経済・政治・国際

2018年2月11日 (日)

ハイパーインフレ以上に怖い長期デフレ(No.290)

日本の借金が膨れあがり、やがてハイパーインフレになると言う人がいる。しかしハイパーインフレに共通するのは極端な物不足である。現在の日本は物余りの状態であり、物不足になりそうもない。需要が極端に伸びて、スーパーもデパートも百円ショップもコンビニも棚から物が消え、街の至る所で食料品を求める長い列ができるような状況になるわけがない。そもそもそんなに買いまくったら家が物で一杯になって寝る場所もなくなるだろう。しかも物不足になれば外国からどっと輸入品が入ってくるし、中国、米国などが総力を挙げても供給が追いつかないほど日本の需要が伸びるなど考えられない。
ハイパーインフレを恐れる余り、十分な景気対策ができず、デフレ脱却ができなくなっている。日本人はもっとハイパーインフレについて知る必要がある。ベネズエラやジンバブエなどのハイパーインフレは政府自ら自国産業を崩壊させ供給力欠如に陥り極端な物不足でありながら、輸入も困難な状況に陥らせたために生じている。ドイツのハイパーインフレについて詳しく説明してみよう。
第一次世界大戦に敗北したドイツは連合国と1919年ヴェルサイユ条約に調印した。ドイツの支払う賠償金が1320億金マルクと決定されたが、なんとこれはドイツの税収の十数年分に相当した。毎年の支払額も46億金マルク(歳入の約7割)という莫大なものだった。イギリスやフランスなどの連合国は戦争に勝ったものの戦争で莫大な被害を被っており、その費用をすべてドイツに支払わせるべきだと主張し、このような巨額の賠償金の請求となった。しかしながら、このような巨額の賠償金はドイツ経済を破壊し、ヒットラーの台頭を許したという意味で、連合国にとって害あって益なしという結果になってしまった。
そもそも、賠償金というものは多ければ多いほどよいというものではない。1320億マルクと言っても、例えば1億マルク紙幣を1320枚刷れば返済可能というものではなかった。賠償金も正貨(金貨)で払わなければならなかったからだ。そういう意味では、お金を刷っても意味はなかった。賠償金だけでなく現物納付の義務もあった。5000両の機関車、15万両の列車、5千台の貨物自動車、4万頭の牛、12万匹の羊などだが、一般社会の賠償請求とは話しが全然違う。これらをドイツが生産してフランスが輸入しようとすると、フランスの生産者には大打撃になってしまい、フランスの生産者が反対するなどして、物納による賠償も進まなかった。
賠償金にしても、もしこの規模の賠償金の支払いが実現するとしたら、ドイツ経済が大発展し、近隣諸国がドイツの工業製品を輸入して外貨を稼いだ場合だから、そうなれば近隣諸国の工業は破滅する。そのことを予知したケインズは、この賠償額に強く反対したが押し切られた。
当然のことながら、賠償金の支払いは滞るようになった。それに怒ったフランスとベルギーは軍を派遣し、ドイツでも有数の工業地帯であるルール地帯を占領してしまった。ただでさえ戦争で生産応力が落ちているドイツで、ルール工業地帯まで没収されたわけで、失業者は町にあふれ、物不足でインフレとなった。ここまでくるとフランス軍はやり放題で、帝国銀行が所有していた128億マルクの金を略奪し、ミュルハイム国立銀行支店に保管されていた未完成の紙幣をフランス軍が奪い、これを完成紙幣にして流通させた。
これに対してドイツ人は反発し、一切の協力を拒む『消極的抵抗』を行った。鉄道を破壊し、フランス軍の列車を脱線させ、船は運河で沈没させた。占領地域の労働者はストライキを行ったがドイツ政府は政府短期証券をライヒスバンクで割り引かせでストライキ中の労働者の補償も行った。

ライヒスバンク自体が賠償問題の解決の一貫と考えられていたから連合国により国際管理されていた。その審査機関である評議員会の14名のうち、半数の7名は外国人(英国、フランス、イタリア、ベルギー、米国、オランダ、スイスから各1名)が任命され、発券業務の監督機関としての発券委員も外国人評議員が任命された。そしてこのライヒスバンクが政府から独立し、お金を刷りまくってハイパーインフレになった。このような状況は、アメリカにおいて通貨強奪したロス・チャイルド等の国際銀行家の手口を連想させる。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/no22-c6e3.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/no-d68c.html
コーヒー一杯飲むのに、トランク一杯分の紙幣が必要だったとか、薪を買うのにリヤカー一杯の紙幣が必要だったが、それより紙幣を燃やした方が安くついたとか、笑い話のような話しが伝わっている。1923年1月には250マルクであったパンの値段が1923年12月には3990億円にまで値上がりした。
ライヒスバンクはドイツ政府が発行した国債を大量に買った。それだけでなく、私企業の手形の割引も行った。例えば、自分の会社で1億マルクの手形を勝手に作ってライヒスバンクに持って行けば、現金にしてもらえるのだ。こんなことをしていれば、ハイパーインフレになるのは当たり前だろう。金融業の得意なユダヤ人がここぞとばかり、混乱に乗じて荒稼ぎをしているのを見て、ヒットラーがユダヤ人に反感を持つようになったと言われている。当時はマルクをライヒスバンクから借りる事ができれば、インフレで借金はほとんど無価値になってしまうのである。国際銀行家がライヒスバンクから巨額のマルクを借り、そのマルクでドイツ国内で価値のあるものを買いまくったためにインフレが加速した可能性がある。1月に100倍以上のインフレになってくると紙幣が足りなくなって企業や地方自治体まで紙幣を刷りまくるようになり、紙幣が街にあふれるようになった。下の写真はある銀行の窓口である。企業の経理係は従業員の日当払いに必要な紙幣を受け取るため、大きな柳行李(ヤナギコウリ)を持って連日銀行へ押しかけた。

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このすさまじいドイツのインフレも、あっという間に収束してしまう。ドイツ・レンテン銀行が設立され、国内の土地を担保として1923年11月15日にレンテン・マルクを発行し、1レンテン・マルク=1兆マルクのデノミが実行された。インフレを収束させたのは、政府が財政健全化を発表したからである。レンテン・マルクの発行限度が320億マルク、政府信用限度が120億マルクとされた。またドイツ政府は通貨発行でファイナンスしていた財政政策を転換し、10月27日には政府雇用者数25%削減、臨時雇用者の解雇、65歳以上の強制退職を実施した。この政府の発表により国民が政府を信頼し、インフレは瞬時に止まった。これをレンテン・マルクの奇跡と呼んでいる。次の図は藤木裕(金融研究2000.6)から引用したものである。

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興味深いのは、インフレは政府のアナウンスで一気に収束したのだが、実際は政府はその後もしばらくお金を刷り続けているということがこの図から分かることだ。アナウンス効果が如何に絶大かということである。
確かに凄まじいインフレではあったが、生産活動へのダメージはそれほどでもない。下図は『現代ドイツ社会経済史』から引用したものである。
国民一人当たりの生産量

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このグラフより一人当たりの生産量は1923年のハイパーインフレ時と1932年の世界大恐慌の影響による落ち込みの2回生産の落ち込みがあったかこが分かる。ハイパーインフレによる落ち込みは小さく、しかもこれはルール地方の占領に対するドイツ人のストライキを含む抵抗によるものであり、1920年からの20年という長い目で見れば生産は順調に拡大していったことが分かる。デフレが続き失われた20年と言われる期間で生産が停滞した日本が受けたダメージはこれよりはるかに大きいことが分かる。
ハイパーインフレ時に名目賃金は激しく上昇したにも拘わらず実質賃金は大きな変化はなかったというのが以下の図から分かる。
       出所;『ドイツ資本主義』小原四郎著

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デフレ脱却ができない日本では実質賃金は下がり続けている。
次に失業者の推移を示した。

出所:現代ドイツ社会経済史

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失業率を3つの区間に分けて考えよう。1919年から1924年は敗戦の後インフレが進んでいた時期。紙幣の大量発行もあり『積極財政』と言える。敗戦で戦地から多数の兵士が引き揚げてきたが、時短労働も取り入れ失業者を低く抑えている。ただし1923年9月にそれを解除したこともあり一時的に失業者が増えた。1924年から1932年の間は緊縮財政で物価は安定したが、世界大恐慌の余波を受けたこともあり失業者は激増している。1933年にヒットラーが政権を執ると超積極財政が始まり、物価は安定させたまま失業者は激減、GDPは拡大していった。
現在の日本は積極財政を過度に恐れている。デフレはタンス預金が増加しお金が動かず経済が停滞する。消費増税は貧困世帯を苦しめ、お金は大企業の内部留保や海外投資に向かう。国の借金が増えることを恐れ、増税・歳出削減が進めば日本はどんどん貧乏になるばかりだ。

 

次にベネズエラのハイパーインフレについて簡単に説明する。

 

ベネズエラは原油確認埋蔵量は世界一であり世界全体の2割近い。チャベス前大統領による 『21世紀型社会主義』が失敗の始まりだった。石油収入を貧困層の医療や教育などに還元し、全国民を豊かにしようとした。物価を抑えるために、生産者に価格を無理に下げさせた。その結果経営が成り立たなくなり、 国内の製造業が衰退し、輸入品に頼る経済になった。マドゥーロ氏が政権を引き継いだ後、原油価格が半分以下に急落し外貨不足で食料品や生活必需品が買えなくなり、物不足がハイパーインフレを引き起こした。2015年の選挙では野党に敗北したが議会の権限を停止した。国民は国外へ逃亡している。

政府が大量の紙幣を刷っているので下図のようにハイパーインフレが進んでいる。

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  国営石油公社PDVSAは非効率な投資、納入業者への支払いの遅れ、米国の経済制裁、給与への不満などで従業員が離職し大きな打撃を受けていて生産が落ち込み、外貨が稼げない。独占的な輸入業者が不当な輸入品価格のつり上げを行っているために、輸入品の価格が異常に高くなっている。

最後にジンバブエのハイパーインフレを説明する。
もともとはローデシアという豊かな国で少数派の白人が政治の実権を握っていた。
ローデシア紛争の後、1980年ジンバブエ共和国が成立し黒人大統領が誕生し
「植民地時代に強奪された土地資産を黒人に委譲せよ」という法律が成立。大半の高い技術を持つ白人が国外へ逃亡し農業技術の低下と干ばつで、食糧危機に陥った。
また「外資系企業は保有株式の過半数を譲渡せよ」という法律が成立し、外国企業は国外へ逃亡し、これにより物不足になり物の値段が高騰した。
「物資は安く売らなくてはならない」という法律が成立し、企業は利益が出なくなって次々と倒産。失業者が激増した。失業者は物資の強奪を始め無法地帯になった。そしてインフレが進み、高額紙幣が量産された。

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結論としてはベネズエラもジンバブエも同じように政府が自国の産業を潰す政策を行っているために、供給不足になり物不足が深刻化しハイパーインフレに陥っている。日本の政治家がここまで愚かだとは思えないという理由で日本ではこのようなハイパーインフレになるわけがないと結論できる。しかしデフレ脱却を目指しながら増税・歳出削減という重大な間違いを犯しており、国の経済を衰退させている。一刻も早く目を覚まして欲しいと願う。

