デフレ下で消費税増税をさせてはいけない(No.35)
与謝野氏が経済財政担当大臣として入り、自民党党首の谷垣氏組んで、いよいよ消費税増税に向かってまっしぐらに進むつもりかもしれない。しかし、消費税はもちろん、いかなる増税も、デフレに陥っている日本経済には深刻な打撃になることを 、日本経済新聞社の経済モデルを使って説明しよう。このモデルに関してはすでに以下で説明した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
消費税を5年間、ある一定の税率に固定する場合を考えよう。図1で示したのが、消費税率を0%~11%の間で変化させた場合の実質GDPである。例えば0%と書いた線は、現在消費税5%であるものを0%にまでに下げて5年間(実際は2000~2004年で計算してある)続けた場合、11%と書いたグラフは、一番下のグラフであるが、これは消費税率を11%に固定したと仮定したときの実質GDPである。
図1
11%以上の税率で計算しなかったのは、NEEDS日本経済モデルが止まってしまい計算が不能だからである。消費税率変更した後、5年経過したときの雇用者報酬がどうなっているかを図2で示した。
図2
この図で分かるように、消費税を上げれば給料は下がる。それにより社会保険料も下がり、年金も下がる。国民を貧乏にしては、少子高齢化に耐えられないし、900兆円の国の借金は返せない。
図3では、各消費税率に対し物価指数がどのように変化するかを示した。消費税率を0%にしても、まだデフレは止まらない。このグラフより消費税率11%だと物価の下落率は年率約1.7%である。
図3
図4で示したように、景気悪化は失業率の増大をもたらす。消費税10%を5年間続けると失業者は2.3%増加する。今の日本の中小企業で、売り上げの10%もの税を払える企業がどれだけあるだろう。全企業の4分の3は赤字決算で法人税を払っていない。デフレ下で、どこも儲かっていない。だから倒産は激増、恐らく経済的な理由で自殺する人は年間3000人~5000人は増えるだろう。こんなに多くの罪もない人を殺してもいいのかと政府に聞きたい。
図4
消費税を上げると、税収が増えて国の借金が「返せる」のではないかと勘違いしている人はいないだろうか。残念ながら、図5で示したように、経済モデルで計算すると、消費税を上げることにより、GDPが下がり、更に景気悪化で消費税以外の税収が減るために、国の借金のGDP比はほとんど変わらないことが分かる。消費税を上げると、デフレは加速し、国は急速に貧乏になっていく。貧乏になった国民に900兆円もの借金返済をさせようとしても無理なのだ。どんなに消費税を上げても国の借金は決して返せないことが、マクロモデルの計算で分かる。消費税を社会福祉目的税にするなどという聞こえの良い言葉に騙されてはならない。増税で経済を縮小させ、増え続ける社会保障費を払えるわけがない。今やるべきことは、国の経済を立て直し、パイを大きくして社会保障費を確保することだ。
図5
少子高齢化で年金財政が大変だと思っているかもしれない。日本の年金制度は異常だ。国が社会保険料を取るだけで、それを貯め込んで、国民に年金として十分払おうとしない。そのため、国はなんと数年分の年金を貯めてしまった。こんな馬鹿なことをやっている国はどこにもない。まず国民に返させるとよい。
デフレとは、経済発展のために必要に十分なお金が国民に与えられていない状態だから何らかの形でお金を国民に渡す必要がある。社会保険料の引き下げ、減税、歳出拡大など様々な形が考えられる。財政赤字を拡大させれば、国民の側では、黒字が拡大することになり、経済が諸外国並に発展が可能となる。通貨管理制度の下では、日銀は国債を買い取る形で通貨を発行でき(つまり国の借金を日銀が買い取ることができ)その買い取り額は無制限である。国の経済が発展すれば、円の信用も増してくる。緊縮財政を続けて、経済を没落させれば、円の信用も落ちてしまうのだ。
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