経済・政治・国際

2018年1月 9日 (火)

三橋貴明逮捕の報道は悪質で異常(No.285)

三橋氏逮捕の報道が大げさに新聞各紙、テレビ等で一斉に流れた。しかし実態はどこにもある夫婦喧嘩にすぎず、喧嘩でカッとなって警察に電話し被害届を出したが、その後妻はそれを取り下げ一件落着しただけ。あのような大げさな報道は相応しくない。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」ということわざがある。何でも食う犬でさえ見向きもしないという意から、夫婦間の細かい内情などは 知りがたいものだし、すぐに元に戻るようなことなのだから、ほうっておけばよいということ のたとえだ。

夫婦喧嘩は通常夫婦で解決すべきことであり、警察も外部に漏らしてはいけないはずだ。ましてやこのように日本中に大げさなニュースとして報道されるべきものではない。あらゆる夫婦喧嘩をこのように扱うのであればまだしも、三橋氏だから意図的に情報をマスコミに流したのではないか。夫婦間の事は余程詳しく事情を知るのでなければ、外部の者は推測で口出しすべきではないのではないか。

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2018年1月 8日 (月)

政府も日銀も国債暴落はあり得ないと言っている(No.284)

茂木経済財政・再生相は2018年1月5日の記者会見で、中長期の経済財政試算の前提を見直す考えを表明した。日銀が長期金利をゼロ%程度に誘導する金融政策を続ければ今の想定より金利が低く抑えられる可能性があり、今後の試算に反映する方向で検討するとのこと。これは日銀が長期金利をゼロ程度に誘導できることを政府が認めたということであり、事実上国債の暴落はあり得ないと言っているのに等しい。

今までは日銀が金利をゼロ%程度に誘導しているのにもかかわらず内閣府は金利が急上昇する予測を出していた。筆者は内閣府計量分析室に電話し、それは非現実的でありゼロ金利への誘導を内閣府の試算に反映させるように話した。内閣府は「検討します」との返事だった。福田議員に「これで国債の暴落は起こり得ないことに同意するか」と質問主意書で聞いて頂くようお願いした。安倍総理からの答弁書:内閣衆質192第18号 平成28年10月7日は次の通りだった。
「国債の価格は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債の価格の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。」

つまり政府は「国債暴落」という「増税を認めさせるための殺し文句」を失いたくないということだろう。長期金利は日銀が決めるのでなく市場が決めるのだと言い張った。しかし日銀は違っていた。我々の追求の効果があったのか2016年11月7日にホームページを書き直し長期金利は操作できるとした。

書き換えの前:
長期金利の水準は「人々の予想や将来の不確実性に左右される」として、操作が難しいとしていた。また長期金利は「なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましい」とも書いていた。
書き換えの後:
マイナス金利と大規模な国債買い入れの組合せが、長短金利全体に影響を与えるうえで有効だとわかった。

そして今回の茂木大臣の発言は政府もやっと白旗を揚げ長期金利は日銀が制御可能であり、国債の暴落はあり得ないことを事実上認めたことになる。そうであればもはや積極財政に反対する理由は何も無くなった。国債の暴落があり得ないということは国債や通貨の信認が失われることはないということだ。積極財政は世界の中で際立って低い日本の成長率を高めデフレからの脱却を可能とし、可処分所得の増大で消費を刺激し国民は好景気を肌で感じるようになる。

金利を低めに設定するとGDPをより高くできる。でも過去の内閣府の予測をみると実際よりはるかに高い成長見通しを出して毎年下方修正をしている。その悪弊だけは修正して頂きたい。

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2018年1月 6日 (土)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)は忖度があったと認めた(No.283)

内閣府は毎年2回、経済予測を発表している。これは単なる予測ではない。各省庁が将来計画を立てる際、すべてこの予測をベースとして計画を立てる。また、マスコミが国の財政などを論じる際はこの経済予測を必ず引用するし、別のシンクタンクの予測を引用することはないし、比較することすらしない。つまり我が国においては絶対的な存在であり、この点においては独裁国家の元首の「鶴の一声」的な存在である。

それではこの経済予測は日本経済学会が日本を代表する頭脳を集めた極めて正確な経済予測になっているのかというと、全くそのようになっておらず、実は小学生でも分かるほどの単純な間違いの連続になっているのだ。この内閣府の間違った経済予測が日本経済の衰退を招いている。この予測を行っている内閣府計量分析室は「オオカミ少年」と呼ばれており筆者は厳しく批判し続けている。

このような経済予測はたくさんの方程式を立てるのだが、その一つ一つがどれだけ信頼できるかを見るのが決定係数R2Cである。この係数は0から1の間の数値であり、1に近いほど信頼度が高い。通常このような予測をしようとしたら、0.8以上であるべきだとされている。例えば内閣府(2005)で発表されたシミュレーションは極めてお粗末なものだった。例えば住宅投資の方程式を見るとR2Cの値はなんと0.068である。このように途方もなく信頼度の低い方程式を使ったシミュレーションを発表することは、内閣府の信用を著しく落とす。ちなみに経済企画庁(1995)では住宅投資の方程式のR2Cは0.926となっている。この内閣府の予測が全く信頼に値しないことについては、次のサイトで更に詳しく分析されている。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no5-34a0.html

筆者がこのことを指摘した後、内閣府は若干改良したようだが、お粗末な中身を見られては困るのだろう。2010年の発表を最後に決定係数も方程式も発表しなくなった。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html

内閣府は毎年1~2回経済予測を発表している。名目GDPの予測と実際の値の比較を図1で示した。GDPの計算方法は2016年に企業などの「研究開発費」を加える方式に改訂された。これにより2015年度のGDPは31兆6000億円かさ上げされた。黒の実線が旧基準でのGDP、灰色の線が新基準のGDPである。両者供ほぼ水平であるからこの間ほぼ成長しなかった事を示している。年間の平均成長率は0.18%であり、世界最低である。このように成長しない経済の成長率を予測するのは小学生でも分かる。物差しを持ってきてほぼ水平な線(ゼロ成長)を引けば良いだけだ。

図1

1831


驚くべき事に、内閣府は巨額の税金を使って名目3%成長というあり得ない成長率を仮定して予測を毎年行っているのであり、図に示されたような右上がりの曲線を予測した。もちろん、上記で述べたように小学生が物差しで水平な線を引くだけの単純な予測の方がはるかに正確な予測となるだろう。しかもこのような馬鹿な予測を十数年間続けているのである。内閣府は将来予測のできない無能な人間の集まりかというとそうではない。内閣府計量分析室に聞いて頂ければすぐ分かる。彼らは総理が名目3%成長したいと言っているのを聞いてそれに忖度しているし、内閣府計量分析室はそれを認めている。

2007年7月6日と7日に日本経済研究センターでマクロモデルの専門家が全国から集まって研究会が開かれ筆者も参加した。ここでは内閣府の人たちも参加しており、直接議論ができ筆者は内閣府のモデルを徹底追求した。会の後日経センターの人から私に電話があった。内閣府が日経に対し筆者を二度と研究会に参加させるなと言っていると伝えた。もし参加させるなら内閣府は今後研究会はボイコットするとのことだし日本経済研究センターとしては内閣府の命令には絶対に逆らえないようだ。内閣府は筆者による追求で追い詰められていることは間違いない。堂々と反論する自信がないということだ。筆者に協力的な国会議員は多数おり、その方々に政府に質問して欲しいと度々お願いしている。苦しい答弁が政府から返ってくるのだが、質問した議員に二度と質問するなと政府が圧力を掛けてきたこともあった。また筆者の経営する会社に「通常でない」税務調査が入ったこともあった。顧問税理士によればこれは明らかに会社の調査でなく筆者自身の身辺調査を行ったのだという。財務省からの圧力だったのだろう。

長期金利の予測も同様であり、図2のグラフで内閣府の予測と実際の金利が全く乖離していることが分かる。内閣府に言わせるとインフレ率は政府に忖度して2%にせざるを得ないし、長期金利はインフレ率に連動して動くのでやはり忖度して決められるから、現実離れしたものとなる。筆者は2016年9月に内閣府に電話し次のように質問した。

質問:いいですか。日銀は無制限の買い切りオペを指し値でやると言っているのですよ。だったら、0%に固定できるに決まっているではないですか。異次元の金融緩和を始めたのはずっと前のことです。毎年、80兆円も国債保有額が増加するように買いオペをやっているわけで、それが長期金利に影響しないわけがないでしょう。

回答:はい。影響はあるとは思いますが、影響を検討して来年発表することになると思います。

質問:いいですか。7月に発表した試算が無意味になったのですよ。金利を0%に固定する場合と金利がどんどん上がっていく場合で、結果は全然変わってきます。金利が0%に抑えられていれば、成長率も上がってくるし、物価も押し上げ、国債費は減ってきます。マスコミとかでもいつも取り上げられる2020年度の基礎的財政収支のマイナス幅ですが、このモデルで出された結果がいつも引用されているわけです。もはやこの結果が無意味なものになった現在、直ちに計算し直して発表すべきです。

回答:結果をまとめるのに時間がかかりますので直ぐは無理です。

図2
1832



果たして彼らはちゃんと検討したのだろうか。彼らの長期金利の予測がどう変わったか見てみよう。

       2016年7月    2017年1月
2016年    0.3(%)     0.0(%)
2017年    0.8(%)     0.0(%)
2018年    1.7(%)     0.5(%)

茂木経済財政・再生相は2018年1月5日の記者会見で、中長期の経済財政試算の前提を見直す考えを表明した。日銀が長期金利をゼロ%程度に誘導する金融政策を続ければ今の想定より金利が低く抑えられる可能性があり、今後の試算に反映する方向で検討するとのこと。再三我々が忠告した成果があったのか、進歩はしているようだ。これで内閣府も政府も長期金利は日銀が制御可能と結論したと見なしてよいということか。もしそうなら国債は日銀が指し値オペでいくらでも購入できるのであり、暴落はあり得ないと結論される。つまり積極財政を行えば国債が暴落するから積極財政はすべきでないという論理は完全に破綻することになる。このことに関し福田議員に質問主意書で聞いてもらった。