 

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2018年2月 5日 (月)

国会は森友問題よりもっと国民生活に影響の大きい問題を議論せよ(No.289)

筆者は先週風邪で寝込んで、仕方なく国会論戦を見てた。相変わらず森友問題をやっていた。1日国会を開くのに3億円かかるという国会で本当にそれに相応しい議論がなされているのだろうか。評価額9億5600万円から地中のゴミ撤去費用など約8億円を差し引いた1億3400万円で学園に売却したのが森友問題とされている。しかし森友学園は開園に失敗し、現在民事再生手続き中であり契約に基づいて国は売却した土地を買い戻したとのこと。森友学園前理事長の籠池泰典被告と妻の諄子被告は補助金詐取などの容疑で昨年7月末に逮捕されている。昭恵夫人が籠池泰典前理事長に激励の電話をしたとする音声データが衆議院予算委員会に提出されたとのこと。詐欺容疑の犯人の発言の真偽をいちいち予算委員会で検討すべきなのか。国会はその維持のために巨額の税金を使っているのだから、その審議から生じる結果でそれに見合うだけ国民に利益がもたらされるかも示すべきだ。8億円の値引き分が戻ってくるというわけではない。取引の実態を明らかにすれば安倍政権が倒れるという話でもない。国民生活にも国民の安全にも全く関係無い議論を巨額の税金を使って行っているとしか思えない。

スパコン助成金詐欺事件も問題になっている。詐欺はよくないのは当然なのだが、齋藤元章容疑者はスーパーコンピューター(スパコン)開発の先頭を走る起業家である。2003年には日本人として初めて、米国コンピューター業界栄誉賞「Computer World Honors」を医療部門で受賞したしPEZY社とグループ会社の活動を通じて、スーパーコンピューター開発において天才的な手腕を持つ人物として注目を集めていた。スーパーコンピューター開発がこれからの日本に計り知れないほどの利益をもたらすことを考えれば、彼の行った少額の詐欺だけに目を奪われるのでなく、むしろ彼に十分な研究資金を国が提供し、同時に資金が不正に使われないように厳重な監視態勢をも国が提供するという可能性は検討できないか。

やはり国会で最も議論して頂きたい事は、世界の中で際立って低い成長率の日本をどうしていくかということだ。失われた20年で、世界の中で日本だけが成長していないのは、デフレが原因だ。1997年度に533兆円であったGDPだが、2017年度は550兆円にしかなっていない。平均成長率はなんと0.2%で世界最低である。デフレ脱却など簡単だ。1997年から財政拡大で成長戦略を行って名目3%成長を続けたとしよう。2017年度には80%増の963兆円にも達し、平均所得も2倍近くなっていて、国の借金も200%をはるかに下回る水準となり、成長する日本に国民も将来不安を持つ人は少なかったはずだ。

名目3%成長など日本には無理だと主張する人がいるかもしれない。しかし、財政を拡大すれば必ずできる。様々な形で大量の資金を国民に流せば、必ず可処分所得が上がり、消費・需要が増えGDPが拡大する。それでも全くGDP拡大はあり得ないのではないかと心配する人がいれば、政府がお金を刷って税金をどんどん下げる場合を考えれば良い。それでも全く消費が増えなかったとしても、国民はしっかり老後の蓄えができて幸せになることは間違いない。GDPが十分増えなくても税金が全部タダであれば居心地は悪くない。国の借金が増えて将来世代へのツケが増えると心配する人がいるかもしれない。GDPが963兆円になったとき、国の借金が2000兆円を超えるというようなことはあり得ない。これはマクロ経済モデルで計算すればすぐ分かることだ。

減税・歳出拡大をするだけで、失われた20年から脱却できる。国会議員には、国をどうやって豊かにすることができるのかをしっかり議論して頂きたい。

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2018年1月28日 (日)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)が新しい試算を発表した(No.288)

2018年1月23日に内閣府より『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。成長率予測が高すぎると経済財政諮問会議から批判され、全要素生産性を下げて成長率を下げたようである。どれだけ下げたかは図1で分かる。

図1

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黒の実線が今までの名目GDP の実績であり、点線が今回の予測である。ほんの僅かの下げだと分かる。名目GDPは2027年度には757.9兆円にまで増大する予測だ。この図で明らかなように、3%成長するのだと政府が言っているからそれに忖度する義務があり、それ以外の結果を内閣府計量分析室は出せない。その結果3%成長の試算を出すしかないのだ。名目GDPは2001年度518兆円だったのだから、その後ずっと3%成長を続けていたら2018年度には857兆円になっていたはずだ。世界の中ではこれでも低すぎるくらいの成長率だから、如何に日本経済が停滞しているかが分かる。

成長率を高めるには減税や歳出拡大をすればよいだけだ。そうすれば基礎的財政収支が悪化するから反対する人がいる。今回の試算で基礎的財政収支がどうなるかを示したのが図2だ。2026年まで赤字は続く。しかし赤字でも債務のGDP比(右目盛り)は下がり続けるというのが試算結果である。

図2

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ここから重要な結果が導かれる。債務のGDP比は基礎的財政収支が赤字であろうと黒字であろうと関係無く下がり続けるということだ。逆に債務残高は基礎的財政収支が赤字でも黒字でも増え続ける。どこの国でも同じだ。日本以外は債務残高の増大をそれほど気にしていない。なぜなら名目GDPも同時に増え、債務残高のGDP比はそれほど増えないからである。ということは基礎的財政収支など財政健全化には関係ない。債務のGDP比を下げることだけ考えれば良い。

図3は長期金利の推移と内閣府の予測との比較である。実績は黒い実線、今回の予測は黒い点線で示してある。それと共に2002年以降、各年の試算で予測された金利も示した。

図3

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笑ってしまうのは毎年金利が急騰すると予測し、実際はジリジリ下がり続け遂にゼロにまで下落したということだ。この試算が如何に馬鹿馬鹿しいものか、もしこんな失敗を気象庁がやったらどうなるだろう。天気予報で「明日から1週間程度は急激に気温が上がり続けるでしょう」と予報を出し同じ予報が17日間も連続で出されたとする。実際はこの17日間ジリジリ気温は下がり続けたら国民は何と言うだろう。どうしてこんな馬鹿な予報を出し続けるのかと問うと「総理大臣が気温が上がって欲しいと願っているからその願いに添うような予測しか出せないのです」と答える。各省庁はこの予測通りになると仮定して政策を策定し、マスコミもこの予測が正しいとして論評する。

これが気象庁の予報であれば、税金を使ってこんな予報など出さなくて良いと言われるに違いない。しかし経済予測の場合、国民もマスコミもこの試算が何か意味があるものと思い込んでしまい、緊縮財政が必要だと勘違いし20年もの間デフレから抜け出せなくなってしまい経済を衰退させてしまった。このままでは日本はどんどん貧乏になる一方だ。財政健全化と景気回復を同時に実現する方法を内閣府では示している。次のサイトの6頁を見て頂きたい。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
公共投資を5兆円増やせば債務のGDP比は1.65%PTだけ減ると書いてある。これは公共投資だけに限らず、あらゆる政府支出について言える。内閣府にこのことを言うと、5年後には逆に債務のGDP比は増えると言う。図1を見て頂きたい。内閣府の5年後の予測は全く当たらない。信頼できるとすれば1年後だ。1年後にまた同じ検討をすればまた同じ結論に達し、それを5年間続ければよいだけだ。つまり減税・歳出拡大をすれば景気が回復するだけでなく財政も健全化する。

今からでも遅くない。減税・財政拡大をして消費を拡大し、デフレ脱却、経済活性化を実現し豊かな国の再建を始めようではないか。

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2018年1月26日 (金)

内閣府試算の詳細を内閣府に説明してもらいました。(No.287)

