経済・政治・国際

2019年8月20日 (火)

内閣府の『経済財政に関する試算』の正しい理解のために(No.361)

内閣府は7月31日、『中長期の経済財政に関する試算』を発表した。マスコミは基礎的財政収支の黒字化は27年度に後退したと報じた。これはこの試算に対する正しいコメントではない。内閣府は次の2つのシナリオで試算をしている。
①成長実現ケース
②ベースラインケース
マスコミは①だけに注目し、基礎的財政収支の黒字化の時期が遅れるということを見出しに持ってきている。しかしマスコミがこのような報道をするのは間違いである。内閣府が認めているように①の成長実現ケースとは、安倍首相の夢(実現不可能な幻想)が実現した場合どうなるかを記述したものであり、内閣府はこれが実現するとは言っていない。現在の政策が維持されたら②ベースラインケースで予測された経済になると予測しているのであり、これこそが現状維持の場合の経済予測である。この場合は基礎的財政収支はいつまでたっても黒字化しない。

①の場合は歳出拡大をせず消費増税があり緊縮財政が続くのにも拘わらず急成長するという非現実的なシナリオだ。こういったシナリオを示せと政府から命令を受けているから仕方なく数字を出したわけで、あり得ないシナリオを鉛筆なめなめで書き上げるためにでっち上げた屁理屈は全要素生産性の上昇率の急上昇である。これは屁理屈であり、実際こんなことがあると考えているわけではないことは内閣府も認めている。TFP上昇率の推移を示してみよう。
2014年   1.0%
2015年   0.8%
2016年   0.8%
2017年   0.7%
2018年   0.7%
2019年1月 0.4%
2019年7月 0.3%
実際は急上昇どころか急低下している。これからみても、この仮定が間違いであることが分かる。上述の安倍首相の夢(=実現不可能な幻想)をモデル上で実現するには、このような間違えた仮定を使わなければならないことが分かる。つまり①のシナリオは間違えており正しいシナリオは②である。公正中立なマスコミはシナリオ②だけに注目すべきであり「基礎的財政収支は今後黒字化する見通しは全く無い」と報道すべきなのだ。

厚生労働省や経済産業省など将来見通しの試算をするとき、必ず①が使われているのだが、これは間違いであり、正しくは②を使うべきなのだ。ただし、今後日本経済は成長の見込みは全く無いというわけではない。①と②では①のほうがはるかに高い成長をしているのだが、その違いは①は②よりずっと速く歳出を拡大していることにある。内閣府は根拠もなくTFPをフラフラ変えるようなことを止め、歳出を拡大して成長率を高めるという偽りのない試算を堂々と国民に提示し、納得させ、政府に実行させることである。歳出を拡大すればGDPが増加するので政府債務のGDP比も下がってきて実質的に国の借金も減ってきて将来世代へのツケも減る。だから国民の同意は得られるはずである。平成の30年間は日本経済は世界の中で著しく没落した。今からでも遅くない。正しい試算を国民に提示すれば必ず国民は納得するし、それが実行されれば、再び奇跡の経済成長が実現するのは間違いない。財政政策を180度反転させても国民は理解してくれる。

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2019年8月 7日 (水)

内閣府に電話して『中長期の経済財政に関する試算』について質問した(No.360)

2019年7月31日に内閣府から『中長期の経済財政に関する試算』が発表されたので、内閣府に電話して詳細を質問し丁寧に答えて頂いた。このような電話は毎回行っているので、すでに筆者の名前まで覚えておられて「小野先生からは毎回コメントを頂いております。貴重なご意見を承りまして今後試算の改良に努めさせて頂きます。今後ともよろしくお願いします。」と言って頂いた。