質問:日銀は2016年9月21日、金融緩和の目標を長期金利を0%程度とする金利目標に変更した。長期金利を0%程度とする金利目標は、国債価格支持政策であり、日銀が指定する利回りで国債を買い入れる「指し値オペ」などで実現する。これによって国債の暴落は起こりえなくなったと考えるが同意するか。
安倍総理からの答弁書:内閣衆質192第18号 平成28年10月7日
国債の価格は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債の価格の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長期金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続するとしている。政府としては、平成25年1月22日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。

質問:ということは日銀の金融政策は無効だという主張か。

安倍総理からの答弁書: 内閣衆質192第76号 平成28年10月28日
「日銀の政策は無効であり、日銀の目標にも拘わらず、金利が暴騰し国債が暴落する可能性」や「日銀の金融政策は無効だという主張」を述べたものではなく、また、内閣の「日銀に対する不信の現れや」「黒田総裁を再任する意思がない事の表れ」とは認識していない

ということで日銀は0%に長期金利を維持すると言っているのに、国債暴落は今後起こり得ないと断定することは控えたいようだ。しかし2016年と2017年の長期金利は日銀によりほぼゼロに抑えられており、長期金利は制御可能で国債暴落は起こり得ないと宣言すべきではないか。それにより国民の不安の一つが解消され消費拡大・景気回復に繋がる可能性もある。

いずれにせよ狂った羅針盤と呼ばれる内閣府の試算が日本経済を衰退に導いた。もし忖度せず、3%成長したいならどれだけの歳出拡大が必要だと総理に教えていたら、3%成長は実現しただろうし、3%成長が15年続けばGDPは250兆円以上増えていただろう。森友・家計問題で忖度によって国が被った損失があったのかもしれないが、内閣府による忖度で国が被った損失はその数十万倍の規模だということを国民は理解すべきだ。国会で議論すべきは森友・家計問題での忖度ではなく、内閣府の忖度だ。

内閣府に電話して、全然予測が現実と合っていないと追求すると、彼らは「これは予測ではなく目標だ」などと言う。それなら目標とは別に忖度しない予測も発表しなければならないはずだ。マスコミも政治家も内閣府試算が予測だと思っているからである。

内閣府のモデルに翻弄され続けた政府

総理の意向を忖度した内閣府の予測だが、間違い続け「狂った羅針盤」と呼ばれた。その狂った羅針盤に政府が従ったために日本は国際社会の中で没落を続けた。その没落を先導した一つが「基礎的財政収支黒字化目標」であった。「基礎的財政収支が均衡していれば、毎年の政策的な経費が税収などの毎年の収入でまかなわれていることになる。基礎的財政収支が改善していく方向であれば、国債残高対名目GDP比の上昇スピードは抑えられ、財政破綻にはならない」とされた。しかし通貨発行権を有する日本で基礎的財政収支がどうなろうと財政破綻にならないことは財務省のホームページに書いてある。
http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
そもそも江戸時代には改鋳で財政赤字を補ったわけで、通貨発行益を歳入に組み込まなかったら赤字続きだったわけだが財政は破綻していない。

致命的な間違いは緊縮財政政策を行えば基礎的財政収支(PB)は改善するという判断である。デフレ経済下で緊縮財政を行えばデフレは悪化し基礎的財政収支は改善しない。2001年から始まった小泉・竹中財政では「痛みに耐えよ」とのキャッチで国民に痛みを与えたが、基礎的財政収支の黒字化はできなかった。2006年1月に内閣府により発表された試算「改革と展望」では、「今の政策を続けていけば2011年には基礎的財政収支が黒字化(正確には赤字がゼロ)する」という試算がでていた。そこで小泉氏は「2011年度に基礎的財政収支を黒字にする」という馬鹿な目標を掲げた。内閣府試算が狂った羅針盤であることを知らずすっかり騙されたわけだ。デフレ脱却を目標にしながら緊縮財政を続けた。

当然のことながら、その後毎年見通しの大幅な下方修正を続けることとなった。
①2006年1月  PB黒字化可能と発表。
②2007年1月  PB黒字化は不可能、しかし14.3兆円の歳出削減を行えば
0.2%の黒字にできる。
③2008年1月  14.3兆円の歳出削減を行っても、0.1%の赤
字になる。
④2009年1月  2011年度の基礎的財政収支は2.9%の赤字。
            消費税を12%にすれば、2020年度に黒字にな
る。
  ⑤2009年6月  2020年度に黒字化するには消費税を13%にしなければな
らない。
  ⑥2011年1月  2020年度に黒字化するには22兆円の収支の改善が必要。
  ⑦2012年1月  2020年度に黒字化するには消費税を17%にする必要があ
る。
  ⑧2017年7月  2020年度に黒字化するのは無理。
小泉氏が経済が理解できていれば、毎年間違い続ける内閣府試算が「狂った羅針盤」なのだと気付いただろう。2011年度黒字化目標のために国民に痛みを押しつけたが、2011年度の基礎的財政収支は大赤字となった。その後2020年度に黒字化目標はシフトされたものの、その目標さえも無理だと宣言した。

単に内閣府計量分析室が忖度し、首相が間違えた政策を実行しただけならそれほど大きな問題にはならなかったかもしれないが、その結果生じた日本経済の没落は目に余るものがある。例として一人当たりの名目GDPの国際ランキングを以下で示す。

図3

1833


かつて一人当たりの名目GDPは世界一を争っていた。バブルを潰したことがきっかけで下がり始めたが、小渕内閣の積極財政で若干取り戻した。その後小泉内閣で最も大きく順位を下げた。小泉内閣の時代いざなぎ景気を超え戦後最長の好景気といわれていたが、この時期世界的な好景気で緊縮財政でなければデフレ脱却ができ、成長経済に戻っていただろう。諸外国が大きく経済を拡大する中、日本は取り残され一人当たりの名目GDPのランキングは大きく下がった。世界に占めるGDPの日本のシェアも株価時価総額の日本のシェアも大きく下がった。需要不足が日本の製造業を没落させ、アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾンなどのIT企業が大きく時価総額を増やした。これにより将来世代へ残す遺産が大きく毀損した。これらは内閣府試算=狂った羅針盤が引き起こす原因の一つになったことは否定できない。

消費増税に関する内閣府の予測

2014年度に行われた5%から8%への消費税率引き上げに関して、内閣府は予測をおこなっており、それは次のサイトの12頁に行われている。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf
内閣府試算で示された図を図4で引用する。

図4
1834

この図から分かるように内閣府は消費増税を行った場合と行わなかった場合で4年間の実質GDPの成長率の差は僅か0.1%(1.9%と1.8%の差)であると予測した。しかし実際は2013年度の実質GDP成長率が2.1%であったのに対し2014年度はマイナス1.0%に落ち込んだ。つまり僅か1年で3.1%も落ち込んだのである。3年間の累積で0.1%の落ち込みとの予測が実際は1年だけで3.1%もの落ち込みだった。
2013年10月1日財務省が発表した「平成26年度予算及び平成25年度補正予算のポイント」には補正予算についての説明がある。その規模は「来年度4~6月期に見込まれる反動減を大きく上回る5兆円とする」のだという(12頁)。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260128/01-01.pdf
甘利経済再生担当大臣は同じ日に記者会見をし、補正予算の規模について「来年度4-6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模といたします。」と述べている。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/1001/interview.html
これは「5兆円の補正予算で十分すぎるほどの対策を打っておきますから、4-6月期の反動減などありませんよ」と断言しているのである。実際は年率にして7.1%、つまり1000年に1度と言われた東日本大震災の2011年4-6月期以上の深刻な経済の落ち込みになった。
どうしてこれほど大きく予想が外れるのか。政府は消費増税の景気への影響は小さいとしており、それに忖度して4年の累積で実質成長率を僅か0.1%下げるだけだと主張した。そのような僅かな落ち込みなら5兆円の景気対策は十分すぎるほどの対策だと主張する。消費税収をたっぷり増やして、対策費はこんなに少なくても済むと結論する。これも忖度された結論だ。
財務省と内閣府は同じモデルを使っており、財務省の予測と内閣府の予測は同じであり、これらのウソの源は内閣府である。1997年の消費増税の後、深刻な不況に見舞われ橋本首相は「財務省に騙された」と語った。一体我々は何度内閣府・財務省に騙されるのだろう。2019年10月に予定されている8%から10%への消費税率引き上げだが、内閣府は経済への影響はほとんどないと言っているが、どうして信じられるか。

なお、内閣府は2009年1月16日に発表した試算でも様々な消費税率で経済への影響を計算している(15頁)。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h21sisan.pdf
結果は、実質GDPはどの税率でもほとんど変わらないという事だから現実から大きく乖離している。また名目GDPは2018年には639.9兆円になると予測しているから笑ってしまう。

2011年2月20日の毎日新聞に内閣府のシミュレーションについての記事がトップ記事として大きく載った。2010年5月上旬に鳩山由紀夫氏と菅直人氏が内閣府から報告を受けていた。内閣府が作成した「消費税増税シミュレーション」だ。それによると、消費税率を15%にまで引き上げても、国の債務のGDP比は増え続けるというもの。このグラフを見て、彼らは「うーん」とうめいたまま、言葉を失ったそう。安倍総理もこのシミュレーションを参考にすべきだ。消費税率を15%にしても債務のGDP比は増え続けるのなら消費税率を上げる意味は全く無い。債務のGDP比を下げたいなら財政を拡大するしかない。

内閣府は消費増税の際の景気落ち込みを正しく予測できなかったが、その後は同様の予測の発表は控えている。2016年1月21日に発表した「中長期の経済財政に関する試算」では、来年の消費増税が行われた場合の試算だけ発表し、増税が延期された場合との比較は発表していない。なぜ比較を発表しないのかと電話で聞くと内閣府は「増税は法律で決まっていることだから」と主張した。しかし安倍首相はノーベル経済学者で増税反対派のスティグリッツやクルーグマンを招き意見を聴いていたし実際増税は延期された。内閣府の真意は「どうせ比較の試算を出しても当たらない」から発表しないほうがよいということだろう。