2018年1月23日に内閣府より『中長期の経済財政に関する試算』が発表されました。これに関して更に詳しい内容を内閣府の方に説明して頂きました。

Q 来年の消費増税をした場合としない場合の比較の試算は出しているか。
A 出していない。法律で消費税は上げることが決まっているから。
Q 2014年の5%から8%への引き上げの際は出した。
A 当時は引き上げが決まっていたわけでは無かったから。
Q 今回の試算で実質成長率は
2017  1.9%
2018  1.8%
2019  1.4%
2020  1.5%
というように、消費増税を行った結果成長率は下がっている。消費増税による消費の落ち込みによるインパクトか。
A 17年度の補正予算が18年度にかけて執行される。その先補正予算が無くなるので公需の剥落という面がある。消費税の影響は大きくないとは思うが切り離すことは難しいので何%分と示すことは難しい。
Q 今後補正予算は無いということは決まっているのか。
A 無いこともあることも決まっていない。18年度は当初予算しかないので無いとして計算した。
Q 景気を落ち込ませないように補正を組もうという動きはありますね。
A 我々には分かりかねる。18年度の当初予算で続いていくという絵を置いている。
Q 半年前の試算の実質GDPは
2017  1.5%
2018  1.4%
2019  1.8%
2020  1.9%
こちらは消費増税をしたら実質成長率は上がってしまった。
A 17,18年度に関しては政府経済見通しを使っていて低く出ていたが、17年度の7-9期の数字が出てきて上方修正されたから今回の試算でもそれが反映された。我々は「見通し」からデータをもらっているだけ。19、20に関しては、潜在成長率が高すぎるという御指摘を頂いた関係で下げた。その関係で成長率が下がった。成長率は全体的に下がっている。
Q 今後潜在成長率はずっと下がると仮定したのか。
A 上がり方を少し弱めるということです。夏の試算だと2.4%まで上がっていくとしていたが、今回は2%に留まるとしている。
Q 潜在成長率を変えればそんなに大きく実質成長率が変わるのか。
A はい。大きく変わります。
Q 2.4から2.0に下げたのは未来永劫下がると言うことか。
A 試算期間ではそう仮定している。一定の前提を置いた場合どうなるかを示した。
Q 潜在成長率を下げる客観的な理由はあったのか。
A 潜在成長率を決めるものとして資本、労働、全要素生産性の3要素がある。全要素生産性は経済財政諮問会議の議論に使って頂くために出しているが、経済財政諮問会議から上がり方が急では無いかというご意見を去年頂いた。そこで今回見直した。
Q 全要素生産性を下げたということは、過去のデータがいつも上振れしているということ、なかなか3%成長にはいかない。過去20年間遡って考えて内閣府では3%いくんだということを想定して作っているが実際はとてもそこまで行っていない。20年間名目GDPはあまり変わっていない。そういうことを考えてもっと全要素生産性を抑えた方がよいということだったのか。今まで全要素生産性をサバ読んでた?
A 経済財政諮問会議の意見に従う。今経済がどうであり、これからどうなる、その場合これからの財政状態をどうするというためのものですので、諮問会議の議論を踏まえて見直していくと言うことは結構あるということです。
Q 過去のデータを組み入れてということはしないのか。
A もともと過去のデータを組み入れて、例えば物価ですとバブル前の生産性に戻りますというような置き方をしたんですが、それぞれ過去のデータを参照していたということですが、参照方法を少し変えたということです。
Q 戻りますといいながら根拠なしに戻りますと言ってますね。しかしずっと戻らなかったですよね。戻らないんだからもう戻らないよと言った方が、ほとんど成長しないと言ったほうが当たっていたんですけどね。本当はね。
A まあ、当たっている部分と当たっていない部分はあるんですけど。
Q 当たってないですよ。3%成長はなかなかしなかった。
A 名目3%成長は ・・・ 2015年は名目3%成長したけど
Q 15年は原油価格が下がったから。原油価格の下落でGDPが押し上げられてますよね。
A その通りです。
Q あれはたまたまであってあれを持ち出すのはちょっとまずいと思う。
A そうです。
Q あの調子で今後も原油価格は下がりますか。
A 下がらないですね。原油価格がゼロになっちゃいます。おっしゃる通りでございます。
Q ありえないんで、あれはたまたまラッキーなのであって、アベノミクスの成果とは言えない。
A そういう面はあるかもしれない。
Q そういう外的要因がないと仮定すれば3%成長しないと客観的には見える。
A それは将来への目指すべき姿、政策効果が出ればと言うことで、成長実現ケースと今回名前をちょっと変えてますけど、昔は経済再生ケースと言ってました。3%成長するというケースです。こちらはそれを目指して政策をやっていく、それが発現した場合というケースいうことでして、もう一つ成長しない、全く成長しないというわけではないのですが、足下程度続きますというベースラインケースもお示ししておりまして、隠し続けたということではない。
Q まあ、2つ出してますが、自分はこう思うというもの、例えば気象庁の予測はあたっている訳です。
A 気象庁も幅を持って見てますけど。
Q 気象庁はいちばんありそうなケースだけを示しているわけですね。
A まあ、そうですかね。
Q 最大限こうなりそうだという予測を出すのも必要なのではないか。こうなりたいなという願望も出してもよいけど、最大限正しい予測も出して欲しい。
A 予測という品質では必ずしもない。
Q そう見えます。
A ええ、見えちゃえば仕方ないですけど。
Q 政府も各省庁もこれをベースに政策を作っているでしょう。だから将来こうなるという予測が欲しいですね。昨日の読売新聞にももっと信頼できる予測はできないのかと社説にありました。こうなるという信頼できる予測があれば安心して消費ができる。20年間、3%成長したかといえば全然3%成長していない。零点何%という低い成長率であるのに、毎回3%成長だという勇ましいことを言ってきた。金利を見てもすぐ上がるんだと言いながらずっと上がらない。今回はだいぶ修正されている。予想が外れてる。
A 予想しているわけでは無い。
Q 予想しなければダメです。政府の願望はこうだと言ってもらったって、それは今まで願望が実現してませんから。実現しない願望を何度言ってもしょうがない。
A まあ、そうでしょうけど。
Q 願望じゃあなくて見込みも出して欲しい。
A なるほど。
Q 願望ケースと見込みケースを出して下さい。
A 願望ケースと見込みケースですか。なるほど。
Q そうすれば、政府はどうやれば願望に近づくか分かるから真剣に考えると思うんです。今のように出してしまうと何もしなくても願望が実現するのかと誤解してしまいます。
A 御指摘有り難うございます。
Q ところで基礎的財政収支は半年前から悪化しているように見えるのですがなぜですか。
A 新しい経済パッケージで消費税を19年に10%に引き上げるときに人造り革命例えば幼児教育の無償化とかの政策になります。そのための財源として消費税増収分の一部を充てましょうということが決まってます。今回それを織り込みまして19年度以降歳出が出て行くようなことになっていて歳出が増えている。あとは成長率が下がると税収が少し下がる。その分で下げている分というのはあります。この2点になると思います。
Q 2018年に限ると、1.4%から1.8%に成長率は上がっている。人造り革命も関係無い。
A 18年度に関しましては17年度の補正予算が編成されて、執行のタイミングで、公共工事などはすぐにはなかなかできない。3か月で物を作れと言われてもなかなかできない。翌年度に執行される。歳出はいつかということ、成長率は上がっていてもそれほど工事は進んでいない。その点PBは成長がよくなっても悪化するということが起きている。
潜在成長率が下がれば成長率も下がり税収も下がる。
Q 基礎的財政収支の黒字化目標は何回も延期されている。最初は小泉さんが2011年度に黒字化すると言っていたが実際は2011年度は大赤字だった。それを2020年度にまで延期した。それも達成できないことが明らかになったので2025年度に延期し、それも達成できないから今度は2027年度だというんですね。
A 目標自体は2011年度と2020年度になっている。今回消費税の使途変更もあり2020年度は難しいですね、だから次の目標を考えて下さいということになっているのが事実です。試算での黒字化と黒字化目標とは必ずしも一致しない。
Q ただ試算結果は2027年度でなければ黒字化しないということですね。
A 歳出は、例えば公共事業は物価で伸びますとか、医療費・介護費とかは物価と共に年寄りが増えると医療費が上がるといった効果を織り込んだざっくりした試算になっている。我々は歳出自然体と呼んでいる。歳出改革を今進めている。その効果は入っていない。
Q 歳出改革と言いますが、歳出を削減すればするほど財政は健全化するのかという点に疑問に思っている。歳出改革と称して歳出削減をするといつまで経ってもデフレから脱却できない。そうなると税収も増えないしGDPは伸びないから債務のGDP比も下がらない。デフレ脱却をしようと言っているのに歳出を削減するのは本末転倒ではないかという気がする。
A 歳出を減らすことによってGDPは下がる。歳出改革とは単に減らしましょうということではない。
Q 減らすこともやりますね。減らせば借金が減るのではないかと誤解している人がいる。GDP比で減るのかというとなかなかそうはいかない。以前は乗数としてそれを出していた。公共事業を減らせばGDPも減り、債務のGDP比は逆に増える。
A そういう乗数は出していなかったと思います。
Q 出しています。2010年に出しています。
A 確かに初年度は債務のGDP比は増えます。5年目を見ると減っている。GDPを減らしても民需がカバーして戻ってくる。
Q 内閣府の試算をみれば5年後の予測など今まで当たったことがない。まるでデタラメな結果だ。ということを考えれば1年づつ計算したほうがよい。1年間だけ考えれば間違いなく公共投資を増やした方が債務のGDP比は減る。1年後にまた乗数を計算し直してみるとやはり公共投資を増やした方が債務のGDP比は減ると分かる。
A それは同じ結果になると思いますよ。
Q 同じにはなりません。毎年新しく計算すれば公共投資を増やしたままにしておいたほうが債務のGDP比は減っているという結果になります。乗数というのは毎年そんなに大きく変わりません。内閣府の文書にも書いてあります。長期予報は当たらないと。気象庁でもそうです。
債務のGDP比は今後下がって行くというのが内閣府の予想ですね。
A はい。
Q 基礎的財政収支は赤字が続いていくが、債務のGDP比は下がって行くのだからもう基礎的財政収支は関係無いのではないか。今後基礎的財政収支は無視していいのではないか。
A そういう御指摘ですね。どうでしょう。債務残高は増えますね。
Q はい。でもGDPのほうがもっと増えます。
A 金利はどうでしょう。
Q 金利は抑えることになったのでしょう。
A はい。でもそれは2%のインフレ率になるまでです。
Q 金利は最大限抑える。そうすると基礎的財政収支は気にしなくて良い。イケイケドンドンで財政を拡大せよ。何かまずいですか。デフレ脱却が簡単に実現できます。
A 金利ゼロですか。金利は基本的には市場で決まっていく。
Q でも日銀はゼロ程度に金利を誘導すると黒田総裁は言っておられる。
A それもいつまでもというわけではない。
Q 当分の間です。実際今回の試算では0%程度に下げることにしたのですね。2009年度まで0%、2020年度に0.4%というようにがんばるのですね。
A がんばるというか物価が上がってこないのでがんばらざるを得ないということですね。
 インフレ率が2%になるまでは金利を抑えるようにしてますが、それ以降はモデルで金利を決めている。日銀が使っている金利決定ルールに従うというようにしている。
Q デフレ脱却がずっと達成されない。小泉さんのときからずっとデフレ脱却を言ってましたね。デフレ脱却が願望に終わって夢が実現しない。だからここで一気にやってしまう。それをやらず、増税や歳出削減をやる。ぐずぐずやってたらずっと続くわけでしょう。なかなか可処分所得が上がらない。だから消費が伸びず本格的な景気回復ができない。これをずっと続けている。そろそろこのへんで終止符を打ったらどうですか。
A 試算は政府の方針を続けたらこうなりますというもので、各論というか何をすればこうなりますということはお答えできないということになります。
Q どういう政策をすればよいかを教えるのがこの試算の役割だと思う。政府の今の政策を続けていたらいつまでたってもデフレ脱却はできない。ではどうすればよいのかというときに、こうしたほうがよい方向に向かいますよというのを示す必要があると思います。新しい乗数をだしたらどうですか。乗数を隠しているのは問題ですよ。狂った羅針盤と言われているので、それを修理して正しい羅針盤を出して欲しいです。
A はい。検討しています。
Q 消費増税の税収の一部を歳出に使うと言っているのでその分が拡大するのかなと思ったがそうなっていない。
A 2020年度の社会保障関係費に入っている。
Q 歳出は前回に比べ減らす傾向がある。
A 予算がこうだったからこうなったということ。
Q 潜在成長率を下げた分、全部が下がったということか。歳出も歳入も
A まあそうですね。歳出は下がったし歳入は下がった。PBは悪くなった。
  ご意見のほうは承りました。
Q 乗数は出して欲しい。もう随分だしていない。
A はい。検討はしています。

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2018年1月22日 (月)

デフレ下の緊縮財政政策は間違いだった(No.286)

日経平均は1989年12月29日に38915円の高値をつけたが、その後暴落し一時6994円まで下がった。最近やっと23000円台にまで回復したが、これでは失われた30年だ。名目GDPもこの20年間ほとんど変わっていない。政府はアベノミクスの成果を強調するが、経済予測の41人の専門家(機関)による2019年度実質成長率の平均が僅か0.77%でしかなく、世界中で際立って低い成長率だ。全く情けない。

 

一方アメリカ経済は好調で、経済音痴で構造改悪とも言える保護主義を唱えているトランプ大統領だが、大規模減税など積極財政で経済を刺激し高成長率であり、株価も史上最高を次々更新している。日本でも大規模減税や歳出拡大をすれば、同じように好景気になるし、インフレ目標達成、デフレ脱却、賃金上昇、税収増大は簡単に実現できる。なぜやらないかと言えば、国の借金におびえ、間違った経済理論が蔓延してしまっているからである。間違いが証明された例は数多くあり列挙してみよう。

 

①クラウディングアウト説:政府がカネを使うと民間の資金を奪い金利が上昇すると言われていた。日銀がお金を刷って国債を買えばよいだけで、今は日銀も政府も金利は制御可能であると認めているから明かに間違いだった。

②日銀券ルール:2001年に日銀券ルールなるものが設定された。これは日銀が保有する長期国債の残高を 日本銀行券の流通残高以下に収めるという政策上の自主ルールであり世界的に例が無い。日銀がお金を刷って国債を買う。これがある限度を超えて行うとハイパーインフレになるのではないか心配してこのような規則をつくって守ってきた。しかし、黒田日銀総裁はこのルールを停止し大量の国債買い入れを始めた。2018年現在、このルールの限度額を大きく超して日銀は国債を購入したが、ハイパーインフレどころかインフレ率1%にも達していない。明かに間違った政策だったことが証明された。