Q 先週発表されました試算にいてお聞きしたい。新聞各紙で基礎的財政収支が悪化し、黒字化が先延ばしになったとありますが、悪化した原因はなんでしょう。
A 足元の経済成長率が悪化したので悪化したものとみております。
Q 成長率は前回のものから悪化しているし前々回からはもっと悪化している。悪化は年中行事のようなもので、例えば2018年度の実質成長率は0.7%だが、その前は0.9%、その前は1.5%、その前は1.8%でした。発表されるたびに悪化してて、その度に基礎的財政収支も悪化している。毎回そうなってますね。元々出したデータはサバを読んでる、上振れしているのではないかという印象を受ける。
A実績値に関しては国民経済計算に基づく結果を用いているのでありサバを読んでいません。
Q 例えば日経センターの出してるESPフォーキャストだと民間の40人(機関)の平均値を出している。それと比較すると値が内閣府のものより実績値に近い値を予測している。ESPのほうが実質GDPでも名目GDPでも当たっている。内閣府はもっと精度のよい予測は出せないのか。国の税金を使って民間の予測よりずっと悪い精度の予測を出すのかということです。
A 試算の目的は大きく分けて2つあります。経済の動きを試算するのとPBや借金がちゃんと返せるかというのを試算することです。その2つの目的でやっているので民間予測とずれてしまうこともある。
Q ずれるというより精度が悪いということです。もっと精度を上げる努力をしないのか、気象庁などはだんだん予測の精度は上がっていますね。内閣府も年ごとに精度を上げて欲しいと思います。
A 例えばイタリアやフランスなど海外でも試算を行っている。そういう試算を我々も勉強してモデルを改善しようという努力はしている。予測精度が常に上がるとは限らない。
Q それよりESPフォーキャスターの結果を勉強して頂いてどうやって正確な予測をだしているのかを見て欲しい。むしろ国としてその値を引用するとか、そういったことを検討したほうがよいのではないか。国の政策を遂行しようとしたとき、正確な予測ができていないと間違えた判断をしてしまう。
A ご意見としてはESPフォーキャストに計量分析室も学べということですね。
Q 民間はどうやって予測したのか、どうして民間のほうが精度がよい予測ができたのかを学べばもっと良い予測ができるのではないか。それがあればもっと正しい政策が行えるのではないかということです。今回の消費増税などもタイミング的に非常に悪い。もし正しい試算ができていたらこのような決定にならなかったのではないか。
A 取りあえずESPフォーキャストに代表される民間予測に学べという小野さんのご意見を共有させて頂きます。
Q プライアリーバランスの黒字化に随分力を入れておられるし、新聞各紙が言っているのはそればかりです。成長率がどうなったかということ以上にプライマリーバランスを気にしている。本当にプライマリーバランスを黒字化しなければならないのか疑問に思っている。もしプライマリーバランスを黒字化しないままむしろ経済成長に重点を置いた政策をとったらどうなりますか。プライマリーバランス黒字化の目標をはずし経済成長を第一にしようとしたらどうでしょう。諸外国もそういう方針のように見えますが。
A それを決めるのは政府の方針です。PB黒字化とか経済成長とかの目標を決めるのは政府で我々は政府の決めた目標に従って試算を出して目標が達成できるかどうかを確かめていく。
Q もちろん、そうだと思いますよ。ただこの計量分析室の存在意義はPB黒字化を目標からはずしてしまった場合、つまりPBはいくら赤字でもよいと割り切った場合、国は滅茶苦茶になるのか、ハイパーインフレになるのか、何か悪いことが起きるのか、そういった材料を提供することが計量分析室の役割ではないか。PBが赤字のまま、つまり27年度以前ですが、債務のGDP比は下がるという結果を出してますね。基礎的財政収支は2026年度までは赤字ですね。
A 正確には2026年度にはおおむね収支は均衡します。
Q 2025年度まではPBは赤字だが、公債等残高のGDP比はどんどん下がっている。2019年度は191%ですが2015年度は171%まで下がっている。つまりPB赤字でも下がるし下がればよいのでしょう。借金はどうするかということですが、GDP比で下がれば返したことになる。だったらPB赤字を気にすることはないのではないか。
A 債務のGDP比が下がっても時間と共に長期金利が上がってくることが懸念される。
Q 長期金利が上がればダメなのですか。
A 長期金利が上がることが想定されるので現時点ではPB黒字化の目標を取り下げるとか、例えば内閣府の試算では成長ケースとベースラインケースとがあってベースラインケースでは28年度までPB黒字化は達成できません。それは足下のTFP水準のままで潜在成長率で経済が進む場合を示しています。
Q 金利は上がってはいけないないのですか。2022年度まで0%、2025年度でも1.3%で、これで上がりすぎですか。むしろ低すぎるという気がするのですが。これで金利が暴騰したことになるのか。
A 暴騰したことにはならない。
Q 全然大丈夫じゃないですか。金利は低ければ低いほどよいのか。低いということは資金需要がないということを意味しているのではないか。日本が経済成長してた頃は資金需要があってこれよりずっと高かったですね。経済成長を目指すのであれば。金利は下にへばりついているだけではダメだ。金利が高い国、中国とかアメリカなど経済成長をしている国を見ますとそこそこの金利がついてます。
A はい。
Q ある程度金利は高い方が良いと思うのですが、ゼロ金利でなければいけないのですか。
A それに関しては日銀が物価水準の目標値CPIが2%になるまでは中長期試算では0%の水準に据え置くという方針です。
Q 日銀の政策はそれでいいです。そもそもゼロ金利ということは昔日本が経済成長してた頃は考えられなかったですね。
A はい。
Q ゼロ金利にしなければいけないのか。ゼロ金利では銀行業務が成り立たない。よいことは何も無いと言う気がします。資金需要がないから投資に資金が回らない。金利が低すぎるということは結局はデフレだし、デフレで良いことは何も無いような気がしますが。
A 今の経済の想定のままで現実的と考えられる金利を2028年までお出ししておりまして経済がよくなるための最適な金利とかを決めてるわけでは無い。
Q 政府としてはデフレ脱却を目指していますね。デフレ脱却でも金利はゼロから離れてはいけないのですか。それとも金利はそこそこ上がってもいいのですか。2%のインフレ率を目標としているわけでしょ。
A でも小野様も以前おっしゃったようにESPフォーキャストのような民間予測がありますね。金利の民間が考える最適水準があるので政府としては経済一般の中で今までの経済の動きと将来の政策を織り込んだ金利を出しておりますので政府の側が,内閣府が最適な金利とか金利の値を現実の経済と離れて出すことはできない。
Q それはいいと思いますが、金利が上がってはいけないと言われますと
A 上がってはいけないとはいいません。
Q 上がってもいいということですか。
A 例えば2021年に長期金利をお出ししておりますし日銀の想定に合わせて日銀が2%の物価目標を出しているのでそれに達成するまでは金利は抑えられているという設定しておりますがそれが正しいとか間違っているとか言っているわけではありません。
Q 元に戻りますがPBが赤字のままでも債務のGDP比が下がっていくのだからPB黒字化という目標を下ろしてもよいのではないか
A それは小野様の貴重なご意見として伺っておきます。班内で取りあえず共有いたしますがそれから先はどうなるか分かりません。
Q そもそもPBの黒字化をそれだけ国家目標にしてずっとそれに集中しているというような国は日本以外にあるのですか。独自通貨を持っている国がPBの黒字化を目標にしなければならないのかということです。MMTも最近話題になっていますが。
A そうですね。
Q PBより成長率を重視したほうがよいのではないですか。
A それは小野様のお考えです。
Q 私の考えですし、そういう考えの人はたくさんいますよ。この前のケルトン教授もそうでしょう。
A 財務省の意見とかクルーグマンとかのようにMMTに反論してる経済学者もいます。
Q それはそれとしてPBは黒字化しなければならないのかということを少しは考えて欲しいと思います。ずっとPBは黒字化を主張していました。小泉内閣の時でした。あのときは2011年にPB黒字化すると言って一生懸命歳出削減をやってましたが、結局2011年PB黒字化はできず大赤字だった。次は2020年度と言いだし、その後どんどん後ズレし今は2027年度と言ってる。私が思うに、これは毎年後ズレしその繰り返しになると思います。
A はい。
Q だからPB黒字化は意味がない。その目標は取り下げたらいいというのが私の意見です。今の経済理論によれば日本のように巨額の財政赤字が続けば激しいインフレになったり、金利が急騰したりするはずですがそのようにならないですね。なぜならないのですか。