積極財政で国の債務の対GDP比は減少するという結論

赤字国債を増発して積極財政を行えば債務のGDP比は増加し将来世代へのツケは増えると誰もが思っている。忖度する内閣府としても計量モデルでそういう試算を示したいのだろうが、どんなにモデルにトリックを仕掛けようとしてもその逆の結果になってしまうのだ。それはそうだ。債務のGDP比が237%で世界で断トツのトップでありそのような国で積極財政政策が実行されれば、債務もGDPも同程度に増加する。債務がGDPの2.37倍もあるのだから、債務が1%増えるときGDPは約2.37%増える。だから債務のGDP比は減少する。納得いかない人は債務が1000兆円、GDPが500兆円とし

1000
――――
500

という分数に分子分母に同じ数を加えてこの分数の値が減少することを電卓で試して頂きたい。1000兆円が1010兆円になると1%の増加だが、500兆円が510兆円になれば2%の増加であるから分母のほうが増加率は大きいことが分かる。

つまり景気対策をすれば、GDPが増えて債務のGDP比は減っていく。このことを内閣府では毎年のように発表していた。例えば次のサイトの「経済財政モデル(2010年度版)」の「1.概要・乗数」を開いていただきたい。6頁に次のように書いてある。
「公共投資を5兆円増やせば債務のGDP比は1.65%PT減少する。」
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
つまり公共投資を増やせば国の債務はGDPの増加により実質的に減ってくるのだ。逆に公共投資を減らせば財政はむしろ悪化するという驚くべき結果が内閣府で示されている。このような結果は毎年のように内閣府から発表されていた。これは何も公共投資に限らずどの種類の歳出でも同様である。

当然のことながら、債務のGDP比が大きくなればなるほど、これを減らすのは容易になる。つまり財政の拡大により債務のGDP比は大きく減少することになる。内閣府の試算はこれを裏付ける。5兆円の公共投資だが、債務のGDP比の減少幅は2007年には1.01%だったが、2010年には1.65%にまで拡大した。現在債務のGDP比は更に増えているから減少幅は2~3%程度まで拡大していると予想される。

 2005年6月6日、財務省は「財政問題に関するシンポジウム」を開いた。内容は国の債務が増えているので、増税・歳出削減が必要だということをPRしようとするものであった。最後に質問の時間があったので、筆者はその場で反論させて頂いた。財務省がその会場で配布した多数の資料で引用していた内閣府の試算の中にでてくる数字をそのまま引用し、増税(または歳出削減)をすると景気が悪くなるだけでなく、債務のGDP比が増大し財政も悪化するので、害あって益なしではないのか、逆に景気対策をすると、財政が健全化するではないかと質問した。それに対する財務省側からの反論は一切なく、その場におられた経済財政諮問会議のメンバーである吉川洋東大教授は事実を調べて回答しますと言っておられた。何と経済財政諮問会議の吉川先生ですら、その事実を知っておられなかった。シンポジウムが終わってすぐ、吉川先生は私の所にやってこられ、名刺を渡して調べますと言って下さった。
 その後、吉川先生は筆者の主張が事実であることを知り、私に「国の債務がこれだけ多くなると、むしろ景気対策をしたほうが、債務のGDP比は下がるのですね」と言っておられた。更に内閣府経済財政諮問会議民間議員秘書室の浅田氏より正式の手紙を受け取った。その手紙も私の主張が正しいことを確認するものだった。

それなのに公共投資を減らそうとするのはおかしい。減らせば減らすほど財政は悪化してしまう。

このことに関し質問主意書で滝議員が質問したら次のような答弁書が返って来た。
「内閣衆質166第62号 2007年2月23日
個人所得税を継続的に減税し、又は公共投資を継続的に増額するような景気刺激策を行った場合について、一定の仮定の下、これらの乗数表を用いて計算すると、御指摘のように、
公債等残高の国内総生産比率は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。」

つまり1~2年は財政が健全化するが3年目以降に悪化するかもしれないというもの。しかしその議論はおかしい。そもそも図1で分かるように3年目以降の予測をこのモデルで行う事は全く意味がないことは明かだ。このモデルで予測できるとしたらせいぜい1年後までだ。1年後であれば、所得税減税又は公共投資の増額で国の債務のGDP比が減ることが確認できている。こういった景気対策を行った1年後にもう一度試算をやり直しどうすべきかを判断すればよい。乗数の値は大きく変わるわけがなく、ほぼ同様の結果が出るはずだから翌年は所得税減税又は公共投資の増額をすべきだと結論が出るのは間違いない。こういった試算は毎年行っていけば、3年目以降でも同様な結果が得られるのは疑う余地はない。

上記主張の正しさを更に確認する試算「日本経済の進路と戦略」が2008年1月17日に内閣府から発表された。ここでは緊縮財政型のケースAと積極財政型のケースBとを比較して頂きたい。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h20sisan.pdf
①ケースA 緊縮財政型         ②ケースB 積極財政型
  2011年度の予測           2011年度の予測
  名目GDP 574.0兆円        名目GDP 577.2兆円
  債務残高 787.1兆円                債務残高 790.6兆円
  債務/GDP=137.1%        債務/GDP=137.0%
  基礎的財政収支=-1.4%       基礎的財政収支=-1.6%
この2つのケースを比較して分かることは、緊縮財政は積極財政に比べ、政府債務の増加を抑えPBは改善するが、景気が悪化し、GDPは減少する。GDPの減少率のほうが、債務残高の減少率より大きいために、債務残高の対GDP比は増えていく。つまり緊縮財政のケースAは基礎的財政収支が改善するが債務の対GDP比は増加し、将来世代へのツケを増やしてしまう。

内閣府のモデルの問題点を追求しようと自見庄三郎議員は2008年3月14日の参議院予算委員会で福田総理に公開討論会で決着を付けよと要求した。福田総理はやってもよいと言い、太田弘子経済財政担当大臣に公開討論会を開くよう指示し、太田大臣はそれを了承した。2008年8月8日に公開討論会は開かれたが、太田大臣はよほど自信がなかったのだろう。出席しなかった。予算委員会で総理の前での約束を反故にした。大臣の発言はそんなに軽いものだろうか。内閣府のモデルは日本経済にとって決定的に重要な意味を持っている。その中身を徹底的に説明すべきであり、約束した公開討論会を担当大臣が逃げ出すようなことは国民を侮辱する行為である。

内閣府が逃げの姿勢を見せているのは明かだ。実際、2010年を最後に内閣府は使っている方程式や乗数を公表しなくなった。質問主意書で再三に渡って乗数を公表するように求められているのにである。なぜ公表しないのかという質問に対しては暫くの間は「リーマンショック以後、様々な経済データが不安定になったので乗数を決められないから」と答えていたが、そのうち「乗数は2010年に発表したものと余り変わっていないから」へと答えを変えた。

債務のGDP比が今後どうなるのかに関する内閣府の2011年から2017年の間の7回分の試算を図5で示した。

図5

1835


2011年の内閣府試算は国の債務の対GDP比はひたすら増え続けるというものだった。首相は「このままでは財政が破綻するぞ。だから増税・歳出削減を認めよ」と国民にアピールしたかったのだろうし、内閣府も忖度して試算結果を出していた。2011年1月21日に発表された試算では債務のGDP比は2009年度が164.3%であるのに対し2023年度には199%まで増えると予測した。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h23chuuchouki.pdf

この予測に対して筆者は城内実議員にお願いし質問主意書で以下の質問をしてもらった。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/no46-c47b.html
「上記試算によれば2023年度には国債費が税収を上回る。国民が納める税収のすべてを使っても国債費を払うことができなくなるという経済は、正常ではないと考えるが見解如何。」
この質問に対し菅直人総理の答弁は
「内閣衆質177第40号 平成23年2月10日
中長期試算の成長戦略シナリオにおいては、名目長期金利の上昇等を反映して、2023年度の国債費は大幅に増加することとなっており、結果として税収を上回る形となっている。このことは、成長率が高い成長戦略シナリオにおいても、平成三十五年度の財政状況は深刻であることを示している。」
であった。

この質問で政府は戦略の見直しを迫られたに違いない。「税収のすべてを国債費に使わなくてはならないような社会にしようとしているのか」という批判に晒されるのは間違いないからである。そうなって国民がなんのための納税かと疑問を抱くようになっては困る。図5で分かるように翌年から内閣府は債務のGDP比はだんだん下がって行く試算を示すようになった。下落率もだんだん大きくなっている。政府は基礎的財政収支の黒字化が困難だと認識するようになり。債務のGDP比が下がればよいではないかとの主張に変化しつつあるように思える。これはまさしく我々が日本経済復活の会をスタートした当初から主張していたことであり、大変歓迎すべきことである。

なお2017年のグラフが急に下がったのは、GDPの計算方法を変えGDPがかさ上げされたためである。安倍首相は債務のGDP比を下げることを目標にしたいようであり、この意向を内閣府は忖度し、将来は債務のGDP比は下がるのだという試算をどんどん出すようになったということだ。例えば2017年1月の試算では2025年度の債務のGDP比は169.6%にまで下がると予測した。そんなに気軽に予測を変えることができるのかと疑問に思う人がいるかもしれないが、内閣府計量分析室の人たちは真面目な人たちだから自分たちの雇い主に対しきっちり忖度しているのである。結果として国債費は税収よりずっと少なくなり、上記の質問主意書にも対応できている。

唯一気がかりなことは、忖度はともかくとして債務のGDP比は本当に下がるのかということである。実際内閣府の試算で債務のGDP比を下げる原動力となっているのは名目GDPの増加である。残念ながら政府は緊縮財政を続けており、なかなか名目GDPの成長率は伸びてこない。名目GDPを伸ばすにはやはり物価を上昇させるべきであり、早期に2%のインフレ目標を達成させるべきだ。そのためには減税と歳出拡大が必須だ。

2014年4月28日にNHKなどマスコミは「2060年度 債務残高は8000兆円余に」という財政制度等審議会の発表をしつこく報じた。債務のGDP比は397%になるのだそうだ。詳細は以下のサイトに
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-b994.html
またその報道の元となった財政制度等審議会が発表した論文は以下のサイト
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260428.html
の資料7-1と資料7-2にある。
債務残高は8000兆円余、債務のGDP比は397%という数字は視聴率を上げるためには好都合な数字なのだろうが、発表された分厚い論文にはそのような数字はどこにも書いてない。財務省の担当者に聞いたところ、記者発表の席で質問がありその質問に応じて出した数字であり、論文には書いてないのだそうである。要するにこのような膨大な論文を記者は読む気はない。視聴率を上げるための数字を無理矢理出してもらい大々的なマスコミ報道となった。