③2011年3月2日当時の日銀総裁の白川氏の財政金融委員会で国債を大量に日銀が買うとハイパーインフレになると発言したが、間違いだったことが証明されている。

④2013年9月6日黒田日銀総裁は増税を先送りして金利が急騰するリスクについて「万が一そういうことが起こった場合の対応は限られる」と発言、「どえらいリスクになる。」と言ったが、これも間違いだった。

⑤1982年、鈴木善幸総理は「財政非常事態宣言」を出したが、国の借金は現在の10分の1程度で全く非常事態ではなくこの非常事態宣言は間違いだった。

 

日本人は通貨増発を過度に恐れ、国の借金が怖くてたまらない。上記の①~⑤は明確に間違いだったことは誰の目にも明かだ。冷静に考えれば恐れるものは何もなくて、国の借金も現在日銀がお金を大規模に刷って一気に返済しているところだ。後は、国債をもっと発行し減税・財政拡大をすれば、経済は成長軌道に戻りかつての繁栄していた頃の日本が戻ってくるのだが、借金恐怖症がそれを許さない。国の財政を家計に例える話がいつも出てくる。日銀がお金を刷って借金返済を行っている事はその話の中には絶対に出てこない。中学公民の教科書にすら国債は国の借金だからいつか返さなければならないと教えている。国債を政府が発行し日銀がお金を刷って市中から国債を購入することは、通貨を増やす役割があり、それは経済を拡大するための成長通貨を供給するという役割もあるのだということも教えるべきだ。

 

財政健全化をいう言葉で日本経済を20年間も衰退させて来た。今こそ積極財政政策に転換し、成長する経済を取り戻すべきではないか。

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2018年1月 9日 (火)

三橋貴明逮捕の報道は悪質で異常(No.285)

三橋氏逮捕の報道が大げさに新聞各紙、テレビ等で一斉に流れた。しかし実態はどこにもある夫婦喧嘩にすぎず、喧嘩でカッとなって警察に電話し被害届を出したが、その後妻はそれを取り下げ一件落着しただけ。あのような大げさな報道は相応しくない。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」ということわざがある。何でも食う犬でさえ見向きもしないという意から、夫婦間の細かい内情などは 知りがたいものだし、すぐに元に戻るようなことなのだから、ほうっておけばよいということ のたとえだ。

夫婦喧嘩は通常夫婦で解決すべきことであり、警察も外部に漏らしてはいけないはずだ。ましてやこのように日本中に大げさなニュースとして報道されるべきものではない。あらゆる夫婦喧嘩をこのように扱うのであればまだしも、三橋氏だから意図的に情報をマスコミに流したのではないか。夫婦間の事は余程詳しく事情を知るのでなければ、外部の者は推測で口出しすべきではないのではないか。

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2018年1月 8日 (月)

政府も日銀も国債暴落はあり得ないと言っている(No.284)

茂木経済財政・再生相は2018年1月5日の記者会見で、中長期の経済財政試算の前提を見直す考えを表明した。日銀が長期金利をゼロ%程度に誘導する金融政策を続ければ今の想定より金利が低く抑えられる可能性があり、今後の試算に反映する方向で検討するとのこと。これは日銀が長期金利をゼロ程度に誘導できることを政府が認めたということであり、事実上国債の暴落はあり得ないと言っているのに等しい。

今までは日銀が金利をゼロ%程度に誘導しているのにもかかわらず内閣府は金利が急上昇する予測を出していた。筆者は内閣府計量分析室に電話し、それは非現実的でありゼロ金利への誘導を内閣府の試算に反映させるように話した。内閣府は「検討します」との返事だった。福田議員に「これで国債の暴落は起こり得ないことに同意するか」と質問主意書で聞いて頂くようお願いした。安倍総理からの答弁書:内閣衆質192第18号 平成28年10月7日は次の通りだった。
「国債の価格は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債の価格の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。」

つまり政府は「国債暴落」という「増税を認めさせるための殺し文句」を失いたくないということだろう。長期金利は日銀が決めるのでなく市場が決めるのだと言い張った。しかし日銀は違っていた。我々の追求の効果があったのか2016年11月7日にホームページを書き直し長期金利は操作できるとした。

書き換えの前:
長期金利の水準は「人々の予想や将来の不確実性に左右される」として、操作が難しいとしていた。また長期金利は「なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましい」とも書いていた。
書き換えの後:
マイナス金利と大規模な国債買い入れの組合せが、長短金利全体に影響を与えるうえで有効だとわかった。

そして今回の茂木大臣の発言は政府もやっと白旗を揚げ長期金利は日銀が制御可能であり、国債の暴落はあり得ないことを事実上認めたことになる。そうであればもはや積極財政に反対する理由は何も無くなった。国債の暴落があり得ないということは国債や通貨の信認が失われることはないということだ。積極財政は世界の中で際立って低い日本の成長率を高めデフレからの脱却を可能とし、可処分所得の増大で消費を刺激し国民は好景気を肌で感じるようになる。

金利を低めに設定するとGDPをより高くできる。でも過去の内閣府の予測をみると実際よりはるかに高い成長見通しを出して毎年下方修正をしている。その悪弊だけは修正して頂きたい。

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2018年1月 6日 (土)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)は忖度があったと認めた(No.283)

内閣府は毎年2回、経済予測を発表している。これは単なる予測ではない。各省庁が将来計画を立てる際、すべてこの予測をベースとして計画を立てる。また、マスコミが国の財政などを論じる際はこの経済予測を必ず引用するし、別のシンクタンクの予測を引用することはないし、比較することすらしない。つまり我が国においては絶対的な存在であり、この点においては独裁国家の元首の「鶴の一声」的な存在である。

それではこの経済予測は日本経済学会が日本を代表する頭脳を集めた極めて正確な経済予測になっているのかというと、全くそのようになっておらず、実は小学生でも分かるほどの単純な間違いの連続になっているのだ。この内閣府の間違った経済予測が日本経済の衰退を招いている。この予測を行っている内閣府計量分析室は「オオカミ少年」と呼ばれており筆者は厳しく批判し続けている。

このような経済予測はたくさんの方程式を立てるのだが、その一つ一つがどれだけ信頼できるかを見るのが決定係数R2Cである。この係数は0から1の間の数値であり、1に近いほど信頼度が高い。通常このような予測をしようとしたら、0.8以上であるべきだとされている。例えば内閣府(2005)で発表されたシミュレーションは極めてお粗末なものだった。例えば住宅投資の方程式を見るとR2Cの値はなんと0.068である。このように途方もなく信頼度の低い方程式を使ったシミュレーションを発表することは、内閣府の信用を著しく落とす。ちなみに経済企画庁(1995)では住宅投資の方程式のR2Cは0.926となっている。この内閣府の予測が全く信頼に値しないことについては、次のサイトで更に詳しく分析されている。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no5-34a0.html

筆者がこのことを指摘した後、内閣府は若干改良したようだが、お粗末な中身を見られては困るのだろう。2010年の発表を最後に決定係数も方程式も発表しなくなった。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html

内閣府は毎年1~2回経済予測を発表している。名目GDPの予測と実際の値の比較を図1で示した。GDPの計算方法は2016年に企業などの「研究開発費」を加える方式に改訂された。これにより2015年度のGDPは31兆6000億円かさ上げされた。黒の実線が旧基準でのGDP、灰色の線が新基準のGDPである。両者供ほぼ水平であるからこの間ほぼ成長しなかった事を示している。年間の平均成長率は0.18%であり、世界最低である。このように成長しない経済の成長率を予測するのは小学生でも分かる。物差しを持ってきてほぼ水平な線(ゼロ成長)を引けば良いだけだ。

図1

1831


驚くべき事に、内閣府は巨額の税金を使って名目3%成長というあり得ない成長率を仮定して予測を毎年行っているのであり、図に示されたような右上がりの曲線を予測した。もちろん、上記で述べたように小学生が物差しで水平な線を引くだけの単純な予測の方がはるかに正確な予測となるだろう。しかもこのような馬鹿な予測を十数年間続けているのである。内閣府は将来予測のできない無能な人間の集まりかというとそうではない。内閣府計量分析室に聞いて頂ければすぐ分かる。彼らは総理が名目3%成長したいと言っているのを聞いてそれに忖度しているし、内閣府計量分析室はそれを認めている。

2007年7月6日と7日に日本経済研究センターでマクロモデルの専門家が全国から集まって研究会が開かれ筆者も参加した。ここでは内閣府の人たちも参加しており、直接議論ができ筆者は内閣府のモデルを徹底追求した。会の後日経センターの人から私に電話があった。内閣府が日経に対し筆者を二度と研究会に参加させるなと言っていると伝えた。もし参加させるなら内閣府は今後研究会はボイコットするとのことだし日本経済研究センターとしては内閣府の命令には絶対に逆らえないようだ。内閣府は筆者による追求で追い詰められていることは間違いない。堂々と反論する自信がないということだ。筆者に協力的な国会議員は多数おり、その方々に政府に質問して欲しいと度々お願いしている。苦しい答弁が政府から返ってくるのだが、質問した議員に二度と質問するなと政府が圧力を掛けてきたこともあった。また筆者の経営する会社に「通常でない」税務調査が入ったこともあった。顧問税理士によればこれは明らかに会社の調査でなく筆者自身の身辺調査を行ったのだという。財務省からの圧力だったのだろう。

長期金利の予測も同様であり、図2のグラフで内閣府の予測と実際の金利が全く乖離していることが分かる。内閣府に言わせるとインフレ率は政府に忖度して2%にせざるを得ないし、長期金利はインフレ率に連動して動くのでやはり忖度して決められるから、現実離れしたものとなる。筆者は2016年9月に内閣府に電話し次のように質問した。

質問:いいですか。日銀は無制限の買い切りオペを指し値でやると言っているのですよ。だったら、0%に固定できるに決まっているではないですか。異次元の金融緩和を始めたのはずっと前のことです。毎年、80兆円も国債保有額が増加するように買いオペをやっているわけで、それが長期金利に影響しないわけがないでしょう。

回答:はい。影響はあるとは思いますが、影響を検討して来年発表することになると思います。

質問:いいですか。7月に発表した試算が無意味になったのですよ。金利を0%に固定する場合と金利がどんどん上がっていく場合で、結果は全然変わってきます。金利が0%に抑えられていれば、成長率も上がってくるし、物価も押し上げ、国債費は減ってきます。マスコミとかでもいつも取り上げられる2020年度の基礎的財政収支のマイナス幅ですが、このモデルで出された結果がいつも引用されているわけです。もはやこの結果が無意味なものになった現在、直ちに計算し直して発表すべきです。

回答:結果をまとめるのに時間がかかりますので直ぐは無理です。

図2
1832



果たして彼らはちゃんと検討したのだろうか。彼らの長期金利の予測がどう変わったか見てみよう。

       2016年7月    2017年1月
2016年    0.3(%)     0.0(%)
2017年    0.8(%)     0.0(%)
2018年    1.7(%)     0.5(%)

