経済・政治・国際

2019年3月17日 (日)

ベーシックインカムvs解放主義(No.342)

将来AI/ロボットが雇用をすべて奪ってしまったら人はどうやってお金を稼いだらよいのか。国民全員に同額の給料を払えというのがベーシックインカムというアイディアである。しかし、もしもある会社で社長から平社員、パート、バイトまですべて同じ給料にしたらやる気を失ってしまう人も多いし同じ給料なら働いたふりをしてろくに働かない社員も出てくるのではないだろうか。旧ソ連や東欧諸国の失敗を繰り返すことになるかもしれない。

日本の生活保護制度は生活困窮者を必ずしも救っていない。財政難の問題があり受付担当者が生活保護を申し込みに来た人にできるだけ他の手段で収入を得るよう説得する。そのため受給資格があるのに諦めてしまう人も少なくない。その結果公平性に欠くことになるのだが、ベーシックインカムであれば、それがない。しかし財源は桁違いに大きくなる。やはりベーシックインカムの問題は巨額の財源をどうするのかということと、働かなくても一生の間一定の収入を得られるなら労働意欲が失われるのではないかということだ。

2016年、スイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われ、賛成23%、反対77%の圧倒的多数で否決された。次のように世界各地でベーシックインカムの導入実験が行われている。
2016年1月オランダのユトレヒト
2017年フィンランド
2017年カナダのオンタリオ州
しかしながら、国全体で、無期限に行われないと本当の意味のベーシックインカムの実験にはならない。国の一部だけで行われると、それ以外の地区から激しい不満の声が出るし、期間限定で行われると、本人はそれが終わった後の準備をするから、ベーシックインカムの実験にはならない。国民全体が無期限に生活費を支払ってもらえると分かったとき、国民の生活はどう変わるのかということは、実際にそういう環境にならないと分からない。

唯一、本当の意味のベーシックインカムに近い「実験」が行われたと言えるのは、ナウル共和国である。これは太平洋の赤道付近に浮かぶ人口1万程度の小さな常夏の島国である。

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もともとナウル人はココナツを採ったり漁に出たりして自給自足で生活していた。ナウル島はアホウドリの糞でできた島であり、リン鉱石が産出することが分かり、1907年、リン鉱石の採掘が開始された。ツルハシとバケツで採掘したのは中国人、島の先住人は海辺で釣りなどしてぼんやりと過ごした。

1970年リン鉱石の採掘権がナウルに完全譲渡、リン採掘事業の国有化しその収益のほとんどがナウルの国庫に収まりナウルのGDPは一人当たり2万ドル近くになり世界で最も豊かな国の一つになった。ナウル燐鉱公社が採掘と輸出を行い、利益の半分は国庫に、残りの半分は長老たちがつくるナウル地方政府評議会が管理した。評議会は採掘場の土地を持っている人に平等にお金を支払い、残ったお金は積立預金にしたり投資したりした。ナウル人のほとんどが土地の所有者だった。野菜や果物を作っていた土地を採掘場にし、食料は缶詰で輸入した。リン鉱石の採掘は外国人が行った。税金はタダ、教育、病院、電気代もタダになり結婚すると2LDKの新居を提供してもらえた。ナウル人はドライブや魚釣りを楽しみ海外へショッピングに行く人もいた。

ナウル人は公務員となった10%の人をのぞきほとんど働かなかった。つまり失業率は90%だったが収入は大統領まで含めほぼ同額であった。ナウル人の多くはこの生活が永遠に続くものと考えていただろうし、その意味でベーシックインカムの実験が始まったと言える。自炊もせず、食事は外国人が経営するレストランですませ、個人の住宅の片づけや掃除のため、国が家政婦を雇った。

ナウル人の肥満率は高く、成人の肥満率ランキングでは189か国中トップの71.1%(偏差値91.7)である。ちなみに日本は166位で肥満率4.5%である。また国民の30%以上が糖尿病を患っており、人口比の罹患率は世界一である。贅沢を覚え働かないと不健康になるのではないか。

ナウル人は1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。政府が小学校の高学年で働き方を教える授業を行い、将来の国を担う子供たちの労働意欲を与えようという対策がなされた。

政府は漁港を開発し公営の魚市場が作られたが、魚師のなり手はいなかった。ナウル人にとって魚を獲るのはレジャーになっていた。魚が獲れれば自分で食べてしまう。レストランに行けばいくらでも魚料理は食べられる。せっかくの漁港も暑さしのぎのプールになってしまった。

巨額の収入をもたらしたリン鉱石の採掘だが、資源には限りがあり、1990年代には収入が目に見えて減ってきて電力不足や燃料不足、飲料水不足が深刻化した。収入が多かった頃に適切な対応がなされていたらナウルは末永く豊かな国でありつづけていただろう。あるいはノルウェー政府年金ファンドや日本の年金積立金の運用方法を真似て稼いだ資金を運用すべきだった。実際の資金運用は失敗続きだった。海外投資からはリターンは得られず元本さえも消えた。1986年からは大統領が次々入れ替わった。政治指導者は国家のお金と自分の財布を混同。閣僚の妻や子供をはじめとする親族が国家のカネをネコババした。銀行を次々設立、税金はタダ、財産が隠せるようにし、マネーロンダリングに手を貸した。国籍を2.5万ドルで販売しパスポートを発行、アメリカはナウルをならず者国家と呼んだ。アメリカの2001年9月11日のテロの後、世界中がテロリストに対する引き締めを行い、ナウル銀行は破綻しナウルは蓄積していた資金を失った。

2007年に日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』が「地球の歩き方」のナウル版を制作する企画で取材班が訪れた際には、日中の街中をうろつき回る多数の島民の姿が映し出されていた。これは1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。かつては農業もあったのだが、リン鉱石を採掘して農地は荒らされ今は農業もできなくなっている。

お金がたくさんあれば、それを国民に配るだけでいいというベーシックインカムの考えが一つの国を破産へと導いたのではないか。お金があるから自炊せずレストランで食事をし、島の周りをぐるぐる回るだけ。国民がもっと生き甲斐を感じられる社会システムはなかったのだろうか。例えば、リン鉱石の年間の採掘量を制限し不必要に所得を増やすことを止め、国内の観光業を育てるため島をテーマパーク化したり、海水浴場やダイビングができる海として整備したりしていたらどうなったか。一部の国民に外国から専門家を招きノルウェー政府年金ファンドや日本の年金積立金の運用方法を勉強させ資金の運用をさせる。世界の金融制度を勉強させていたらナウル銀行の破綻もなかっただろう。様々な分野の専門家を海外から招き、学生に勉強をさせて専門家を育てていたらナウル経済の破綻はなかった。カネがあるから単に配るというのでなく、国民全員がより充実した仕事ができるようにするためにカネを使うのがJODであり、解放主義社会の精神である。もしナウル政府が国民に対し、「ナウルを近代国家にするために協力してほしい。協力してくれた人にはその貢献度に応じ奨励金を払う」と宣言していたら、ナウル人の協力者が多数現れたに違いない。それは明治維新の時の日本の事情に似ていただろう。