この財政審の分析はEU諸国の財務状況を改善するための数式に当てはめていることで、通貨発行権を持たないEU諸国と持つ日本ではやれることは全く違う。このことを財務省の担当者に言ったら「そうですね」との返事だった。

財務省は債務のGDP比がどんどん増えれば財政危機だから増税が必要になるぞと言いたいのだろうか。しかし、国にカネを貸しているのは国民だ、債務のGDP比が激増した世界では国民は巨額の資産を持ち、それを使わずに大部分を国に貸している。平均的な国民が例えば1億円の貯金を持ちその大部分を国に貸していて、自分たちは小さなアパート暮らしでの質素な生活に耐えていると考えればよい。自分たちの生活費を増やさずに、国に貸すお金を果てしなく増やせば、国の債務のGDP比は果てしなく増える。それは空想の世界にすぎず、そんなに貯金があるなら国に貸すのでなくもっと自分に使うはずだ。そうなれば消費が拡大しGDPが増え債務のGDP比は下がってくる。つまり債務のGDP比が限りなく増えることなどあり得ない。

内閣府(2005) 日本経済中長期展望モデル(日本21世紀ビジョン版)資料集 平成17年4月内閣府計量分析室
経済企画庁(1995) 第5次版EPA世界経済モデル-基本構造と乗数分析-

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2017年12月25日 (月)

デフレ脱却が必要な時に歳出削減を求める馬鹿なマスコミ(No.282)

政府は12月22日の閣議で2018年度の予算案を決めた。マスコミの論調は財政再建のため歳出削減をせよというものばかりだ。一方でアメリカでは10年で170兆円の大減税を行う法案が可決された。日本でも減税と歳出拡大をすれば、デフレ脱却が可能となり、国民の暮らしが豊かになり、大きく出遅れたAIの分野への投資も可能となる。なぜそうしないのかというと、国の借金が膨大だからという。しかし財政を拡大すれば、GDPが増えるのでGDP比で見たときの国の借金は減っていく。
http://www.tek.jp/p/

それなのになぜ積極財政に転じないのか。今、国の借金を増やすと、通貨の信認が失われハイパーインフレになるという誤った考えを持つ人が多い。そこで「通貨の信認が失われた例と通貨発行権行使で繁栄した例」を以下のサイトにまとめてみた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-85b4.html

ハイパーインフレは極度の物不足でないと起こらない。今の日本ではあり得ない。今の日本では日常生活で円の信認を問題にしなければならない状況は生まれない。給料が振り込まれたとき、このお金では近いうちにお店で物が買えなくなるかも知れないと思った人は一人もいないだろう。お店で円以外にドルなど代用貨幣しか使えなくなる事はあり得ないと誰もが信じているからだ。通貨の信認が問題になるのは2種類以上のお金が出回っているときだけだ。

例えば江戸時代、通貨は幕府の発行する貨幣と藩が幕府の許可を得て発行する紙幣である藩札の2種類であった。藩が藩札を乱発すると、人は藩札を持ちたがらなくなる。どんどん値下がりしてしまうからだ。最終的には、藩は藩札を出せなくなり財政破綻もあり得るから藩札が無価値になるかもしれない。山田方谷(1805~1877年)は信用を失った藩札を集めてたくさんの見物人の面前で焼き捨て、着実な準備金のもとに永銭(永札)と呼ばれる新紙幣を発行し貨幣の信認を取り戻し藩の財政を立て直した。今の日本では円を焼かなくても円の信用は十分すぎるほどある。逆に、円はデフレでタンス預金化している。

昭和初期の日中戦争では中国に100万人もの兵を派遣し戦った。戦費をすべて日本から送金したわけではない。占領した現地に発券銀行を設立しそれぞれ通貨を発行し戦費を調達した。日本軍は中国聯合準備銀行を設立し中国聯合準備銀行券を発行した。この銀行券の信認を得るために日銀発行の円と朝鮮銀行発行の円を聯銀券と等価にして聯銀券の信用を高めようとした。しかし、巨額の戦費を賄うために聯銀券を発行し過ぎたためにインフレになり信用を落とした。一方で蒋介石の国民党が法弊を流通させた。日本より資金力の勝る英米は法弊の後押しをし、印刷も英米が行った。その結果、信用という面で聯銀券は法弊に勝てなかった。このように2つの通貨が流通するときは、どちらの通貨を国民が信用するかで、通貨発行権を保有する者が決まる。通貨発行権は絶大な権利であり、戦争の勝敗はどちらが信用を得るかで決まると言ってよい。日本を統一した豊臣秀吉は金鉱を掌握し金貨で人を動かした。中国を統一した秦の始皇帝は貨幣を統一し様々な巨大事業を行った。

今の日本では円の信認は全く問題しなくてよいのだから政府は通貨発行権を駆使し急激に衰退を続ける日本を救うべきだ。減税・歳出拡大で新しく発行された円を国民に渡せば、消費が拡大しデフレから脱却でき、企業も思い切って未来への投資を行うようになる。国の借金などは新しく発行された円で買い取ればよいではないか。新しく発行された円は将来世代へのツケではない。将来世代も新しく円を発行できるのだから。

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2017年12月24日 (日)

通貨の信認が失われた例と通貨発行権行使で繁栄した例(No.281)

日本は20年もの間デフレから脱却できていない。財政を拡大すれば簡単にデフレ脱却が可能だ。しかし財政赤字拡大は将来世代へのツケを増やすという人がいるが日銀がお金を刷って大量に国債を買っている現在、財政拡大は事実上通貨発行権の行使であり将来世代へのツケは増えない。なぜ財政拡大をしないかと福田議員が政府に聞くと「通貨の信認、国債の信認が失われハイパーインフレになるから」という安倍総理からの答弁書が返ってくる。物余りの現在本当にハイパーインフレになるのかと聞いたときの安倍総理の答弁書例えば内閣衆質190第39号(平成28年1月22日)を引用する。

7について
 ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。

例え円という通貨の信認が完全に失われたとしても、日本国内で経済活動が完全に停止するわけではない。何らかの代替手段で売買が行われる。その代替手段が物々交換ではないことは安倍総理からの答弁書でも述べている。内閣衆質192第179号(平成28年12月9日)を引用する。

13について
 先の答弁書12についてでお答えした「通貨に対する信認を著しく損なう」とは、我が国の通貨に対する内外からの信認の低下を通じて激しいインフレが生じるような状況を述べたものであり、ご指摘の「日本国内では日本円が全く使えなくなる」及び「物々交換を除き国内すべての経済活動が停止する」という状況になるとは考えていない。

安倍総理の答弁書では国の借金が1000兆円を超えているのだから、これから景気対策をすれば、円の信認が失われ激しいインフレになるという主旨だ。それでは日銀の保有する国債を無利子・無期限の国債にコンバートすれば国の借金は激減するから景気対策が可能になるのではないかと福田議員が聞いたときの、安倍総理の答弁書を次に引用する。内閣衆質193第30号(平成29年2月3日)

御指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なう結果、激しいインフレが生じる旨を述べたものである。したがって、御指摘の「コンバートによって極端な物不足が生じる。」「コンバートによって激しいインフレが起きるということは消費が激増する」及び「コンバートによって消費・需要が大きく拡大する」とは考えていない。

ここで安倍総理が述べているのは「コンバートによって円の信認が失われ激しいインフレになる。しかし、極端な物不足になるわけでもないし、消費・需要が大きく拡大するわけでもない。」ということだ。極端な物不足にならなくても、消費・需要が拡大しなくても激しいインフレになるのだそうだ。一体誰がこんな馬鹿な経済理論を安倍総理に教えたのか。価格というものは需要と供給の関係で決まるということは中学の公民の教科書にもしっかり書いてあり、政府の経済理論が間違いであることは中学生でも知っている。馬鹿な経済理論が出てくるのは「通貨の信認」の意味を理解していないのが原因だ。そこで以下で通貨の信認が失われた例と失われなかった例を挙げる。これを読めば今の日本で景気対策を行っても通貨の信認は失われないことがはっきりする。是非、このような事を国会で議論して頂きたい。森友・家計問題よりケタ違いに重要な問題であり、今後日本経済が立ち直れるかどうかは正しい経済理論が理解できるかどうかに掛かっているのだから。

【例1】
ビットコインが円に置きかわる場合
これは次のサイトですでに詳しく述べた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/no279-74a0.html
ビットコインが今後も暴騰を続けたとしよう。それは逆に言えば円がビットコインに対し暴落を続けるということであり、最終的には円は価値がなくなる。人はビットコインで売買をするようになり、価値を失った円を1億円出しても鉛筆1本も買えなくなる。円で見れば激しいインフレだが、ビットコインでみれば物価は安定してくる。ビットコインのほうが、円よりも便利だし信頼できると国民が信じたとき円がビットコインに置きかわると言うことだ。円が暴落すれば国債も暴落し最終的に無価値になるから国の借金は消滅する。円を使っている限り低成長が続き、日本は諸外国に比べ貧乏になり続け、しかもどんなに増税しても国の借金は減らないことがはっきりすれば、国民は円に見切りを付けるということもあり得る。逆に、ちゃんと景気対策をやって諸外国並の成長率を取り戻せば、GDPが拡大し、国の借金のGDP比も減少し、円の信認も回復する。とはいえ、現時点では信用の高さでは円はビットコインをはるかに上回っている。

【例2】
山田方谷による財政再建
山田方谷(1805~1877年)は、幕末期に財政破綻寸前の備中松山藩5万石を立て直した。当時の通貨は幕府の発行する貨幣と藩が幕府の許可を得て発行する紙幣である藩札の2種類であった。藩札は地域通貨のようなもので、発行するには藩は兌換のための準備金を必要とした。備中松山藩では大火災もあり、大量に藩札が発行されたため貨幣に比べ値打ちが下がっており、偽札も出回っていた。このように信用が落ちた藩札が流通していては経済に悪影響を及ぼすと考えた方谷は1850年~1852年の間に藩札の回収を断行した。
1852年9月5日の朝8時から藩札をたくさんの見物人が見守る中で焼却した。遠方からも見物人が集まり、お祭りのような賑わいになった。