茂木経済財政・再生相は2018年1月5日の記者会見で、中長期の経済財政試算の前提を見直す考えを表明した。日銀が長期金利をゼロ%程度に誘導する金融政策を続ければ今の想定より金利が低く抑えられる可能性があり、今後の試算に反映する方向で検討するとのこと。再三我々が忠告した成果があったのか、進歩はしているようだ。これで内閣府も政府も長期金利は日銀が制御可能と結論したと見なしてよいということか。もしそうなら国債は日銀が指し値オペでいくらでも購入できるのであり、暴落はあり得ないと結論される。つまり積極財政を行えば国債が暴落するから積極財政はすべきでないという論理は完全に破綻することになる。このことに関し福田議員に質問主意書で聞いてもらった。

質問:日銀は2016年9月21日、金融緩和の目標を長期金利を0%程度とする金利目標に変更した。長期金利を0%程度とする金利目標は、国債価格支持政策であり、日銀が指定する利回りで国債を買い入れる「指し値オペ」などで実現する。これによって国債の暴落は起こりえなくなったと考えるが同意するか。
安倍総理からの答弁書:内閣衆質192第18号 平成28年10月7日
国債の価格は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債の価格の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長期金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続するとしている。政府としては、平成25年1月22日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。

質問:ということは日銀の金融政策は無効だという主張か。

安倍総理からの答弁書: 内閣衆質192第76号 平成28年10月28日
「日銀の政策は無効であり、日銀の目標にも拘わらず、金利が暴騰し国債が暴落する可能性」や「日銀の金融政策は無効だという主張」を述べたものではなく、また、内閣の「日銀に対する不信の現れや」「黒田総裁を再任する意思がない事の表れ」とは認識していない

ということで日銀は0%に長期金利を維持すると言っているのに、国債暴落は今後起こり得ないと断定することは控えたいようだ。しかし2016年と2017年の長期金利は日銀によりほぼゼロに抑えられており、長期金利は制御可能で国債暴落は起こり得ないと宣言すべきではないか。それにより国民の不安の一つが解消され消費拡大・景気回復に繋がる可能性もある。

いずれにせよ狂った羅針盤と呼ばれる内閣府の試算が日本経済を衰退に導いた。もし忖度せず、3%成長したいならどれだけの歳出拡大が必要だと総理に教えていたら、3%成長は実現しただろうし、3%成長が15年続けばGDPは250兆円以上増えていただろう。森友・家計問題で忖度によって国が被った損失があったのかもしれないが、内閣府による忖度で国が被った損失はその数十万倍の規模だということを国民は理解すべきだ。国会で議論すべきは森友・家計問題での忖度ではなく、内閣府の忖度だ。

内閣府に電話して、全然予測が現実と合っていないと追求すると、彼らは「これは予測ではなく目標だ」などと言う。それなら目標とは別に忖度しない予測も発表しなければならないはずだ。マスコミも政治家も内閣府試算が予測だと思っているからである。

内閣府のモデルに翻弄され続けた政府

総理の意向を忖度した内閣府の予測だが、間違い続け「狂った羅針盤」と呼ばれた。その狂った羅針盤に政府が従ったために日本は国際社会の中で没落を続けた。その没落を先導した一つが「基礎的財政収支黒字化目標」であった。「基礎的財政収支が均衡していれば、毎年の政策的な経費が税収などの毎年の収入でまかなわれていることになる。基礎的財政収支が改善していく方向であれば、国債残高対名目GDP比の上昇スピードは抑えられ、財政破綻にはならない」とされた。しかし通貨発行権を有する日本で基礎的財政収支がどうなろうと財政破綻にならないことは財務省のホームページに書いてある。
http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
そもそも江戸時代には改鋳で財政赤字を補ったわけで、通貨発行益を歳入に組み込まなかったら赤字続きだったわけだが財政は破綻していない。

致命的な間違いは緊縮財政政策を行えば基礎的財政収支(PB)は改善するという判断である。デフレ経済下で緊縮財政を行えばデフレは悪化し基礎的財政収支は改善しない。2001年から始まった小泉・竹中財政では「痛みに耐えよ」とのキャッチで国民に痛みを与えたが、基礎的財政収支の黒字化はできなかった。2006年1月に内閣府により発表された試算「改革と展望」では、「今の政策を続けていけば2011年には基礎的財政収支が黒字化(正確には赤字がゼロ)する」という試算がでていた。そこで小泉氏は「2011年度に基礎的財政収支を黒字にする」という馬鹿な目標を掲げた。内閣府試算が狂った羅針盤であることを知らずすっかり騙されたわけだ。デフレ脱却を目標にしながら緊縮財政を続けた。

当然のことながら、その後毎年見通しの大幅な下方修正を続けることとなった。
①2006年1月  PB黒字化可能と発表。
②2007年1月  PB黒字化は不可能、しかし14.3兆円の歳出削減を行えば
0.2%の黒字にできる。
③2008年1月  14.3兆円の歳出削減を行っても、0.1%の赤
字になる。
④2009年1月  2011年度の基礎的財政収支は2.9%の赤字。
            消費税を12%にすれば、2020年度に黒字にな
る。
  ⑤2009年6月  2020年度に黒字化するには消費税を13%にしなければな
らない。
  ⑥2011年1月  2020年度に黒字化するには22兆円の収支の改善が必要。
  ⑦2012年1月  2020年度に黒字化するには消費税を17%にする必要があ
る。
  ⑧2017年7月  2020年度に黒字化するのは無理。
小泉氏が経済が理解できていれば、毎年間違い続ける内閣府試算が「狂った羅針盤」なのだと気付いただろう。2011年度黒字化目標のために国民に痛みを押しつけたが、2011年度の基礎的財政収支は大赤字となった。その後2020年度に黒字化目標はシフトされたものの、その目標さえも無理だと宣言した。

単に内閣府計量分析室が忖度し、首相が間違えた政策を実行しただけならそれほど大きな問題にはならなかったかもしれないが、その結果生じた日本経済の没落は目に余るものがある。例として一人当たりの名目GDPの国際ランキングを以下で示す。

図3

1833


かつて一人当たりの名目GDPは世界一を争っていた。バブルを潰したことがきっかけで下がり始めたが、小渕内閣の積極財政で若干取り戻した。その後小泉内閣で最も大きく順位を下げた。小泉内閣の時代いざなぎ景気を超え戦後最長の好景気といわれていたが、この時期世界的な好景気で緊縮財政でなければデフレ脱却ができ、成長経済に戻っていただろう。諸外国が大きく経済を拡大する中、日本は取り残され一人当たりの名目GDPのランキングは大きく下がった。世界に占めるGDPの日本のシェアも株価時価総額の日本のシェアも大きく下がった。需要不足が日本の製造業を没落させ、アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾンなどのIT企業が大きく時価総額を増やした。これにより将来世代へ残す遺産が大きく毀損した。これらは内閣府試算=狂った羅針盤が引き起こす原因の一つになったことは否定できない。

消費増税に関する内閣府の予測

2014年度に行われた5%から8%への消費税率引き上げに関して、内閣府は予測をおこなっており、それは次のサイトの12頁に行われている。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf
内閣府試算で示された図を図4で引用する。

図4
1834

この図から分かるように内閣府は消費増税を行った場合と行わなかった場合で4年間の実質GDPの成長率の差は僅か0.1%(1.9%と1.8%の差)であると予測した。しかし実際は2013年度の実質GDP成長率が2.1%であったのに対し2014年度はマイナス1.0%に落ち込んだ。つまり僅か1年で3.1%も落ち込んだのである。3年間の累積で0.1%の落ち込みとの予測が実際は1年だけで3.1%もの落ち込みだった。
2013年10月1日財務省が発表した「平成26年度予算及び平成25年度補正予算のポイント」には補正予算についての説明がある。その規模は「来年度4~6月期に見込まれる反動減を大きく上回る5兆円とする」のだという(12頁)。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260128/01-01.pdf
甘利経済再生担当大臣は同じ日に記者会見をし、補正予算の規模について「来年度4-6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模といたします。」と述べている。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/1001/interview.html
これは「5兆円の補正予算で十分すぎるほどの対策を打っておきますから、4-6月期の反動減などありませんよ」と断言しているのである。実際は年率にして7.1%、つまり1000年に1度と言われた東日本大震災の2011年4-6月期以上の深刻な経済の落ち込みになった。
どうしてこれほど大きく予想が外れるのか。政府は消費増税の景気への影響は小さいとしており、それに忖度して4年の累積で実質成長率を僅か0.1%下げるだけだと主張した。そのような僅かな落ち込みなら5兆円の景気対策は十分すぎるほどの対策だと主張する。消費税収をたっぷり増やして、対策費はこんなに少なくても済むと結論する。これも忖度された結論だ。
財務省と内閣府は同じモデルを使っており、財務省の予測と内閣府の予測は同じであり、これらのウソの源は内閣府である。1997年の消費増税の後、深刻な不況に見舞われ橋本首相は「財務省に騙された」と語った。一体我々は何度内閣府・財務省に騙されるのだろう。2019年10月に予定されている8%から10%への消費税率引き上げだが、内閣府は経済への影響はほとんどないと言っているが、どうして信じられるか。

なお、内閣府は2009年1月16日に発表した試算でも様々な消費税率で経済への影響を計算している(15頁)。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h21sisan.pdf
結果は、実質GDPはどの税率でもほとんど変わらないという事だから現実から大きく乖離している。また名目GDPは2018年には639.9兆円になると予測しているから笑ってしまう。

2011年2月20日の毎日新聞に内閣府のシミュレーションについての記事がトップ記事として大きく載った。2010年5月上旬に鳩山由紀夫氏と菅直人氏が内閣府から報告を受けていた。内閣府が作成した「消費税増税シミュレーション」だ。それによると、消費税率を15%にまで引き上げても、国の債務のGDP比は増え続けるというもの。このグラフを見て、彼らは「うーん」とうめいたまま、言葉を失ったそう。安倍総理もこのシミュレーションを参考にすべきだ。消費税率を15%にしても債務のGDP比は増え続けるのなら消費税率を上げる意味は全く無い。債務のGDP比を下げたいなら財政を拡大するしかない。

内閣府は消費増税の際の景気落ち込みを正しく予測できなかったが、その後は同様の予測の発表は控えている。2016年1月21日に発表した「中長期の経済財政に関する試算」では、来年の消費増税が行われた場合の試算だけ発表し、増税が延期された場合との比較は発表していない。なぜ比較を発表しないのかと電話で聞くと内閣府は「増税は法律で決まっていることだから」と主張した。しかし安倍首相はノーベル経済学者で増税反対派のスティグリッツやクルーグマンを招き意見を聴いていたし実際増税は延期された。内閣府の真意は「どうせ比較の試算を出しても当たらない」から発表しないほうがよいということだろう。

積極財政で国の債務の対GDP比は減少するという結論

赤字国債を増発して積極財政を行えば債務のGDP比は増加し将来世代へのツケは増えると誰もが思っている。忖度する内閣府としても計量モデルでそういう試算を示したいのだろうが、どんなにモデルにトリックを仕掛けようとしてもその逆の結果になってしまうのだ。それはそうだ。債務のGDP比が237%で世界で断トツのトップでありそのような国で積極財政政策が実行されれば、債務もGDPも同程度に増加する。債務がGDPの2.37倍もあるのだから、債務が1%増えるときGDPは約2.37%増える。だから債務のGDP比は減少する。納得いかない人は債務が1000兆円、GDPが500兆円とし

