に下がる。一方で基礎的財政収支は緊縮財政のほうが改善する。つまり積極財政では、国も国民生活も豊かになり、失業者も減り、物価は僅かに上昇する。唯一悪化するのは基礎的財政収支だが、これは国民の生活には関係ないしこんなものを国家目標にしている国は日本だけだ。

内閣府計量分析室に2回電話して質問した。

【第1回】
Q 先週末に中長期の経済財政に関する試算を出されましたが、これについて質問します。14頁から参考資料が示されています。そこでは半年前との比較が出ています。以前の発表には無かったのに今回出てきたのはなぜですか。
A 15頁、16頁の比較は今回が初めてなのですが、17頁、18頁の「コロナ前試算との比較」というところもあります。
Q 今までは潜在成長率は出ていませんでしたが今度は出ました。国・地方の公債等残高対GDP比は悪い方向に動いてますね。
A はい。
Q こういったものを敢えて出されたのはどうしてですか。
A 今まではこういったポイント資料を出していたのですが、今まで抜けていたものを参考資料として出しました。
Q どちらかと言えば悪い方向に、下方修正になっていますがその理由を教えてください。
A 年央試算で下方修正になったからです。
Q 確かに1月17日に発表された試算では2022年度の成長率は名目3.6%、実質3.2%となっていますが、7月25日の発表では名目2.1%、実質2.0%に下方修正されています。しかし2023年度から2031年度は計量分析室で計算したわけで、その部分も下方修正されていますね。
A はい。
Q 下方修正は今回だけではありません。20年近くの間、同様な下方修正を繰り返していますね。
A はい。
Q 名目3%成長、実質2%成長が政府の目標ですから成長実現ケースではこれに従わなくてはいけないのだという話を何回も聞きました。
二十数年前からGDPはほとんど成長していない、世界にこれだけ経済が停滞している国はないという位、世界最悪の状態が続いている。今回は31年度まで計算してありますが、過去のデータを見れば3%成長をするわけがない。余程思い切った政策をやらないと3%成長など夢の又夢です。今のままだとほぼゼロ成長がずっと続いていく。過去の経験からすれば今後もゼロ成長が続くのではないか。でも立場上そんな発言はできないということかもしれません。
A はい。そのような指摘を受けるところですが、政府が目指すところを描いているところでもあります。
Q 例えば自民党の中でも積極財政派と財政健全化派がいて鋭く対立していて骨太方針を決めるときもめました。基礎的財政収支黒字化は目標からはずそうという意見が強く、そうすることに一旦なりましたが、最終的には僅かに過去からの痕跡みたいな注釈が残りました。自民党の中でも積極財政派と財政健全化派が対立しています。どちらが正しいのかを内閣府の試算で財政を拡大する場合としない場合の計算をして比較すべきです。
A はい。
Q それはできないのですか。
A 私がお答えすることはできないのです。そういったことは難しいのかなと思っています。
Q 以前、基礎的財政収支がいつ黒字化するかということで、毎回計算しておられますね。
A はい。
Q 基礎的財政収支改善のために歳出を削減するという試算を内閣府でやっていました。大きく歳出を削減する場合をケースA、少しだけ歳出を削減する場合をケースBとして計算し結果が公表されました。相対的にはケースAが緊縮財政、ケースBが積極財政と言えます。発表された結果によると積極財政のほうが緊縮財政よりGDPが拡大し、失業率も減少、物価は0.1ポイントだけ上昇し、さらに債務残高の対GDP比も減少するという結果が出されています。こういった計算を再度行うべきだと思います。成長シナリオでケースAとケースBを計算して今の日本にとってどちらがよいのかは、政治家の方々や国民に判断してもらえばよいわけです。そういった計算はどう思いますか。
A そういったケースのどちらがよいかというのは、一概には言えないと思います。
Q そういった計算をして結果を出すと議員とか国民に考える材料を与えることになりますね。
A はい。そういった事でご意見を承っておきます。
Q 3%成長という線を引いておられますが、成長を助けるものは何かを見ると、やはりこの計算でも財政を拡大していますね。GDPが増えたら税収も増える、それに伴って歳出も増やす。上昇軌道に乗ると、来年度は税収が増えると見込んで歳出を増やすことになり、毎年毎年歳出が増えていくことになります。かつての日本は成長期ではそうしていた。60年代から80年代まで、歳出を決めるときに来年度の税収はこの位増えるだろうとして予算を組んでいた。そうすると増えていく。だから歳出は毎年増えていた。むしろ60年代は税収が増えすぎるから、様々な控除を設定して所得税減税を行っていた。そして減税をしながら税収は増えていった。成長するとそうなる。一方で現在は成長しないから、税収は増えない。だから歳出は増やせず、結果として極めて低成長になる。政権側から名目3%、実質2%、インフレ率2%となるようにせよとプレッシャーが掛かるのでしょうか。
A そういったことがないわけではない。
Q そういった自主規制のようなもので計算していますか。結果として3%成長しない。だから毎年下方修正せざるを得ない。3%成長すると言っておきながら、実際次の発表時には成長していない。しかたなく、下方修正をして今後は3%成長しますと言う。結局国民を騙し続けている。そろそろ考え直してみませんか。
Q はい、分かりました。承りました。
A 2021年度の歳出は144.6兆円、22年度は110.3兆円で34.3兆円減っている。素朴に考えればこれだけ歳出が減ったらGDPは大きく下がるはず。普通のモデルなら当然そうなりますが、ここでは逆に上がっている。これはなぜですか。
Q お答えできかねます。
A 歳出ですが2020年、21年で随分増えている。22年は大きく減っている。
Q そうですね。
A 普通のモデルなら34兆円も減らすと、GDPも大きく減少するはずなのに2.1%増えている。なぜか。
Q 予算の使い残しがあって翌年に繰り越されているのではないか。補正予算がどのように使われているのかを説明してください。
― 担当者は、まともに答える気があるように見えないので電話を切った。 ― 