その後、着実な準備金のもとに永銭(永札)と呼ばれる新紙幣を発行した。これにより藩札の信用が回復し、それを元手に新しい産業を興すことができ財政再建を成し遂げた。この例では信用の落ちた旧藩札を焼き捨てて新藩札に置き換えて信用を回復している。現在の1万円札は、回収して焼き捨てなければならないほど信用は落ちていないし、現在の程度の財政赤字で落ちるわけがない。30万円の給料が自分の口座に振り込まれたとき、このお金は本当に信用できるのか、果たしてお店で使えるのかと心配する人は一人もいない。政府の財政赤字とは全く関係無く円の信用は完璧に得られているのである。しかも流通していたのが貨幣と藩札であり、藩札の信用が落ちれば貨幣を使えば良い。今の日本では円を使わない場合は代替貨幣はない。

方谷は殖産興業を推進し改良した備中鍬(くわ)を生産し江戸で大ヒットした。様々な特産品も開発、銅山経営も実施、農業指導もした。その結果10年で10万両あった借金を完済し、さらに10万両の蓄財まで成功した。

【例3】
太政官札の場合
1686年明治維新の際、維新政府の財源確保のため太政官札を発行したが当初太政官札は国民の信用は得られなかった。やむなく手にした商人は、そのまま両替商で、額面より安く小判などに換えたが額面の2割まで下落した。戊辰戦争で多額の費用を必要としたので、大量に発行された。印刷が粗末で偽造されやすく、偽札が出回った。信用を得るために1872年明治通宝が発行された。これはドイツの近代的印刷術を導入して印刷されたので、偽札防止に役立った。更に信用を高めるために1885年には、日本銀行が日本銀行兌換銀券が発行された。これは、政府が同額の銀貨と交換することを保証した兌換紙幣である。

このようにかつては円の信用を得るために政府は大変な努力をしなければならなかった。今は技術も上がり偽札の心配もほとんど無くなり、金や銀との交換を保証しなくても国民は完璧に円の価値を信用しているのである。財政赤字が拡大しても円の信用に疑義を抱く者などどこにもいない。

【例4】
中国で円が法弊に破れた理由
日本のような小国が、なぜ中国大陸だけで100万人もの兵を派遣し太平洋戦争を戦うことができたのか不思議に思うかもしれない。戦費は現地でお金を刷って獲得した。占領した現地に発券銀行を設立しそれぞれ通貨を発行し戦費を調達した。
韓国   ・・・ 朝鮮銀行     → 朝鮮銀行券
満州   ・・・ 満州中央銀行   → 満州中央銀行券
中国   ・・・ 中国聯合準備銀行 → 中国聯合準備銀行券
台湾   ・・・ 台湾銀行     → 台湾銀行券

しかし、いくら刷っても現地の人がお金をして認めてくれなければ価値はない。国全体を完全に統治できれば問題はないが、そうでない場合もある。

1937年から始まった日中戦争は困難を極めた。日本軍は中国聯合準備銀行を設立し中国聯合準備銀行券を発行した。この銀行兼の信認を得るために日銀発行の円と朝鮮銀行発行の円を聯銀券と等価にして聯銀券の信用を高めようとした。しかし、巨額の戦費を賄うために聯銀券を発行し過ぎたためにインフレになり信用を落とした。一方で蒋介石の国民党が法弊を流通させた。日本より資金力の勝る英米は法弊の後押しをし、印刷も英米が行った。その結果、信用という面で聯銀券は法弊に勝てなかったし、その結果戦争でも日本は中国を占領できなかった。

これから分かるように、信用というものは発行量だけで決まるのではなく、発行する主体が信用に値するかどうかということも強く影響することが分かる。現在円の信用を高めたいなら、財政を拡大しデフレから脱却し経済を強くする必要があるのである。

【例5】
皇朝十二銭の失敗
皇朝十二銭は708年から963年にかけて日本で鋳造された12種類の銅銭の総称である。最初に和同開珎が708年に発行された。これはわが国で流通したことが分かっている最古の貨幣である。その52年後には万年通宝への改鋳が行われた。この時、和同開珎10枚と万年通宝1枚との価値が等しいと定められ交換された。これは1000%のデノミである。新銭の発行ごとに1000%のデノミが行われたので、旧貨幣は価値を失ったため政府の発行する銅銭への信頼は失墜し、貨幣としては使わず大量に溶かして銅材にして新貨幣との両替を拒否した。当時の製錬技術は未熟で銅は資源の枯渇にさらされており価値は上がっていた。したがって高品位の銅で貨幣をつくると貨幣として使われず溶かして銅地金として使われるため、それを防ぐには貨幣に使う銅の品位を下げるしかなかった。品位が下がると益々貨幣としての価値が認められなくなったが、更に偽の貨幣も多く出回るようになり貨幣の信用を更に落とし、結果として流通しなくなった。当時の支配層が経済学の知識を持ち合わせておらず、ひたすら神社に新貨幣を奉納し流通を祈願するだけだった。これでは通貨の信認が得られる訳がない。

1000%のデノミは貨幣量を一気に10倍にすることを意味する。それが10~50年に一度行われたのだから、政府発効の貨幣は信用を失った。当時なぜ貨幣が使われなくなったかを政府は理解しておらず、対策も持ち合わせていなかった。1000%のデノミなど行わず、貨幣の信用を高める努力が行われていたら莫大な通貨発行益が得られることも理解できなかった。その後、政府による貨幣の鋳造の再開は600年以上後の1608年に鋳造された慶長通貨の鋳造まで待つことになる。

現在の日本政府は景気対策をすれば通貨の信認が失われると言っているが、「通貨発行すれば神のたたりがある」と言うのと同じレベルの発言だ。まさか通貨の流通量が10倍になるほどの景気対策をするわけはないだろう。デフレから脱却できる程度の景気対策を行うならむしろ通貨の信用は高まるのである。

【例6】
平清盛は宋銭を使って通貨発行権を行使
皇朝十二銭の失敗の後は、絹や米が代用貨幣として使われていた。平清盛は輸入された宋銭を貨幣として流通させるまで約200年間の貨幣の空白期間があった。平清盛は宋銭を使い事実上の通貨発行益を得た。当時日本国内で発見されていた銅山は採掘量が急速に悪化しており、市場の要求に答えるだけの良質の貨幣を供給することが出来ず、貨幣は宋からの輸入に頼った。平氏政権は日宋貿易で莫大な利益を得たのだから国産の貨幣を作ることもできたのかもしれないが、宋に貨幣の鋳造をまかせることで得られる利益で満足したのだろう。当時宋銭は日本だけでなく東亜アジア全域で使われた国際通貨だった。平家が貨幣を輸入するシステムを作ってくれたおかげで日本の経済は飛躍的に成長した。平清盛は貨幣の流動性の大切さを理解していた。デフレ脱却に失敗し続けている現在の財務省や日銀よりずっと賢い。

代替貨幣としての絹や米には次のような欠点があった。
(1)重くてかさばる
(2)長期の保存に不適
(3)品質によって価値にばらつきがある
これに比べ宋銭は小さくて軽いし、数えるのが簡単だし、長期の保存の可能ということで、通貨として流通するようになった。また余った貨幣は富として蓄えることもできるようになった。宋銭を皆が使うようになると、不便な代用貨幣である絹や米の価値は下がり、それらを大量に蓄えていた貴族たちは損害を被り、没落したという説がある。ということは平家と従来の貴族の地位の逆転は通貨発行権の行使が原因と言うこともできる。しかし、平清盛が64歳でなくなると、平家は滅びてしまう。その原因の一つに、飢饉がおき米の値段の暴騰、つまり金属貨幣の価値の暴落があると推測されている。つまり限られた量の宋銭では、もはや米が買えなくなったということだ。自前で貨幣を作っていれば状況は変わっていたかもしれない。

【例7】
江戸時代には改鋳で政府貨幣である通貨を増やした。
江戸時代初期までは金鉱からの採掘量が豊富だったが、それではだんだん足りなくなってきて貨幣改鋳を行い、お金の量を増やし続けている。つまり金の含有量を減らして貨幣の量を増やした。米価は一石が約一両程度で長期的に安定していたことから通貨増発で激しいインフレが起きなかったことが分かる。もちろん通貨の信認が失われることもなかった。改鋳による通貨増発が有効需要を拡大させ、経済発展に刺激を与えた。貨幣改鋳益はそのまま歳入に組み込まれた。その歳入に占める割合(%)を以下で示す。
年    貨幣改鋳益の割合(%)
1840    41.2
1841    51.4
1842    35.6
1843    25.6
1844    31.4
1845    33.3
1854    25,3
1855    25.3
1857    25.1
1861    49.6
1863    52.3
1864    70.3

江戸末期には改鋳益が増えている。これには2つの理由があった。第一の理由は開国に伴う金流出を防ぐ目的で行われたものであり、激しいインフレを招いた。これは国の内外で金と銀の交換比率が3倍も違ったために、金が大量に海外に流出したのを食い止めるために行われた。他に手段がなかったのだから仕方がない。第二の理由は近代国家をつくるための準備費用である。具体的には防衛費や製鉄所の建設費などである。

現在の日本は財政が不足した場合国債を発行することによって賄っている。そうすると利払いがかさみ、将来世代へのツケを残してはいけないという配慮から緊縮財政となり、デフレが慢性化し経済が衰退する。経済が発展するには成長通貨を政府が発行し絶えず経済を刺激しなければならないのだが、現在の日本政府はその事を全く理解していない。

政府貨幣発行で天下統一

皇朝十二銭への信認が失われた後、600年以上日本では政府貨幣は作られなかった。政府貨幣の再開は1608年に鋳造された慶長通宝まで待つことになる。なんと600年もの間、政府は貨幣発行で国を豊かにできることを理解できなかったということだ。国家を統一し繁栄に導くためには通貨発行権を駆使することが不可欠である。豊臣秀吉は全国の金銀鉱山を収納し、大判・小判を鋳造し黄金 5000枚、銀30000枚を全国の大名・公卿(くぎょう)に与えた「太閤の金配り」を行った。1590年、豊富な資金力で天下統一し戦国の世を終わらせた。大阪城を築城し朝鮮出兵まで行った。