1000
――――
500

という分数に分子分母に同じ数を加えてこの分数の値が減少することを電卓で試して頂きたい。1000兆円が1010兆円になると1%の増加だが、500兆円が510兆円になれば2%の増加であるから分母のほうが増加率は大きいことが分かる。

つまり景気対策をすれば、GDPが増えて債務のGDP比は減っていく。このことを内閣府では毎年のように発表していた。例えば次のサイトの「経済財政モデル(2010年度版)」の「1.概要・乗数」を開いていただきたい。6頁に次のように書いてある。
「公共投資を5兆円増やせば債務のGDP比は1.65%PT減少する。」
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
つまり公共投資を増やせば国の債務はGDPの増加により実質的に減ってくるのだ。逆に公共投資を減らせば財政はむしろ悪化するという驚くべき結果が内閣府で示されている。このような結果は毎年のように内閣府から発表されていた。これは何も公共投資に限らずどの種類の歳出でも同様である。

当然のことながら、債務のGDP比が大きくなればなるほど、これを減らすのは容易になる。つまり財政の拡大により債務のGDP比は大きく減少することになる。内閣府の試算はこれを裏付ける。5兆円の公共投資だが、債務のGDP比の減少幅は2007年には1.01%だったが、2010年には1.65%にまで拡大した。現在債務のGDP比は更に増えているから減少幅は2~3%程度まで拡大していると予想される。

 2005年6月6日、財務省は「財政問題に関するシンポジウム」を開いた。内容は国の債務が増えているので、増税・歳出削減が必要だということをPRしようとするものであった。最後に質問の時間があったので、筆者はその場で反論させて頂いた。財務省がその会場で配布した多数の資料で引用していた内閣府の試算の中にでてくる数字をそのまま引用し、増税(または歳出削減)をすると景気が悪くなるだけでなく、債務のGDP比が増大し財政も悪化するので、害あって益なしではないのか、逆に景気対策をすると、財政が健全化するではないかと質問した。それに対する財務省側からの反論は一切なく、その場におられた経済財政諮問会議のメンバーである吉川洋東大教授は事実を調べて回答しますと言っておられた。何と経済財政諮問会議の吉川先生ですら、その事実を知っておられなかった。シンポジウムが終わってすぐ、吉川先生は私の所にやってこられ、名刺を渡して調べますと言って下さった。
 その後、吉川先生は筆者の主張が事実であることを知り、私に「国の債務がこれだけ多くなると、むしろ景気対策をしたほうが、債務のGDP比は下がるのですね」と言っておられた。更に内閣府経済財政諮問会議民間議員秘書室の浅田氏より正式の手紙を受け取った。その手紙も私の主張が正しいことを確認するものだった。

それなのに公共投資を減らそうとするのはおかしい。減らせば減らすほど財政は悪化してしまう。

このことに関し質問主意書で滝議員が質問したら次のような答弁書が返って来た。
「内閣衆質166第62号 2007年2月23日
個人所得税を継続的に減税し、又は公共投資を継続的に増額するような景気刺激策を行った場合について、一定の仮定の下、これらの乗数表を用いて計算すると、御指摘のように、
公債等残高の国内総生産比率は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。」

つまり1~2年は財政が健全化するが3年目以降に悪化するかもしれないというもの。しかしその議論はおかしい。そもそも図1で分かるように3年目以降の予測をこのモデルで行う事は全く意味がないことは明かだ。このモデルで予測できるとしたらせいぜい1年後までだ。1年後であれば、所得税減税又は公共投資の増額で国の債務のGDP比が減ることが確認できている。こういった景気対策を行った1年後にもう一度試算をやり直しどうすべきかを判断すればよい。乗数の値は大きく変わるわけがなく、ほぼ同様の結果が出るはずだから翌年は所得税減税又は公共投資の増額をすべきだと結論が出るのは間違いない。こういった試算は毎年行っていけば、3年目以降でも同様な結果が得られるのは疑う余地はない。

上記主張の正しさを更に確認する試算「日本経済の進路と戦略」が2008年1月17日に内閣府から発表された。ここでは緊縮財政型のケースAと積極財政型のケースBとを比較して頂きたい。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h20sisan.pdf
①ケースA 緊縮財政型         ②ケースB 積極財政型
  2011年度の予測           2011年度の予測
  名目GDP 574.0兆円        名目GDP 577.2兆円
  債務残高 787.1兆円                債務残高 790.6兆円
  債務/GDP=137.1%        債務/GDP=137.0%
  基礎的財政収支=-1.4%       基礎的財政収支=-1.6%
この2つのケースを比較して分かることは、緊縮財政は積極財政に比べ、政府債務の増加を抑えPBは改善するが、景気が悪化し、GDPは減少する。GDPの減少率のほうが、債務残高の減少率より大きいために、債務残高の対GDP比は増えていく。つまり緊縮財政のケースAは基礎的財政収支が改善するが債務の対GDP比は増加し、将来世代へのツケを増やしてしまう。

内閣府のモデルの問題点を追求しようと自見庄三郎議員は2008年3月14日の参議院予算委員会で福田総理に公開討論会で決着を付けよと要求した。福田総理はやってもよいと言い、太田弘子経済財政担当大臣に公開討論会を開くよう指示し、太田大臣はそれを了承した。2008年8月8日に公開討論会は開かれたが、太田大臣はよほど自信がなかったのだろう。出席しなかった。予算委員会で総理の前での約束を反故にした。大臣の発言はそんなに軽いものだろうか。内閣府のモデルは日本経済にとって決定的に重要な意味を持っている。その中身を徹底的に説明すべきであり、約束した公開討論会を担当大臣が逃げ出すようなことは国民を侮辱する行為である。

内閣府が逃げの姿勢を見せているのは明かだ。実際、2010年を最後に内閣府は使っている方程式や乗数を公表しなくなった。質問主意書で再三に渡って乗数を公表するように求められているのにである。なぜ公表しないのかという質問に対しては暫くの間は「リーマンショック以後、様々な経済データが不安定になったので乗数を決められないから」と答えていたが、そのうち「乗数は2010年に発表したものと余り変わっていないから」へと答えを変えた。

債務のGDP比が今後どうなるのかに関する内閣府の2011年から2017年の間の7回分の試算を図5で示した。

図5

1835


2011年の内閣府試算は国の債務の対GDP比はひたすら増え続けるというものだった。首相は「このままでは財政が破綻するぞ。だから増税・歳出削減を認めよ」と国民にアピールしたかったのだろうし、内閣府も忖度して試算結果を出していた。2011年1月21日に発表された試算では債務のGDP比は2009年度が164.3%であるのに対し2023年度には199%まで増えると予測した。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h23chuuchouki.pdf

この予測に対して筆者は城内実議員にお願いし質問主意書で以下の質問をしてもらった。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/no46-c47b.html
「上記試算によれば2023年度には国債費が税収を上回る。国民が納める税収のすべてを使っても国債費を払うことができなくなるという経済は、正常ではないと考えるが見解如何。」
この質問に対し菅直人総理の答弁は
「内閣衆質177第40号 平成23年2月10日
中長期試算の成長戦略シナリオにおいては、名目長期金利の上昇等を反映して、2023年度の国債費は大幅に増加することとなっており、結果として税収を上回る形となっている。このことは、成長率が高い成長戦略シナリオにおいても、平成三十五年度の財政状況は深刻であることを示している。」
であった。

この質問で政府は戦略の見直しを迫られたに違いない。「税収のすべてを国債費に使わなくてはならないような社会にしようとしているのか」という批判に晒されるのは間違いないからである。そうなって国民がなんのための納税かと疑問を抱くようになっては困る。図5で分かるように翌年から内閣府は債務のGDP比はだんだん下がって行く試算を示すようになった。下落率もだんだん大きくなっている。政府は基礎的財政収支の黒字化が困難だと認識するようになり。債務のGDP比が下がればよいではないかとの主張に変化しつつあるように思える。これはまさしく我々が日本経済復活の会をスタートした当初から主張していたことであり、大変歓迎すべきことである。

なお2017年のグラフが急に下がったのは、GDPの計算方法を変えGDPがかさ上げされたためである。安倍首相は債務のGDP比を下げることを目標にしたいようであり、この意向を内閣府は忖度し、将来は債務のGDP比は下がるのだという試算をどんどん出すようになったということだ。例えば2017年1月の試算では2025年度の債務のGDP比は169.6%にまで下がると予測した。そんなに気軽に予測を変えることができるのかと疑問に思う人がいるかもしれないが、内閣府計量分析室の人たちは真面目な人たちだから自分たちの雇い主に対しきっちり忖度しているのである。結果として国債費は税収よりずっと少なくなり、上記の質問主意書にも対応できている。

唯一気がかりなことは、忖度はともかくとして債務のGDP比は本当に下がるのかということである。実際内閣府の試算で債務のGDP比を下げる原動力となっているのは名目GDPの増加である。残念ながら政府は緊縮財政を続けており、なかなか名目GDPの成長率は伸びてこない。名目GDPを伸ばすにはやはり物価を上昇させるべきであり、早期に2%のインフレ目標を達成させるべきだ。そのためには減税と歳出拡大が必須だ。

2014年4月28日にNHKなどマスコミは「2060年度 債務残高は8000兆円余に」という財政制度等審議会の発表をしつこく報じた。債務のGDP比は397%になるのだそうだ。詳細は以下のサイトに
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-b994.html
またその報道の元となった財政制度等審議会が発表した論文は以下のサイト
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260428.html
の資料7-1と資料7-2にある。
債務残高は8000兆円余、債務のGDP比は397%という数字は視聴率を上げるためには好都合な数字なのだろうが、発表された分厚い論文にはそのような数字はどこにも書いてない。財務省の担当者に聞いたところ、記者発表の席で質問がありその質問に応じて出した数字であり、論文には書いてないのだそうである。要するにこのような膨大な論文を記者は読む気はない。視聴率を上げるための数字を無理矢理出してもらい大々的なマスコミ報道となった。

この財政審の分析はEU諸国の財務状況を改善するための数式に当てはめていることで、通貨発行権を持たないEU諸国と持つ日本ではやれることは全く違う。このことを財務省の担当者に言ったら「そうですね」との返事だった。

財務省は債務のGDP比がどんどん増えれば財政危機だから増税が必要になるぞと言いたいのだろうか。しかし、国にカネを貸しているのは国民だ、債務のGDP比が激増した世界では国民は巨額の資産を持ち、それを使わずに大部分を国に貸している。平均的な国民が例えば1億円の貯金を持ちその大部分を国に貸していて、自分たちは小さなアパート暮らしでの質素な生活に耐えていると考えればよい。自分たちの生活費を増やさずに、国に貸すお金を果てしなく増やせば、国の債務のGDP比は果てしなく増える。それは空想の世界にすぎず、そんなに貯金があるなら国に貸すのでなくもっと自分に使うはずだ。そうなれば消費が拡大しGDPが増え債務のGDP比は下がってくる。つまり債務のGDP比が限りなく増えることなどあり得ない。