【第2回】再び電話
Q 先週、中長期の経済財政に関する試算が出されました。日本経済は実質賃金は二十数年間下がり続けている。その間GDPも成長率はほぼゼロである。この試算は1年に2回出しておられますが、毎回、実質2%、名目3%ということが仮定されているみたいです。
A はい
Q 金利も毎年上がる予想が出ている。
A はい
Q 実績と比べてみると全然当たっていない。
A はい
Q どうして当たらないのですか。
A 当たる・当たらないという話はそうですね。結果的にはそうなっているのですけど。
Q 結果的にそうなっているということならば、成長実現ケースでの予測はどうせ当たらないと思われても仕方ない。国を動かすためにはある程度予測が正確でないと難しい。天気予報もだんだん正確になってきている。内閣府の試算は毎年進歩しているかと言えば、そうではなく同じ間違いを繰り返している。
A はい。
Q 例えば、今回参考資料が出ていて、半年前の発表に比べ今回は下方修正されているという比較がしてありますね。
A はい。
Q 十数年間、毎年下方修正をしながら出している。それよりも最初から下方修正をしておけばよいのではないか。
A はい。そういったご意見も受け止めながら今後も作成していきたいと思います。
Q 私も何回も電話してそのことを言うのですが、それは試算に反映されてないですね。覚えておられるかどうか分かりませんが2008年の1月17日の内閣府の試算はちょっと違っていました。成長実現ケースの中でもケースAとケースBを計算しておられる。ケースAとケースBでは歳出の額だけが違っている。Aの場合は緊縮財政、Bの場合は積極財政なのです。2つのケースを見たら積極財政の方がGDPは拡大し、失業率は減少、累積債務の対GDP比は減少しています。これは内閣府で乗数を出しておられるので言うまでもないことですね。唯一緊縮財政が良いのは基礎的財政収支が改善するということだけです。これは政治家やマスコミ、一般国民が判断する材料としてとても価値が高いのではないでしょうか。基礎的財政収支さえ黒字化すれば日本は潰れても良い、国民がどんなに貧乏になっても良いという考えもあるかもしれない。いやそうではなくて、積極財政で国民・国家を豊かにしたほうが良いと考える人もいるかもしれない。それは内閣府で判断するのでなく、政府・政治家・国民に考えてもらえばよいのではないか。これが私の率直な感想なのです。なぜか2008年だけその比較が示され、それ以外の年はその比較は行われていない。内閣府計量分析室の中の人でケースA、Bの歳出の額を決めた人を私は知っています。どうしてその後歳出の額だけを変えたケースを計算しなくなったのですか。
A ちょっと分かりません。2008年には私はここにいませんでした。
B 当時、誰がその方針を決めたのでしょう。当時はケースAとケースBの場合が新聞にデカデカ取り上げられて国民の関心も高かった。計量分析室の中のどなたかが、この2つのケースを計算してみようと決めたのだと思います。だからもう一度同様な計算をやって頂けないかと思います。自民党の中でも野党の中でも積極派と緊縮派が鋭く対立してますね。どちらが良いのかを考える時、こういう比較が内閣府から出されていれば、国民の生活を考える上で重要なヒントを与えることになります。参議院でも同様な計算が行われていますし、日経のNEEDS日本経済モデルを使った計算もあります。乗数を出しておられますので乗数を見ればどういう結果になるかは一目瞭然なのですが、でも内閣府計量分析室が比較試算を出せば非常に影響力が大きい。もしかすると停滞を続ける日本経済を救うかもしれないと思っています。どちらがよいと内閣府で決めつけるのでなく、中立な立場でディスカッションの材料を提供すると良いと思うのですがどうお考えですか。
A ご意見を参考にさせて頂きたいと思っております。
Q どうすればそれが実行されるでしょう。こういった判断は内閣府計量分析室でできるのか、あるいは政府・自民党などと相談するのか。誰がそれを決定できるのですか。
A 内閣府計量分析室単体ではできません。
Q だから上の方からの指示が必要ということですか。今の政策で本当に3%成長すると思いますか。あるいは0%成長が続くのでしょうか。
A 将来の姿は試算で書いてありますから、その通りです。
Q 2018年に乗数を発表しておられていて、大凡の振る舞いは分かるわけで、ゼロ成長がこれだけ長く続くということは歳出を増やしていないということ。歳出を増やさなければ成長するわけがない。韓国・台湾・中国なども急成長している。日本だけが成長しない。どこが違うのか。歳出を増やさない事に原因があると思います。
A はい。
Q 政府から要望があれば、出せますか。
A 必ず出せるというわけでもない。