一方で、中国が統一されたのは紀元前221年の秦の始皇帝である。秀吉より約1800年も前のことだ。中国で貨幣を統一したのもやはり秦の始皇帝だった。渭水南岸に阿房宮という巨大な宮殿を建設し、70万人の労働者を動員して始皇帝陵を建設した。また何十万人という人々を動員し万里の長城の前身となる防護壁の建設に着手した。このような大事業を成し遂げることが出来たのも通貨発行権を使ったからだと推測できる。中国は日本より1800年も前に通貨発行権行使の重要性を理解していたことになる。

平成はデフレの時代であった。政府が通貨発行権を行使すればデフレはすみやかに脱却できたのに「怖くて」行使できなかった。「国債が暴落する」とか「通貨の信認が失われる」とか「ハイパーインフレになる」とか、全く経済を理解していない政府が日本を衰退させてしまった。

デフレで国が衰退する

デフレ経済では、通貨は放置しておいても価値が増す。そのため人はお金を使わないから消費は伸びず、その結果生産も伸ばす必要がなく経済の衰退を導く。デフレは国をジワジワ衰退させる恐ろしい病気だから絶対にどの国もデフレにならないようにするのだが、日本政府はデフレ脱却の方法を知らないようだ。

wikipediaより古代エジプトの通貨についての説明を引用する。古代エジプトでは、貴金属が貨幣として使われた。初期には金属を秤で量ってやりとりされたが、後期には鋳造貨幣が用いられた。興味深い例としては、モロコシなどの穀物を倉庫に預けた「預り証」が、通貨として使われたこともある。現在の通貨と違うのが、穀物は古くなると価値が落ちるということである。したがって、この通貨は長期保存の出来ない、時間的に価値の落ちて行く通貨である。結果として、通貨を何かと交換して手にいれたら、出来るだけ早く他の物と交換する事が行われたため、流通が早まった。その結果として古代エジプトの経済が発達したといわれ、この事例は地域通貨の研究者によって注目されている。また、ローマの影響下で貨幣が使われるようになった結果、『価値の減って行く通貨』による流通の促進が止まり、貨幣による富の蓄積が行われるようになりエジプトの経済が没落したという意見もある。

日本経済復活への道
ここで述べた事から日本経済復活の方法は明かだ。通貨の信認が失われないように注意しながら通貨発行権の行使、つまり減税とか財政支出の拡大をすることだ。皇朝十二銭の場合は通貨の流通量の10倍もの貨幣を発行してハイパーインフレを招き信認が失われた。しかし10兆円~20兆円程度の財政拡大であれば円の信認が失われることはない。円の信認が失われるときは、円に対抗して別の通貨が並行して使われ始めたときだ。例えばビットコインやドルだが、現時点で円で買い物ができなくなる店は当分国内では現れそうもない。日銀がお金を刷って国債を大量に買っている現在、政府が財政赤字を拡大するということは事実上の財政ファイナンスであり、通貨発行権の行使だから将来世代へのツケは増えない。それにより通貨の信認が失われるという主張が間違いだということは前述の7つの例から明らかだ。むしろそのような主張は「通貨発行で神のたたりがある」と言っているようなものだ。経済をきちんと理解すれば現在の日本で最適な政策は減税・歳出拡大で財政赤字を増やすことだということが自明となる。

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2017年12月18日 (月)

ベーシックインカムよりミニマムサプライ(No.280)

ミニマムサプライとは

日本人は多くの不安を抱えている。第一の不安は少子高齢化による将来不安である。自分の老後は大丈夫なのだろうか、本当に年金は破綻しないのか。第二の不安は国の借金が1000兆円を超えたという不安。財政が破綻すると大増税が待っているのか、あるいはハイパーインフレか、国債暴落か。第三の不安はAI/ロボットに職を奪われるのではないかという不安である。

これらの不安があるために、人は今貯金をしておかねばならないと考える。そこで消費が抑えられ、それがデフレ脱却を困難にし、不況を長引かせる。そのような不安除去のために考えられたのがミニマムサプライである。その精神は国が国民に最低限の生活を効率よく支えるというものである。万一会社が倒産しても、突然重い病気に罹っても、どんなに悪い状況になっても国がしっかり支えるシステムが確立していたら日本人の不安は軽減され消費は戻って来る。

長期的にはAI/ロボットが雇用を奪うのだから「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会へ徐々に移行すべきだというのが筆者の提案である。
http://asread.info/archives/3856
経済システムを適切に構築すれば、財・サービスの提供はロボット(AI)に任せ、人間は貴族のような生活ができるという説である。もちろん、いきなりそのような社会が実現するわけがない。そのような理想社会に移行する中間段階ではどのような社会になるか一つの案を提示してみよう。ベーシックインカムに対しこの制度は最低限の供給を保証するという意味でミニマムサプライと名付けた。

物余りの時代、日本に関して言えば、本来食べられたはずの、いわゆる「食品ロス」は500万~800万トンである。これは、わが国のコメの年間収穫量(平成25年約860万トン)に近い。世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量の390万トン(平成23年)を大きく上回っている。このように物が溢れている時代なのだから工夫すれば、日本国内で生活に困っている人々を助けることなど、余裕でできるはずである。

「労働はロボットに、人間は貴族に」という理想社会に移行する初期の段階でできることを考える。国民は将来雇用がAI/ロボットに奪われるのではないかと不安を抱いているが、その不安を解消するシステムがミニマムサプライである。食べられるのに捨てている食糧を提供してもらったり、企業から寄付を受けたり、大量につくった極めて低価格の食料品や日用品(品数は限定する)を買い取ったりして、それを国営商店で無料で配布する。この商店には使えるけど使わなくなった衣服とか本とか日用品とか家具とか何でも持ってきてもらい、無料で配る。リサイクルにもなるし、これを利用すると誰でも最低限の生活は事実上無収入でも維持できることとなる。マイホームも同様で最低レベルの住居であれば、国が買い取った空き家にタダで住めるようにする。これにより路上生活者はほとんどいなくなる。無料で受診できる国営の診療所も開く。もっと本格的な治療を受けたいなら有料の病院へ行く。

もう少し質の高い商品、美味しい食品等は通常の店で売っている。だからワンランク上の生活を望む人は、ワンランク上の仕事をしてより多くの収入を得るように努力する。もちろん国営商店が営業を始めればそれだけで一部の民間企業を圧迫することとなる。しかし多くの物を人手を省きながら消費者に届けることができるという意味で優れた制度である。これからの時代は物が溢れるが、それを国民にどうやって分配するのかが極めて重要な問題となるのだから、ミニマムサプライはそれに一つの解決策を与えることになる。一部の職は国営商店による無料配布で失われるのだが、失業者が出ないよう十分な財政的支援等様々な工夫をする。
①労働時間を短縮し、その分多くの職を生み出す。
②公務員を増やし、必要な職・多くの人があこがれる職を増やし職を失った人の受け皿とする。

ベーシックインカムでは貧乏人も金持ちも同額の収入を保証するために貧乏人にとっては額が少なすぎるし金持ちにとっては大した意味の無い追加収入となる。一方ミニマムサプライであれば、貧乏人にとっては贅沢さえ言わなければ生きていけるのだから、大きな安心感が得られる。何か大きなチャレンジをしてみたいという若者も、失敗しても最低限の生活は保証されるとなれば、チャレンジを恐れなくなる。小さな商店を細々経営していた人の一部等は廃業に追い込まれるかもしれないが、国が公務員を増やし、多くの人があこがれる職に就職できるようにするのであれば、救われる。

ベーシックインカムが莫大な財源を必要とするのに対し、ミニマムサプライは小規模の国営商店から始めて徐々に拡大することができ、最初はそれほど大きな財源は不要である。現代ではたくさんの無駄がある。まだ十分食べられるのに見栄えが悪くなり売り物にならないとして捨ててしまう食品、使えるのに傷物として処分する製品、引っ越しでいらなくなった物等も国が集めて国営商店で無料で配布する。リサイクルという意味もあるし、国民に対し最低限の生活を保証するという意味もある。ミニマムサプライとはそのようなシステムである。物が溢れている現在これができないはずがないし、今後物余りの傾向はどんどん強くなるのだからますますミニマムサプライの必要性は強まる。ミニマムサプライは本当に支援が必要な人々を集中的に支援する制度であり、しかも徐々に国営商店を増やしていくことによりスムーズに「労働はロボットに、人間は貴族に」という理想の社会へ移行できる。 

ミニマムサプライは、その前身と言えるかも知れない事業は民間レベルですでに始まっており、それを以下で紹介する。

フードバンク

包装の傷みなどで、品質に問題がないにもかかわらず市場で流通出来なくなった食品を、企業から寄附を受け生活困窮者などに配給する 活動およびその活動を行う団体があり、フードバンクと呼ばれている。まだ 食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品(いわゆる食品ロス)を削減する取り組みであり、日本政府もその活動を支援している。2002年に活動が開始され、現在は数十の団体が全国で活動を行っている。

フードバンクの活動が始まったのは1960年代のアメリカである。まだ食べられる食品がスーパーで大量に破棄されていることを聞き、ヴァン・ヘンゲルがこうした食品を寄付してくれるよう頼み、生活困窮者に供給したのが始まりである。現在アメリカ最大のフードバンクのネットワークはFeeding Americaであり前米に200の会員フィードバンクを持つ。最初は捨てられる食品の有効利用として始まったが、今はバランスの取れた食品提供が重要視されている。寄付や行政機関からの助成金などで運営されている。また農務省が農家等の生産者から買い上げた余剰農畜産物の提供も受けている。

フランスのフードバンクはアメリカのフードバンクをモデルとし1984年に始まる。
フランスにおける生活困窮者への食糧援助政策は、EU による PEAD(最貧困者援助 欧州. プログラム、Programme Européenne d'aide aux plus démunis)とフランス政府 による. PNAA(食糧支援国民プログラム、Programme national d'aide alimentaire)の 二つから. 構成される。また国内の小売業者や生産業者からの寄付や一般市民からの寄付も活発に行われている。例えば2013年には、国民寄付によって2,500万食に相当する食料品が集められた。