同じような事情はAI/ロボットが雇用を人間から奪ったときも遭遇するに違いない。その時人間は何をすればよいのか皆で考えなければならない。よいアイディアを出した人には報奨金を払うべきだ。全員が同額の給料を受け取るというベーシックインカムから一歩進んだ考えとなる。

ナウルの失敗はどこの国でも起こりうる。AI/ロボットが発展し一握りの資本家だけに富が集中すると資本家は国民の利益を無視し国を間違った方向に変えてしまう可能性がある。

ナウルの状況と似ているところがあるのがベネズエラである。1950年頃から原油高のため西半球で最も経済的に繁栄する国となったが石油収入に頼り国内産業を育ててこなかった。富が一部の富裕層に集中した。2013年3月5日、チャベス大統領は癌により死去した後、腹心であったニコラス・マドゥーロ副大統領が政権を継承した。その後の数年間、暴力と飢えがベネズエラの象徴となり、ハイパーインフレが発生し、同国から脱出する移民の数がかつてないレベルにまで達した。ベネズエラ経済は政策の失敗や汚職により急激に悪化し、同国は危機の只中にあった。2018年5月のマドゥロ氏は再選されたが、抑圧・詐欺・不正選挙であると報じられ、大いに批判された。かつて裕福な国だったベネズエラだが、原油収入に頼り国内産業が育たず、富の集中が起こり、原油価格の下落で経済が破綻し極度の物不足となった事を考えればナウル共和国の失敗に共通するところがある。ただし豊富な原油や天然資源により莫大な貿易利益がありながら貧富の格差が大きく、政府の腐敗に反発した国民が暴動を起こしている点は異なっている。つまりベネズエラの場合はベーシックインカムとは程遠いのである。

ナウルとベネズエラで共通していることは、富と権力がごく一部の人たちに集中し民主主義が守られず国民のための政治ができなくなってしまっていることである。現在も格差拡大が問題になっている。労働がAI/ロボットに奪われると富はごく一部の資本家に集中することとなり、悪くすると一握りの資本家が政治にも影響力を及ぼすようになり政治が腐敗すると国民は悲惨な運命をたどることとなる可能性がある。それを防ぐには民主的な政府が続いている間に国が通貨発行権を行使し政府が資本家に集中しつつある富を買い取ることだ。具体的には例えば株式を徐々に買っていくことだ。ただし、原則的に経営には口出ししないほうがよい。政府はその企業の経営など分かるわけがなく、余計な口出しをすると経営がおかしくなる可能性がある。ただし企業の利益の一部を政府が吸収し、それを国民に配るようにする。国民から公正な選挙で選ばれた政府であれば、国民の生活を第一に考えるだろうから、このようなことができるはずでありこれこそが解放主義である。

解放主義においては、希望者全員を公務員として採用する。そして本人の希望を聞き適材適所で仕事を割り当てる。社会の発展、人の幸福に大きく貢献した人には多くの給料を払うが、最も給料の少ない人でも十分暮らしていけるようにする。この意味解放主義はベーシックインカムの考えを含んでいるし、その改良版であるともいえる。

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2019年3月11日 (月)

ナウル共和国はベーシックインカムで崩壊した(No.341)

ナウル共和国は南太平洋に浮かぶ人口約1万人、面積21k㎡の小さな国で、元々は漁業と農業で生計を立てていた。19世紀後半から始まったリン鉱石の採掘で莫大な収入があり、その半分を国民に均等に分配し残りを海外に投資するというベーシックインカムが実施され、一人当たりの所得は世界一になった。税金はなく、医療・教育は無料、年金保障など手厚い社会福祉を国民に提供した。労働はすべて外国人労働者が行いリン鉱石の採掘も外国人労働者に任せきりだった。その結果勤労意欲が失われた。失業率90%である。

2007年に日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』で番組の取材班がナウルに入った。日中の街中をうろつき回る多数の島民の姿が映し出されていた。これは1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。食事は外食ばかりで働かない。学校では働き方を教え、新たな産業が生まれることを期待している。政府の家父長制化とともに支配者や特権階級への強権や富の集中が進んでいる。マネーロンダリングや不法パスポートの発行などが行われた。ナウルの政治・経済情勢は毎年のように続く政変、公務員への給料未払いなど混沌としている。20世紀末鉱物資源が枯渇、主要産業は崩壊。インフラ整備が後回しにされている。国民の肥満率が最も高い国、国民の71.1%が肥満で30%が糖尿病を患う。肥満率も罹患率も世界一である。

これで分かることはベーシックインカムでは人は必ずしも幸せにならないということだ。動物園の檻の中のライオンのように意味もなくうろつき回るのと同様にベーシックインカムでは人は何をして暮らせばよいのか分からなくなる。それに対し解放主義社会(注)なら人は生き甲斐を感じる生活を送れる。AI/ロボットに仕事を任せることができる時代が来たら、希望者全員を公務員にして各自が生き甲斐を感じる仕事ができるようにする。例えば作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、哲学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師等である。国が仕事を作り出し、サポートする。これをJODとよぶ。例えば音楽家になりたい人が多数いたら全員を音楽家として雇う。演奏会場を多数準備し、演奏会を支援する。観客が少なすぎる時はロボットで補う。

何としても民主主義は守らなくてはならない。政治は公正な選挙で選ばれた代表者・政治家によって行われるべきだ。富が一部の資本家に集中したら、政治的影響力を持つようになるから、過剰な富の集中が起こらないように、国は通貨発行権を利用し、株や土地などを買い取り、国の主要な利益は国に入るようにし、その利益を国民に分配する。

また才能がある人、頑張る人にはそれなりの報酬を与えるべきだ。私企業の存続も私有財産制も維持し、頑張れば大金持ちになれるようにする。公務員として働く場合でも、その業績に応じて給料は決まる。大成功すれば、公務員として働いてもその給料で財を成すことができる。公務員なら最低でも十分生活できる給料を受けることができる。 

(注)解放主義社会
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html 

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2019年3月 4日 (月)

明石順平の財政破綻論に反論する(No.340)

明石順平氏の『データが語る日本財政の未来』という本を読んだ。明石氏はこの本を読んでも「日本は絶対に財政破綻しない」と言えますかと聞いている。答えは簡単、もちろん「言える」である。

明石氏の主張1:日本には資産があるから財政破綻しないと言う人がいるが、これらは借金返済に使えない。資産というのは年金積立金の運用寄託金(121兆円)、道路・堤防等の公共用財産、外貨証券(82兆円)、財政融資資金貸付金(139兆円)、対外純資産だそうだ。
反論:もちろん、こんなもの借金返済には使えないし使う必要は全くない。日本の国の借金は過去130年間で500万倍になった。この間借金は増え続けており、借金の増加は流通する通貨量の増加と密接に関係している。経済を拡大するにつれ借金は増えていくのは自然の成り行きであり、明石流のやり方での借金返済は空想にすぎず無意味であり馬鹿げている。