――――――――――――――

【コメント】
近年は内閣府計量分析室の方々は非常に知識が豊富で丁寧な受け答えをして下さっておりました。今回は知識が貧弱で、丁寧な説明を拒んでいるように思えました。

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2022年8月 7日 (日)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)が経済財政に関する試算を発表した(No.471)

内閣府は年2回「中長期の経済財政に関する試算」を発表している。日本には経済財政に関する試算を発表しているシンクタンクは多数あるが、その信頼性に関しては内閣府のものが最悪である。それは内閣府の担当者の質が悪いのではなく、きつい制約があるので自由な解析ができず、その制約の下で計算すると、全く現実離れした予測しか出せないのだ。その制約とは
① 名目成長率3%、実質成長率2%、インフレ率2%
② 発射台となる今年度の成長率は事前に定められ閣議決定されるので、これは決して動かせない。
つまりシミュレーションの出発点は事前に固定され、成長率も固定されているので内閣府計量分析室には身動きが取れなくなっている。もちろん、この制約が過去の日本経済と整合的であれば、問題はないのだが、現実は過去の成長率は世界最低でほぼゼロ成長が続いている。正常な判断力を持つ人間であれば、今後30年もやはり世界最低レベルの成長率が続き、やがて日本は世界最貧国に近づくと予想するだろう。しかし計算を担当している内閣府計量分析室がそのような悲観的な試算を出せば、国民の支持は失われ政権が維持できなくなる。これはかつての大本営発表と同じで、国民が嘘に気付いたときには国土は焼け野原になっていて多数の人命が失われていた。

試算を出す度に厳しい批判を受けているので、今回は半年前の発表より経済が悪化していることを認め、参考資料としてどの程度悪化したかを示した。2022年の実質GDP成長率では半年前は3.2%となっていたが、今回は2.0%にまで下方修正された。同様に名目GDPは3.6%から2.1%に下方修正された。このような下方修正が2~3回程度なら特別追求すべき事でもないが、同様な下方修正を実に20年も繰り返している。