その他、ヨーロッパ各国、カナダ、オーストラリア等世界各地でフードバンクの活動が行われている。

ミニマムサプライでは民間に頼らず、国が直接フードバンクの活動を参考にしながら食品など生活必需品の配布や居住地の提供を行い、生活保護費と組合せながら運営していくものである。

無料低額宿泊所とミニマムサプライ

食糧や生活必需品に加え考えなければならないのが住居である。これに関して日本には無料低額宿泊所というものがある。これは1951年に受け入れ開始し生活困窮者のために無料、または低額で住む場所を提供する社会福祉事業である。個室の床面積は7.43㎡以上、使用料は月5.37万円以下と定められている。しかし現実は生活保護費のピンハネが横行、劣悪な居住環境になっている場合が多くある。現在首都圏を中心に全国537カ所、入所者1.56万人、生活保護受給者 1.41万人となっている。国が定めた基準を満たさず、生活保護費をピンハネするケースがあり問題になっている。
男性Aの宿泊所の例:
木造階建ての空き家をベニヤ板で区切り30人が暮らす
月額約13万円の生活保護費の9割を居住費と食費として徴収される。

一方で、うまくいっている例もある。例えばさいたま市のNPO法人「ほっとポット」である。空き家の戸建て民家16軒を使った施設を運営している。計69人の高齢者らがグループホームの形態で生活し、全部屋個室である。社会福祉士が継続的に訪問し、専門性のある生活支援も行い、個々の能力に応じた生活安定を目標に生活支援もする。

このような成功例をベースにして、国が空き家を買い取って、無料宿泊所を提供するとするシナリオを考えてみよう。食糧や生活必需品等は無料の国営商店から調達する。このようなシステムを最初は小規模につくり成功実績ができれば全国に広めることにより、生活保護費に多少プラスした程度の費用で多くの生活困窮者が救えるのではないだろうか。

2017年2月現在、生活保護を受けているのは163万世帯、214万人であり全体の1.69%である。生活保護費は総額3.7兆円でその約半分は医療費となっている。

食糧配布、生活用品配布、住居提供を生活保護費を活用しながら効率的なシステムを確立すれば、生活困窮者を救う強力な手段となるし、増え続ける社会保障費の効率的な運用にも繋がる。これをベースに「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会を構築していけばよい。

既存の小売店への影響を少なくする方法

無料の国営商店ができれば、既存の小売店には一定の悪影響が生じる。その悪影響を最小限にするよう国は努力すべきである。売上げが落ちて廃業に追い込まれる小売店が出てくるかも知れないが、流通・小売全体としてみれば生産性は上昇するのであり、転職がスムーズにいくように財政支援をすればよい。少子高齢化が進む中、転職は人手不足の解消に役立つ。ただ、あまり急激な変化はよくないのだから、この国営商店は少しずつ広がるようにすべきである。事前に登録された生活困窮者のみが一定の量だけ配布を受けられるようにする。入り口で顔認証でチェックし無人化を図る。このような商店から遠い過疎地であれば、無人の自動運転トラックに巡回してもらえばよい。

現在は過疎に悩む地方自治体が空き家を安く提供し移住を支援する空き家バンクというものがある。場所によるが、このように過疎に悩む地方自治体とタイアップしてミニマムサプライを実現できる可能性がある。フルタイムの職に就けない人でも、このような過疎の村で、自分で食べるための野菜くらいは育てられるかも知れない。

ベーシックインカムvsミニマムサプライ

ベーシックインカムには様々な問題がある。例えば国民全員に毎月1万円配ると言っても簡単ではない。住所も銀行口座も持たない人にどうやって1万円を渡すのか。重複して受け取るのをどうやって防ぐのかなどの問題がある。2014年度には地域振興券が配られた。
振興券の総額        9511億円
新規消費喚起額      3391億円
財政出動した経費     2372億円
実質的な消費喚起効果   1019億円
となっており、意外と経費が掛かっていることが分かる。ばらまきだという批判もあるだろうし、理由が分からないお金は受け取りたくないという人もいる。月1万円では生活できないと生活困窮者は言うし、それでも14.4兆円という巨額の財源が必要となる。中流階級の人には1万円でも少し助けにはなるのだが、財源が税金だとすればプラスマイナスゼロだ。いや税金で徴収する費用と1万円を配布するために莫大な費用がかかることを考えればトータルでは大きなマイナスだ。

これに対してミニマムサプライは数々のメリットがある。
①ベーシックインカムに比べればはるかに少ない経費で実現できる。
②生活保護費と組み合わせることが可能で、生活保護費に若干の費用を加えるだけで良い。
③生活困窮者に適切な支援が可能となる。
④フードバンクや無料低額宿泊所での成功例をベースとして徐々に支援を拡充することができる。
⑤破棄していた物の有効利用になり廃棄物を減らすことも可能となる。
⑥一部の小売業の経営を圧迫するが、逆に小売・流通の大規模化が進み生産性の向上に資するとすれば、国を豊かにするのに役立つ。

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円が信用を失いビットコインに置きかわる日が来るか(No.279)

ビットコインの高騰が続いている。これは投機であり、いずれはビットコインの価格は元に戻るという説はあるが、そうではない可能性も否定できない。現在人は円を売ってビットコインを買っているからビットコインは高騰している。逆の見方をすれば円はビットコインに対し暴落している。将来、ビットコインがどの店でも使えるようになり、円が使える店など無くなってしまうことはあるのだろうか。

加藤出氏が訪れたストックホルムのラーメン屋には、「現金は使えない」という説明書きがあったそうだ。フィンテックを用いたキャッシュレス化が進んでいるのだ。もちろんこれはビットコインの話ではないのだが、スマホをかざすだけでどんな支払いでも可能であれば、円であろうとドルであろうとユーロであろうとビットコインであろうと関係無い。むしろ世界中どこでも使える通貨であれば何でもよいだろう。加藤氏が訪れたスエーデンでは名目GDPに対する市中現金流通額の比率は僅か1.4%にすぎない。つまり現金はほとんど使われなくなったということだ。

もちろんすぐに円がビットコインに置きかわるわけはない。進むとしても置き換えは徐々にということだ。現在全世界でのビットコインの時価総額は30兆円だというからまだたいしたことは無い。それでも2009年の頃から言えば1千万倍くらいにビットコインは値上がりした。ビットコインが使える店が増えてくると物の値段が円表示だけでなくビットコイン表示もされるようになる。ビットコインの値段は激しく乱高下すると思うかも知れないが、ビットコインの側から見れば円の値段が激しく乱高下しているのだ。例えばあなたの家の価格は円でみれば比較的安定しているが、ビットコインでみれば激しく乱高下しながら暴落しつつある。ビットコインがどの店でも使えるようになり円を使う人が減ってくると、人は徐々に不安になってくる。ビットコイン表示の自分の家の価格が暴落を続けているからだ。家だけでなく、株も銀行預金も現金も同じだ。

そうなってくると自分の財産をビットコインに替えておこうとする人が増えるからますますビットコインは高騰を続ける。日本人全員が大部分の円をビットコインに替えたころには、ビットコインの価格は安定してくる。そして使わなくなった円は日銀に戻っていき、日銀は役割を終える。早く財産をビットコインに替えた人は財産を増やし、遅れた人は財産を失う。例えば家を売り、その代金をビットコインに替え、そのビットコインで直ちに家を買い戻したのであれば、税金や交換手数料で損をするだけだろう。得をしたければまず家を売ってすぐにビットコインに替えそのままビットコインを持ち続けなければならない。待っている間にビットコインが高騰しビットコインで表示した家の価格が暴落した後に家を買い戻せば、元の家よりはるかに立派な家が買えるのである。

例えば円の暴落を防ぐために政府がビットコインの取引に厳しい規制をかけ、ビットコインが暴落する可能性もある。この場合はビットコインを持っている人は大損をする。財産が一夜にして消える可能性もある。ビットコインの売買にタッチしなかった人にとっては、損も得もなく高みの見物である。もしビットコインが広く使われるようになった後で、ある日突然ビットコインの取引禁止を政府が宣言するようなら大混乱を引き起こす。このような経済的混乱を政府は避けるだろうから、一気に取引禁止にすることはないだろうがジリジリ取引をやりにくくして日銀を救うことは考えられる。

日本政府にとっては、円が使われなくなると国の借金も意味をなさなくなる。国債の価値もゼロになるから国の借金も消滅する。ビットコインに対する円の暴落後は税金もビットコインで徴収する。極限まで円が暴落したら、円がビットコインに交換できなくなる。そうすれば国債を発行して歳入を確保することもできなくなり国は通貨発行権も失う。ビットコイン建てで財政赤字が蓄積すれば財政破綻の可能性も出てくる。そこまでビットコインに支配された経済を国が許すわけがないだろう。対抗して日本政府が独自の仮想通貨ニホコインを発行して、資金を調達するICO(Initial Coin Offering)を行ってビットコインに対抗するかもしれない。1ニホコイン=1円に固定する。これなら日本政府が発行するのだから、ビットコインよりも信用される。国民の信認が得られれば日銀の保有する国債をすべてニホコインに置き換えれば、国の借金は激減する。

しかし国際間の取引でできるようにするには海外でもこのニホコインが受け入れなくてはならない。仮想通貨はどこの国でも発行したくなるだろう。アメリカもアメコインを発行し、1アメコイン=1$とするだろう。これによりニホコインとアメコインの交換レートは変動することになる。これがビットコインとの違いだ。ビットコインが世界的に唯一の共通通貨として使われ始めたとすると世界各国の政府は通貨発行権を失い、為替変動という自由度も失ってしまう。つまりユーロ加盟国内で例えばギリシャの債務問題のような問題が世界中に広がってしまう。そのような問題を避けるという意味でもビットコインが円に取って代わるようなことはあり得ない。つまりビットコインの値上がりはどこかで限界を迎えるということだ。現在ビットコインの通貨としての役割は後退したと言われる。これはビットコインの高騰で送金手数料も上がってしまったからだ。もちろん送金手数料を下げればまた通貨としての役割が増す。