A それは内閣府計量分析室からは正確なことは言えない。インフレ率は人々の期待に影響しますし、経済のフォンドメンタルにも影響します。例えば仮説として考えられるのは人々の期待とか予測が抑えられているとかマイルドなインフレになって欲しいと考えているのですが、まだまだ人々の消費マインドとかが影響していてお金を使おうという気にならない。例えば人々の予想も影響するのでみんながインフレになると考えると経済は自己実現的にインフレになることがあるのだけど何らかの理由があって人々に期待とか抑えられているとハイパーインフレになりにくかったりすることはあるかもしれない。
Q そうですね。
A でもそこまで分析しているかというと、ハイパーインフレにならないような状態というのは常に考えていると思うのですがハイパーインフレにならない本当の理由は何かというと学者さんが考えること。
Q ですから期待やフォンドメンタルがどうかということは経済データに織り込まれているわけでありましてそれを元に計算してるわけですから、結局そんなに簡単に物価は上がらないというのはデータとして入っていると思う。だからよくハイパーインフレになるとか国債が暴落するとか軽々しく言う人がいるのだけど、これだけの物余りの時代にそういうことが起きるかということ。例えば米不足になる、食べられなくなる、飢え死にし始めるといった状況なら確かに物価の急騰もあり得るのですが、今の日本で物不足になるかというと世界的なサプライチェーンがありますから何か無くなったらすぐに日本に入ってくるということで、そんなに簡単に米の値段が急騰するとか、日用品の値段が急騰するとかいうようなことは考えられない。そういうことは内閣府のモデルのデータの中に入っていると思います。
A はい。
Q だからそういう意味で財政が赤字だったとしても、債務のGDP比がこれだけ大きくなったとしてもそれはハイパーインフレの予兆ではないと思います。今財政を拡大してもいいのではないか。増税で国民を苦しめなくてもいい。
A 消費税を上げるというのは国民の皆様を苦しめるためにやっているのではなくて将来の社会保障費の増加とか医療費の増加に合わせてやっているのです。
Q それは分かります。将来のために今のうち節約しましょう。国を挙げてみんなお金を使わないようにしましょうということ、それでいいのかということです。消費が低迷している中で将来に備えてみんなお金を使わないようにしましょうというと企業は困ってしまいますね。生産設備があるのにみんながお金を使ってくれない。売れない、そうすると儲からないから将来への設備投資ができない。そうすると日本経済は衰退するだけです。他の国はどんどん成長しているのに日本だけが成長しない。成長しない中、他の国は金利を下げたり減税をやったり景気刺激のための政策をやっている。日本だけは将来に備えてみんなでお金を使わないようにしようという。そうすると消費が落ち込んでGDPも落ち込むので将来への備えにはならないです。要するに経済を破壊する政策です。お金を貯めてそれを将来のために使えるか、消費を抑え生産設備が無駄になり将来への投資ができない。そうすると日本経済は沈没です。
A でも今回の増税に関しては幼児教育無償化とか特別の措置を行っています。ですからただ単に増税を行うのでなく例えば消費者へのポイント還元とかも行いできるだけ消費への影響を抑えつつ消費税を上げることで将来への社会保障に備えています。
Q もちろん理解しております。前回の2014年度の消費増税の際にも同じような事を言われた。5兆円の景気対策をやれば消費増税による落ち込みをはるかに上回る押し上げ効果があるから落ち込みはありませんと宣言されていました。しかし実際は大変な落ち込みがあった。理論的にはおかしいと言えるのかもしれない。要するに消費増税の影響は消費者にそんなに大きな負担になっていないはずなのだけどあんなに落ち込んでしまった。ということは日本中が消費増税で大騒ぎをしていたから節約するしか無いと消費者が思ってしまった。だから過剰反応しダメージが予想以上に大きくなった。今回の増税でみんな節約すると言っている。アンケート調査では消費増税で消費を抑えると言った人が6割いた。だから消費増税で間違いなく景気が悪化すると思います。米中貿易戦争があるし日韓経済戦争があり、ブレグジットもある。今は悪い材料があり、今景気は盛り上がっておらず本当は駆け込み需要が無ければならない時期なのにそれがない。このまま消費増税で消費が落ち込めばひどいことになるのではないかと心配です。
A 小野さんに申し上げるのもなんなんですが、経済理論に基づいて考えると、小野さんのおっしゃるように経済成長が先かプライマリーバランスが先かということですが、小野さんの主張は経済成長が先ということですね。
Q そうです。
A 仮にプライマリーバランスの黒字化とか財政の動きとかというのを考えると必ずしも消費税を景気がいいときだけ上げて経済が安定化するかというとそうはならないんですね。つまり財政の黒字化とかを第一目標に考えて計算をすると景気がよいときだけ増税するという考え方ですといつまで経っても財政赤字はなくならない。
Q だから財政赤字は無くならなくたっていいよという考え、例えばMMTですね。
A でもMMTを支持する学者はアメリカでも限られますよね。
Q そうですが、話題にはなっています。今度の大統領選で結構話題になるかもしれない。日本でも結構話題になっている。ケルトン教授も来ました。
A ケルトン教授の論文も拝見したんですが、モデルというか数理的なモデルに落とすとなるとMMTというのは背景にするモデルが無い。これは個人的な意見ですが。経済財政の試算を行う時MMTというのはコアになるモデルが無いので何でも言えちゃうんです。反論するのもモデルが無いから難しくなってしまいます。
Q モデルは内閣府でちゃんと持っておられる。今ここで示しておられるのはモデルを使って計算をしておられるのでしょう。
A そういう意味で言うとモデルが分かりづらい。論文でモデルをケルトン教授とかまだ発表されてないと思うので数学的に厳密なモデルがないと正しいということも間違っていると言うこともできない.厳密に再現できるものではない。
Q 正しいか、間違えているかというのは、理論物理学などでははっきりしますが、何が正しいか、何が間違えているかということですが、私に言わせればGDPが増えたらそれが正しいのだということ、単にそれだけでよいのではないかと。実質GDPが増えるような政策が正しい政策であってプライマリーバランスを黒字化すればよいということではない。国民を豊かにしたいといったときにGDPが最良の指標かどうかは分かりませんが、一つの指標としてGDPを拡大するというのを目標にする。実質GDPが増えればそれでよしとする。どうすればGDPが増えるのかというのを、モデルを使って計算すればよいだけ。成長実現ケースとベースラインケースの2種類を内閣府で出している。様々な点においてこの2つは違うのでしょうが、素朴に見て一番違うところは歳出をどれだけ拡大したかという点です。成長ケースでは2028年に歳出は124兆円になっているがベースラインだと113兆円にしかなっていない。このことは歳出を増やせばGDPは増えるということを示しています。それ以外の要素もあると言われるとは思います。そこで単に歳出だけを増やし、そうでない場合との比較をしていただくと非常に分かりやすい。政治家にも分かりやすい。歳出を増やせば日本経済はどうなるのか。歳出を増やすか増やさないかという点だけの比較をして頂くと政治家にも分かりやすいのではないかと思います。歳出を増やしたとき、日本経済は一体どうなるのか。日本経済は世界最低レベルの経済成長率なので、このまま続けて欲しくない。一人当たり名目GDPでももうそろそろ韓国に抜かれてしまう。アジアの中でも貧乏な国になってしまうのは非常に残念です。せめて韓国には抜かれて欲しくない。その意味で歳出を増やして欲しい。成長実現ケースを見ても歳出を増やしている。前回の発表では2028年に130兆円に増やすと言っていたのに、今回は124兆円になった。2014年の発表では2023年に144兆円に増やすという試算を出していた。このように歳出を増やすとGDPが大きく伸びてくる。実際は政府は歳出を増やさないように努力している。歳出は10年位前から100兆円のレベルに留まっている。内閣府試算にあるようにどんどん歳出を増やしていけばGDPは伸びる。普通の先進国並の成長率になる。それがこの試算の意味するところかなと思う。政府は歳出をほとんど増やさないですね。
A 歳出の統計というのは成長実現ケースとベースラインケースで違っているとか成長実現ケースとベースラインケースをお出ししておりますけど、それまでの下案というか公開される前の案の段階では政府の統計とか出しているとかするんですが成長実現ケースとベースラインケースの2つだけを公開している。
Q この2つのケースで歳出の額だけを変えるのだったらよいのですが、色んな所を変えている。全要素生産性も変えているし何か変わってこういう結果になったのかよく分からない。歳出だけ変える。歳出が一番重要。もちろん昨年内閣府から出された乗数を見れば歳出を増やせばGDPは増えることは分かるしそれによりハイパーインフレになるというようなことは全くないし、インフレ率も少し上がる。2%のインフレ率にするにはどれだけ歳出を増やしたらよいのかということも計算して欲しい。そういった試算があれば政府も歳出拡大を行いやすくなる。