明石氏の主張2:日銀がお金を刷って国債を買っても、日銀当座預金という負債に入れ替わるだけだから借金は無くならない。
反論:例えば日銀が日銀券を刷って国債を買ったとしよう。明石氏によれば日銀券は日銀の負債だから借金返済になっていないと言いたいのだろう。百歩譲って日銀券が借金だとして、無利子・無期限の借金であり放っておいて構わない。そもそもこれを税金で返済しなければならないわけがない。預金通貨も同様であり、日銀当座預金が借金だという主張には無理がある。主張1で述べられたような馬鹿げた借金返済方法などではなく、日銀が刷ったお金で借金を返済すれば何の問題も起こらない。それが財政が破綻しないと言える十分な根拠である。

明石氏の主張3:日銀当座預金残高が増えると、インフレを止められなくなる。
反論:これも物余りの日本経済の現状を無視した空想にすぎない。インフレが止められなくなった例はすべて極度の物不足の状況下であり、しかも財政規模が急激に拡大している場合だ。これと反対に日本は物余りの状況であり、しかも財政規模はむしろ減少気味で歳出は2009年度には101兆円だったものが、2018年度には97.7兆円にまで下がった。デフレ脱却を目指しインフレ率を上げたいなら財政規模を拡大しなければならない。実質賃金も減少しているから消費も低迷が続く。物価は需要と供給の関係で決まる。需要不足の今、インフレ率を高めようとしても無理だし止められなくなるほどのインフレなど論外だ。デフレ脱却を困難にしているのは、「財政破綻するぞ」という悪質なデマを流す連中(明石氏のように)の存在だ。騙されやすい人たちは、このようなデマに簡単に騙されてしまう。その結果、企業の経営者は設備投資を抑え、消費者は消費を抑える。

消費増税などで消費を抑えている反面供給力は増している。辞書や地図帳や旅行ガイドなどはかつては本屋で買っていたが、今はネットでもっと良いものが無料で見ることができる。音楽CDもネットで無料で聞けるし、安くダウンロードも可能だ。AI/ロボットが次々と人の労働を奪いつつあるのも物価が上がりにくくしている。コメの供給過剰も続いており、減反政策も事実上維持されている。現代では昔と違い需要が増えても生産ラインを増やし生産を増強すれば、大量生産で逆に値段を下げることもできる。明石氏の言うように日銀当座預金残高が増えると、インフレを止められなくなるのであれば、もうとっくに2%のインフレ目標は達成されていなければならない。

今、日本で必要なのは、明石氏のようなデマで国民が不安に陥るようなことがないよう教育し、安心して生活ができるようにすることだ。

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2019年2月25日 (月)

山本太郎議員を招いて開かれた第151回日本経済復活の会定例会(No.339)

第151回日本経済復活の会定例会は平成31年2月17日、江東区文化センターにて開かれた。講師山本議員の演題は「金を刷れ、皆に配れ。」であったのだが、これに対して少なからず批判的な意見も寄せられた。この演題は筆者が20年前から主張している内容であり、もし政府が20年前からそれに添った政策を実行していたら、今でも日本は世界で最も豊かな国の一つであり続けていただろう。一見すると乱暴そうな意見に思えるかもしれないのだが、これはマクロ計量経済学に基づいたシミュレーションを行って有効性が確認された結論を一般に分かりやすく表現したものだ。ノーベル経済学賞を受賞したサミュエルソン、クライン、スティグリッツ等が主張する経済政策でもある。

では、今の日本でどのくらいお金を刷ればよいのだろうか。2002年、筆者は著名な経済学者である宍戸俊太郎氏と共にシミュレーションによりこの答を求めることにした。そのためには経済データとマクロモデルが必要となるのだが、最も信頼されている日本経済新聞社のNEEDS日本経済モデルを使用することにした。天気予報は気象庁だが、経済予測は日経が定評があるからだ。しかし、日経はお金を刷って国民に配ったらどうなるかという予測は発表しない。その理由は日経は国から各政策の経済効果などの計算などで巨額の受注を受けており、お金を刷って国民に配るというような「不謹慎な」政策の評価に手を貸すようだと今後政府から受注が受けられなくなるかもしれないからである。

そこで筆者は日経にお金を払い、大規模な減税をしたら日本経済はどうなるのか計算してもらった。経済音痴の人はお金を刷って国民に配れば直ぐにハイパーインフレになるから絶対にやってはいけないと言う。お金を配ると言ってもヘリコプターでばら撒くことを提案する人はいない。例えば減税すれば国民にお金を渡すことになる。しかし実際にシミュレーションで計算をしてみると大規模な減税でも簡単にはインフレにならない。5年間、減税を継続的に行った場合の5年間平均のインフレ率の押し上げ効果を計算してみた。結果は予想したよりはるかに小さく、10兆円の場合0.9%、20兆円の場合1.5%、50兆円の場合3.3%だった。ただし、減税による景気押し上げ効果は素晴らしく、消費が押し上げられGDPは実質も名目も大きく増加、民間設備投資は増加、企業利益も雇用者報酬も増加、失業率は減少ということで経済にとってすべてが良い結果となった。

この結果をサミュエルソンに送ったところ彼からの返事は
 大規模な減税が日本経済の著しい回復をもたらすのであればインフレ率が十分高くならないとしても、気にしなくても良い。インフレ率自身は政策の最終目標ではないからだ。重要なことは、流動性のわな等に起因される消費の欠如を取り除くことである。
ということだった。

この試算から明らかなことは、もし10月に予定されている消費税10%への増税を止め、逆に5%に減税して景気を刺激してもまだインフレ目標2%には届かない。要するに景気刺激をするならもっと大規模にしなければ効果は限定的ということだ。米中のように大規模景気刺激が理想的だが、安部さんにそんな勇気がないとしても、小規模刺激策でも国民にとっては可処分所得の増加で物が多く買えるようになるし、企業も利益が増し未来への投資ができるようになり国際競争力を増す。経済力が増せば少子高齢化に耐えられるだけの国力がつくし年金も安定する。こんなによいことはない。

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2019年2月19日 (火)

日銀は米国債を買ったらどうか(No.338)

日銀は異次元金融緩和で2%のインフレ目標達成に失敗している。毎年80兆円の公債保有残高を増やす目標だったが、最近では保有残高の増加ペースは大きく低下しているし、財政では逆に消費増税でブレーキをかけようとしている。このままでは日本経済の復活はおぼつかない。そこで提案したい。