ニホコインを発行するのは日銀か政府かという問題がある。通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律の第4条には貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属するとあり、第5条には貨幣の種類は、500円、100円、50円、10円、5円及び1円の六種類とするとある。ここにニホコインも書き加えればニホコインは政府貨幣となりその発行益が歳入に計上される。通貨を政府が勝手に発行すると激しいインフレになるという意見がある。しかし激しいインフレは物不足の時代にしか起こらない。物余りの先進国が深刻に考えなければならないのはデフレをどうやって防ぐかだ。政治家を見渡しても緊縮をやりたい政治家がほとんどで、激しいインフレになるほど財政出動をしようとする政治家はどこにもいない。つまり通貨を政府が自由に発行できるようにすれば激しいインフレになるというのは幻想にすぎない。

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2017年12月17日 (日)

デフレ下で増税は最悪のシナリオ(No.278)

自民、公明両党は個人軸に2800億円増税という2018年度の税制改正大綱を決めた。アベノミクスを始めた時は2年で2%のインフレ目標を達成することであったが、5年が経過した今、インフレ率はそれに遠く及ばずデフレ脱却はできていない。デフレが国の経済に深刻な悪影響を及ぼすことを理解していれば、当然のことながら今は減税と財政拡大による景気刺激しかないはずだ。しかしそれをやれば国債が暴落、通貨の信認が失われハイパーインフレになると政府は言う。それは古い経済学に基づいた議論であり、AI/ロボット化が進む現代では国を破滅に導く危険思想と言うべきだ。

12月15日の日経新聞に載った中山淳史氏のコメントが参考になる。例えばアマゾンが提供するデジタルサービスなどから得られる「豊かさ」を消費者余剰という形で試算する。例えばある商品を100円で買おうとしたら、90円で買えた。その場合は10円が消費者余剰だ。逆に売り手から見ると、90円でした売れなかったら生産者余剰はマイナス10円だ。結局、生産者余剰だけがGDPに組み込まれるからGDPの押し下げ要因になる。

このように生産性上昇は放置するとデフレを悪化させる。それを阻止できるのは政府であり、減税や財政拡大で財政赤字を増やし景気を刺激することだ。政府は景気対策をやれば通貨の信認が失われ激しいインフレになるという。しかし5年掛けて僅か2%のインフレを起こすことに失敗した政府が「激しいインフレ」について言及するなど自信過剰だ。激しいインフレを引き起こすためには深刻な物不足になる必要があるのだが、そのためにはどれだけ需要・消費を拡大しなければならないかに関しては内閣府の試算が参考になる。次のサイトの6頁を見て頂きたい。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
5兆円の公共投資をすれば、消費者物価は0.07%上昇するとある。だから2%のインフレ目標に1年で達するためにはその30倍の公共投資が必要になるのだが、もっと長期でインフレ目標に達するのであれば、これよりずっと少なくてすむ。いずれにせよ、公共投資も増やさず、増税ばかりやっていてはデフレ脱却はできないというのが内閣府の結論だ。もし政府が内閣府の試算はあてにならないと主張するなら内閣府計量分析室を閉鎖し、民間のシンクタンクの試算を採用すべきだろう。

政府は国の借金がこれ以上増えると通貨の信認が失われ、たとえ需要・消費が増えなくても激しいインフレになるのだという。これが本当なら、需要と供給の関係から価格が決まると教えている現在の文部科学省検定の中学公民の教科書を書き換えなければならないし、現在出回っている経済書も根本から書き直す必要が出てくる。ニュートン力学も相対論も量子論も全て間違いだから物理の本は全部書き直せと言うようなものだ。価格が需要と供給の関係では決まらないというなら証拠を示す必要がある。そもそも通貨の信認というものは相対的なものだ。例えば山田方谷が生きた江戸末期には、藩が独自に発行する藩札と幕府の発行する貨幣の両方が流通していた。発行量が多すぎて信用が失われていた藩札を方谷は集め焼き捨て、保有する準備金を元にした発行額を限定した新しい藩札を発行して藩札の信用を回復し、藩の発展に貢献している。このように2つの通貨が使われている場合は、相対的にどちらを国民が信用するかは国民次第だ。しかし、現在の日本のように円が流通する唯一の通貨である場合、円が一気に信用を失い国民が別の通貨を使い始めるなどということはあり得ない。もちろん、ビットコインのほうがずっと使い勝手がよいからビットコインに乗り換えるという可能性は否定できないが、それはずっと先の話だろう。もしその時代が来るとすれば、人は円を売ってビットコインを買うわけだから、円は信認を失い、ビットコインだけが使われるようになる。

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2017年12月11日 (月)

無料低額宿泊所とミニマムサプライ(No.277)

物が溢れている時代に我々はいるのにも拘わらず、一方で生活困窮者がいる。溢れた物を集めて国営商店を通じて生活困窮者に配布するシステムが筆者が提案するミニマムサプライだ。このことはすでに以下で説明した。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-240c.html

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/no262-a489.html

生活困窮者に対する支援は生活保護やフードバンクなど様々な形で行われているが、これらを統合しシステマティックに効率的に行うべきだというのがミニマムサプライの考え方だ。

 

食糧や生活必需品に加え考えなければならないのが住居である。これに関して無料低額宿泊所というものがある。これは1951年に受け入れ開始し生活困窮者のために無料、または低額で住む場所を提供する社会福祉事業である。個室の床面積は7.43㎡以上、使用料は月5.37万円以下と定められている。しかし現実は生活保護費のピンハネが横行、劣悪な居住環境になっている場合が多くある。現在首都圏を中心に全国537カ所、入所者1.56万人、生活保護受給者 1.41万人となっている。国が定めた基準を満たさず、生活保護費をピンハネするケースがあり問題になっている。

男性Aの宿泊所の例:

木造階建ての空き家をベニヤ板で区切り30人が暮らす

月額約13万円の生活保護費の9割を居住費と食費として徴収される。

 

一方で、うまくいっている例もある。例えばさいたま市のNPO法人「ほっとポット」である。空き家の戸建て民家16軒を使った施設を運営している。計69人の高齢者らがグループホームの形態で生活し、全部屋個室である。社会福祉士が継続的に訪問し、専門性のある生活支援も行い、個々の能力に応じた生活安定を目標に生活支援もする。

 

このような成功例をベースにして、国が空き家を買い取って、無料宿泊所を提供するとする。食糧や生活必需品等は無料の国営商店から調達する。このようなシステムを最初は小規模につくり成功実績ができれば全国に広めることにより、生活保護費に多少プラスした程度の費用で多くの生活困窮者が救えるのではないだろうか。

 

2017年2月現在、生活保護を受けているのは163万世帯、214万人であり全体の1.69%である。生活保護費は総額3.7兆円でその約半分は医療費となっている。ベーシックインカムとして一人当たり毎月1万円配るとすると、年間14.4兆円が必要となるが1万円では暮らせない。生活困窮者にはあまり助けにはならない。中流階級の人には少し助けにはなるのだが、財源が税金だとすればプラスマイナスゼロだ。いや税金で徴収する費用と1万円を配布するために莫大な費用がかかることを考えればトータルでは大きなマイナスだ。

 

食糧配布、生活用品配布、住居提供を生活保護費を活用しながら効率的なシステムを確立すれば、生活困窮者を救う強力な手段となるし、増え続ける社会保障費の効率的な運用にも繋がる。これをベースに「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会を構築していけばよい。

 

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2017年12月 4日 (月)

税収がバブル期並になっても全然駄目な理由(No.276)

来年度(2018年度)の税収は27年前のバブル期並だとマスコミは言う。あたかも今はバブル期並の好景気だと言いたいのだろう。OECDのデータを使って各国の歳入の比較をしてみた。
          出所:OECD Economic Outlook
2761



グラフから分かるように、27年前と比べれば歳入は途上国なら約10倍、先進国でも3倍前後になっていて、27年前と余り変わらないのは日本だけだ。これは名目GDPの伸びと密接に関係がある。

2762


この図で分かるように、諸外国では名目GDPは急速に拡大しているのに対し、日本だけは停滞したままだ。バブルの時代、日本は豊かさを実感した。やがて日本が世界一になるという期待から資金が世界中から流入し、株も土地も値上がりした。しかし、株も土地も持たない人のねたみからか、バブル=悪という論調がマスコミを支配した。持てる者と持たざる者の争いに見えた。バブルを潰せば持てる者から持たざる者へカネが流れるとでも思ったのだろうか。残念ながらバブル潰しは持てる者も持たざる者も同時に貧乏にしてしまった。世界中から集まったカネは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。

バブルが崩壊し一気に貧乏になってしまった日本に、カネは戻って来なかった。これが日本だけが発展しない理由だ。しかしカネは自国で刷ればよく、それにより海外へ逃げ出したカネの穴埋めをすることはできる。その意味でお金を刷る政策であるアベノミクスは正しいのだが、増税と歳出削減による財政健全化目標がアベノミクスを台無しにした。

そもそも財政健全化目標はEUの目標を真似たものだった。EUのように独自通貨を持たない国々がそれぞれカネを刷っていくらでも使ってよいわけがないのは当然なのだが、それを独自通貨を持つ日本が真似てはいけないのは自明だ。そのEUだがグラメーニャ財務相は、ユーロ圏改革の最重要課題として、EUの財務協定(財政健全化)を成長重視の内容に改めるべきだとの見解を明かにしている(12月2日の日経新聞)。成長を生み、技術革新を後押しする公共投資は一般の歳出と分けて扱い、成長にもっと焦点を当てると述べている。

お金を刷って歳出を増やせばどうなるのか。マクロ計量モデルを使ったシミュレーションでも明かなのだが、歳出を拡大すれば経済は拡大し、歳入も増えてくる。

2763


この図でも日本だけが歳出を増やしていないことが分かる。結論は簡単だ。歳出を増やせば、デフレから脱却でき、GDPが増え、それに比例して税収が増え財政が健全化する。財政拡大の「実験」をして財政が健全化しなかったらどうするのかという質問が必ず出てくると思う。デフレ下で緊縮財政を行うという経済理論に反する「実験」を行って、国を貧乏にしてしまった。次は、その失敗を反省し、積極財政に転換してはどうだろう。

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