A 取りあえず小野様の意見として想定を色々変えてみてそういう試算も内部で検討しますが、今のままだと発表されるのは成長実現ケースとベースラインケースです。ご意見としては真面目に考えますけど見かけ上の発表は今までと同じかも知れません。
Q 本当は安倍首相にこれ発表してもいいですかと聞いてみれば、意外といいと言うかもしれないですね。
A 成長実現ケースというのはアベノミクスで掲げている政策効果が最大限発揮されたときの試算で、ベースラインケースというのは足下の潜在成長率並で将来にわたって推移するもので、成長実現ケースというのは安倍首相の目標を達した場合で努力目標みたいなものなのです。
Q 努力目標ですが、歳出は徐々に増やしていくということ。成長実現ケースとベースラインケースの両方共です。歳出を増やしてはいけないという空気がありますがそれはおかしいと思いますよ。全要素生産性の乗数が書いてあって足元では0.3%とありますが、前回の発表では0.4%、前々回は0.6%、更にその前は0.7%と高かったのですね。どんどん下がった。
A それは計量分析室が計算したのでなく、内閣府の経済分析を担当するチームが求めた。それを元にして計算します。
Q これはどういう部門で計算しているのですか。
A それはコブ・ダグラス型の生産関数がありまして、それだけでなく例えば季節によるデータの変動をフィルターにかけて季節変動を滑らかにしたもので試算して生産関数を求めて逆算したものになります。
Q これが下がっていったということは景気が悪化したということですか。
A 全要素生産性TFPが下がるということはGDPの潜在成長率から資本と労働の変化率を引いたものになる。だからTFPが下がったとしてもダイレクトに景気が悪くなったということではない。景気の因果関係の元でTFPが動いている。残渣として。労働と資本を除いた生産性が下がったということです。仮にTFPが下がったとしても労働と資本で説明できない部分が下がったわけで、ダイレクトに生産性が下がったと言えるかどうか分からない。
Q 今後これが上がっていくと見込んで計算されてますね。
A はい。
Q 乗数を見ますとTFPが上がると失業率が上がりインフレ率が下がりデフレ気味になる。しかし成長実現ケースにはそのような効果は出ていない。
A 乗数効果の分析は他の条件を一定として計算してあります。
Q だから他の条件が変わったのですね、それを打ち消すための何かが加わったのですね。他の要素は何かと言えば多分歳出を増やしたことだと思うのですが。
A それはコメントできない。
Q 全要素生産性が上がるということはよいことでしょう。今は人手不足ですからその解消になるかもしれない。例えば減税とか同時にやった場合にインフレ率を押し上げることができるし失業率を下げる効果はある。だから全要素生産性が上がるのなら減税・歳出拡大をやっても大丈夫というように思うのですが。
A 全要素生産性が上がるというのはモデル上の想定なので、絶対に上がるかどうか分からない。だからTFPが上がる想定になっているからと言って無理な政策をするということはできないと思います。
Q 歳出の額ですが2021年は2020年に比べて下がっているのですね。これは2020年に景気対策をやるということですか。その後は順調に上げていく。
A 歳出を恒常的に上げるというのは子孫への負担を増やすことになってしまう。
Q 本当にそうですか。私は逆に考えています。歳出はどこの国でも毎年増やしています。ケルトン教授流に言うとみんなお金を持っていないときに税収とたくさん得ようとしても無理だから税収を上げようと思ったらみんなにお金を配っておかねばダメ。
A 財政学的に考えると人々にタダでお金を配る・・・
Q ヘリコプターマネーで配るわけです。そうすると税収が増えてくる。消費が拡大し投資が促進し税収が増える。そうしたらまたたくさんお金を配る。そうするとよい循環になる。
A 経済学的には考えにくくて何かを得るためには何かをしてなければならない。
Q それは財政均衡ですね。
A 財政均衡まではいかなくても市民にお金をタダで配ったらその後ツケが回って増税とかになりますね。
Q それはちょっと考えが違うと思います。例えば江戸時代どうだったかと言えばみんながお金を持っていなかったときに、金鉱で金を掘ってきて金を配る。金が足りなくなってきたら他の金属を混ぜ改鋳をやって毎年配った。財政赤字というのでなく、お金をつくって通貨発行益を歳入の中に入れている。これは借金ではない。財政赤字でもない。それで年貢=税金を軽減した。歳入の20~30%はそれで補っていた。それが経済の発展を助けていた。ハイパーインフレにもなっていない。それが今でも通用すると思っています。ですから通貨発行益でお金を配れば国民は豊かになるし税収も増えてくる。経済も拡大する。これはどの国でもやっていることで日本だけは歳出を増やさない、そうすると歳入も増えない。赤字だけがどんどん積み上がっていく。GDPが増えないから債務のGDP比が増え、悪い循環になっている。
A 小野様がMMT理論をご紹介されるのは分かりましたけど一応計量分析室としてはESPフォーキャスト調査をもっと真面目に分析しようとかPB黒字化だけじゃなくて経済成長を重視したほうがよいのではないかとか、歳出の様々な状況を考えたシミュレーションを行えということは計量分析室内で共有しますけど、MMTが正しいのか、間違っているのかというようなことは少なくとも生産的ではないと思います。
Q 間違いか間違いでないかということは、理論物理の自然法則とは違います。私はGDPが増えた方が正しい理論でありそれだけで良いのではないか。
A マクロ経済学は一人あたりの消費が増えるのをまず第一に考える。そのためにGDPを成長させようとする。それもGDPは平均的に増えれば良いというのでなく分散とも関係している。
Q だから歳出を拡大すればGDPが増える。そのへんの相関関係は非常に高い。
A 将来の歳出を現在増やして現在のGDPを高くしても将来のGDPが上がるとは限らない。
Q 将来も通貨発行で歳出を果てしなく拡大していく。
A 果てしなく拡大したら無限の将来までの予算制約を考えなければならない。収支は現在だけでなく将来まで考えなくてはいけない。どこかで発散しないように注意しながら計算したのが中長期試算です。
Q 発散というのがあるのか。発散というのはインフレ率が無限大になるということでしょうか。あるいは債務が無限大にあるということか。経済の分野でどうやっても発散はあり得ない。例えばベネズエラのように極端な物不足になればそういうこともあるが、日本の過去130年間を見ると国の債務は500万倍になっている。対数グラフで画くとほとんど直線的に債務が増大している。指数関数的に増えているといったらよいかもしれない。だから500万倍になってもビクともしない。今後また100倍、1万倍、100万倍になっても何の問題にもならない。むしろ物不足にしない、人に十分物を供給できればそれでよいではないか。
A そのためにMMT理論を必ずしも使う必要はなくて政府としてはバクチはしないので正しいか間違っているか分からないような政策を採用することもないと思われます。国民の皆様にリスクを押しつけるわけではないからPBの黒字化をしようとしているわけです。
Q 10年後、100年後の経済をモデルで計算してもほとんど意味がなくて、むしろ1年後、2年後がどうなるかということを計算してよくなる方策を考える。モデルでその位だったら計算できるから、それでGDPが増えるシナリオを探る。他の国と比べると日本は世界に希な低成長の国なわけです。最近20年を考えれば世界最低でしょう。普通の先進国がどうやって成長しているのか、どうして日本だけが成長しないのか、比較してみれば一番顕著なのはやはり歳出を増やしていないということ。それが決定的な違いでしょう。もちろん儲かる産業への投資ができていないということがある。これからはAIの時代かもしれないが、これから本当に利益が出るような産業に投資してしない。もう落ちこぼれてしまった。そうだとしてもこれから挽回できるところもあるだろうということでそのためにもお金を使わなければならない。PB黒字化を考えるよりむしろお金を使って、この分野だけは日本が取るようにしたい。中国と米国がAIで覇権争いをしております。GAFAやBATでいいとこ取りをしようとしてます。巨大企業が生まれ他を寄せ付けない勢いであるが,何かの分野で日本が取っていかねば国が貧しくなります。そのためには投資でしょう。投資すればデフレ脱却に役に立つ。
A 小野先生とは1時間位お話をしておるのですが中長期試算において毎回コメントを頂いておりますので、今回はESPフォーキャスト調査のほうが当たっていると思われるのでそれを調べるということと、PB黒字化よりも経済成長を重視しろということと、歳出の仮定を色々変えた上でシミュレーションをせよということはご意見として伺っておきます。
Q 政府は実質2%、名目3%成長を目指している。しかし今の政策を続けていたら実現できそうもない。これを実現するためにはどの位財政を拡大すればよいのか内閣府計量分析室で示して欲しい。それが公表できなくても安倍首相だけでも教えておいて欲しいということです。
A 分かりました。貴重なご意見を承りまして今後試算の改良に努めさせて頂きます。今後ともよろしくお願いします。
Q よろしくお願いします。