日銀は米国債を大量に買うべきだ。

為替誘導と言われるかもしれないけど、トランプさんは国債を大量に発行しており、買い手が本当に現れるのか内心心配になっているのではないか。中国と喧嘩しているので中国に買ってほしいとは言えない。最後の買い手は日銀だろう。米中貿易戦争の現在、漁夫の利を得ることができる。円安で割安になった日本株も上がるだろうし、日本製品も売れるようになるし、日米貿易交渉にも有利にはたらく。米国債が暴落したらどうするのかとの意見もあるのかもしれないが、トランプさんが米国債を暴落させるわけがない。GAFAと言われる超優良IT会社が稼ぎまくっている状況ではドルは暴落しない。世界の時価総額ランキングの上位企業は軒並み米国企業でドルは世界一魅力的な貨幣で万一暴落したらGAFAを買ってしまえばよい。

通常の為替操作はまず財務省が国債を発行して円を取得し、それを使ってドルを買うのだが、それでは国の借金を増やし、将来世代へのツケを残すと批判する人がいる。しかし日銀がタダでお金を刷ってアメリカに貸してやる方式では、借金はアメリカ国民が行って日本国民はタダで貸主になり逆に将来世代への債券を残すことになるので、歓迎すべきことだろう。「国の借金=1062兆円、国民一人あたり:837万円」と言われるが、そこに「米国に貸したカネ=200兆円、国民一人当たり:160万円」などの記述が加われば日本人のプライドは少しは回復するのではないか。タダで調達したカネをいくらでも米国に貸せる。長年世界一を保っている対外純資産も、一人当たり30万円と追加すべきだ。それに国の借金の大部分は日銀や政府系金融機関に貸しているのだからこれを国民が返すというのは納得できない。借金は借りた人に返すべきだから国民が国に返すのではない。国民一人当たりの借金を計算するには国または政府系から借りた金を除いた額にすべきだ。そう考えると国民一人当たりは何分の1かに減る。

もちろん最良なのは積極財政に政策変更をすることだ。減税して財政を拡大する。そして超一流IT企業を育て、AI/ロボットの技術開発で世界トップに躍り出る。それがとても日本の将来にとって大切かが分かっているはずなのに、日本人はそれが理解できない。刷ったお金を日本で使うと、日本在住の外国人にまで使われてしまうから反対と言う人までいる。でも私を含め多数の日本人は海外に旅行したり滞在したりしていて、それなりに恩恵を受けている。日本に在住の外国人の利益になってはいけないから日本を貧乏なままにしておけという論理はいただけない。日本人も外国人も日本にいる人すべてが豊かになることはよいことではないか。ただし移民は増やすべきでない。

民主党政権だった2011年ごろ、デフレ脱却の難しさを知った政権は日銀にお金を刷らせる案を色々画策していた。その中で、前原氏は日銀の国債引き受けをさせその資金で米国債を買えと主張していた。当時宍戸俊太郎氏はアメリカを怒らすようなことはやらないほうがよいと言っておられた。今はトランプ大統領は米国債の売却で藁をもつかむ思いかもしれない。そうであればチャンスだ。タダでアメリカに貸をつくることができる。

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2019年2月11日 (月)

第151回 日本経済復活の会 開催のお知らせ (No.337)

                                                              日本経済復活の会 会長 小野盛司
○日時 平成31年2月17日(日)午後3時~午後6時30分
               (開場2時30分、講演開始3時)
    ※この後、希望者は二次会(食事会)にご参加下さい。
○場所 江東区文化センター 第一、第二研修室
    〒135-0016 東京都江東区東陽4丁目11-3 TEL:03-3644-8111
○会費 1000円(資料代を含みます。)
○講師 山本太郎 参議院議員 自由党共同代表
  「金を刷れ、皆に配れ。」
山本太郎。1974年兵庫県宝塚市生まれ。 1990年高校1年生時に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」に出場し、芸能界入り。91年、俳優デビュー。映画『バトルロワイアル』(2000年)、『GO』(2001年)など数々のヒットドラマ、映画に出演。また、俳優の仕事以外に『世界ウルルン滞在記』などでの体当たりレポートでも人気を博す。『光の雨』、『GO』で2001年度日本映画批評家大賞助演男優賞を、『MOONCHILD』、『ゲロッパ』、『精霊流し』で2003年度ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。最近では、山本太郎を追ったドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・ウェイブス』(ベルギー、2018年 )に出演。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の後、4月より反原発活動を開始。13年7月、参議院議員選挙に東京選挙区より出馬、666,684票(11.8%)を得て当選。14年12月 政党 「生活の党と山本太郎となかまたち」 に合流し、共同代表。16年10月 政党名を「自由党」に改称、共同代表。18年11月文教科学委員会、東日本大震災復興特別委員会、資源エネルギーに関する調査会に所属。
現在、原発問題、被曝問題、TPP問題、労働問題、社会保障制度改革、人々のための経済政策、表現の自由に関わる問題等に特に深く関わり活動中。
■主な著書
「母ちゃん ごめん 普通に生きられなくて」(ぴあ)1998年11月「山本太郎 闘いの原点: ひとり舞台」(ちくま文庫) 2016年(「ひとり舞台 脱原発-闘う役者の真実」(集英社)2012年を文庫化))、「みんなが聞きたい 安倍総理への質問」(集英社インターナショナル)2016年などがある。

○スケジュール 
  14:30     受付開始
15:00~15:20 日本経済復活の会小野盛司会長挨拶
15:20~16:30 山本議員講演
16:30~16:45 休憩
16:45~18:00 質疑応答
18:00~18:30 議員から皆さんへ「逆」質問とディスカッション
○申し込み方法 
  フォーム:こちら https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=JqOrDpwIRnMqs
    メール:seminar@ajer.biz
※満席によりお断りする可能性がありますので事務局から参加の可否を返信致します。
○問い合わせ先 090-2170-3971(幹事須田)
日本よりはるかに景気が良いアメリカも大型の減税が実施される一方で、デフレ脱却ができていない日本は消費増税に加え次々と増税案が出されています。2014年度の消費増税で景気は後退したという反省はありません。実質賃金は下がり続け、景気回復を国民は感じておりません。一人当たりの名目GDPは1990年頃世界トップレベルであったのが、最近では先進国では最低に、アジアでもどんどん追い抜かれているのが実情で、日本は急速に貧乏になりつつあります。失われた20年がこのままでは失われた30年へと進んで行きます。世界経済を牽引し始めたAI技術においても日本は周回遅れといわれています。財政を拡大すればデフレ脱却・景気回復・財政健全化が一挙に達成されるのに、なぜそれが理解できないのか。我々の戦いはまだまだ続きます。

【ご案内図】   
地図

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【交通機関】 地下鉄 東京メトロ 東西線「東陽町」駅 1番出口より徒歩5分
    
  バス利用の場合?JR「錦糸町」駅または都営新宿線「住吉」駅より1.東22系統「東京駅丸の内北口」⇔「錦糸町駅前」「江東区役所前」下車徒歩3分
  バス利用の場合?都営新宿線「東大島」駅より2.門21系統「東大島駅前」⇔「門前仲町」「江東区役所前」下車徒歩3分
 