次に示すのは内閣府が予測した名目GDPと実績値との比較だ。実績はゼロ成長なのだが、毎年3%成長になるように現実離れをした予測を出している。小学生にグラフをみせて、将来どうなるかを予想してもらえばよい。ほぼゼロ成長の予想をするだろうし、内閣府の予想より遥かに精度が高いだろう。

1_20220807153601

金利の予想も実績と比較してみよう。

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実績値は下落気味で2016年度からはほぼゼロに固定されている。右上がりの線は2002年度から2022年度までに内閣府が発表した予測である。こちらも小学生のほうが内閣府よりはるかに高い精度で予測するだろう。本当に多額の税金を使ってこのような馬鹿な試算を出し続ける価値があるのだろうか。内閣府計量分析室は2018年に乗数を発表した。歳出を減らしたらGDPも減少すると予測。詳しくは以下のサイトを参照して頂きたい。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
ところが今回の発表では次のグラフのように歳出が減っても名目GDPが増えている。

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内閣府計量分析室によるとこの件に関しては別な部署に責任があると主張して理由を説明しようとしない。

本来なら景気が悪化し成長率が世界最悪レベルになれば、政権は吹っ飛び、経済を建て直すと主張する野党が政権を取るだろう。2009年、政権交代した民主党はマニフェストで約束した事は実行せず景気回復どころか東日本大震災の対応に失敗し、更に復興資金として所得税を増税し、更に消費増税まで決め株価も低迷した。しかも外交でことごとく失敗し、真に地獄の世界で国民は二度と民主党は嫌だという強い拒否反応が出てきて自民党の一党支配を許す結果となっている。

今回の予測も今までと変わりはない。過去に出された予測がすべて間違いだったとして、今年度の成長率を下方修正し将来的には名目3%成長しますというもの。オオカミ少年は2回までは信じてもらえたが、3回目は信じてもらえなかった。内閣府の試算は「今年度は大はずれで下方修正をしますが、今後は名目3%成長をします」という嘘を20年前から言い続けているのだ。今こそ国民は偽りの試算で国民を騙すのは止めろと抗議すべきだ。そして実質2%、名目3%の成長率にするには、財政規模をどこまで拡大しなければならないかを示させるべきだ。財政赤字は悪だという社会通念を打破し、財政支出を拡大した場合、日本経済はどの程度発展するのかを計算し発表すべきだ。社会通念の打破はコペルニクス的な発想の転換が求められる。財政赤字の拡大はモラル低下でも腐敗でもなく、事実上政府が通貨を発行し、経済拡大のための成長通貨の供給を行っているだけである。企業なら赤字が続くと破綻するが、国は通貨発行権を持っていて破綻はせず、いつでも通貨発行はできるし、発行しなければならない。通貨発行でかつて世界を驚かせた経済復興を再現しようではないか。
参考文献:『毎年120万円を配れば日本が幸せになれる』『ベーシックインカムで日本経済が蘇る』

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2022年7月28日 (木)

ベーシックインカムの導入が及ぼす日本経済への影響(No.470)

ベーシックインカムが日本に導入されたとき、日本経済にどのような影響が出るのかを日経新聞社が開発したNEEDS日本経済モデルを使い調べた。全国民に20万円を年4回、つまり合計80万円を毎年給付する場合、様々な経済データがどの程度影響を受けるのかを示す。その影響を明確にするために、現金給付をした場合としなかった場合の差を示した。そうすることにより、季節的に変化する場合とか、為替に影響する場合とかという種類の効果が差し引かれ、純粋に現金給付による影響のみが明らかになる。例えば経済対策を今年始めても、来年始めても、例えばGDP押し上げ効果はほぼ同じと思われる。現金給付の財源は国債発行とし、これに伴って社会保障費を減額したり、増税をしたりしないものとする。

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2022年6月 6日 (月)

基礎的財政収支黒字化目標を撤回し積極財政政策に転換せよ(No.469)