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2019年8月 4日 (日)

内閣府が『中長期の経済財政に関する試算』を発表した(No.359)

内閣府は7月31日、『中長期の経済財政に関する試算』を発表した。これは内閣府が年2回発表している試算で、今まではこれが発表されるとマスコミは一斉に財政が悪化したと騒いでいた。今回、マスコミの扱いは以前に比べれば小さく、基礎的財政収支(PB)の黒字化は27年度に後退したと報じた。我々は一貫して内閣府の試算には疑問があることを指摘してきたのでそれが少しは理解されつつあるのかも知れない。PBの黒字化は元々小泉政権の時代2011年度に黒字化するのだという目標を定め緊縮財政を行ったのだけど、結局2011年度のPBは大幅な赤字となり、その後は黒字化目標を次々と後退させていった。この間、政府は目標を達成しようと緊縮財政を続けたために、日本経済は大きく没落することとなった。新聞各紙の記事は下記に載せておくので参照して頂きたい。

ESPフォーキャスターという調査があり、民間約40のフォーキャスター(機関)が出した予測の平均であり、内閣府の予測よりもはるかに正確な予測が出されている。国の税金を使ってこのような精度の悪い予測を出す意義はあるのだろうか。
例えば2018年実質GDP成長率の予測を比較してみよう。
     内閣府   ESP
実際の値 0.7    
半年前  0.9   0.69
1年前  1.5   1.08
1年半前 1.8   1.26
2018年名目GDP成長率の予測を比較してみると
実際   0.5   
半年間  0.9   0.72
1年前  1.7   1.05
1年半前 2.5   1.26
となっている。いずれも民間のほうが内閣府よりはるかに正確に予測している事が分かる。ちなみに今後の実質GDP成長率の予測は
        2019  2020
内閣府     0.9   1.2
ESP      0.53  0.48
となっており、民間のほうが内閣府より信頼できることを考えれば、この時期に消費増税の実施は大失敗だと断言できる。

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上図で示したように例えば2005年の試算では511兆円であった名目GDPは7年後の2012年には645兆円になる、この調子なら今頃は800兆円を超えている。実際は名目GDPは現在までほとんど増えていない。我々はこれを「オオカミ少年」だとか「狂った羅針盤」だとかと言ってきた。しかしよく見ると政府が歳出を大きく増加させた場合の試算を行っていることが分かる。
年度  歳出(兆円) 増加率(%)
2005    82.2 
2006    84.5        2.7981
2007    89.6        6.0355
2008    93.3        4.1295
2009    98.3        5.3591

実際政府は歳出を拡大したのだが、2018年はリーマン・ショックの時だ。中国では57兆円の巨大な景気対策で景気の落ち込みを防いだ。しかし日本政府はそれに相当するような景気対策を行っていない。内閣府試算の意味するところは、上記のような財政拡大を行いしかもリーマン・ショックのようなショックがなければ、今頃はGDP800兆円に達していただろうということだ。逆に財政を拡大しない限り、GDP拡大はないということも示しているのだと思う。

内閣府の試算でGDPが急上昇しているのは、財政を拡大した場合の試算であることは以下の図で分かる。政府はこの試算通りに財政を拡大していたらGDPは急上昇していたのだろうが、実際は下図のように歳出規模をほとんど拡大していない。これではGDPは増えるわけがない。
3592

もしもこのように財政が拡大されていれば景気が回復し長期金利も上がっていただろう。しかし現実には財政支出は拡大されておらず、金利は低いままに留まっている。その差は驚くほど大きいことを以下で示す。
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なぜ歳出を拡大しないのかといえば、基礎的財政収支を少しでも早く黒字化したいという無謀な試みを行っているからである。それも公債残高のGDP比を減らすのが目的である。しかし下図で分かるように基礎的財政収支は赤字でも黒字でも公債残高のGDP比は減少する。だから基礎的財政収支は黒字化する意味はないことが結論される。このことを踏まえて新聞各紙が不適切な報道をしていることを以下で確認して頂きたい。


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2019年7月29日 (月)

一人当たりのGDPで韓国に抜かれないためにはどうすればよいか(No.358)

急成長する韓国経済に対し、日本経済は長期間停滞したままである。このままでは間もなく韓国は日本より豊かな国になり、日本は韓国に貧乏な国として侮辱されるようになる。なぜ韓国は日本よりはるかに早く経済成長するのだろうか。韓国は人口において日本の0.4倍、面積においては日本の0.26倍である。合計特殊出生率は韓国0.98,日本1.42だから少子高齢化や人口減少という面では韓国のほうが日本よりはるかに問題が深刻だが、韓国は目覚ましく経済成長をしている。
          一人当たりのGDP          出所:IMF

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一人当たりのGDPが日本は韓国の何倍かというと
1980年 5.6倍
1990年 3.9倍
2000年 3.2倍
2010年 2.0倍
2018年 1.25倍
ということで、間もなく韓国は日本を抜き去る。

GDPの推移をみると                  出所:OECD
3582  
となっており、韓国経済は急成長しているが、日本は停滞している。どこが違うのだろうか。理由は簡単で韓国は財政支出を急拡大させておカネを国民に渡しているが日本は拡大させておらず増税・緊縮財政で国民からおカネを取り上げている。政府が国民にカネを渡してもハイパーインフレになって逆に貧乏になるとか馬鹿なことを言う人がいる。韓国の現状を見てどこが間違いかしっかり理解してほしい。   

                   出所:OECD
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日本は財政を増やさないが、韓国はこのように歳出を増やので、当然国の借金は増える。


                       出所:OECD
3584

実際国の借金は韓国のほうが日本よりはるかに早く増えている。こんなに財政を拡大し国の借金が激増したらハイパーインフレにならないのだろうか。


                        出所:OECD


3585
このグラフで分かるように、韓国のインフレ率は2~4%であり、理想的なゆるやかなインフレ率である。一方日本は低すぎる。2014年だけは2%を超えたが、これは3%の消費増税でゲタをはかされた結果であり、デフレ気味なのは変わらない。韓国のように国の借金が激増すると国債が暴落し長期金利が暴騰すると思う人がいるかもしれない。


                        出所:OECD

3586
しかしこのグラフでわかるように、金利は暴騰していない。むしろ金利は高めだがそれは資金需要があり投資意欲が高いということであり、これこそが韓国経済を力強く成長させている。日本は資金需要がなく、金利は低く投資意欲が低い。将来への投資をしなければ経済は衰退するだけだ。

韓国は国の借金が激増しているから次世代へのツケをたっぷり残すことになるに違いないと思う人がいるかもしれない。しかしGDPも同時に激増しているから国の借金のGDP比は50%以下である。日本は緊縮財政で国の借金の増加を懸命に抑えているのだが、GDPが伸びないから国の借金のGDP比は逆に非常に高いレベルに達している。日本も韓国並みに財政を拡大するとGDPが拡大して国の借金のGDP比は減少してくる。

               国の借金のGDP比
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財政を拡大したとき、心配なのは財政破綻である。実際韓国は2回の財政破綻を経験している。1997年外国人が株を売り、資本逃避が起きた。日本や米国との関係が悪化しドルを貸してもらえなかった。結果としてIMFの支援を受けた。IMFは構造改革と称し、金融、貿易の保護政策をすべて撤廃させた。緊縮政策で失業者が激増した。しかし経済の国際競争力は格段に高まり、サムスンや現代自動車などが登場した。

2008年の韓国通貨危機で韓国は日本に救済を求め日韓通貨スワップ協定を成立させ、韓国経済を救済した。韓国側からは「恩着せがましい」と日本を侮辱する声が政府やマスコミ、ネット市民の声として報道された。