【誰でも参加できます。皆様のご参加をお待ちしております】


連絡先
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2019年2月10日 (日)

国の借金1100兆円超えで、財務省が国民のアイディア募集(No.336)

国の借金が1100兆円を超えたということで財政制度分科会・増田寛也会長代理は国民一人ひとりに当事者意識を持ってもらうため、ホームページで財政健全化のアイデアを募集するとのことです。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/ikenbosyuu/20190204.html
これに応えて私のアイディアを以下に書きます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
国の借金を減らすためのアイディアを提供します。

(1) 国の借金そのものを減らしたいのであれば、100分の1のデノミをすれば、1100兆円の借金は一夜にして11兆円に減ります。
(2) デノミをすればGDPも減ってしまい借金のGDP比は減らないと反論されるかと思います。つまり国の借金そのものを減らすのは全く無意味であるということになります。そして国の借金は増やしても国の借金のGDP比が減ればよいという結論になります。借金のGDP比を減らす方法は内閣府によって明確に示されております。昨年12月19日に内閣府が「政府支出を増やせば借金のGDP比は減少する」という結論を出しました。これは「経済財政モデル(2018年度版)」
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
で、このモデルは内閣府が毎年2回公表している「中長期の経済財政に関する試算」を行うために使われています。そして今回の試算は様々な政策を政府が実行した場合に、日本経済にどのような影響が現れるかを詳細に示したものです。これによれば、政府支出を拡大すれば借金は増えるけど、増加率で言えばGDPはもっと増えるので借金のGDP比は減ってきて、将来世代へのツケを減らすことができるということです。この結論は日本にとって極めて重要ですので、国が委託して日本の各シンクタンクに依頼して政府支出を増やせば借金のGDP比は本当に減るのか試算を出させて確認すべきだと思います。著名な経済学者である宍戸俊太郎氏はどのシンクタンクのモデルを使っても同じ結果になると主張されました。国の借金のGDP比を減らすには、政府支出を増やすしかないという事に国民的合意が得られたなら、政府は思い切って政府支出を増やすべきだと思います。内閣府のモデルでもずっと先はどうなるかは分からないにせよ、少なくとも2 ~ 3年間は確実にGDP比は減るので、まず3年間政府支出拡大をすべきです。その3年後、再び再計算をして新しい計画を策定すべきでしょう。
(3)政府支出を増やすべきだという国民的合意が得られたら政府はできるだけ将来世代に利益になるような支出をすべきです。現在時価総額で上位を独占しているのはアメリカのGAFA,中国のBATと言われるようなIT大手企業です。日本はこの分野では大きく遅れておりその意味では日本の未来は暗いと言うべきです。政府はGAFAやBATに対抗できるような巨大IT企業を莫大な助成金を使って育てるべきです。技術開発のための研究学園都市をつくり、世界中から優秀な技術者・研究者を引き抜き研究レベルを上げるべきです。有望な企業を次々買収することもよいかと思います。ファンドを作って孫正義に運用を一任するのもよいかと思います。日本語が完璧に理解できるAI/ロボットを完成すべきであり、それができれば人手不足は一気に解消します。また最先端の自動運転技術開発も日本が世界をリードすべきです。

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2019年2月 3日 (日)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)の2019年中長期試算(No.335)

2019年1月30日に内閣府より『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。筆者はその詳細について内閣府に電話して聞き頭脳明晰な担当者が詳しく説明してくださった。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/no334-9184.html

このような試算を出すとは、内閣府はオオカミ少年だと我々は繰り返し主張しているのにも拘わらず、彼らは一歩も譲らない。彼らが繰り返し述べているように、そもそも日本経済が将来どうなるかを正しく予測しようという気持ちは全くない。彼らの言い分は、自分たちは政府に雇われている。政府は実質2%、名目3%成長を目指している。現在の財政政策ではそれは実現不可能であっても、もしそれが実現したらどうなるかという架空の経済をこの試算で示している。つまりこれは予測ではないので外れるのは当然だ。

残念ながら、マスコミも政治家もこれが現実の将来の日本経済だと誤解している。この試算に関する新聞記事を見てみよう。
朝日新聞
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東京新聞
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日本経済新聞
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読売新聞
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産経新聞
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毎日新聞

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このように新聞はすべて基礎的財政収支(PB)の黒字化の事ばかり書いている。こんなことでは日本の未来は悲惨と言うしかないのだが、その説明の前にこの試算がウソで固めたものであり、この試算を行った内閣府計量分析室がオオカミ少年である事を示そう。次の名目GDPのグラフを見ていただきたい。

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彼らは毎年名目GDPの予測を出している。様々な経済データを寄せ集めて予測値を出したように思うかもしれないが、そうではなくて、政府から3%成長の予測を出せと命令されているから、そのような予測を出すしかないのだ。ガリレオは裁判で処刑されながらも「それでも地球は回っている」と言った。内閣府計量分析室の方々が口を揃えて言うことは、彼らが出す予測は間違っていると知りながら3%成長すると言うしかないのだ。つまり彼らは間違えた予測を強制的に発表させられている。この図で実際の名目GDPは実績(新)と実績(旧)とある500兆円前後で横ばいの2本のグラフだ。途中で定義が変わったので新旧の2本の線となっている。2001年から2018年の平均成長率はせいぜい0.3%程度でとても3%には届かない。それでも政府は職員に3%成長すると言えと命令する。正義感の強い人なら、こんな所で働きたくないと言って出ていくだろうが、なかなか内閣府の職は捨て難いから心の葛藤は続く。例えば2005年の試算では2012年の名目GDPは645.2兆円と予測した。そのまま3%成長すれば今頃は800兆円を超していただろうが実際は550兆円にも届かない。

今回発表された予測は点線で示しているが、予想通り1年前に出したものを大幅に下方修正し、オオカミ少年の名に恥じないものだ。2018年度の名目成長率は1年前2.5%としていたが、今回は0.9%に下がった。なんと3分の1近くに下がってしまった。

基礎的財政収支の予測ももちろん間違えている。間違えているからその予測は発表のたびに大きく変わっている。つまり毎回、前回までの結果は間違いでしたと認めているのだ。それを知らずマスコミも政治家もこの予測を基に財政がどうあるべきかを検討するのだから恐ろしい。そもそも基礎的財政収支を黒字化しなければならないというのは間違いだ。次のグラフは内閣府のモデルで基礎的財政収支と国の債務のGDP比の関係を示したものである。