財政施策の指針を決める2022骨太方針が明日6月7日に決定しようとしている。これまで骨太方針には、いつまでに基礎的財政収支(PB)を黒字化すると明記してあった。今回はこのことに関して自民党の中で紛糾している。自民党の財政政策に関する二つの本部が出来上がっている。
① 財政健全化推進本部
  岸田首相の直属の組織であり麻生副総裁、額賀福志郎氏などが入っており財政再建の
旗を降ろさない
② 財政政策検討本部
  安倍晋三元首相や西田昌司参議院議員などが属しており積極財政を求めている。

5月19日 財務省の小野平八郎総括審議官(緊縮派)は6月上旬に閣議決定される「骨太の方針」について自民党との調整に追われていた。その夜、小野平八郎氏は酔って電車内で乗客を殴ったとして警視庁に逮捕された。以前には財務省では森友学園案件に関わる決裁文書が改竄された。自殺者も出た。このように財務省の権威が失墜してきているのは明かだ。日本経済が30年間停滞したのは財政健全化を重視し緊縮財政を続けたから。財務省がそれを牽引してきた。そろそろそれが変わる時が来たのかもしれない。

例えば2021年の骨太方針では2025年度のPB黒字化目標を堅持し債務残高のGDP比を安定的に引き下げると明記されていた。ところが2022年の骨太方針では「2025年度のPB黒字化目標は本文中には明記せず、小さな文字で脚注に付記する。目標は維持するが検証する。」とする案が出され、新聞各紙は「収支黒字化「堅持」から後退」という見出しが躍った。しかし緊縮派がその後巻き返し「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と書き加えるよう主張した。これでは元に戻ってしまうと西田昌司議員は激怒した。

PB黒字化目標が決まってしまうと、目標達成のため最大限歳出を削減し増税を行わなくてはならなくなる。要するに国民からお金を取り上げ、国民を貧乏にすることだ。PB黒字化目標を放棄すると激しいインフレになると緊縮派は言う。激しいインフレになるということは需要が爆発的に増加し、供給がそれに追いつかなくなり、極度の物不足になるということだ。IMFによれば日本のPBは1993年以降、一度も黒字化したことはない。そうであればもうとっくに激しいインフレになってなければおかしい。むしろPB黒字化目標があるために、歳出削減、増税などを行って国民からお金を取り上げるために、消費が落ち込み景気が落ち込み税収が増えないからPBが黒字化しないということだろう。

IMFによればPBが黒字なのは183カ国中30カ国だけであり黒字国は資源産出国が多い。だから日本もPB黒字化をしなければならないという理由はない。

そもそも内閣府試算を信頼してそれを国の目標にするのは危険過ぎる。次のグラフはPBの対GDP比と内閣府の予測との比較である。黒い線が実績であり、それ以外の線は内閣府が各年度に予測したものである。

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2008、2009年度の落ち込みはリーマンショックによるもの、2022年と2023年の落ち込みはコロナ禍によるものである。実際は1993年以降PB黒字化になることはなかったのだが、内閣府は毎年のように「あと数年すれば黒字化するからもっと緊縮財政を続けよ」と主張しているのである。デフレ脱却ができていないのに緊縮を続けたために世界に例がないほどの低成長に陥り、実質賃金は下がり続けるという悲惨な結果となっている。そもそもこのグラフは予測ではなく、政府の願望であり自作自演である。このシミュレーションの担当者がそのことを明言している。なぜこのような馬鹿げたグラフを内閣府の予測にしたのかと言えば、それはデフレでも緊縮をやりたくてたまらない財務省の意向を受けたものだからである。


内閣府の試算が欺瞞的であるのは、名目GDPの予測でも明確に理解できる。
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黒い線が実績であり、それ以外はそれぞれの年に発表された内閣府の予測だ。実績ではほとんどゼロ成長が続いているのに、内閣府の予測はいつも3%成長である。モデルの担当者に聞くと、自分たちは政府に雇われた身分なので、政府の命令どおり3%成長のグラフを描くしかないのだという。PBにせよ、成長率にせよ、ふざけた田舎芝居にすぎない。こんなものに振り回されるのは一刻も早く辞めるべきだ。つまりPB黒字化目標は撤回すべきだ。

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