日本の場合、韓国と違い円は国際通貨として通用しており、財政破綻はあり得ない。韓国は借金には気にせずにどんどん財政を拡大している。ドルが足りなくなったら日本などから借りれば良いと考えているようだ。日本が貸すのは当たり前であり日本に感謝の気持ちはみじんも無い。経済発展のためには韓国並みの図々しさが必要だ。韓国は財政を拡大することにより国民におカネを渡し消費を刺激し投資を促している。日本も同様に財政を拡大し減税をすれば経済は韓国のように力強く成長を始める。

 

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2019年7月22日 (月)

一人当たりのGDPで韓国に抜かれる日本(No.357)

日韓で経済戦争の様相を呈している。国際法を守らない韓国が悪いと主張するのは当然だが、経済戦争には勝者はない。政府には国民を豊かにする義務がある。現在の韓国は生産性を劇的に向上させ急激な経済発展を続けているが、日本は緊縮財政のため経済は低迷し世界最低の経済成長率を続けている。ドル換算で一人あたりのGDPで日本が韓国の何倍であったかを計算してみると、1980年5.6倍、1990年3.9倍、2000年3.2倍、2010年2.0倍、2018年1.25倍となっている。韓国は日本の数倍の速さで経済成長をしているからこのままでは間もなく韓国は日本より豊かな国になる。今の政策を続けていたら、やがて韓国人は日本人よりはるかに金持ちということになり貧乏な日本人は韓国人に馬鹿にされるようになるかもしれない。韓国人はそれだけ日本人より賢いのか。いやノーベル賞受賞者は日本人には多数いるが韓国人はゼロだ。人口も韓国のほうが日本以上に早く減少する。

なぜ韓国のほうが日本よりはるかに高い経済成長をするかと言えば、日本政府がカネを国民に渡さない政策、つまり緊縮政策を続けているからだ。マクロ計量モデルを使って計算すればすぐ分かる。緊縮財政を止め減税・財政拡大をすれば日本経済は力強く成長を始め韓国に勝てる。先日MMTを提唱するケルトン教授がやってきて日本は国の借金が増えるのを気にせずに積極財政に転じるべきだと主張した。国は通貨発行権を持っておりいくらでもお金を刷って国民に渡すことはできる。多くの人はインフレが止められなくなったらどうするのか心配している。しかし第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレも政府が財政健全化をアナウンスしただけでピタリと止まったし、日本の終戦後のインフレもドッジ・ラインと呼ばれる財政金融引き締め政策を実施したとたんピタリと止まっただけでなく、逆にデフレに陥った。インフレを止めたければ増税をすればよい。通常の国であれば増税は不人気な政策であり、政治家は嫌がる。日本は逆で増税が好きで好きでたまらない。なんと不況であってもリーマン級でなければ平気で増税するという異常なほどの増税好きだし消費増税を主張して参議院選をやっても勝てる。ましてやインフレになり始めたら大喜びで大増税をやってインフレを止めてしまうだろう。

緊縮愛好者は反論するだろう。ではベネズエラのインフレを止めてみよと。しかし日本をベネズエラのような経済状態にどうやってするのか。例えば日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って40兆円の減税を行った場合インフレ率をどれだけ押し上げるかを計算してみた。結果は1年目0.8%、2年目1.9%でありハイパーインフレなどではなくやっとデフレ脱却ができる程度に過ぎない。ベネズエラ並のインフレ率にするには、極度の物不足にするのが絶対条件だ。そのためには例えば北朝鮮のように核開発でもやって世界中から完璧な経済封鎖をしてもらうしかない。そうすると原油が完全に入らなくなり経済活動はほぼストップし、多くの国民は餓死するか韓国、台湾、中国へ難民として逃げ出す。そうなれば食糧の奪い合いとなりハイパーインフレになるだろう。このときはインフレを止めるには、通貨の発行を止めるのでなく、核開発を止めて経済封鎖を解除してもらえばよいだけだ。

経済予測の試算は日経のモデルに限らない。内閣府も計算をしている。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
参議院でもモデルを持っているし、国内にシンクタンクは多数あり数多くのモデルが開発されていて、景気対策を行った場合どの程度GDPやインフレ率を押し上げるかが計算できる。どのモデルを使っても10兆円や20兆円といった小規模の減税や財政拡大ではデフレ脱却すらおぼつかない。しかしながら確実に経済を活性化し国民の可処分所得を引き上げ、韓国との成長率格差を縮める。国の借金を増やして将来世代へのツケを増やすのではと心配する人がいるかもしれない。しかしGDPはもっと増えるのでGDP比でみた国の借金は減少し将来世代へのツケは減ってくる。躍進する韓国経済を指をくわえて見ているだけでなく、日本も韓国並の成長率に少しでも近づくよう努力すべきだ。

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2019年7月15日 (月)

日韓経済戦争(2)(No.356)

 

2013年から朴槿恵韓国前大統領は外遊した20カ国以上の全ての国に日本に対して非難決議や、非難宣言をしようと働きかけ「告げ口外交」と言われた。しかし応じた国は皆無だった。国の代表であれば国益を考えてビジネスの話をしたほうが余程韓国の利益になったと思う。戦時中に起こった事の責任者に対する非難や賠償請求だとしても、七十数年前の事なので責任者はほとんど死んでいるし、会社も別なものになっている。徴用工訴訟がきっかけとなり、今回の日韓経済戦争が始まったと言われている。この訴訟を行っている95歳のイ・チェンシクさん(95)は「私のせいで大変なことになったのではないか」と述べている。自分の行っている訴訟が国を経済危機に追い込むかもしれないほどの大問題になっていると知れば、通常の感覚の人間なら訴訟を断念しそうだが、韓国人の考え方は違うのだろうか。

 

日本は韓国に侮辱されっぱなしであり、不愉快極まりない。戦後生まれの我々は日本人であるというだけで、我々が生まれる前に起こったことで侮辱され続けられなければならないのか。正直そろそろ我々日本人は怒りを爆発させてもよい時期が来ているのではないか。ここで日本政府による韓国向け半導体材料輸出管理の厳格化が行われ、多くの日本人は侮辱を受け続けた事に対する反撃として拍手喝采をおくったものと思う。世界の中では日本も韓国も小さな国であり、米中の2大経済大国に対抗するには、本来日韓が協力して経済発展を目指すべきなのだが、韓国が日本を侮辱し反日政策をとる。それなら日本も反日政策を止めさせるために反撃をするしかない。

 

日韓経済戦争に勝つためには、韓国の通貨が弱いということに注目すべきだ。韓国は1997年と2008に通貨危機に見舞われている。韓国の銀行は信用度が低いため、信用度の高い日本の銀行に保証してもらい、貿易に伴う信用状の発行をしてもらっている。日本の銀行が保証を止めれば、米ドル決済ができず貿易に支障を来す。政府系の韓国産業銀行、中小企業銀行、韓国輸出入銀行の経営状態は、悪化説が伝えられている。

 

今回の日韓経済戦争は1997年の韓国通貨危機を再来させるかもしれないと言われる。1997年外国人が株を売り、資本逃避が起きた。日本や米国との関係が悪化し韓国はドルを貸してもらえなかった。結果としてIMFの支援を受けた。IMFは構造改革と称し、金融、貿易の保護政策をすべて撤廃させた。緊縮政策で失業者が激増した。しかし逆に経済の国際競争力は格段に高まり、サムスンや現代自動車などが登場した。

 