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これで分かるように2026年度まで基礎的財政収支は赤字が続いているが国の借金のGDP比は2019年度以降下がり続けている。このことから基礎的財政収支など赤字でもよい。国の借金のGDP比は下がり続けるのだから、むしろ財政を拡大しGDPを増やしていけば将来世代へのツケは実質減るのだ。そもそも基礎的財政収支を問題にするのはEUとIMFだ。どちらも貧乏な国が外国から多額の借金をして返済ができなくなったとき、利子は大目にみてやるが、せめて元本だけは返せと言って基礎的財政収支の黒字化を迫る。これを日本と混同してしまうようなお粗末な経済の知識しかない連中が日本にまで基礎的財政収支の黒字化などと主張する。しかし日本は外国からの借金返済で困っているわけでない。次のグラフは国債の保有者別内訳である。このうち銀行の中に郵貯が、生保の中にかんぽ生命も含まれ公的年金はもちろん国の一部だから、借金を貸している多くは国である。父が母から借金してたとしても、それはその家の借金とは言わないから、国の借金とは名ばかりと言うべきだ。しかも海外からの借金は僅か5.9%で、日銀がお金を刷って返済しようと思えばいつでも可能だ。

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ということで基礎的財政収支の黒字化は日本には必要ないしむしろ害になる。なぜなら基礎的財政収支黒字化は歳出削減・増税だと思っている人が多いからだ。デフレ脱却が長期間できていない日本にはこれほど害になる政策はない。昨年12月に内閣府は乗数を発表した。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
これによれば、歳出を削減することは国民を貧乏にし苦しめるだけでなくGDPが減少し、国の借金のGDP比が増えて将来世代へのツケを増やしてしまうという最悪のシナリオだ。それだけではない。かつて日本は世界で最も裕福な国の一つであり、世界に誇る製造業を持っていた。デフレが続く中で、世界の激変に立ち遅れ、GAFAと呼ばれる巨大IT企業やそれに対抗する中国企業の台頭についてゆけず、取り返しのつかない失敗をしていることに気づいていない。心地よいゆでガエル状態になっているのだという危機感が必要だ。

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2019年2月 1日 (金)

「中長期の経済財政に関する試算」に関して内閣府に電話して質問(No.334)