内閣府(2005) 日本経済中長期展望モデル(日本21世紀ビジョン版)資料集 平成17年4月内閣府計量分析室
経済企画庁(1995) 第5次版EPA世界経済モデル-基本構造と乗数分析-

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2017年12月25日 (月)

デフレ脱却が必要な時に歳出削減を求める馬鹿なマスコミ(No.282)

政府は12月22日の閣議で2018年度の予算案を決めた。マスコミの論調は財政再建のため歳出削減をせよというものばかりだ。一方でアメリカでは10年で170兆円の大減税を行う法案が可決された。日本でも減税と歳出拡大をすれば、デフレ脱却が可能となり、国民の暮らしが豊かになり、大きく出遅れたAIの分野への投資も可能となる。なぜそうしないのかというと、国の借金が膨大だからという。しかし財政を拡大すれば、GDPが増えるのでGDP比で見たときの国の借金は減っていく。
http://www.tek.jp/p/

それなのになぜ積極財政に転じないのか。今、国の借金を増やすと、通貨の信認が失われハイパーインフレになるという誤った考えを持つ人が多い。そこで「通貨の信認が失われた例と通貨発行権行使で繁栄した例」を以下のサイトにまとめてみた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-85b4.html

ハイパーインフレは極度の物不足でないと起こらない。今の日本ではあり得ない。今の日本では日常生活で円の信認を問題にしなければならない状況は生まれない。給料が振り込まれたとき、このお金では近いうちにお店で物が買えなくなるかも知れないと思った人は一人もいないだろう。お店で円以外にドルなど代用貨幣しか使えなくなる事はあり得ないと誰もが信じているからだ。通貨の信認が問題になるのは2種類以上のお金が出回っているときだけだ。

例えば江戸時代、通貨は幕府の発行する貨幣と藩が幕府の許可を得て発行する紙幣である藩札の2種類であった。藩が藩札を乱発すると、人は藩札を持ちたがらなくなる。どんどん値下がりしてしまうからだ。最終的には、藩は藩札を出せなくなり財政破綻もあり得るから藩札が無価値になるかもしれない。山田方谷(1805~1877年)は信用を失った藩札を集めてたくさんの見物人の面前で焼き捨て、着実な準備金のもとに永銭(永札)と呼ばれる新紙幣を発行し貨幣の信認を取り戻し藩の財政を立て直した。今の日本では円を焼かなくても円の信用は十分すぎるほどある。逆に、円はデフレでタンス預金化している。

昭和初期の日中戦争では中国に100万人もの兵を派遣し戦った。戦費をすべて日本から送金したわけではない。占領した現地に発券銀行を設立しそれぞれ通貨を発行し戦費を調達した。日本軍は中国聯合準備銀行を設立し中国聯合準備銀行券を発行した。この銀行券の信認を得るために日銀発行の円と朝鮮銀行発行の円を聯銀券と等価にして聯銀券の信用を高めようとした。しかし、巨額の戦費を賄うために聯銀券を発行し過ぎたためにインフレになり信用を落とした。一方で蒋介石の国民党が法弊を流通させた。日本より資金力の勝る英米は法弊の後押しをし、印刷も英米が行った。その結果、信用という面で聯銀券は法弊に勝てなかった。このように2つの通貨が流通するときは、どちらの通貨を国民が信用するかで、通貨発行権を保有する者が決まる。通貨発行権は絶大な権利であり、戦争の勝敗はどちらが信用を得るかで決まると言ってよい。日本を統一した豊臣秀吉は金鉱を掌握し金貨で人を動かした。中国を統一した秦の始皇帝は貨幣を統一し様々な巨大事業を行った。

今の日本では円の信認は全く問題しなくてよいのだから政府は通貨発行権を駆使し急激に衰退を続ける日本を救うべきだ。減税・歳出拡大で新しく発行された円を国民に渡せば、消費が拡大しデフレから脱却でき、企業も思い切って未来への投資を行うようになる。国の借金などは新しく発行された円で買い取ればよいではないか。新しく発行された円は将来世代へのツケではない。将来世代も新しく円を発行できるのだから。

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2017年12月24日 (日)

通貨の信認が失われた例と通貨発行権行使で繁栄した例(No.281)

日本は20年もの間デフレから脱却できていない。財政を拡大すれば簡単にデフレ脱却が可能だ。しかし財政赤字拡大は将来世代へのツケを増やすという人がいるが日銀がお金を刷って大量に国債を買っている現在、財政拡大は事実上通貨発行権の行使であり将来世代へのツケは増えない。なぜ財政拡大をしないかと福田議員が政府に聞くと「通貨の信認、国債の信認が失われハイパーインフレになるから」という安倍総理からの答弁書が返ってくる。物余りの現在本当にハイパーインフレになるのかと聞いたときの安倍総理の答弁書例えば内閣衆質190第39号(平成28年1月22日)を引用する。

7について
 ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。

例え円という通貨の信認が完全に失われたとしても、日本国内で経済活動が完全に停止するわけではない。何らかの代替手段で売買が行われる。その代替手段が物々交換ではないことは安倍総理からの答弁書でも述べている。内閣衆質192第179号(平成28年12月9日)を引用する。

13について
 先の答弁書12についてでお答えした「通貨に対する信認を著しく損なう」とは、我が国の通貨に対する内外からの信認の低下を通じて激しいインフレが生じるような状況を述べたものであり、ご指摘の「日本国内では日本円が全く使えなくなる」及び「物々交換を除き国内すべての経済活動が停止する」という状況になるとは考えていない。

安倍総理の答弁書では国の借金が1000兆円を超えているのだから、これから景気対策をすれば、円の信認が失われ激しいインフレになるという主旨だ。それでは日銀の保有する国債を無利子・無期限の国債にコンバートすれば国の借金は激減するから景気対策が可能になるのではないかと福田議員が聞いたときの、安倍総理の答弁書を次に引用する。内閣衆質193第30号(平成29年2月3日)

御指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なう結果、激しいインフレが生じる旨を述べたものである。したがって、御指摘の「コンバートによって極端な物不足が生じる。」「コンバートによって激しいインフレが起きるということは消費が激増する」及び「コンバートによって消費・需要が大きく拡大する」とは考えていない。

ここで安倍総理が述べているのは「コンバートによって円の信認が失われ激しいインフレになる。しかし、極端な物不足になるわけでもないし、消費・需要が大きく拡大するわけでもない。」ということだ。極端な物不足にならなくても、消費・需要が拡大しなくても激しいインフレになるのだそうだ。一体誰がこんな馬鹿な経済理論を安倍総理に教えたのか。価格というものは需要と供給の関係で決まるということは中学の公民の教科書にもしっかり書いてあり、政府の経済理論が間違いであることは中学生でも知っている。馬鹿な経済理論が出てくるのは「通貨の信認」の意味を理解していないのが原因だ。そこで以下で通貨の信認が失われた例と失われなかった例を挙げる。これを読めば今の日本で景気対策を行っても通貨の信認は失われないことがはっきりする。是非、このような事を国会で議論して頂きたい。森友・家計問題よりケタ違いに重要な問題であり、今後日本経済が立ち直れるかどうかは正しい経済理論が理解できるかどうかに掛かっているのだから。

【例1】
ビットコインが円に置きかわる場合
これは次のサイトですでに詳しく述べた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/no279-74a0.html
ビットコインが今後も暴騰を続けたとしよう。それは逆に言えば円がビットコインに対し暴落を続けるということであり、最終的には円は価値がなくなる。人はビットコインで売買をするようになり、価値を失った円を1億円出しても鉛筆1本も買えなくなる。円で見れば激しいインフレだが、ビットコインでみれば物価は安定してくる。ビットコインのほうが、円よりも便利だし信頼できると国民が信じたとき円がビットコインに置きかわると言うことだ。円が暴落すれば国債も暴落し最終的に無価値になるから国の借金は消滅する。円を使っている限り低成長が続き、日本は諸外国に比べ貧乏になり続け、しかもどんなに増税しても国の借金は減らないことがはっきりすれば、国民は円に見切りを付けるということもあり得る。逆に、ちゃんと景気対策をやって諸外国並の成長率を取り戻せば、GDPが拡大し、国の借金のGDP比も減少し、円の信認も回復する。とはいえ、現時点では信用の高さでは円はビットコインをはるかに上回っている。

【例2】
山田方谷による財政再建
山田方谷(1805~1877年)は、幕末期に財政破綻寸前の備中松山藩5万石を立て直した。当時の通貨は幕府の発行する貨幣と藩が幕府の許可を得て発行する紙幣である藩札の2種類であった。藩札は地域通貨のようなもので、発行するには藩は兌換のための準備金を必要とした。備中松山藩では大火災もあり、大量に藩札が発行されたため貨幣に比べ値打ちが下がっており、偽札も出回っていた。このように信用が落ちた藩札が流通していては経済に悪影響を及ぼすと考えた方谷は1850年~1852年の間に藩札の回収を断行した。
1852年9月5日の朝8時から藩札をたくさんの見物人が見守る中で焼却した。遠方からも見物人が集まり、お祭りのような賑わいになった。

その後、着実な準備金のもとに永銭(永札)と呼ばれる新紙幣を発行した。これにより藩札の信用が回復し、それを元手に新しい産業を興すことができ財政再建を成し遂げた。この例では信用の落ちた旧藩札を焼き捨てて新藩札に置き換えて信用を回復している。現在の1万円札は、回収して焼き捨てなければならないほど信用は落ちていないし、現在の程度の財政赤字で落ちるわけがない。30万円の給料が自分の口座に振り込まれたとき、このお金は本当に信用できるのか、果たしてお店で使えるのかと心配する人は一人もいない。政府の財政赤字とは全く関係無く円の信用は完璧に得られているのである。しかも流通していたのが貨幣と藩札であり、藩札の信用が落ちれば貨幣を使えば良い。今の日本では円を使わない場合は代替貨幣はない。

方谷は殖産興業を推進し改良した備中鍬(くわ)を生産し江戸で大ヒットした。様々な特産品も開発、銅山経営も実施、農業指導もした。その結果10年で10万両あった借金を完済し、さらに10万両の蓄財まで成功した。

【例3】
太政官札の場合
1686年明治維新の際、維新政府の財源確保のため太政官札を発行したが当初太政官札は国民の信用は得られなかった。やむなく手にした商人は、そのまま両替商で、額面より安く小判などに換えたが額面の2割まで下落した。戊辰戦争で多額の費用を必要としたので、大量に発行された。印刷が粗末で偽造されやすく、偽札が出回った。信用を得るために1872年明治通宝が発行された。これはドイツの近代的印刷術を導入して印刷されたので、偽札防止に役立った。更に信用を高めるために1885年には、日本銀行が日本銀行兌換銀券が発行された。これは、政府が同額の銀貨と交換することを保証した兌換紙幣である。

このようにかつては円の信用を得るために政府は大変な努力をしなければならなかった。今は技術も上がり偽札の心配もほとんど無くなり、金や銀との交換を保証しなくても国民は完璧に円の価値を信用しているのである。財政赤字が拡大しても円の信用に疑義を抱く者などどこにもいない。