2008年の韓国通貨危機で韓国は日本に救済を求め日韓通貨スワップ協定を成立させ、韓国経済を救済したのだが韓国側からは「恩着せがましい」と日本を侮辱する声が政府やマスコミ、ネット市民の声として報道された。つまり恩を仇で返してきた。

 

韓国は要するに、カネが足りなくなったらアメリカや日本に借りれば良いから、カネを使いまくる。だから日本の数倍の速度で発展し、間もなく一人当たり名目GDPで日本を上回る。政府がカネを使えば使うほどカネが国民に渡り国民は金持ちになる。その正反対に日本は外貨が有り余っているのに、緊縮政策を続けるから国民も企業も金欠病となりどんどん貧乏になっていく。これからは韓国をお手本に「追いつき、追い越せ」というキャッチが必要になるかもしれない。韓国並みに外貨不足になるまで政府がカネを使うとしたら、大変な規模の減税と歳出拡大が必要となるし、それをやれば韓国以上に経済成長は可能だ。日本が貧乏になり、韓国に侮辱し続けられてもあなたは耐えられますか。日本が韓国よりずっと貧乏な国となることを屈辱的と思わないですか。そのときでも韓国はもっと金持ちになりたいとして日本にカネを借りに来るだろう。韓国と経済戦争をするのならまず大規模な減税と財政拡大をして日本国民にカネを渡し日本を豊かな国にすべきである。

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2019年7月14日 (日)

日韓経済戦争(No.355)

7月4日日本政府により韓国向け半導体素材の輸出規制強化が発動された。これにより日韓経済戦争が勃発したのだろうか。日本のマスコミはほぼ日本の措置を妥当とする論調ではあるが、一部に政府批判もある。韓国内でどのような報道がなされているのか正確には分からないが、日本の一部のマスコミの政府批判を引用し、日本のマスコミでさえ日本政府の措置を批判しているのに、なぜ文在寅政権を批判するのかという文在寅政権を擁護する発言もあるようだ。つまり日本国民は日本政府の措置が妥当だとし政府を支持し韓国を非難する一方で、韓国では韓国政府を支持し日本を非難する。両国共政府の支持率は高い。これでは100年前だったら武力衝突に発展したかもしれない。

第一次世界大戦に敗れたドイツは支払い不可能な額の賠償金を請求された。戦争に負けたのだからそのくらいの賠償金は当然だろうと戦勝国は主張したが、無理な要求にドイツ国民はナチ党を台頭させ、終戦の14年後にはモラトリアムを宣言し賠償金の支払いを拒否、その後第二次世界大戦で決着をつけることとなった。しかし戦争は誰にも良い結果をもたらさないと分かった結果、二度と過ちを繰り返さないようEUが生まれることとなった。韓国は日本に対し違法と知りながら何度でも賠償金を払い続けさせたいのだろうが、そのような試みは失敗することを理解してもらうしかない。

事の発端は徴用工訴訟問題である。第二次世界大戦中に日本の統治下にあった朝鮮および中国から労働者が日本で働いていた。給料は日本のほうが遥かに高かったので多くの労働者が応募し働きに来た。戦場で身を危険に晒すよりはるかによかったに違いない。戦後、日韓は1965年基本条約と請求権協定を締結し個人補償まで含め補償問題は最終的に終止符が打たれた。そのとき支払われた3億ドルには徴用工に対する補償も含まれており、そのことは2005年に韓国政府も認めているのだから、徴用工に支払わなければならないのは韓国政府だ。

韓国には日本に対してはどんなに悪いことをしても許されると思っている国民が多くいるようだ。反日強行派の文在寅大統領もそう考えているようだから、何度賠償金を払ってもまた請求してくる。第一次世界大戦後のドイツに対する戦勝国の要求に似ている。ナチ党を真似ろとは言わないが、際限なく続く不条理な要求に対してはきっぱり拒否し、強く反撃するのがよい。七十数年前の労働に対する補償はすでに終わっている。そんな補償を今更要求してくること自体馬鹿げている。シベリア抑留では日本人は約57万5千人が厳寒の地で強制労働させられ、約5万5千人が死亡している。賠償請求ならこちらの方が余程理に叶っている。

今回の日韓経済戦争での日本の戦術はトランプのやり方に似ているという人もいる。しかしトランプ流でやるなら韓国への経済制裁だけに終わらせてはいけない。なぜなら、今回の制裁(政府は制裁ではないと説明)により日本企業もダメージを受ける。日本経済は落ち込みが激しい。米中貿易戦争で落ち込み、消費増税でも落ち込む。これに加え日韓経済戦争が加わっては目も当てられない。トランプ流にやるなら、大規模な減税と大型景気対策を並行して行うことだ。韓国の経済成長率は2.5%程度であるが、日本の成長率は0.5%程度に過ぎない。日韓経済戦争となれば、日韓両者の成長率を低めてしまうから韓国はまだしも、日本はほとんどゼロ成長になって悲惨な結果になる。ここで思い切った積極財政で経済を支えるなら日本経済は勢いを取り戻す。経済戦争を仕掛けるのであれば、まず韓国の産業の一部を壊し、日本がそれを奪い取るくらいの作戦を考えるのがよい。財政政策で何が可能かを専門家を交えて検討すべきだ。そもそも韓国の発展は日本から高度な技術を違法に盗んで達成された結果だ。やられたらやり返すという意気込みがないと日韓経済戦争には勝てない。

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2019年7月 1日 (月)

解放主義社会への道、中国経済から学ぼう(No.354)

解放主義社会とは、人が労働・貧困・失業から解放される社会である。それは、国民が生活に必要な物資を生産する手段を国が確保し、その生産に人の労働がほとんど不要になった社会である。それはAI/ロボットなどを利用し、労働生産性を究極まで高めることにより実現できる。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html
残念ながら日本の労働生産性は低く2017年の時間当たり労働生産性は世界で20位で
アメリカは72ドル、ドイツは69ドル、フランスは68ドル、イタリアは55ドル、イギリスは54ドルだが日本は48ドルとなっている。日本の労働生産性が低いのは中小企業が多い事が原因の一つになっている。1995年頃は日本の一人当たりのGDPは世界トップレベルだったが労働生産性はやはり先進国では最低の世界20位であった。これは労働生産性が購買力平価で計算されているため為替の変動で大きく影響を受けるわけではないためである。

上記サイトで解放主義社会においては国有企業が重要な役割を果たすことを説明した。その意味では我々は中国経済の事を知っておくべきである。もちろん、政治体制は最悪で学ぶべきことは何もない。中国の国有企業のうち100%中央政府の出資で成り立っている企業は128社、それ以外の中小規模の国有企業は12万社ある。中国全体で民間企業を含めた企業数は約4000万社あるので数だけ考えると国有企業の割合は少ない。しかし2018年の中国の売上上位10企業のうち、8社が国有企業である。例えば「国家电网有限公司(ステートグリッド)」の売上高はトヨタの1.3倍もある。また中国工商銀行は総資産約4兆米ドルの世界最大の銀行である。

国有企業を持つメリットは大きい。私企業であればその企業の利益だけのために活動するのだが、国有企業は国全体の利益のために活動できる。例えば人間の右手、左手、右足、左足がそれぞれ勝手な振る舞いをしたら、人間はほとんど何もできなくなるがその4つが統制が取れた動きをすればまともな行動ができるのと同じだ。また国から巨額の財政援助を受けられ、倒産のリスクがないので思い切った設備投資ができる。次世代産業技術の覇権争いをするには補助金をたっぷり受けた国有企業が圧倒的に有利になる。このことに危機感を覚えたトランプ米国大統領は不公正だと主張し、経済制裁を科している。