Q 基礎的財政収支が改善したと新聞等で報道されましたが、改善した理由は何ですか。
A 2019年の当初予算ですが、臨時特別措置があって分かりにくいのですが、ベースの歳費ですが、歳出削減が進んでいて、試算では自然体で歳出を伸ばしていますが、発射台が小さくなったので改善しました。
Q 消費増税に合わせて景気対策はやりますよね。それにより発射台は上がったのでは。
A 消費税対策の臨時特別措置ですが補正予算と同じ扱いでして2019年と2020年しかやらないと骨太の方針にも書かれていて総理も言っておられますから特殊要因として扱います。
Q やらないと言っても景気が悪くなったらやりますね。
A そうですね。補正予算も毎年組んでいます。ですから試算では特殊要因は織り込んでいません。
Q 国の財政を考えると、債務が増えると困ると考えるのですが、去年内閣府で乗数を出しました。政府支出を増やしても債務のGDP比は下がるとの結論でした。
A はい。一時的には。
Q だから今歳出をそんなに削減する時かと思うのですが。借金が増えてもGDPがそれ以上増えればいいのではと思うのですが。
A そうですね。追加の歳出がGDPにより効くというか質のよい歳出の場合ですね。
Q 質が高い歳出と低い場合の歳出を別々に計算はしてないですね。
A モデルでは織り込めない要素です。
Q 本当は質の高い歳出を選んで持続的な成長に向かうような投資に使えば乗数は長い間持続するわけで、そういった計算ができればと思うのですが。
A そうですね。でもなかなかそういった細かい計算は難しいです。
Q 試算は2022年から名目3%成長が実現すると前提に置いていますね。でもなかなか3%成長は実現しないですね。
A 実績を見ると3%まで行っている年は近年ではないですね。
Q こういう試算が20年近く前から出されているのですが、だいたい3%成長を仮定して計算されているのですね。
A そうですね。
Q 例えば2005年の試算では7年後の2012年には名目GDPは645兆円になる、この調子なら今頃は800兆円を超えている。毎年3%成長するというのが、今の政策であれば非現実的ではないかという気がします。
A まあ、政府としては、名目3%、実質2%という目指しているところがありますので、その目指しているものが実現した姿を示しておかないといけない。
Q 過去20年間で平均してどのくらいの名目成長率になるかと言えば3%どころか1%もいかないという感じですよね。
A そうですね。この20年はリーマンショックや震災など起こりました。
Q 今後もそのようなものは起きる可能性はあります。今の政策を続ければなかなか3%成長は無理でしょう。
A まあ、アベノミクス、3本の矢を始めとした実績、これまでの実績を考えれば頑張らなければならないです。
Q 毎年、大幅な下方修正しますね。3%成長と言ってもとてもそこまでいかない。例えば2018年の名目成長率ですが、1年前の発表では2.5%と言ってました。半年前は1.7%に下方修正、今回はなんと0.9%にまで下がりました。わずか1年で1.6%も下方修正しました。実に3分の1近くに下がりました。いろんな数値を見ても大きく下方修正しています。もっと正確な予測ができないものか。これは理想であって、なかなかそうはいかない。毎回下方修正すると分かっていれば、最初から下方修正した値を出しておけば、国民はもっとこの試算を信用するようになる。国が出す試算ですから、もっと現実に即したものを出したほうが良いのではないかという気がするのですが。
A まあ、この試算から、あるメッセージとしてみるのは2%、3%行ったとしてもプライマリーバランスの黒字化ができない。2025年度ではまだ黒字化ができないという意味も込められています。
Q プライマリーバランスがそんなに重要なのかという問題があります。中国では最近40兆円の景気対策を打ち出したし、アメリカもトランプさんは歳出拡大、大減税、百何十兆円というそのくらいの規模の景気対策をやってます。だんだん効果が薄れてくると言われてますが景気を良くしてます。プライマリーバランスがどうだという話は出てこない。フランスでもデモに押されて緊縮政策を撤回している。
A はい。最近そうです。
Q 歳出削減でなく、可処分所得を伸ばせというデモが起きたらよいと思うのですが、日本はプライマリーバランス黒字化で将来世代へのツケを残さないようにしている。それが日本経済を悪化させていると思うのですが。プライマリーバランス黒字化は本当に意味があるのですか。
A 財政健全化の一つの指標となっています。
Q 国際的にそれだけプライマリーバランスを重視している国がありますか。
A 国際機関は財政収支を見ているところが多い。
Q IMFはカネを貸す立場だから、経常収支が大赤字の国に対して行き詰まったら節約せよと言うのは分かりますよ。日本はそうではありません。外国からお金を借りてない。デフォルトが起きそうもない。
A まあ、この先は分からないですが。
Q 基礎的財政収支が少しずつ改善し2026年には黒字化すると言っておられる。2025年までは赤字です。赤字ですが、債務のGDP比はすでに今年から下がっていくと予測してますね。2018年がピークでそれ以後は下がっていく。基礎的財政収支は赤字でも債務のGDP比は下がっていく。
A 成長率次第ですね。
Q つまり成長率を上げれば、基礎的財政収支が赤字でも下がります。
A そうですね。
Q だから基礎的財政収支が赤字でも債務のGDP比が下がるのだからそれでいいじゃないですか。財政赤字は気にせずに政府支出を増やしていけば、つまりトランプ流、中国流に財政赤字を気にせず財政支出を増やし経済を拡大していけば債務のGDP比は下がります。
A そうですね。
Q だったら政府支出を拡大していけばいいじゃないですか。財政赤字は気にせずにGDPを拡大していけば、つまりトランプ流に、あるいは中国流かもしれませんが、赤字でもいいから景気を刺激し、それで財政健全化が達成されるならそれでよしと言えるのではないですか。
A まあ、債務のGDP比もリーマンショックでもそうでしたが、外的要因などで振動しうる要因であるので。GDPを上げていくのも大切ですし、分子の債務残高を下げていくことも重要なのではないでしょうか。
Q そうです。GDPを上げること、そして債務を下げることが重要です。債務残高をゼロにするのは無理ですし、減らすことすら無理です。毎年何十兆円もの赤字のときにこれをいきなり黒字にするのは無理です。基礎的財政収支が黒字化しても債務は増え続けます。
A 利払いがありますから。財政収支が黒字にならないと減りません。
Q 財政収支を黒字にするのは無理ですよ。公務員の給料をゼロにしなければいけない。そんな無理な事をしなくてもGDPを増やせば、債務残高は増えても債務のGDP比は減っていく。これはこの試算で出ているのだから、それでよいのだと思いますが如何ですか。
A 財政と成長率の両面を見ながらですね。
Q 政府はインフレ率を2%にするのが目標だったのですね。
A 日銀と政府はそういう目標を立てていました。
Q この試算だと2023年度にやっとインフレ率が2%に達するわけですね。
A 2022年の後半で達します。
Q 安倍首相の任期が切れるわけで、アベノミクスでは目標達成ならずということですね。
A そうですね。
Q 更に任期延長ということがなければということですね。
A モデルの推定値なので確実というわけではないですが。
Q 異次元の金融緩和と言いましたが、なかなか効かないですね。
A 最近の日銀の物価見通しでもそうですね。
Q 外国人を何十万人かを受け入れるというのはこの試算には入っていますか。
A 入っております。
Q これはどういう影響を与えますか。
A GDPを押し上げ、潜在成長率を押し上げる方向にはたらいています。労働力が増えますから潜在成長率は上がります。
Q 成長実現ケースで全要素生産性ですが、足元の水準が0.4%になりました。半年前は0.6%、1年前は0.7%でした。どうしてこんなに下げたのですか。
A 17年度でGDPが下がった要因です。17年度は別な部署が作っているのですが聞いた話によれば全要素生産性は成長率のうちの企業の資本と労働という区分けになってきます。17年度は直近のデータで成長率はそんなに変わってないが労働参加が進んで労働寄与が増えました。資本はあまり変わらなかったので残りの全要素生産性が残差値として少なくなったと聞いています。
Q そうですか。それで、足元の水準が0.4%で、これが1.3%まで上昇するとなってます。前回は1.5%上昇と言ってました。
A 試算では上昇ペースを固定しています。ですから到達するとことも発射台が低くなれば到達点も低くなるということで下げました。
Q 金利も上がらないようにしてますね。長期金利ですが、2022年は0.4%になっています。半年前の予測は0.8%、1年前は1.4%でした。
A 物価が1年後ろ倒しになった。この時点で物価はまだ2%に達していないので日銀は金利を解放し始めるという時期になっていない。金利が上がり始める時期が後ろ倒しになった。その後の上がり方は前回とほぼ同じになっている。成長率自体が今回微妙に下がっている状況で、成長自体緩やかになっています。
Q 名目GDPも全体的に下方修正になっていますね。
A はいそうです。
Q これは毎年のことですね。高い成長率を打ち出しておいて後になって全体を下方修正する。そのために物価にも金利にも影響するということですね。
A そうですね。
Q 成長率が低くなれば基礎的財政収支が悪化しそうな気がするのですが。
A 税収に関しては悪化してます。
Q それなのに基礎的財政収支が改善した。ということは歳出をよほど削減したということですか。
A そうですね。社会保険関係費を中心に当初予算でかなり抑えられている。
Q 国債費がじわじわ上がっているのですが、以前は全然違う予測だった。例えば2011年に発表された国債費の予測ですが、2020年に51.9兆円、2023年に68.6兆円になるとあり、これは税収を上回り、我々の納める税金は全部国債費に回るのだなと思ってました。ところが最近の予測を見るとけた違いに減ってますね。2023年は68兆円といっていたのが、今回は23兆円に下がっている。どうなっているのでしょう。国債費は利払いと償還ですが。
A そうですね。2011年の予測では2023年の金利が5%だと言っていますね。
Q 今回の予測では金利はそんなに上がらないからということですか。
A 直近の金融政策を反映しているということです。
Q だから国債費はそんなに上がらないということですか。金利はそこそこ上がり、債務残高は増え続ける。国債費もじわじわ増え続ける。金利が暴騰すれば国債費はものすごい額になる。2028年でも金利は3.4%ですね。今は金利はほぼゼロだから国債費はおとなしい数字になっているが、3.4%まで上がれば相当行きそうな気がしますが。
A 35兆円まで行ってますね。
Q 利払いが増えますね。本当は償還の部分を除いてデータを出してもらったほうがよいのですが。
A 利払いは財政収支と基礎的財政収支の差から計算できます。
Q そうですね。増税をやるより3%成長になるように景気を刺激したほうがよいと思ってます。消費者物価が2019年度には1.1%上がると予測しています。1年前の予測は2.1%、半年前の予測は1.5%でした。消費増税によるかさ上げ分も乗せてあるのですよね。
A 乗っています。前回の夏の試算から19年度の政府経済見通しの数字なのですが消費税増税と同時に教育無償化、携帯料金の引き下げがあって物価が押し下げられることが考慮されています。
Q 結局かさ上げ部分が打ち消されますか。
A ある程度打ち消されます。
Q 消費税率2%アップですからすべての値段に2%上乗せされ2%物価が上昇するが、実際はそうではないですね。
A はい。課税対象はすべての財ではありません。
Q それを考えると消費増税のかさ上げ分はどの位になりますか。
A 政府経済見通しで19年は0.5%、20年も0.5%となります。
Q 合計で1%ですね。
A 幼児教育無償化の影響がマイナス0.3%で差し引き0.1 ~ 0.2%の物価押し上げとなります。
Q そうですが、消費者にとってみれば、実質0.1 ~ 0.2%と言ってもスーパーに行けば10%上乗せされてますから、100円のものが110円になっていると、出費を抑えなきゃと消費者は思ってしまうのです。
A マインドとしては。
Q そう、マインドとして。ですから実質0.1 ~ 0.2%という理論値が来るわけでなく毎日税金を取られている、こんなに税金を取られるのなら節約しなくてはと思う。その意味で消費増税は最悪です。消費を抑えます。安倍さんが一生懸命手当しますが、消費は落ちると思いますよ。2014年度の消費増税の際は駆け込み需要があったのですか。
A ありました。
Q 今回駆け込み需要は観測されてますか。
A 他の部署で調べてるかもしてませんが分かりません。
Q 駆け込み需要を予測してますか。
A 予測はありません。
Q ところが増税後、消費はかなり落ちると思いますよ。
A 2014年の時は結構落ちました。
Q 今回消費増税は騒いでますし、しかも計算がし易くなった。100円が110円になると言われるとこれは痛いということで節約すると思います。実質0.1 ~ 0.2%だという数字はお構いなしに節約すると思います。可処分所得が下がった、物が買えなくなったと買い物をする人がそう思って消費を控える。最悪の政策だし、何とかして欲しいと思う。止めて欲しいと思う。今回止めないのではないかと言われている。内閣府はどう思ってますか。
A 今のところ10月実施と思っています。
Q 今のタイミングですが米中貿易戦争もありますし、ブレグジットもありますし、消費増税には最悪だと思います。諸外国は減税で景気を支えようとしているのに、増税をやる。世界の景気は大丈夫なのかと思います。
A なるべく景気変動が小さくなるように対策をしております。
Q 自然災害で2018年度の名目成長率が下がったのですか。
A 政府経済見通しではそういう評価になっております。
Q 自然災害でよく言われるのは復興需要ですが、そういったものはないのですか。
A そこまで20年度以降に織り込んではいないのですが。18年度で言えば生産設備が破損して生産が停滞したことの影響を考慮に入れました。
Q 水害でしたか。
A 地震や水害です。交通網も寸断されました。
Q 日本で災害はいつも起こりますからある程度高い成長率をキープしておかないと、災害が起きたとか、世界経済がおかしくなったとかのときにどうやって下支えするのかという手段を残しておかなければならない。諸外国なら減税したり、金利を下げたり、財政出動をするのですが、日本はそういった手段を持たない。そういった状況がずっと続いている。それならお先真っ暗という気がする。
A そういったリスクに対する備えも準備が必要ですね。
Q これ以上金利は下げられないし、量的緩和ももう駄目ですね。国債はもうこれ以上のペースでは買えない。
A 日銀のバランスシートということは色んなところで言われている。
Q 出口戦略はどうなるのかと言われてますね。どうも有難うございました。頑張ってください。