【例4】
中国で円が法弊に破れた理由
日本のような小国が、なぜ中国大陸だけで100万人もの兵を派遣し太平洋戦争を戦うことができたのか不思議に思うかもしれない。戦費は現地でお金を刷って獲得した。占領した現地に発券銀行を設立しそれぞれ通貨を発行し戦費を調達した。
韓国   ・・・ 朝鮮銀行     → 朝鮮銀行券
満州   ・・・ 満州中央銀行   → 満州中央銀行券
中国   ・・・ 中国聯合準備銀行 → 中国聯合準備銀行券
台湾   ・・・ 台湾銀行     → 台湾銀行券

しかし、いくら刷っても現地の人がお金をして認めてくれなければ価値はない。国全体を完全に統治できれば問題はないが、そうでない場合もある。

1937年から始まった日中戦争は困難を極めた。日本軍は中国聯合準備銀行を設立し中国聯合準備銀行券を発行した。この銀行兼の信認を得るために日銀発行の円と朝鮮銀行発行の円を聯銀券と等価にして聯銀券の信用を高めようとした。しかし、巨額の戦費を賄うために聯銀券を発行し過ぎたためにインフレになり信用を落とした。一方で蒋介石の国民党が法弊を流通させた。日本より資金力の勝る英米は法弊の後押しをし、印刷も英米が行った。その結果、信用という面で聯銀券は法弊に勝てなかったし、その結果戦争でも日本は中国を占領できなかった。

これから分かるように、信用というものは発行量だけで決まるのではなく、発行する主体が信用に値するかどうかということも強く影響することが分かる。現在円の信用を高めたいなら、財政を拡大しデフレから脱却し経済を強くする必要があるのである。

【例5】
皇朝十二銭の失敗
皇朝十二銭は708年から963年にかけて日本で鋳造された12種類の銅銭の総称である。最初に和同開珎が708年に発行された。これはわが国で流通したことが分かっている最古の貨幣である。その52年後には万年通宝への改鋳が行われた。この時、和同開珎10枚と万年通宝1枚との価値が等しいと定められ交換された。これは1000%のデノミである。新銭の発行ごとに1000%のデノミが行われたので、旧貨幣は価値を失ったため政府の発行する銅銭への信頼は失墜し、貨幣としては使わず大量に溶かして銅材にして新貨幣との両替を拒否した。当時の製錬技術は未熟で銅は資源の枯渇にさらされており価値は上がっていた。したがって高品位の銅で貨幣をつくると貨幣として使われず溶かして銅地金として使われるため、それを防ぐには貨幣に使う銅の品位を下げるしかなかった。品位が下がると益々貨幣としての価値が認められなくなったが、更に偽の貨幣も多く出回るようになり貨幣の信用を更に落とし、結果として流通しなくなった。当時の支配層が経済学の知識を持ち合わせておらず、ひたすら神社に新貨幣を奉納し流通を祈願するだけだった。これでは通貨の信認が得られる訳がない。

1000%のデノミは貨幣量を一気に10倍にすることを意味する。それが10~50年に一度行われたのだから、政府発効の貨幣は信用を失った。当時なぜ貨幣が使われなくなったかを政府は理解しておらず、対策も持ち合わせていなかった。1000%のデノミなど行わず、貨幣の信用を高める努力が行われていたら莫大な通貨発行益が得られることも理解できなかった。その後、政府による貨幣の鋳造の再開は600年以上後の1608年に鋳造された慶長通貨の鋳造まで待つことになる。

現在の日本政府は景気対策をすれば通貨の信認が失われると言っているが、「通貨発行すれば神のたたりがある」と言うのと同じレベルの発言だ。まさか通貨の流通量が10倍になるほどの景気対策をするわけはないだろう。デフレから脱却できる程度の景気対策を行うならむしろ通貨の信用は高まるのである。

【例6】
平清盛は宋銭を使って通貨発行権を行使
皇朝十二銭の失敗の後は、絹や米が代用貨幣として使われていた。平清盛は輸入された宋銭を貨幣として流通させるまで約200年間の貨幣の空白期間があった。平清盛は宋銭を使い事実上の通貨発行益を得た。当時日本国内で発見されていた銅山は採掘量が急速に悪化しており、市場の要求に答えるだけの良質の貨幣を供給することが出来ず、貨幣は宋からの輸入に頼った。平氏政権は日宋貿易で莫大な利益を得たのだから国産の貨幣を作ることもできたのかもしれないが、宋に貨幣の鋳造をまかせることで得られる利益で満足したのだろう。当時宋銭は日本だけでなく東亜アジア全域で使われた国際通貨だった。平家が貨幣を輸入するシステムを作ってくれたおかげで日本の経済は飛躍的に成長した。平清盛は貨幣の流動性の大切さを理解していた。デフレ脱却に失敗し続けている現在の財務省や日銀よりずっと賢い。

代替貨幣としての絹や米には次のような欠点があった。
(1)重くてかさばる
(2)長期の保存に不適
(3)品質によって価値にばらつきがある
これに比べ宋銭は小さくて軽いし、数えるのが簡単だし、長期の保存の可能ということで、通貨として流通するようになった。また余った貨幣は富として蓄えることもできるようになった。宋銭を皆が使うようになると、不便な代用貨幣である絹や米の価値は下がり、それらを大量に蓄えていた貴族たちは損害を被り、没落したという説がある。ということは平家と従来の貴族の地位の逆転は通貨発行権の行使が原因と言うこともできる。しかし、平清盛が64歳でなくなると、平家は滅びてしまう。その原因の一つに、飢饉がおき米の値段の暴騰、つまり金属貨幣の価値の暴落があると推測されている。つまり限られた量の宋銭では、もはや米が買えなくなったということだ。自前で貨幣を作っていれば状況は変わっていたかもしれない。

【例7】
江戸時代には改鋳で政府貨幣である通貨を増やした。
江戸時代初期までは金鉱からの採掘量が豊富だったが、それではだんだん足りなくなってきて貨幣改鋳を行い、お金の量を増やし続けている。つまり金の含有量を減らして貨幣の量を増やした。米価は一石が約一両程度で長期的に安定していたことから通貨増発で激しいインフレが起きなかったことが分かる。もちろん通貨の信認が失われることもなかった。改鋳による通貨増発が有効需要を拡大させ、経済発展に刺激を与えた。貨幣改鋳益はそのまま歳入に組み込まれた。その歳入に占める割合(%)を以下で示す。
年    貨幣改鋳益の割合(%)
1840    41.2
1841    51.4
1842    35.6
1843    25.6
1844    31.4
1845    33.3
1854    25,3
1855    25.3
1857    25.1
1861    49.6
1863    52.3
1864    70.3

江戸末期には改鋳益が増えている。これには2つの理由があった。第一の理由は開国に伴う金流出を防ぐ目的で行われたものであり、激しいインフレを招いた。これは国の内外で金と銀の交換比率が3倍も違ったために、金が大量に海外に流出したのを食い止めるために行われた。他に手段がなかったのだから仕方がない。第二の理由は近代国家をつくるための準備費用である。具体的には防衛費や製鉄所の建設費などである。

現在の日本は財政が不足した場合国債を発行することによって賄っている。そうすると利払いがかさみ、将来世代へのツケを残してはいけないという配慮から緊縮財政となり、デフレが慢性化し経済が衰退する。経済が発展するには成長通貨を政府が発行し絶えず経済を刺激しなければならないのだが、現在の日本政府はその事を全く理解していない。

政府貨幣発行で天下統一

皇朝十二銭への信認が失われた後、600年以上日本では政府貨幣は作られなかった。政府貨幣の再開は1608年に鋳造された慶長通宝まで待つことになる。なんと600年もの間、政府は貨幣発行で国を豊かにできることを理解できなかったということだ。国家を統一し繁栄に導くためには通貨発行権を駆使することが不可欠である。豊臣秀吉は全国の金銀鉱山を収納し、大判・小判を鋳造し黄金 5000枚、銀30000枚を全国の大名・公卿(くぎょう)に与えた「太閤の金配り」を行った。1590年、豊富な資金力で天下統一し戦国の世を終わらせた。大阪城を築城し朝鮮出兵まで行った。

一方で、中国が統一されたのは紀元前221年の秦の始皇帝である。秀吉より約1800年も前のことだ。中国で貨幣を統一したのもやはり秦の始皇帝だった。渭水南岸に阿房宮という巨大な宮殿を建設し、70万人の労働者を動員して始皇帝陵を建設した。また何十万人という人々を動員し万里の長城の前身となる防護壁の建設に着手した。このような大事業を成し遂げることが出来たのも通貨発行権を使ったからだと推測できる。中国は日本より1800年も前に通貨発行権行使の重要性を理解していたことになる。

平成はデフレの時代であった。政府が通貨発行権を行使すればデフレはすみやかに脱却できたのに「怖くて」行使できなかった。「国債が暴落する」とか「通貨の信認が失われる」とか「ハイパーインフレになる」とか、全く経済を理解していない政府が日本を衰退させてしまった。

デフレで国が衰退する

デフレ経済では、通貨は放置しておいても価値が増す。そのため人はお金を使わないから消費は伸びず、その結果生産も伸ばす必要がなく経済の衰退を導く。デフレは国をジワジワ衰退させる恐ろしい病気だから絶対にどの国もデフレにならないようにするのだが、日本政府はデフレ脱却の方法を知らないようだ。

wikipediaより古代エジプトの通貨についての説明を引用する。古代エジプトでは、貴金属が貨幣として使われた。初期には金属を秤で量ってやりとりされたが、後期には鋳造貨幣が用いられた。興味深い例としては、モロコシなどの穀物を倉庫に預けた「預り証」が、通貨として使われたこともある。現在の通貨と違うのが、穀物は古くなると価値が落ちるということである。したがって、この通貨は長期保存の出来ない、時間的に価値の落ちて行く通貨である。結果として、通貨を何かと交換して手にいれたら、出来るだけ早く他の物と交換する事が行われたため、流通が早まった。その結果として古代エジプトの経済が発達したといわれ、この事例は地域通貨の研究者によって注目されている。また、ローマの影響下で貨幣が使われるようになった結果、『価値の減って行く通貨』による流通の促進が止まり、貨幣による富の蓄積が行われるようになりエジプトの経済が没落したという意見もある。

日本経済復活への道
ここで述べた事から日本経済復活の方法は明かだ。通貨の信認が失われないように注意しながら通貨発行権の行使、つまり減税とか財政支出の拡大をすることだ。皇朝十二銭の場合は通貨の流通量の10倍もの貨幣を発行してハイパーインフレを招き信認が失われた。しかし10兆円~20兆円程度の財政拡大であれば円の信認が失われることはない。円の信認が失われるときは、円に対抗して別の通貨が並行して使われ始めたときだ。例えばビットコインやドルだが、現時点で円で買い物ができなくなる店は当分国内では現れそうもない。日銀がお金を刷って国債を大量に買っている現在、政府が財政赤字を拡大するということは事実上の財政ファイナンスであり、通貨発行権の行使だから将来世代へのツケは増えない。それにより通貨の信認が失われるという主張が間違いだということは前述の7つの例から明らかだ。むしろそのような主張は「通貨発行で神のたたりがある」と言っているようなものだ。経済をきちんと理解すれば現在の日本で最適な政策は減税・歳出拡大で財政赤字を増やすことだということが自明となる。

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