国有企業が利益を出せばそれを国民のために使うこともできるが、民間企業の場合その利益の一部を国民のために使おうとすると税金を課すしかないが、企業はあの手この手を使って税を逃れようとするし、場合によっては海外に本社を移す可能性もある。国有企業が今の中国の発展を支えているのは間違いない。

中小の私企業をたくさん抱える日本は今後AI/ロボットを導入する際、多くの困難を伴う。第一に開発には巨額の資金が必要になるが、私企業はそのような資金を持っておらず、大きく遅れをとる。第二にAI/ロボットが導入され、労働が代替されるようになるとき、労働者をどうするのかが問題になるから急激な導入ができない。その点中国の国有企業であれば、国策として労働者の移動が容易になる。これらの問題を放置しておくと日本経済は没落するばかりであり、解放主義社会への移行がいつまでも進まない。解放主義社会は究極の大きな政府である。財政規律ばかり気にしていると国は貧しくなり国民を苦しめるだけである。財政政策の大転換が求められる。

 

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2019年6月17日 (月)

AIとポスト資本主義:未来社会はどこまでも発展を続ける社会(No.353)

『人間と環境』7(2016)に吉野敏行氏が『AI(人工知能)とポスト資本主義』という論文を発表している。ところで筆者はAIが発達すると解放主義社会に移行すると主張した」。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html

少なくとも、吉野氏と筆者はAIが発展した後の未来社会を予測しようとしていることは共通であり、吉野氏の論文は大変興味深い。ただし吉野氏の考える未来社会は私のものとは大きく異なっている。

吉野氏は水野和夫氏の主張『資本主義の死期が近づいている』を引用し、先進国では「ゼロ金利・ゼロ成長・ゼロインフレ」が定着していることを「資本主義の死」と表現している。そして社会の実現すべき方向性は「定常型社会=持続可能な社会」でありこれが資本主義を終焉させることのようである。これはローマ・クラブの『成長の限界』に影響を強く受けている。つまり経済成長は国の累積債務や貧富格差の拡大、環境悪化という惨事をもたらすとの主張である。このような主張に対して反論する。

【反論1】
ゼロ金利・ゼロ成長・ゼロインフレになる理由はインターネットの登場に見られるような大きな技術進歩があり実質的な供給力が増加したのにも拘わらず、需要拡大策をせず緊縮財政政策を続けているからである。積極財政・減税を大胆に行えば、需要が伸び、経済が成長し、インフレ率が上がってくる。それに伴って当然金利も上昇する。これが正常な経済の姿である。積極財政で国の累積債務は増大するが、GDPはそれ以上に増大するので、債務のGDP比は逆に減少する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-4257.html

【反論2】
経済成長が必ずしも貧富格差の拡大をもたらすとは限らない。筆者の主張する解放主義社会では、ロボットしかいない会社は国有化し、その利益を国民に還元するから格差は縮小に向かう。

【反論3】
社会の実現すべき方向性は「定常型社会=持続可能な社会」ではない。人間はどの時代でも常に「もっと幸せで、もっと快適な生活」を求め続けるから、定常型社会にはならない。例えば「もっと長生きしたい、いつまでも健康でいたい」という願望を叶えるために、医学の研究はどこまでも進み、事故の防止・公害の防止の取り組みは未来永劫続いていく。新しい生活空間、もっと優雅な住居を得るための努力も続き、地球外にまで出て行こうとするだろう。果てしない探究心で科学はどこまでも進歩する。決して定常型社会に収束することはあり得ない。

【反論4】
経済の拡大・発展は環境悪化を意味せず、むしろ環境を改善する。かつては「東京の空は灰色だった」が今は青空だ。現在はインドなどの空気の汚染が深刻だが経済が発展すると改善する。イタイイタイ病など公害で悩まされていたのは過去の話で、技術の進歩、経済の発展で公害対策が進んでいる。AI/ロボットが労働を代替できる時代には、環境対策は優先して行われなければならない。技術革新で太陽光発電・風力発電による電力価格が大きく低下し蓄電の技術の進歩に伴って最終的には化石燃料も原発も不要となる。結果として日本はエネルギー自給率を高める。

 

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2019年6月10日 (月)

AIの発達で資本主義が崩壊し解放主義社会へと移行する: (No.352)

このタイトルで筆者は吉野守氏と共に6月7日に人工知能学会(新潟)で発表させて頂いた(4Rin1-07)。解放主義社会に関して詳細は以下を参照して下さい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html
AI/ロボットが雇用を奪ったとき、人は失業する。それに対応するためにベーシックインカムとして国民全員に同額の給料を配るという案には2つの問題点がある。第一の問題点は、どんな人にも同一給料を払うのであれば、頑張る人は頑張らない人と同じ給料では、頑張る人は満足せず、労働意欲が失われるということ。第二の問題点は余りにも巨額の財源が必要となるということである。

そこで我々は解放主義社会を提案する。ロボットしかいない企業は国有化する。従業員がいない会社は巨額の収入が約束されるから、国は巨額の利益を得る。その収益で希望する国民全員を公務員として雇い、それぞれの国民がやりたい仕事がやれるよう職を用意してやるということである。国民全員がやりたいことがやれるような世界が理想社会と考える。

学会では大変多くの方が質問をして下さった。一番多くの方が心配しておられたのは、企業の国有化である。
質問1 企業が国有化をいやがったらどうするか。
回答  大部分の大企業は株式を公開しており、今でも日銀は刷ったお金で株を年間6兆
    円も買っている。このまま買い進めばいつの間にか国有化される。本当に必要にな
    るまで国は「物言わぬ株主」として株を買い続ける。
質問2 株式公開をしない会社はどうするか。
回答  100%の企業を国有化する必要はないし、私企業の立ち上げも許す。ただし、そ
のような未上場の会社が国を支配するだけの富を蓄えたら、規制することも検討
する。
質問3 国有化したら人は働かなくなり競争も無くなり経済が発展しなくなるのではない
か。
回答  中国を見れば沢山の国有企業が活躍して経済が発展している。ロボットしかいな
い会社が国有化されたからと言ってロボットが働かなくなることはない。公務
員は働かないというわけでもない。国立大学の研究者は世界の中で厳しい競争を
しているわけであり、研究・開発は公務員であっても進む。国としてはそれを助け
るための十分な環境を整えてやり成果が上がれば十分な報酬を払うのが重要であ
る。
質問4 ベーシックインカムではうまくいかないのか。
回答  もし会社で社長も平社員もパートもバイトも全員が同じ給料だったとしたら、頑
張る社員は不満でやる気を無くす。巨額の財源を調達しにくいという問題もある。
質問5 給料に差をつけるとして、どうやって給料を決めるか。
回答  ビッグデータを集め、AIが「国民がどうすれば最も幸せになるか」を判断して決
める。どうすれば幸せになるのかは進化生物学に基づいて検討すればよい。
質問6 ベーシックインカムの実験結果はどうなっているか。
回答  ほとんどの例では限られた人に限られた期間行われており、これでは本当の意味
のベーシックインカムの実験とは言えない。唯一ナウル共和国ではリン鉱石の輸
出で莫大な収入があり、国民は永遠に高額の収入が約束されると信じた。結果とし
て国民は労働を忘れ国民の90%が失業し、肥満や糖尿病に悩まされることとな
った。しかも国の巨額の収入は一部の人達に私物化されることが多かった。

ご清聴有り難うございました。

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