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2019年1月29日 (火)

韓国軍は日本の哨戒機を怖がっていて国が守れるのか(No.333)

韓国軍艦は友軍である自衛隊の哨戒機が近づいて来たのを異常なまでに怖がっている。砲台は哨戒機の方向に向いていなかったようだから「攻撃」するつもりはなく、単に火器管制用レーダーを照射して追っ払いたかったようだ。武器を付けていない航空機を怖がるとは軍隊の体をなしていないし、これで国を守れるわけがない。哨戒機からの無線での呼びかけですらよく聞き取れなかったというお粗末な無線設備、これで軍艦艇と言えるのか。使い物にならない兵士と軍艦、彼らにはかつて他国に植民地支配された反省はないのだろうか。植民地支配を許した責任者の謝罪はあったのか、そして二度とそれを繰り返してはならないという反省はあるのか。 

彼らには二度と戦争を繰り返してはならないという不戦の誓いをしている日本人の心が分かるだろうか。例え哨戒機に韓国の軍艦艇に突っ込めと命令が下ってもだれ一人それに
従う自衛隊員はいない。国のために死んでくれと言われても、もう誰もそんな命令には従わない。哨戒機が軍艦を威嚇したと言う笑い話を誰も信じないし、そんな証拠写真はないし軍艦に近づくことはむしろ哨戒機にとって極めて危険な命がけの行為であり、平和な時代、そんな危険な行為を敢えてする日本人はどこにもいないし何のメリットもない。今の日本、これだけ平和が続き、戦争の悲惨さをよく知っているから、「戦争に出かけ命をかけて国のために戦うつもりはあるか」と聞かれれば、ほぼ全員がノーと答える。

哨戒機が低く飛びすぎているというのであれば、高度は何メーター以上にしてくれと日本に電話を一本入れればよいだけであり、日本側も韓国軍とその程度の問題で世論戦までして対立しなければならない理由はない。監視活動にせよ、最近のカメラは解像度が上がっており、少々距離があっても鮮明に撮影できるのであり近づかなければならない理由はない。

韓国は徴用工問題で賠償を求める。1965年に調印された日韓基本条約で総額8憶ドルの援助資金と引き換えに、韓国側は一切の請求権を放棄した。それから50年以上経った今、徴用工問題で賠償を求めてきている。これは第一次世界大戦のドイツに対する賠償問題と共通点がある。敗戦国ドイツに対しフランスなどの連合国はとてつもなく高額の賠償金の支払いを求めた。それにドイツ国民は激しく反発し、結果としてヒットラーが率いるナチス党の台頭を許し、第二次世界大戦へと突入することとなった。この反省から第二次世界大戦後は、賠償金を求めるより、ヨーロッパの国家連合体をつくることのほうが平和維持には重要だと気付き、それが奏功し戦後は平和が維持されている。

ドイツに対して内心賠償を求めたい国は多数あるに違いない。例えばレニングラード包囲戦ではソ連政府の発表では67万人、一説によれば100万人以上の市民が死亡した。これは広島の原爆で死亡したとされる9万 ~ 16万千人をはるかに上回る。しかし、これらの国が今でもドイツに賠償を求め続けているわけではない。ヨーロッパ諸国が今まで戦後の賠償問題をずっと引きずっていたら、中東のように戦争は果てしなく続いていただろうし、今の平和と繁栄を享受できていなかっただろう。韓国は賠償金の問題に関しては欧州に学ぶべきだ。

韓国は北朝鮮と結託して反日活動を活発化させているのだろうが、北は助けにならない。核を放棄しないまま北と統一することになれば、韓国も北朝鮮と同じ経済制裁を国際社会から受けることとなり韓国経済はひとたまりもない。トランプは独裁者になりたいのか、金正恩と意気投合していて金正恩には強いことを言えないようだ。金正恩はそれを利用して核を保持したまま経済制裁を解除させたいのだろう。今こそトランプは金正恩に「核を直ちに放棄しなければ直ちに武力攻撃をする」と告げるべき時だ。金正恩にはもはや「攻撃するならソウルを火の海にするぞ」という人質作戦はできず、核を放棄するしかないのだ。そうなればトランプには念願のノーベル平和賞も視野に入ってくる。しかし現実は元側近のストーン容疑者の訴追でロシア疑惑が深まりいよいよトランプ劇場も最終幕が近づいてきている。

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