ネバダレポートは、「IMFに近い筋の専門家?」がまとめたとされるレポートで、もし日本がIMF管理下に入った場合、IMFが実行する財政再建プログラムだそうだ。経済の知識のある者なら一笑に付すだろうが、何とこれが2002年の国会予算委員会で真面目に議論されたそうだから驚く。
「公務員の人員の総数を30%カット、給料も30%カット ボーナスも全てカット、公務員の退職金は100%カット 、年金は一律30%カット、国債の利払いは5~10年間停止、消費税は15%引き上げて20%へ 」などと全く馬鹿馬鹿しい内容だ。冗談でしょうと笑えばよいところだが、それを国会で真面目くさって馬鹿な質問をしているのが五十嵐文彦、馬鹿な答弁をしているのが塩川正十郎と竹中平蔵だ。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001815420020214010.htm?OpenDocument#p_top
日本がIMFの管理下に入るなどということは、全くあり得ないことだが、この3名は、IMFを全く理解していないようだ。国が借金をして、その返済ができなくなったらIMFに頼めば何とかしてくれる。だから日本も将来的にはIMFに頼らなければならないとでも思っているのだろう。しかし、それは全く違う。IMFは外国からお金を借りているとき外貨が足りなくなって困っている国を助ける。お金に困っている国に対して金を貸してやるのではない。具体的には、IMFは外貨不足で困っている国の自国通貨をドル、ユーロ、円などの国際通貨と交換してやるということだ。危機が去れば、その国は自国通貨を国際通貨で買い戻さねばならない。
ここですでに日本がIMFによる支援の対象外だと分かるだろう。日本円は国際通貨であり、日本がIMFに交換してもらうとしたら、自国通貨である円を国際通貨である円と交換するだけだから、何の意味も無い。要するに、国際通貨を持つ国は、国際市場で他国の通貨との自由な交換が可能なのだから、何もIMFに交換を依頼する必要は無く、中央銀行間でも自由に交換ができる。
アルゼンチンやギリシャのような国が破綻(又は破綻の危機に直面)するのは、自国通貨をドルや円などの国際通貨に交換してもらえず、自国の通貨を発行しても外国から借りた借金返済ができない場合だ。その場合IMFにお願いして自国で発行した通貨を国際通貨に交換してもらい破綻を免れることができる。ただし、他国に助けてもらう条件として、二度と同じ過ちを起こさないようにと、つまりまた同じように他国から借金をしないようにと、IMFから指導を受ける。日本のように自国通貨の発行をいやがる国はIMFでも助けようがないのだ。もちろん、日本は自国の通貨を発行すれば、つまり日銀が国の借金を市場から買い取れば、IMFの力を借りなくても国の借金の問題は一挙解決する。「神は自ら助くる者を助く」であって、結局IMFの助けはいらないのだ。
IMFからすれば他国に巨額の債権を持つ日本は模範生であり、経常赤字を続けている国と同じ指導をするのはおかしい。経常収支の赤字国も黒字国も緊縮財政をせよという主張は、世界大恐慌を引き起こせということであり暴論である。倒産しかけている会社を更生させるための法律が会社更生法であり、税金を使って会社を助ける。この場合黒字化のために人員整理や賃金カット等厳しい融資条件がつくのは当然であり、IMF管理下に置かれた国も同様な扱いだ。一方で、外貨や海外純資産で世界一であり、経常黒字が続いている日本は、会社で言えば巨額の利益を出す超優良企業だ。会社更生法の適用を受ける必要はないのだ。
笑い話として読んで欲しいのだが、日本の国の借金である908兆円をIMFから金を借りて返そうとしたとする。IMFは円を貸してくれるわけではない。円と国際通貨のどれかと交換してくれるだけだが、それは巨額の外貨を持つ日本にとって何の意味もない。全く馬鹿げた話しだが、IMFが世界中の国の外貨準備のドルを奪い取ってきて日本に持ってきたとしよう。世界の外貨準備の合計は670兆円程度、そのうち6割がドルだから400兆円、ここから日本の外貨準備を引くと300兆円余りしかない。日本の借金の908兆円を完済するには余りにも少ない。しかも、日本には外貨準備が約100兆円と海外純資産260兆円を持っている世界一金持ちの国だ。その金持ちの国を、外貨不足で困っている国まで含め、全世界が有り金をすべて出して日本を援助するほど理不尽なことはない。IMFでなく、日銀がいくらでも援助してくれるのだから。言ってみれば大富豪のビルゲイツが、銀行に預けている自分の金を使いたくないと言っているから、みんなでお金を出し合って助けましょうと言っているようなものだ。
もちろん、IMFの融資残高も日本の国の借金である908兆円に比べ桁違いに少ない。2003年末 1064億ドル、
2007年度末 155億ドル、
2008年11月~2009年5月の間に行った融資 1500億ドル(約12兆円)
といった程度である。日本の国の借金である908兆円には遠く及ばない。
逆に日本は2009年2月13日、IMFの融資財源を暫定的に補完(最大で1000億アメリカドル)すると表明した。IMFへの出資比率が世界第2位の日本はIMFの管理下に入るというよりIMFが日本の管理下に入ると言ったほうが、現実に近いのではないか。
よく言われるのが、日本が通貨発行を行うと円の信認が落ち、日本から資金が引き揚げられ、円が暴落し経済がマヒするということだ。アメリカや中国など諸外国も通貨発行は行っているが経済はマヒしていない。他の国からドル建てで多額の金を借りていて返済に困っているとき、国が通貨を発行すれば混乱が起きることがある。例えば日本が他の国からドル建てで300兆円(3兆ドル)の借金をしているとしよう。通貨発行により円が暴落して円の価値が10分の1になったとすると、もちろん外国は3兆ドルを返してくれという。しかし円の暴落で300兆円でなく10倍の3000兆円も返さねばならなくなり、とても返せないし利払いも大変ということで返済不能(デフォルト)となる。これが問題なのだ。
しかし、現在の日本は逆なのであり逆のことが起きる。他の国に金を貸している。ドル建てで300兆円(3兆ドル)貸している場合は、円の価値が10分の1になれば、貸している額は10倍になるから3000兆円も貸しがあることになる。利子収入だけでも大変な額になる。輸出企業は笑いが止まらないだろうし、諸外国は国内産業が日本からの輸入拡大で大打撃を受けるから真っ青になるだろう。そもそも日本国内の資金が海外に逃避するということは、円売りドル買いが発生するということ、これがまさに、円安誘導であり、通貨安競争を各国がしている現在、喉から手が出るほど日本政府が望んでいることである。それが自然発生的に起きるなら、日本にとっては、これほど嬉しいことはない。資金が海外に逃避した後、資金不足になるかと言えば、その穴は通貨発行で埋めれば良いだけだ。日本を元気にする最良の方法だ。
実際、通貨発行で景気が良くなれば、経済が拡大を始めるから、日本が有望な投資先となる。経済が停滞しているからこそ、日本が投資先として有望でなく、資金はもっと有望な海外に逃げていき、円キャリートレードが盛んだったので円安になった。リーマンショック以降は海外も景気がわるくなったので、その資金が戻ってきて円高になった。日本がきちんと経済を立て直せば、世界中から資金は流れ込む。